大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも(゜▽゜*)

ついに10月になりましたね。

これから冷えてくるんだろうなあ。

では、どうぞ(*・ω・)つ


第三十二話 決着、白い巨人戦

フェイトside

 

 

 

辺りに轟音が響く中、金色の少女はそっと目を覚ます。

 

視界がぼやける中、彼女がまず気付いたのは頭の感触だった。

 

(なんだかやわらかい…)

 

すると聞きなれた声が聞こえてくる。

 

「フェ…ト!フェイ…!フェイト!」

 

彼女が声が聞こえてきた方へぼやける視線を向ける。

 

段々と鮮明に見えてきた視界に映る映像は、こちらを心配げに見つめるアルフの姿だった。

 

「アルフ?」

 

「フェイト!フェイト!良かった!無事で本当に良かった!」

 

アルフは泣きながらフェイトにすがる。

 

フェイトはアルフの姿を見て心配をかけてしまったのだと気付いた。

 

「心配かけてごめんね」

 

「いいんだよ。アタシはフェイトが無事ならそれだけで」

 

「アルフありがとうね」

 

フェイトはアルフにお礼を言ったあとゆっくりと起き上がる。体の調子を確かめるようにゆっくりと。

 

起き上がると右手についている金色の三角形のデバイスモードになっているバルディッシュへと視線を向ける。

 

「バルディッシュ調子はどう?」

 

《ただいま自己修復モードに入っておりデバイスが使用できる状態ではありません》

 

「分かった。そのまま待機してて」

 

《申し訳ありません》

 

そしてフェイトは現状を理解するため辺りを見回す。すると自分の隣で、眠っているあの白い魔導師の少女と、それを見守っている使い魔と思われるフェレットの姿があった。

 

フェイトはアルフへと視線を向ける。この状況を一番理解していると思われる人物がアルフだった。

 

アルフはフェイトの視線の意図を理解すると現状の説明を開始する。

 

「フェイトはどこまで覚えてる?」

 

「えっと…ジュエルシードを封印しようとして魔力が暴走したところまで覚えてるよ」

 

「じゃあそこから説明するよ」

 

アルフはフェイトにあれから起こったことを説明した。

 

ジュエルシードの暴走が起こったときにヒエンがなのはとフェイトの2人を助けたこと。

 

その後、ジュエルシードから白い巨人が現れなのはとフェイトを狙っていたこと。その際になぜか2人の魔法を使用しこちらを攻撃してきたこと。

 

そして、その巨人を倒すためにヒエンが向かったことを話した。

 

全ての説明を終えたとき、フェイトは茫然としていた。

 

「じゃあいまは………ヒエンが…1人で戦ってるの?」

 

「そうだよ。あのデカブツが狙ってるのはフェイトとそこのチビッ子だからって。あいつはアタシたちに任せて1人で戦いにいったんだよ…」

 

アルフは辛そうな表情で話す。

あの巨人…見た目は弱そうに見えるが、実際に戦ったアルフだからこそ分かる。

 

あの巨人はなのはとフェイトの魔法をうまく使い、素早い動きで相手を翻弄し、体格を活かした圧倒的なパワーでこちらを追い詰めてくる。

 

正直ヒエン1人で戦うには荷が重いだろうとアルフは予測していた。

 

そしてその説明を終えたとき、フェイトが飛び出そうとした。それを察知したアルフはフェイトの前に回り込み、フェイトを止めた。

 

「だめだよフェイト!」

 

「はなして!今、行かなきゃあの人が!」

 

「行ったってデバイスのないフェイトじゃあいつの足を引っ張るだけだよ!」

 

「でも!……でも!」

 

フェイトは泣きそうな表情でアルフを見る。そして言葉を紡ごうとしたとき…

 

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!

 

 

 

轟音が響いた。

 

その音源に一同が目を向けると全員が驚愕する。

 

そこには頭から血を流しボロボロになって倒れているヒエンの姿があった。

 

 

 

フェイトside end

 

◆◆◆

 

ヒエンside

 

 

 

強烈な衝撃が俺を襲った。

 

一瞬、意識が暗転し何が起こったのか全く分からなかった。

 

そして気が付くといつの間にか地面にうつ伏せに倒れていた。

 

「ガウガウ!ガウガウガウ!!」

 

相…棒…?

