大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも|д゚)チラッ

続き書けたで候。

遅くなってすいません。

仕事忙しくてなかなか書く時間がとれなくてorz

vsアオ·セフィラ戦決着です。

では、どうぞ( ゚∀゚)o彡°


第三百四十話 続・エリートクラス三回戦

ヒエンside

 

 

 

「はぁああああ!!」

 

 

「くっ!?」

 

 

俺はアオ選手の小太刀の連撃を後ろに下がりながら必死にかわしていく。

 

当たりそうな物は篭手で捌くが、その分ライフポイントが僅かながらに減っていく。

 

 

ヒエン·オオゾラ

LP14000→13750→13500→13250→13000

 

 

『ヒエン選手!アオ選手の攻撃を必死に凌いでいますが、ライフポイントは少しずつ、そして確実に減っているぞおぉ!!』

 

 

このままではまずいと思った俺は、かわしながら地面から氷の壁を形成する。

 

俺と彼女の間に一枚の氷の壁が現れたことでアオ選手の猛攻が一時的に止む。

 

俺は即座に右手を前方へ向けて砲撃魔法ヒートバーナーを発動させる。

 

強力なオレンジの砲撃が氷の壁事飲み込むが……

 

 

「はぁ!」

 

 

「うおっ!?」

 

 

ショートジャンプで俺の背後へと飛んでかわしたのか、そのまま斬りかかられた。

 

なんとかしゃがんでかわしたものの、一時(いっとき)も休まることのない斬撃の嵐に防戦一方となる。

 

 

「天瞳流小太刀術……夜凪(よなぎ)!」

 

 

するとアオ選手の右手に持つ小太刀からさらに青い魔力刃が形成され、鋭い一閃が俺を襲う。

 

間合いを見誤った俺は、頬に攻撃が掠ってしまった。

 

 

ヒエン·オオゾラ

LP13000→12000

 

 

その影響か、僅かに姿勢を崩してしまう。

 

 

「今!夕凪(ゆうなぎ)!!」

 

 

「ちぃ!?」

 

 

そしてアオ選手の小太刀の双撃が襲ってきた。

 

俺は咄嗟にクロスガードで防ぐが、そのまま壁まで吹き飛び、リングアウトしてしまった。

 

 

ヒエン·オオゾラ

LP12000→7000

 

 

『ヒエン選手、リングアウトオォ!アオ選手の強力な魔力斬撃をガードするものの、思いのほか威力が強かったのかリング外まで吹き飛ばされてしまったああぁ!!』

 

 

「ごほっ……ごほっ……なんて威力だ……」

 

 

単純な威力ならシグナムの紫電一閃にも引けを取っていない。

 

あの技、確か夕凪と言ったか。

 

小太刀を同時に振るい交差させることで、攻撃力を飛躍的に高めているのだろう。

 

タイミングもバッチリであった。

 

さすが師範代。

 

15歳にして、刀の扱いは既に達人級だ。

 

俺はなんとか立ち上がり、リング内へと戻る。

 

試合の残り時間は約30秒であった。

 

 

「ヒエン!今はこのラウンドを乗り切ることだけ考えなさい!!」

 

 

セコンドのリニスからアドバイスが飛んでくる。

 

そうだな。

 

反撃するにしても残り30秒では心もとない。

 

なら次に繋げるために、今できる事をするしかない。

 

そこで俺は、アオ選手を観察することにした。

 

こうして相対することで、初めて分かることもある。

 

彼女の動きのクセや仕草、思考、戦闘パターン……なんでもいい。

 

反撃の糸口となる情報を少しでも掴み取れ。

 

俺は彼女に勝つ為に、彼女の事を知らなければならない。

 

すると俺の纏う空気が変わったのを察知したのか、彼女も表情を引き締める。

 

油断してくれていたら良かったのだが、そう上手い話はないか。

 

そして試合が再開される。

 

俺は再度フェイクシルエットを使い、幻影30体を呼び出す。

 

