続き書けたで候。
では、どうぞ∠( ゚д゚)/
第三者side
響達は予想外の展開に目を見開いていた。
「え、えぇー!?」
「あのヒエンさんがこうも一方的に……!?」
響は食べていたポップコーンを落とし、未来は口に手を当てて驚く。
「まさかあれ程の腕前の剣士が存在するとはな……」
二人の近くに座っている翼も呟く。
その頬には冷や汗が流れていた。
同じ剣士である翼にはカナの力量が嫌という程、分かるのだろう。
「先輩、あの女剣士……やっぱり相当強ぇのか?」
そんな翼の様子に気付いたのか、隣に座るクリスが質問してきた。
「ああ、少なくとも今の私では絶対に勝てんと言える程にはな。イグナイトで強化でもしなければ、あの秘剣には対抗出来ん」
「そこまでなのかよ……」
「あの大空でも完全にかわしきれんのだ。他の者なら秘剣を繰り出された時点でやられている」
翼の視線の先には、仰向けに倒れている少年の姿があった。
息が整ったのか、カウントギリギリで起き上がった。
(見せてもらうぞ、大空。ここで終わるお前ではあるまい)
試合が再開する。
第三者side end
◆◆◆
ヒエンside
俺は起き上がると、開始戦前に並ぶ。
試合の残り時間は約2分弱。
自身の切り札であるオーバードライブを使うことを決意したはいいものの、残り時間に些か不安が残る。
このラウンドは防御に徹し、様子見した方がいいかもしれない。
それに肝心の秘剣攻略と、超慧眼の対抗策もまだ何も思いついていないしな。
『試合再開です!!』
試合が再開されると、俺はフェイクシルエットを使用し、三十体の幻影を展開させる。
リング内に幾人もの俺が散らばっていく。
だが俺の予想が正しければ……
「残念、見えてるわ」
フェイクシルエットは、単体あるいは複数の幻影を発生させる高位幻術魔法であるが、肉眼や簡易センサー類では見抜けない精度を誇る。
しかし、気配を読む事に長けている者や、達人級の武人からしてみれば、幻影から本体を見破ることは容易いのだろう。
そしてカナはその二つ共に該当する。
「天瞳流抜刀居合……第七秘剣・
彼女は最短で、真っ直ぐ、一直線に本体の俺へと向かってくる。
そして俺は自身が突き刺される
直後、俺は加速魔法ブリッツアクションを使用し、回避を試みる。
「ぐっ!?」
ヒエン・オオゾラ
LP20000→18000
しかし、彼女の突きが脇腹に僅かに掠り、顔を
(さらに速くなっていやがる!?)
やはり秘剣を使われると、かわしきれない。
通常技との練度が違いすぎるのだ。
ならば……
「
俺は、俺を模した氷の人形を十体生み出す。
これらは壊されても再生して動くことが出来る。
しかも俺と同じ強さで設定しているため、自分で言うのもなんだが中々やられる事はない。
だが意志のある分身と違い、あくまでも人形であるため、単調な攻撃しか出来ないという弱点も同時に抱えている。
(でも時間稼ぎくらいなら、いくらでも出来る!!)
そして氷の人形達はカナへと一斉に攻めていく。
『おおっと!これは見たことのない魔法だ!!ヒエン選手の形をした氷の人形達がカナ選手へと攻撃を仕掛ける!!!』
本体の俺はというと、ミラージュハイドで姿を消して捕縛魔法を使用しながらカナを拘束しようと試みる。
「面白い魔法を使うわね!」
しかし、カナは楽しそうに笑うと、氷の人形達の攻撃や俺の繰り出すバインドを、軽やかにかわしていく。
ちなみに人形達が使う魔法も氷で再現されている。
姿を消しているとはいえ、俺一人であれば、超慧眼を持つカナはすぐに俺の気配を感じ取るだろう。
だが、これだけ場が入り乱れていれば、気配を読むのは困難を極める。
その間になんとしても秘剣攻略と超慧眼の対抗策を練らなくてはならない。
「はっ!」
カナが桜色の斬撃を幾度も放つ。
氷の人形達は斬撃を食らって身体が崩れるものの、すぐに再生していく。
そして攻撃を再開する。
カナは刀で斬り裂くが、氷の人形達は何度も再生する。
「埒が明かないわね。一か八か、試してみましょうか」
するとカナは刀を構えて技を放った。
「天瞳流抜刀居合……第四秘剣・
流れるように円を描きながら、淀みない動きで斬撃を繋げる波状攻撃が繰り出される。
氷の人形達全てを纏めて斬り刻む。
全身を砕かれた人形達は、氷の粒子となってキラキラと漂う。
「……なるほどね。この氷の人形は全身を砕けば再生しないのね。それと……」
(
俺はその粒子を操り、数多の氷の槍を造形してカナを攻撃する。
「粒子になっても氷は操れるのね……!!」
突如、虚空から現れた氷の槍にカナは一瞬不意を突かれるが、見事な体捌きでかわす。
しかし、
「……っ!」
カナ・モルフォン
LP40000→39000
その瞬間、俺は僅かに光明が見えた気がした。
俺は疑問を確信に変えるために、更なる物量で攻めることにする。
(ver
今度は氷の剣を造形する。
その数およそ百。
(いけ!)