どうしたんだそんなに慌てて?

 

すると相棒から映像つきで思念が送られてくる。俺はその映像を見て自分に何が起こったのかを思い出した。

 

そうか…。

俺はあの巨人に吹き飛ばされたんだっけ…。

 

結構なダメージを受けているはずなのにどこか他人事のように思う自分がいた。

 

っていうかよく生きてるな俺…。

それもこれも相棒のおかげだ。

 

あのとき…

 

俺は巨人から拳の直撃を食らう寸前、相棒が咄嗟に展開してくれたラウンドシールドのおかげでダメージが多少なりとも軽減された。

 

そして壁に貫通し吹き飛んだ際、背中に同時に展開していたラウンドシールドのおかげで追加ダメージを食らうこともなかった。

 

だが悠長に寝ている場合ではない。

もうすぐここにあの白い巨人がやってくる。

 

俺は意識が朦朧としながらもなんとか起き上がろうと体に力を入れる…が、力が入らなかった。

 

「ぐ……ちくしょう…」

 

まずい。

体に全く力が入らない…

 

俺が自分の体の調子に戸惑っていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「ヒエン!」

 

すると俺の目の前に気絶していたはずのフェイトが立っていた。

 

「フェイ…ト?どうして…?」

 

「貴方に借りを返すために…やってきた!」

 

「ダメ…だ。あいつの狙いはフェイト…お前だ。ここは俺がなんとかするからさっさと逃げろ」

 

「いやだ!」

 

「何を言ってる…?これは冗談でもなんでもない。それにデバイスが壊れているお前にできることなんて何もない!だからさっさと逃げろ!」

 

俺がフェイトへ怒鳴るようにそう言った瞬間…

 

 

 

ドシイイイィィン!

 

 

 

という音が響いた。

 

まずい!

もう来たのか!?

 

俺は魔力で肉体を強化し、無理矢理起き上がる。その際に体からゴキゴキッといった凄まじい音がなるがそんなことを気にしている場合じゃない。

 

そしてフェイトの前に無理矢理躍り出る。

 

だが足がふらつき、すぐに倒れそうになる。が、隣にいたフェイトがすかさず俺を支えてくれた。

 

「大丈夫?」

 

「あ、ああ。ありがとう」

 

そして俺はフェイトに支えられながら前を見据える。

 

白い巨人はゆっくりと俺たちを見下ろす。

 

「大丈夫。たとえ魔法が使えなくったって肉体強化で貴方と一緒に逃げることぐらいできる」

 

「フェイト…」

 

この金髪の少女は俺が何を言っても聞く気は全くないらしい。

 

さらには…

 

「全く世話がやけるご主人様だよ」

 

俺の隣にアルフがやってくる。

 

「アルフ…」

 

「あーあーあーあー、頭から血まで流しちまって…重傷じゃないか。まあ安心しな。さっき助けてもらった借りを、今ここで返させてもらうよ」

 

「そんなの…別に気にしてねぇよ…」

 

「全く素直じゃないねぇ」

 

アルフがこちらをからかうように、ケラケラと笑う。

 

「アタシが時間を稼ぐ。だからアンタはさっさとそのケガ治して後から加勢にきとくれ」

 

「大丈夫なのか?」

 

「正直厳しいね。だけど時間を稼ぐだけならいくらでもやりようはあるよ」

 

「分かった。このケガ治して必ず加勢にいく」

 

俺はアルフに力強く頷いた。

 

「フェイトはそいつと一緒に休んどいて」

 

「アルフ…」

 

フェイトはアルフを心配げに見つめる。

 

「そんな顔しちゃダメだよフェイト。アタシを一体誰の使い魔だと思ってんだい?」

 

「……無茶だけはしないでね」

 

「了解」

 

そのとき俺とフェイトの下に緑色の魔方陣が現れる。

 

これは…転送魔法か。

 

そして俺たちはどこかのビルの屋上に転送される。辺りを見回すと、横にはなのはが眠っていた。そばにはユーノがおり、俺たちを見つけるとタタタッと駆け寄ってきた。

 

「兄さん!」

 