時間を稼ぐのにこれほど適した魔法もない。

 

俺は幻影の中に紛れながら後ろの方に待機しておく。

 

するとアオ選手はショートジャンプで小刻みに消えながら、技を放った。

 

 

「天瞳流小太刀術……朝凪(あさなぎ)!」

 

 

四方八方から青い斬撃が繰り出される。

 

この技は確かクロとの模擬戦で使っていたやつだ。

 

手数を重視しているからか、威力は抑え目であるが放たれる斬撃の数がえげつない。

 

俺は幻影を操作しつつ、斬撃をかわしていく。

 

 

『アオ選手、リング内を小刻みに移動しながら無数の斬撃を放っていく!対してヒエン選手、再びフェイクシルエットを使用するもどんどん幻影の数が減っているぞぉ!さてこの勝負どうなるのかあぁぁ!!』

 

 

そしてジッと観察する。

 

 

(ショートジャンプの射程距離は恐らく10m圏内。対人戦闘には、まさにおあつらえ向きの能力って訳か)

 

 

時間稼ぎに徹しつつ、分析していく。

 

 

(事前の情報通りタイムラグはほぼなし。能力発動に魔力は……少し使ってる?それにあれは多分、感覚でやってる)

 

 

攻撃をかわしながら思考する。

 

 

(彼女のショートジャンプを攻略するには、転移先を先読みして決定打を与えるか、転移してもかわしきれない一撃を与えるかの二択だな)

 

 

前者であれば、長期戦覚悟でアオ選手との近接戦闘に望みつつ、動きを先読みして強烈な一撃を叩き込まなければならない。

 

後者であれば、強力な砲撃ならノックアウトできるだろうが、それをするには少なからず溜めの時間が必要となるため、大きな隙を作らなければならない。

 

ぶっちゃけ、どちらも無理難題にも程がある。

 

それだけ彼女のショートジャンプの能力は脅威なのだ。

 

すると幻影の数はいつの間にか10体を切っていた。

 

それを見たアオ選手はさらに魔力を増大させて斬撃の威力を上げてきた。

 

 

「朝凪·改!」

 

 

とうとうかわしきれなくなった俺はラウンドシールドでガードする。

 

残っていた幻影は成すすべなく消滅した。

 

俺は額の炎の出力を上げて魔法を強化する。

 

 

『ここでアオ選手、斬撃のパワーを上げてきたあぁ!ヒエン選手はラウンドシールドを展開してひたすら耐える!第一ラウンド終了まであと10秒を切った!ヒエン選手耐えられるかあぁぁぁ!!』

 

 

「う、うぉおおおおお!」

 

 

声を上げて斬撃に耐える。

 

ここが耐え時だ。

 

そして俺にとって短いようで長い時間が過ぎ去り……

 

 

 

ブーッッッ!!!!!!

 

 

 

『第一ラウンド終了オォ!ヒエン選手なんとか耐え切ったあぁぁ!!次ラウンドでは巻き返せるのか!?それともアオ選手がこのまま押し切るのか!?注目です!!』

 

 

ようやく第一ラウンド終了を告げるブザーがなったのだった。

 

 

 

ヒエンside end.

 

◆◆◆

 

第三者side

 

 

 

なのははブザーが鳴るのを聞くと、息を静かにはく。

 

 

「はぁ〜」

 

 

(まだ第一ラウンドが終わっただけなのになんだかドッと疲れちゃった……)

 

 

「「「「「はぁ……」」」」」

 

 

すると後方からも一斉にため息のような物が聞こえた。

 

なのはが後ろを見れば、チームヒエン全員がよく似た感じになっていた。

 

つまりそれだけ皆が真剣に見ていたということである。

 

 

「相手の子、かなり強いわね」

 

 

「うん。あのヒエンさんが防戦一方だなんて……」

 

 

初代MHチームのほのかとなぎさが呟く。

 

 