声には出さず、心の中で念じながら魔法を操作する。
氷の剣群でリング内を覆い尽くすように放った。
カナはというと、刀を器用に操り、高速で氷の剣を斬り払っていく。
しかし、あまりの量故か、斬り払えなかった数本がかすった。
カナ・モルフォン
LP39000→38000→37000→36000
「ちょっとこれは……数が多すぎるわねっ!」
ほとんど時間差がないように放っているため、限られた空間内であるリングには、逃げ場所はほぼ存在しない。
必然的に防御か迎撃するかの二択を迫られるのだが、カナは迎撃一択であった。
しかも上手い具合に致命傷を避けており、かすり傷だけで済んでいる。
どうやら彼女は目が良いらしく、瞬時に当たる物だけを判断して斬り伏せているらしい。
さすがは居合剣士。
咄嗟の判断もお手の物である。
だが、さすがにカナと言えども圧倒的な物量の前では技を出す暇はないのだろう。
つまり、秘剣を封じるには技を出させなければいいのだ。
そして技を出す暇がないということは、現在カナ自身も身動きが取れないということ。
俺はその間に四分身を出し、遠距離からカナへと砲撃で攻撃する。
「さすがにそこまで対処する余裕はないわね……
《了!》
直後、カナはバリアを展開して砲撃を防ぐ。
カナ・モルフォン
LP36000→20000
しかし、ダメージはあるようでライフポイントは大きく減少していた。
かわしきれないと判断して、防御に切り替えたようだ。
「……ここ!第五秘剣・
続いてカナは刀の切先から、薄く鋭い桜色の魔力刃を伸ばすと、一瞬で分身達を斬り裂く。
「なっ!?」
俺は思わず驚き声を上げる。
(四人全員、同時に斬りやがった!?)
その刀を振るうスピードはまさに瞬速。
ついでに言うと、残っていた氷の剣群も真っ二つに斬られていた。
そして俺が僅かに見せた隙を、この女剣豪が見逃す筈がなかった。
「そこ!!」
カナは姿を消していた俺の居場所を特定したのか、先程と同じく瞬速の剣を横凪に振るってきた。
(まずっ!?)
それに対して俺も身体が反射的に動いていた。
いつものように、ブリッツアクションを発動させて緊張回避しようとする。
だがこのままでは今までと同じように、かわしきれずにダメージを受けるのは明白。
(ええい!斬られるよりはマシだ!!)
そこで俺はヤケクソ感丸出しで、もう一つ魔法を発動させた。
直後、ヒュンッと言う風切り音の後に、強烈な衝撃音が響く。
というか、俺がリング外の壁に激突した音だった。
「いってぇ……」
ヒエン・オオゾラ
LP18000→17500
しかし、
それでも俺はこの結果に満足していた。
なんせ偶然とはいえ、超慧眼の対抗策を見つけることが出来たのだから。
その証拠にカナは驚いていた。
「私の秘剣を……
俺があのとき発動させた魔法は、高速移動魔法ソニックムーブ。
ソニックムーブと、ブリッツアクションを
超慧眼の対抗策、それはカナの超慧眼をも超える超スピードで動くことであった。
次回は、三回戦決着。
では、また( `・∀・´)ノ