「ユーノ」

 

「全く無茶しすぎです!心配したんですから!」

 

「ごめん…」

 

俺はユーノに素直に謝る。

 

「次からは気を付けて下さいね全く…。僕はあの使い魔の子の加勢にいってくるので兄さんはこの中で休んでいてください」

 

そうするとユーノが魔法を発動させる。

 

「妙なる響き、光となれ、癒しの円のその内に、鋼の守りを与えたまえ」

 

すると俺とフェイト、なのはの3人を円上の結界が包む。

 

「これは?」

 

「回復効果を含んでいる防御結界です。並の攻撃じゃビクともしません」

 

「なるほど…便利だな」

 

「兄さんはどうせ来るなっていっても来るでしょうからケガをさっさと治して加勢に来てくださいね」

 

「あ、ああ。分かった。色々とすまない」

 

「じゃあ行ってきます!」

 

そういうとユーノは屋上から勢いよく飛び降りて巨人のいる方角へと向かっていった。

 

ここから巨人のいる方角までは結構離れている。おそらく用心して、離れた距離を選んだのだろう。

 

とりあえず俺は死ぬ気モードを解除し、休むために地面に座り込む。するとドッと疲れたように体が重くなった。そういえば肉体強化をかけてたんだった。

 

俺は改めて自分の様子を確認する。

バリアジャケットも黒い籠手もボロボロであった。籠手にはところどころヒビが入っており、黒スーツは破れている箇所が多く、どれだけ激しい戦いだったのか今さらになって気が付いた。

 

俺はそのままじっと回復する様子を見ていた。徐々にではあるが、体のケガやボロボロになったバリアジャケット、消費した魔力も回復している。

 

その証拠に頭から血が流れていたのだが、もう既に止まっている。

 

すると俺の様子を見ていたフェイトが俺の隣にゆっくりとやってくる。

 

何をするのかと俺が観察していると、フェイトは自身のバリアジャケットのマントを使い、俺の頭の血を拭き出した。

 

座っている俺とフェイトの背が丁度合っているからか自然にお互いの視線が合った。

 

「今はこんなことしかできないけど…」

 

「あ、ありがとう。でもいいのか?その…マントが」

 

「バリアジャケットだよ?解除すればすぐに戻るから汚れても心配ないよ」

 

「そ、そうか」

 

俺達はそれ以降、黙りこむ。

 

「………」

 

「………」

 

俺がフェイトをジーっと見ていると、フェイトはなぜか顔を赤くして俯いてしまった。

 

その間、俺は何か話の話題となるものを考えていたのだが全く見つからない。

 

き、きまずい…。

 

つい俺は視線をずらし、隣で眠っているなのはをチラッと見る。レイジングハートは既に待機状態に戻っているが、なのはは白いバリアジャケットのままだ。おそらくなのはの安全のためにレイジングハートはボロボロになりながらも術式を展開しているのだろう。

 

俺はなのはの胸の辺りを見てみる。胸の上下がしっかりと動いていることから呼吸もちゃんと出来ているようだ。

 

とりあえず大丈夫そうで安心した。

 

「貴方は…」

 

「ん?」

 

するとフェイトが俺に向けて話しかけてくる。

 

「貴方はどうして…どうして私達を助けてくれるの?」

 

「え?」

 

「前のときだって助けてくれて……今回だって、私達を見捨てていればそんなにボロボロになることだってなかったはず…」

 

「………」

 

フェイトは泣きそうな表情でこちらを見ている。その表情からは適当な答えは許さないと言われているようだった。

 

俺は考える。

俺がフェイト達を助ける理由…。

 

「………」

 

改めて考えてみたが…

 

ぶっちゃけ、今そんなことを言われても返答に困る。

 

それにあのとき助けたのは完全に成り行きだ。

 

こちらとしては海鳴市のジュエルシードによる被害を食い止めるために動くという理由もあったし…

 

何よりなのはとユーノがジュエルシードを集めるという理由も大きかった。

 

なのはは…あの子は最初はユーノのお手伝いということで集めていたが今は違う。フェイトのジュエルシードを集める理由が知りたいということと、自分の大切な人達を守りたいという理由でジュエルシードを集めている。

 

ユーノは…自分が古代遺産ジュエルシードを見つけた責任として、被害を食い止めるためにジュエルシードを集めている。

 

ならば俺は…なんのためにジュエルシードを集めているのだろう?