「相手の能力、ショートジャンプだっけ?あんなにホイホイ消えられたら、攻撃当てるのもきついって」

 

 

「ええ。だからヒエンさんも開始直後に死角から攻撃したんでしょうけど……」

 

 

「相手もそれを読んでいたわね」

 

 

5GoGo!チームのりん、かれん、こまちも話す。

 

 

「そういえばせつなもワープできたよね?」

 

 

「え、ええ。私の場合、特に能力の制限とかはないわ。やろうと思えば宇宙や深海にもワープできるし」

 

 

「前に鏡の中と、異世界にもワープしたわよね?」

 

 

「街に落ちそうになってた豪華客船もワープさせてなかった?そういえば?」

 

 

「言ったでしょ?特に制限はないって。でもさすがに一日にそう何度も使えないわ。使えば使うほど体力を消耗するから」

 

 

フレプリの面々も話す。

 

だがなのは達はラブ達が何気なく話している内容にとても驚いていた。

 

というのも、せつなは瞬間移動の能力を持っている。

 

フレプリの物語の中では、転移できる距離に一切制限はなく、戦闘中に敵の背後に一瞬で回るような使い方はもちろん、鏡の中等の異空間、パラレルワールド間(プリキュア世界限定)を自由に行き来することも出来るのだ。

 

彼女の凄いところは、他者や物体を強制的に転移させることも可能であり、()()()は戦闘中に目の前の敵を遠い宇宙に強制転移させることも可能だということ。

 

実際劇中では、戦闘中にこの能力が使われたのは回避がほとんどで、他者や物体の強制転移についても、仲間とどこか遠くへ旅行するような移動手段としての使い方が基本であった。

 

プリキュアオールスターズNewstageでは、戦闘中に落ちてきた大きな船を強制転移させて町を守ったこともある。

 

ちなみに小説版フレッシュプリキュアでは、人の過去の記憶にすら飛べることが判明している。

 

ただし三分が限度で、それ以上はせつな自身と、相手の命に関わるらしい。

 

 

「私からしたらあのアオ選手の方が凄いわよ。何度も転移してるのに疲れてる様子が一切見られないんだから。もしかしたらだけど……あの子もその気になれば長距離転移できるんじゃないかしら?何かしらの制限とかはきっとあるでしょうけど」

 

 

せつなの言葉に一同はアオ·セフィラに目を向ける。

 

彼女はスポーツドリンクを飲んで喉を潤していた。

 

 

「少なくとも戦闘だけに限れば……私よりも能力は上よ、あの子」

 

 

せつなの言葉を皮切りに第二ラウンドが開始されようとしていた。

 

なのはは不安そうに対戦相手となっている少年を見る。

 

その目は微塵も諦めている様子は見られなかった。

 

 

(ヒエン君、頑張れ)

 

 

なのはは祈る。

 

少年が勝てますようにと。

 

 

 

第三者side end.

 

◆◆◆

 

ヒエンside

 

 

 

ようやく第一ラウンドが終了したので、リニス達の元へと戻り、用意された椅子へと座る。

 

すると疲れがドッと押し寄せてきた。

 

俺は少しでも体力を回復させるために額の炎の炎圧を最低限にする。

 

 

「はい、スポーツドリンク」

 

 

「サンキュ」

 

 

俺は美由希さんからスポーツドリンクを受け取ると、一気飲みする。

 

 

「ふぅ」

 

 

人心地ついた。

 

するとリニスが聞いてきた。

 

 

「実際に戦ってみてどうです?」

 

 

俺は答える。

 

 

「どうもなにもどう攻めればいいか全く分からん。ただ直接戦って肌で感じて分かったのは、ショートジャンプの射程距離は10m圏内だってことと、攻撃するのはよっぽどの隙がないと不可能だってことくらいか」

 

 

「でしょうね。でも策はあります」

 

 

「やっぱり例の作戦か?」

 

 

「もうそれしか手はありません」

 

 