 

だが今考えてもその答えは出そうになかった。

 

だから今は、フェイト達を助ける理由ということ限定で考えてみる。

 

俺がこの子達を助ける理由…

 

俺は前世の世界でアニメという枠を通してこの子達の物語を見ていた。だからこそ、この子が歩んでいく道を、一部分ではあるが、ある程度知っている。

 

そしてこの子にこれから降りかかるであろう試練なども……ある程度知っている。

 

俺はこの子に降りかかる試練をなんとかしたくて助けているのだろうか?

 

いや違う。

そんなことで助けた訳では断じてない。

 

自分自身に自問自答する。

 

そもそもこの世界に住む人達を、前世のテレビアニメと一緒にすること事態間違いだ。

 

この世界の人達は、テレビアニメのキャラクターでもなんでもない。今を必死に生きる…生きている人間なのだ。そんな人達を前世の世界のテレビアニメのキャラクターとして見るなど傲慢も甚だしい。そんなものはこの世界に生きる人たちに対する冒涜だ。そんな権利、俺にあろうはずがない。

 

そもそも俺だってこの世界に生きる人間の1人である。

 

そんな考えがあるなら今ここでそんなものは捨てるべきだ。

 

なら俺がフェイト達を助ける理由はなんだ?

 

決まっている。

そんなもの俺がそうしたいから…助けたいから助けたに決まってる。

 

それに…そういうのは理屈じゃない。

 

助けたいから助ける。

困っている人がいたら手を差しのべる。

 

誰だってそんな行動をとったことがあるのではないだろうか?それは何気ない日常生活の中でだっていえる。

 

道を迷っている人がいたら案内をする。

 

迷子になって泣いている子供がいたら一緒に親を探す。

 

荷物が多くて困っている老人がいたら代わりに持つ。

 

電車の優先座席を妊婦さんに譲る。

 

などのこれらの日常的行動だって助けたいから助けるという行動につながっているのだ。

 

だから意識的にしろ、無意識的にしろ俺がとった理由がそれを物語っている。

 

俺がフェイト達を助けたいから助けた。

 

全てはこれに集約される。だからこそこのシンプルな理由をこの子に教えてあげよう。

 

「そんなの簡単だよフェイト。俺がお前達を助けたいから助けた。ただそれだけだ」

 

「………へ?」

 

「こういうのは理屈じゃないんだよフェイト。それに正直、そういうことを聞かれても困る。だって気付いたらそういう行動をとってたんだから」

 

「………」

 

「それにお前さんだって人のこと言えないぞ。逆に聞くけど、どうしてお前さんも俺を庇うようにあの巨人の前に立ちはだかったんだ?アルフから狙われているってことも聞いてたんだろ?」

 

「そ、それは…貴方に借りがあったから…」

 

「あのとき俺を見捨ててればその借りがあったことだってなかったことにできたのに?」

 

「う…」

 

「バルディッシュだってボロボロになってて魔力も消耗してたのに?」

 

「うう~」

 

「俺達のようなジュエルシード捕獲の邪魔者を一気に排除できたかもしれないのに?」

 

「う…ううう~…」

 

あれ?

なんだかフェイトさんの様子がおかしいぞ?

 

俺はなぜか冷や汗をダラダラと流す。

 

「ううううう………」

 

 

 

ポロポロポロポロ

 

 

 

oh…

 

 

 

ナンダカマエニモコンナコトアッタナア……

 

 

 

とりあえず…

 

 

 

「すいませんでしたああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 

 

精一杯謝ろう。

 

 

 

10分後…

 

 

 

「落ち着いたか?」

 

「う、うん///」

 

フェイトは照れながらこちらを上目遣いで見る。

 

え?

なにこの可愛い生き物!?