「はぁ……やるしかないか」

 

 

するとここで高町兄妹が話しかけてきた。

 

 

「第一ラウンドは様子見に徹していたようだが、どうだ?ある程度はあの選手の動きにも慣れてきたんじゃないか?」

 

 

「まあ、最初に比べれば慣れてはきたけど……」

 

 

というか、数日前の高町兄妹との特訓を経てから超直感の精度が格段に上がっている気がする。

 

今日なんぞ一瞬先の未来(ビジョン)まで見え出したのだから。

 

 

「だったら大丈夫。あのときの特訓みたいにやっちいゃなよ」

 

 

「だけどこの作戦、ぶっ通しで魔力を使う羽目になるから時間との勝負になるんだけど……」

 

 

「でもその分、動きも段々洗練されていくでしょ?それで私達の動きも徐々に見切られるようになった訳だし」

 

 

「ある意味ゴリ押し戦法だよなぁ」

 

 

数日前の高町兄妹との特訓を思い返す。

 

あれ?

 

なぜだろう?

 

あまりの辛さに涙が出てきそうだよ。

 

するとここでリニスが俺を励ますように頭を撫でる。

 

 

「大丈夫。そんな不安にならなくても、昔に比べて貴方は格段に強くなっています。その証拠に超直感の精度も飛躍的に向上していますし、アオ選手の奇襲攻撃だってかわせたではありませんか。インターミドル特訓前の貴方なら確実に食らっていた一撃ですよ。だからもっと自信を持ちなさい」

 

 

「お、おう」

 

 

なぜかリニスに頭を撫でられると安心する自分がいる。

 

すると高町兄妹がニヤニヤしながらこちらを見ていた。

 

 

「リニス……もういいから頭を撫でるのはやめくれ」

 

 

恥ずかしくなった俺はリニスの手を強引にどける。

 

そろそろインターバルも終わる。

 

俺は立ち上がり、頬を叩いて気合を入れる。

 

そのときリニスと高町兄妹が声援をくれた。

 

 

「ヒエン!勝ってきなさい!!」

 

 

「お前の力を見せてやれ!!」

 

 

「ファイトだよ!!」

 

 

それに俺は大声で答える。

 

 

「おう!!」

 

 

ヒエン·オオゾラ

インターバル回復+8000

LP7000→15000

 

 

そして俺はリングへと再び足を踏み入れた。

 

さあ、勝利を掴みにいこうか。

 

 

 

________

______

____

 

 

 

『第ニラウンドゴングですっ!』

 

 

第二ラウンド開始直後、俺は額の炎の質を柔から剛へ切り替えて、アオ選手に向けて突貫する。

 

それを見たアオ選手が目を見開くが、すぐに冷静になり小太刀を振るう。

 

俺はグローブの炎の出力を微調整して、正面からの攻撃を彼女の後方へと飛ぶことでかわす。

 

その際に分身を俺の真上へと一体呼び寄せてから、炎の拳を振るった。

 

 

「また死角からの攻撃とは……ワンパターンにも程があります!!」

 

 

アオ選手は俺の拳を小太刀で受け止める。

 

が、真上を見て表情をギョッとさせる。

 

そこには彼女の頭に(かかと)落としをしようとしているもう一人の俺がいるのだから。

 

 

「くっ!?」

 

 

彼女はショートジャンプを使用し、分身の踵落としをかわす。

 

その際にリングが大きく陥没する。

 

炎を纏っているため破壊力があるのだ。

 

とても15歳の女の子にする攻撃ではないが、真剣勝負ということで大目にみてほしい。

 

俺はさらにもう一体分身を呼び出すと三人で攻撃する。

 

 

「これは……!?」

 

 

俺は彼女の動きを封じようと分身ニ体の間をすり抜けるようにチェーンバインドを展開させる。

 

その間にも分身ニ体は休まず攻め続ける。

 

そして俺はさらにもう一体の分身を呼び出し、四人で攻める。

 