 

思わず抱き締めたくなった本能を理性で抑えた自分をほめたくなった。

 

「あ…」

 

「うん?どうした?」

 

「ヒエンのケガがいつの間にか治ってる…」

 

「へ?あ、本当だ」

 

どうやらフェイトと話してる間にケガが完治したようだ。バリアジャケットと籠手もすっかりと元通りになっており消耗していた魔力もある程度戻っていた。

 

というかこの短時間でケガが治る結界を構築したユーノ先生に脱帽ですΣ(-∀-;)

 

まぁ、とりあえず完治もしたことだし行くとしますか!

 

俺は死ぬ気モードになり早速行こうとすると、誰かに引っ張られる感触が…。

 

顔を向けると俺の裾を少し握っているフェイトの姿があった。

 

「どうしたフェイト?」

 

「あの……その……」

 

俺はフェイトが話すまでゆっくりと待つ。

 

「無茶だけはしちゃ…ダメだよ?」

 

「………お、おう」

 

フェイトのあまりの可愛さに俺は内心吐血していた。

 

死ぬ気モードがあって本当によかった。でなければ俺は社会的に死んでいただろう。ある意味で…。

 

「じゃあ行ってくる!」

 

気を取り直して俺はビルの手摺を勢いよくジャンプし、炎の翼を広げる。

 

あの巨人には色々借りがある。全部まとめてキッチリ返す。

 

待ってろよユーノアルフ。

 

すぐに行く!!!!

 

 

 

ヒエンside end

 

◆◆◆

 

フェイトside

 

 

 

フェイトは白い巨人の所へと向かう少年の姿を見送っていた。

 

(ちょっと泣いちゃった…)

 

ヒエンに言葉責めで攻められたときに何も言い返すことができずに少し泣いてしまったフェイト。本人的にかなり恥ずかしかったようだ。

 

(あ、あれは……私は悪くないもん…。)

 

彼女が泣くと微塵も考えていなかったヒエンはフェイトに、ジャンピング土下座をかました。

 

意外なことにフェイトはそのジャンピング土下座を見て、(日本って変わった謝りかたがあるんだなぁ)と妙に合ってないようで合っている感想を持っていた。

 

彼女に間違った日本の知識がつかないことを切に願う。

 

そしてフェイトは思考に戻る。

 

(なんであんなこと聞いたんだろう…)

 

フェイトはヒエンになぜあんな質問をしたのか自分でもよく分かっていなかった。しかし意外なことに彼はあっさりとその答えを教えてくれた。

 

(自分が助けたいから助けた…か)

 

今の自分はどうなのだろう?

 

彼のように自分のしたいことをできているのだろうか?

 

フェイトは考える。

 

今さらではあるが、フェイトはジュエルシードを集めている。

 

なぜこんな幼い少女がジュエルシードを集めているのか?

 

その理由は、母から実験のためにジュエルシードが必要だと言われたからだ。

 

彼女の母親…プレシア・テスタロッサはある日を境に一切笑わなくなった。フェイトはそんな母親の笑顔がもう一度見たいがためにジュエルシードを集め始めたのだ。

 

だがプレシアは毎日部屋に引きこもり、何かの実験をする生活を繰り返す。

 

フェイトはプレシアが行っている実験の詳細は知らない。ただジュエルシードがその実験に必要不可欠だということしか知らされていない。

 

そして彼女自身も母親から命令されたジュエルシードを集めるという行動になんの疑問ももたなかった。

 

ただ母さんが必要だから…。

 

母さんが私を必要としてくれているから…。

 

そう。

フェイトにとっては母親が全てだった。

だから彼女は必死になってジュエルシードを集めている。

 

そんな彼女が自分のしたいことについて真剣に考えている。

 

周りの人間からすればまるで大したことはなく小さなことだろうが…今まで与えられた命令を忠実にこなしてきたフェイトにとっては大きく変わるものだ。

 

フェイト自身はその事にまだ気付いてはいないが…

 

その答えが出るのはまだまだ先のことである…。

 

 

 

フェイトside end

 

◆◆◆

 

ユーノside

 

 

 

ユーノは屋上から勢いよくジャンプすると魔方陣を足場にして空の上を駆け、地面にうまく着地する。

 

そして巨人がいると思われる地点まで一気に駆け抜ける。

 

ユーノが現場に到着するとアルフが既に白い巨人と戦闘を開始していた。

 

アルフは白い巨人から距離を取りながら戦っていた。あの巨人は近接戦闘も可能なため一撃でも食らえば、こちらが戦闘不能になることは分かりきっている。

 

それにこちらの目的は時間稼ぎだ。距離を取りながら戦うことは理にかなっている。

 

それだけでなく、アルフはフェイトたちがいるビルから白い巨人を離すように戦っていた。

 

そこにユーノも加勢する。

その小さな体格を生かして、建物の隙間から伺いながら魔法を使用する。

 

チェーンバインドを白い巨人の足元に展開するように配置し、転ぶように仕向ける。

 

白い巨人が狙い通りに足元のチェーンバインドに引っ掛かった。

 

「ガッ!?」

 

そして頭から勢いよく転んだ。

 

「助かったよフェレット!」

 

「今のうちに拘束しよう!兄さんが来るまでなんとかもちこたえるんだ!」

 

「了解!」

 

そしてユーノとアルフは同時に唱えた。

 

「「チェーンバインド!!」」

 

緑色とオレンジ色の鎖が白い巨人を何重にも拘束する。

 

 

「ウォオオオオ!!!」

 

 

巨人がジタバタと暴れる。

 

その影響か、何重にも巻かれている鎖は少しの間もっていたが数秒後呆気なくちぎれてしまう。

 

ユーノとアルフはさらに捕縛魔法を使い拘束する。

 

「ケイジングサークル!」

 

「リングバインド!」

 

ユーノは巨人の腹部を、アルフは巨人の四肢を拘束する。

 

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

 

 

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」

 

 

3つの雄叫びが町中に木霊する。

アルフとユーノは白い巨人をできる限り拘束するため魔力を送り続ける。

 

(この巨人は動くだけでも厄介だ!なんとか抑えられるところは意地でも抑える!)

 

するとユーノとアルフの周りにピンク色と黄色のスフィアが複数現れ、彼らを襲う。

 

ユーノは即座に防御魔法を使用する。

 

「プロテクション!」

 

緑色の半球型のシールドが2つ展開される。並の魔導師ならデバイスを使用せずに2つの魔法を同時に展開させるのは厳しいだろう。だがユーノは並みではない。

 

ユーノは幼いながらもAランクに相当する魔導師であり、捕縛、治癒、結界といった補助魔法の優秀な使い手だ。

 

そんな彼からしたら魔法を同時に使用するなど朝飯前である。

 

複数のスフィアが防御魔法へと突っ込んでいく。しかし硬度が高く突破されることはなかった。

 

しかし……

 

 

 

ボコッ

 

 

 

突如、巨人の腕と脚が膨らみ始めた。

 

その影響でアルフのリングバインドが壊れる。そして…

 

 

 

ボコッボコッボコッ

 

 

 

巨人のお腹が膨張し、ケイジングサークルまでもが破壊されてしまった。

 

 

(やっぱりこのフェレットの姿じゃ魔法も弱体化してる…!)

 

 

ユーノが元の姿で万全の状態であれば、白い巨人を拘束し続けることができたであろう。だが彼の姿は依然、フェレットのままであり魔力不足が致命的であった。

 

そして巨人は起き上がり、ユーノの姿を捉えるとシールドを全力で殴り始めた。

 

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

 

 

 

ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!

 

 

 

「く、くううう…」

 

 

ユーノは必死に耐えるが…

 

 

 

ピキッ ピキキキッ

 

 

 

シールドはまもなく破壊されようとしていた。

 

 

「フェレット!」

 

 

アルフがラウンドシールドで補強するが呆気なく破壊され…

 

 

 

パリン

 

 

 

ついにユーノのプロテクションも破壊される。

 

そして…巨人の巨大な拳が小さな体を捉えようとしていた。

 

 

(すいません兄さん…兄さんがくるまで持ちこたえられませんでした)

 

 

ユーノはキュッと目をつむり、これからくるであろう衝撃に備えた。

 

 

「………」

 

 

「………」

 

 

「………」

 

 

しかしいつまでたっても衝撃がくることはなかった。

 

 

(……あれ?攻撃がこない?)