 

「そういうことですか……!」

 

 

どうやら俺の意図に彼女も気付いたらしい。

 

 

「ひたすら攻めて私の動きを鈍らせ、動きが止まった所を仕留める算段ですか!!」

 

 

アオ選手は小太刀を振るう。

 

チェーンバインドが切断される。

 

さらに彼女は小太刀を振るう。

 

分身達は篭手で攻撃を受け止める。

 

そして俺は最後の四体目である分身を呼び出し、炎の拳で攻撃させた。

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

丁度分身四体の真上へと転移しており、攻撃を開始していた。

 

 

「天瞳流小太刀術……夜凪·改!」

 

 

二本の小太刀から魔力刃を伸ばし、二刀流で四体の分身を一刀両断する。

 

だが俺の狙いは他にあった。

 

分身四体は斬られた瞬間、爆発したのだ。

 

 

分身爆発(アバターバースト)

 

 

「爆発っ……!?」

 

 

分身の爆発に巻き込まれるアオ選手。

 

この日、初めて彼女にダメージを入れることに成功した。

 

 

アオ·セフィラ

LP15000→12000

 

 

俺はそのまま追撃をかけるように再びヒートバーナーを放つが、再度ショートジャンプを発動させたのかアオ選手はその場から消えていた。

 

そのとき全身に悪寒が走り、()()()未来(ビジョン)が見える。

 

後方から二本の突きを食らった俺がいた。

 

咄嗟に前に転がることで彼女の攻撃を回避する。

 

 

「これもかわしますか!……ですが逃しません!朝凪·飛沫(しぶき)!!」

 

 

しかし水飛沫(みずしぶき)を飛ばすかの如く、青い魔力弾が放たれ、俺はかわしきれずに食らってしまう。

 

 

「ぐぁ!?」

 

 

ヒエン·オオゾラ

LP15000→13800

 

 

俺はそのままうつ伏せに倒れる。

 

 

「天瞳流小太刀術……夕凪·改!」

 

 

続けてクロスに放たれた斬撃を俺は横に転がることで、なんとかかわす。

 

再度、分身四体を呼び出し攻めさせる。

 

 

「またですか……!?」

 

 

アオ選手は二刀流で攻めていく。

 

そして分身達とぶつかり合う。

 

さすがはアオ選手なのか一体ニ体と斬り捨てていく。

 

その度に分身が爆発するが、爆発範囲を覚えたのか転移してかわしていく。

 

しかしその都度、俺は分身を呼び出し、攻めさせる。

 

 

「くっ……しつこいです!」

 

 

三度、分身が全滅する。

 

しかし何度も呼び出し攻めさせる。

 

その度に俺の中にアオ選手との戦闘経験値が蓄積されていく。

 

実を言うとこれが()()()()()()()()()()()である。

 

数日前、俺は高町兄妹と、とある訓練を行った。

 

それが神速で常に攻撃をされながら対処する訓練だ。

 

このとき俺はリニスにあることを命じられていた。

 

それが()()()()()()()()()()()()だ。

 

リニスは俺の分身の経験値が本体の俺に蓄積されることを知っている。

 

つまりリニスは、分身がアオ選手と戦った経験をそのまま本体の俺に蓄積させていくことでアオ選手を強引に突破させようとしているのだ。

 

実際、俺は恭也君と美由希さんの二人の攻撃を常に分身に対処させることで()()()()()()()()()()()なっていった。

 

しかしこれには落とし穴もある。

 

やられていく分身を常に補充しなければならないので、魔力消費が倍近くになるのだ。

 

しかも分身自体、結構魔力を食うので早目に勝負を決めなければまずいことになる。

 

 

「いい加減鬱陶(うっとう)しいです!!」

 

 

すると四度、分身達がやられようとするが……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そう何度もやられると思うなよ。

 

本体の俺に戦闘経験値が蓄積されていくのなら、それと同時に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のも自明の理であろう。

 

その証拠に彼女の攻撃パターンも、なんとなくだが理解出来るようになってきた。

 

 

「チェーンバインド!」

 

 

俺はチェーンバインドを発動させて、アオ選手の四肢を拘束しようとする。

 

 

「なめないで下さい!」

 

 

しかしさすがは師範代なのか、鎖を斬りつつ、ショートジャンプを駆使して、分身達をまたしても一刀両断していく。

 

 

「元々こういった乱戦に対応するために小太刀を習得しているのです!私の精神をかき乱そうとしているのであれば……それは愚策としか言い様がありません!!」

 

 

俺は何も答えない。

 

そもそも俺の狙いは彼女の精神の揺さぶりではない。

 

しかし勘違いしているのなら、そのままにしておく。

 

わざわざ正す事もない。

 

俺はまた分身四体を生み出し、攻める。

 

だがもうそろそろ分身に魔力を回せる余裕がなくなってきた。

 

いい加減、ここで決めなければまずい。

 

 

『ここで決めるぞ!一斉攻撃だ!!』

 

 

俺は分身達に念話で指示を出すと、分身達は近接戦闘を繰り出す。

 

 

「夜凪·流流(りゅうりゅう)!」

 

 

しかしアオ選手も対抗する。

 

クルリと舞うように小太刀を振るい、四体の分身と互角の戦いを繰り広げていく。

 

 

『両者共になんという戦いだあぁぁ!?ヒエン選手は分身を駆使することでアオ選手をなんとか止めようとし、対してアオ選手もショートジャンプを駆使して得意の小太刀術で対抗することで互角の戦いを繰り広げているぅ!!しかし、アオ選手は段々息が上がってきているぞおぉぉぉ!!!!』

 

 

休まずにひたすら攻めている影響か、アオ選手に徐々に疲れが見え始める。

 

ここに来て光明が見えてきた。

 

動きを止める又は捕らえようと思っていたが、このまま動かせてスタミナを消耗させた方がよさそうだ。

 

俺は地面に手をつき、ファーストエディションを使用する。

 

 

「零地点突破·ファーストエディション……瞬間氷結(フリージングモーメント)!」

 

 

分身四体をフォローするように氷のトゲを展開する。

 

 

「くっ!?」

 

 

するとアオ選手は本体の俺に狙いを定めたのか、直接俺の真上へと転移してきた。

 

そのとき十字の形をした青い斬撃が放たれる未来(ビジョン)が見えた。

 

 

「夕凪·十文字!」

 

 

俺は咄嗟に蒼白の盾を形成する。

 

 

凍結の盾(フリーズシールド)!」

 

 

夕凪·十文字と凍結の盾が激突する。

 

その間に分身達はアオ選手に右手を向け、一斉に砲撃魔法ヒートバーナーを放った。

 

 

ヒエン·オオゾラ

LP13800→11500

 

 

俺は盾を形成する時間が僅かに遅かった影響か、余波でダメージを食らってしまう。

 

しかしアオ選手も分身達の砲撃をちょっと食らったのか、袴が少しだけ破れていた。

 

 

アオ·セフィラ

LP12000→10000

 

 

ライフポイントは僅かに俺がリードしているが、こんなものあってないようなものだ。

 

するとアオ選手が仕掛けてきた。

 

そのまま俺の前に転移してくると、素早い連撃で攻撃していく。

 

俺は両手にラウンドディフェンダーを展開させ、なんとか捌いていく。

 

篭手で受け流すと、僅かながらでもダメージを食らってしまうので苦肉の策だ。

 

その間に分身達が、彼女へと総攻撃を仕掛けるために近接戦闘を挑む。

 

そして彼女を囲むが、アオ選手は不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

「ふふっ」

 

 

(この状況で笑った?何か仕掛けてくる気か!?)