 

 

ユーノがそっと目を開け状況を確認する。

 

するとそこには巨人を殴り倒す彼が兄と呼ぶ少年の姿があった。

 

 

 

ユーノside end

 

◆◆◆

 

ヒエンside

 

 

 

俺はユーノとアルフの場所へと急いでいた。

 

戦いが行われているのか戦闘音がこちらまで届いている。

 

ユーノとアルフがあの白い巨人と戦いにいってから既に10分以上が過ぎていた。

 

急がなければ2人が危ない。

 

アルフは以前戦った経験からの予測になるが、戦闘経験は豊富でなおかつ手数もあるが、爆発力が足りていない印象があった。

 

ユーノは攻撃魔法を習得しておらず、なおかつフェレット姿であるからか攻撃力不足が否めない。

 

以上のことから2人だけではどうしても決定力に欠けるのだ。

 

そうこうしている内に白い巨人の姿が見えてきた。

 

そして近付いた俺が見たのはシールドを破られ目をつむっているユーノと、それを殴ろうとしている巨人の姿だった。

 

まずい!?

 

俺はスピードをさらにあげ、あるワードを唱える。

 

形態変化(カンビオフォルマ) 攻撃形態(モードアタッコ)

 

すると俺の右手の黒い籠手が鋭いガントレットへと姿を変える。

 

死炎の手甲(ミテーナ・ディ・ヒート)!」

 

そして右手にオレンジの炎の球体をだしたまま、巨人の横顔目掛けて力一杯殴り付けた。

 

火炎の加速(フレイムアクセル)!」

 

「ウォオオオ!?」

 

すると完全な不意打ちだったのか巨人はそのまま10メートルほど吹き飛んでいった。

 

俺は直ぐ様、ユーノにかけよる。近くにきていたのかアルフもこちらへとやってきた。

 

「2人とも!」

 

「兄さん!/アンタ!」

 

「よく持ってくれた」

 

俺はフェレット姿のユーノと、狼形態になっているアルフの頭のツボを軽く刺激するように撫でる。

 

するとどうだ。

2匹ともあっという間に目を細め気持ちよさげになるのであーる。

 

「くーん…ってこんなことしてる場合じゃないんだよ!」

 

「きゅうう…ってそうですよ!」

 

「お、おう」

 

なんか君たち、この戦いでかなり仲良くなってない?まぁ、深くは突っ込まんが。

 

「それよりどうしますか?」

 

「そうだよ。何か手はないのかい?」

 

「ああ。それなら大丈夫だ。もう既に手は考えてある」

 

「本当ですか!?/本当かい」

 

「ああ。だからこそ確かめたいことがある。2人とも奴の動きを止めるのに協力してくれ」

 

「「了解です/だよ」」

 

ユーノは分かるが、アルフまで即答したのに俺は少し驚いた。

 

「信用してくれるのか?」

 

「ん?ああ、そういうことかい。アンタみたいなお人好しなんかに何かできるわけないさね」

 

「えーと、ありがとう?」

 

「ほめてないよ!嫌味も分かんないのかい!?」

 

「そうなのか?まぁいいか」

 

「いいのかい!?」

 

「おう」

 

「全く…調子がくるっちまうよ」

 

「気にすんなよ」

 

「誰のせいだと思ってんだい!?」

 

さぁ?

え、俺?

そうでしたね。

 

それよりも…

 

 

 

ドシイイイン!

 

 

 

そろそろこの巨人と決着をつけるとしようか。

 

俺達は即座に行動に移る。

アルフは狼形態で地を駆け抜け、俺は右肩にユーノ、左肩に相棒を乗せ空中へと飛ぶ。

 

俺は軽く自分の状態を確認する。

ユーノの治療魔法でケガは完治したが体力と魔力は通常の半分ほどまでしか回復していない。

 

よって決め手となる攻撃のために体力と魔力はある程度残しておかなければならない。

 

俺は先程言っていた手を試すために奴の後ろに回り込む。

 

両手に炎を灯し、5メートルほどの球体を生み出し放った。

 

火炎の大砲(フレイムキャノン)!」

 

それを奴の首元に当てた…と思われたが屈んでかわされてしまう。そして巨大な裏拳がとんでくる。

 

「うお!?」

 

俺は反射的に前に炎を放ち、その推進力で後ろへととんだ。

 

「ガウガウ!」

 

「兄さん後ろです!」

 

するといつの間にか回り込んでいたのか巨人が回し蹴りを放ってきた。

 

って回し蹴り!?