 

 

俺は警戒する。

 

すると彼女は楽しそうに話した。

 

 

「正直、今の私に体力はほとんど残ってません。ですから、そちらから近寄ってきてくれるなら好都合!これで一気に決めます!天瞳流小太刀術……夜凪·流転(るてん)!!」

 

 

直後、小太刀から展開している魔力刃が最大まで展開され、太刀のような大きさになるとアオ選手は一回転した。

 

俗にいう回転斬りである。

 

四人いた分身はあっという間に消滅した。

 

しかしそれと同時に彼らの戦闘経験値が俺の中に蓄積される。

 

それから分かったことは、彼女は乱戦の方が得意だということ。

 

つまり彼女は居合よりも小太刀の方が強い。

 

上等だ。

 

こちとら数日前に御神の剣士と嫌というほど特訓したのだ。

 

小太刀の相手には慣れている。

 

それにどちらにしろ俺の方も、もう魔力はほとんど残っていない。

 

次ラウンドを戦うのは厳しいだろう。

 

つまり彼女に勝つには、このラウンドで決めるしかない。

 

 

形態変化(カンビオフォルマ) 攻撃形態+(モードアタッコ·ピウ) 死炎の両手甲(ドゥミテーナ·ディ·ヒート)

 

 

覚悟を決めた俺は形態変化を用いて、両手の籠手(グローブ)手甲(ガントレット)へと変化させる。

 

完全近接戦闘用モードで、彼女を迎え撃つ。

 

 

「そろそろ決着をつけよう」

 

 

「望むところです」

 

 

そして俺達は互いに駆け出した。

 

 

「「勝負!!」」

 

 

俺は両手から炎を噴射して突貫し、それを見た彼女も小太刀を構えて迎え撃った。

 

 

大爆発の加速(ビッグバンアクセル)!」

 

 

「夕凪!」

 

 

俺の大爆発の加速(ビッグバンアクセル)と、彼女の夕凪が激突する。

 

 

 

ドゴォオオオオオン!!!!!!

 

 

 

爆発が起こり、両者共に少し後方へと吹き飛ぶ。

 

 

ヒエン·オオゾラ

LP11500→10000

 

 

アオ·セフィラ

LP10000→8500

 

 

が、今度は彼女が突っ込んできた。

 

 

「はぁ!」

 

 

「おらぁ!」

 

 

俺はアオ選手の小太刀に合わせるように剛炎の加速(ブレイズアクセル)をぶつける。

 

彼女は魔力刃を展開したままにしているため、そのまま手甲で受け止めると、こちらしかダメージを受けない。

 

よって俺はブレイズアクセルで相殺しながら、彼女との近接戦闘に挑んでいた。

 

しかしアオ選手もインファイター対策はバッチリなのか、なかなか決めきれずにいた。

 

するとアオ選手が予想外の手に打って出る。

 

なんと小太刀をこちらに投げつけてきたのだ。

 

不意をつかれた俺はかわしきれずに脇腹に攻撃を掠め、その激痛に思わず顔を(しか)める。

 

 

ヒエン·オオゾラ

LP10000→8000

 

 

そのとき前にいたアオ選手がいないことに気付く。

 

するとまたしても未来(ビジョン)が見える。

 

俺の後方に転移し、投げた小太刀を掴んだまま俺を斬りつけていたのだ。

 

俺は即座に前に転がるようにかわし、受け身を取りながら振り返る。

 

すると再びアオ選手が小太刀を投げつけてきた。

 

 

「うおっ!?」

 

 

首をひねってなんとかかわすが、無理な姿勢のためか、その隙をつかれ、後方に転移してきたアオ選手に、そのまま背中を斬られてしまった。

 

 

「ぐあああ!?」

 

 

ヒエン·オオゾラ

LP8000→3500

 

 

『ヒエン選手大ダメージ!?アオ選手のショートジャンプによる連続攻撃によってついに斬られてしまったあぁ!!』

 

 

「貴方に不意打ちが通用しないことは何度も戦って分かりました!だったら……見えていても食らってしまう攻撃を繰り出せばよいだけのこと!!」

 