 

俺は足下からジェット噴射の如く、炎をふかせて急上昇する。

 

すぐ真下からブオン!と風を切るような音が聞こえた。その音を聞いたとき恐怖心が芽生えるが根性でそれを我慢する。

 

そして炎の翼をはためかせ巨人の頭上を取った。

 

ここだ!

 

今度はかわされないようにスピードがあり、なおかつ破壊力のある魔法を使う。

 

さきほどと同じように5メートルほどの球体を生み出す。しかし今度はそれらを俺の周りに6個配置する。

 

6個の球体は俺の周りを回転しながらオレンジのスフィアを連射で出しまくる。それはまるでガトリング砲のように。

 

火炎の機関銃(フレイムガトリング)!」

 

3メートル状の大きさの複数のスフィアが巨人の後ろの首に当たる。

 

「ガッ!?」

 

「効いた!?」

 

ユーノが驚いた声をあげる。

 

だがこれで確信した。

あいつの弱点は首の後ろ側だ。

おそらくジュエルシードがそこに配置されているのか、そこに神経などが集中しているのだろう。

 

俺は地面を駆け抜けているアルフに聞こえるように念話で話す。

 

『アルフ聞こえるか?』

 

『聞こえてるよ。アタシはどうすればいいんだい?』

 

『あいつをうつ伏せに転ばせられるか?』

 

『そういえばフェレットも同じことをしてたね。任せな』

 

『タイミングはそっちに任せる。たのんだぞ』

 

『了解だよ』

 

俺は巨人の攻撃をかわしながらユーノに話しかける。

 

「ユーノ、アルフがあいつを転ばせたらそのまま拘束し続けてくれ」

 

「分かりました。任せてください!」

 

俺は再び念話で話す。

今度はユーノにも聞こえるように。

 

『それじゃあ、作戦開始だ!』

 

俺は隙をつくるために巨人の周りをグルグルと回り続ける。

 

巨人は拳や砲撃などを駆使して俺に攻撃してくるが、当たりそうなものはユーノが防御してくれるので、俺はひたすら飛び回り続けることだけに集中する。

 

そして背中の炎の出力をあげ続けながら飛んでいると、巨人の周囲に炎の竜巻のようなものが出来上がる。それは段々と大きくなり、やがて巨人を包み込む。

 

炎の奔流(ファイアストリーム)!」

 

炎の竜巻は巨人の動きを抑制する。すると地面を駆ける赤い狼が俺の視界を捉えた。

 

アルフだ。

 

アルフは猛スピードで巨人へと近付きつつ人型になる。俺はその様子を確認すると炎の奔流(ファイアストリーム)を解除した。

 

そしてジャンプし巨人へと近付いたアルフは巨人の背中に拳を叩き込んだ。

 

「くらいなあぁ!!」

 

 

 

ドゴッ!!

 

 

 

「ウォ!?」

 

驚いた巨人がうつ伏せに倒れる。

それを見た俺はユーノに声をかけた。

 

「ユーノ!」

 

「わかってます!ケイジングサークル!」

 

緑色の光の輪が巨人の腹に現れる。それだけでなく足、首なども拘束した。

 

「よくやった!」

 

それを確認した俺は1度急上昇する。

 

そして炎の質を柔から剛へときりかえ、一気に急降下した。

 

肩にのっている相棒とユーノが必死にしがみついている。

 

悪い…少しだけ我慢してくれ。

 

俺はワードを唱える。

 

形態変化(カンビオフォルマ) 攻撃形態(モードアタッコ)

 

俺の右手の黒い籠手が再び黒いガントレットへと姿を変える。

 

そしてそのまま巨人の首元へと突貫する。

 

「これで終わりだ!剛炎の加速(ブレイズアクセル)!」

 

フレイムアクセルよりも密度の濃い炎の固まりを白い巨人の首元に叩きつけた。

 

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンン!!!!!!

 

 

 

直後、爆音が響き白い光が俺達を包むのだった。

 




文字数1万こえた(゜ロ゜)

では、また( ・∀・)ノ

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