 

そしてアオ選手は、膝をつく俺にトドメを差すため、()()()()斬りかかってきた。

 

 

「これでトドメです!夜凪·波紋突き!!」

 

 

その一撃に俺は……

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

灼熱の加速(バーニングアクセル)

 

 

「かはっ……」

 

 

アオ·セフィラ

LP8500→3000

 

 

アオ選手はそのまま吹き飛び、リングアウトした。

 

 

『アオ選手リングアウトォオオオ!なんという試合だああぁぁ!?これで決まるかと思ったあわや、ヒエン選手のカウンターが見事に決まったああぁぁ!!』

 

 

アオ選手は苦い表情をしながら起き上がる。

 

 

「な、なんて人ですか……斬られた直後にカウンターを合わせてくるなんて……」

 

 

その言葉に俺は息を整えながら答える。

 

 

「……君に一撃与えるためにはリスクを負わなきゃいけないと思っただけだ。君に攻撃を当てるのは並大抵のことじゃない。だったら……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「なるほど……まさに()()()()()()()()()()……という訳ですか。しかしまさか……そんなことを地で行う人がいるとは全く思いませんでした。相手に大きな一撃を与えるためとはいえ、自分自身が傷つくことも(いと)わないとは……なんという覚悟……」

 

 

すると彼女は表情を引き締める。

 

 

「だったら、尚更負けられません」

 

 

アオ選手はショートジャンプでリング内へ戻ってくると、こちらへ話しかけてくる。

 

 

「お互いもうギリギリですね……」

 

 

「そうだな……」

 

 

「貴方さえ良ければ……お互い自信のある一撃で決着をつけませんか?」

 

 

「真っ向勝負ってことか?」

 

 

「はい」

 

 

俺としては願ったり叶ったりだが。

 

少なくともその時だけは、ショートジャンプでかわされることはないのだから。

 

 

「望むところだ」 

 

 

彼女の提案に俺はOKを出す。

 

どうやら彼女は武人気質らしい。

 

全くもって男前だ。

 

最後の勝負ということで、俺達は準備を開始する。

 

ならあの技で迎え撃つしかない。

 

 

「武装換装……和弓海神(わきゅうわだつみ)

 

 

形態変化(カンビオフォルマ)

 

 

アオ選手は小太刀を弓へと換装し、俺は夕の炎の力を宿すピッツを手甲に憑依させる。

 

そして互いに最後の一撃のために力を溜める。

 

彼女は一筋の魔力矢を構え、俺は右手に最大までエネルギーを収束させる。

 

それだけでなく周囲の魔力の残滓をも取り込んでいく。

 

今の俺自身に攻撃に使える魔力はほとんど残っていない。

 

ならば周りから手繰り寄せるしかない。

 

 

「準備はできたようですね」

 

 

彼女の言葉に俺は頷く。

 

 

「それじゃ……いきますよ」

 

 

そして俺達は互いに最大技を繰り出した。

 

 

 

 

 

 

「天瞳流弓術……真·鳴り音!!」

 

 

 

 

 

 

太陽の加速(ソーラーアクセル)!!」

 

 

 

 

 

 

真·鳴り音と、ソーラーアクセルが激突する。

 

リング中央で螺旋回転した魔力矢と、太陽の球体がぶつかり合う影響で、巨大な爆発が起こる。

 

俺は額の炎を最大まで引き上げ、真っ直ぐ一直線に突っ込んでいく。

 

 

『2ラウンド残り時間わずかっ!両者最大攻撃の激突!!果たしてどちらに軍配が上がるのかあああぁぁっっっっ!!!!』

 

 

会場のボルテージも最大まで上がり、観客の歓声もさらに盛り上がる。

 

それと同時に魔力矢のキュイイイイと螺旋状に回転する音も聞こえる。

 

まるでドリル音だ。

 

 

 

「はぁああああ!!」

 

 

 

「おぉおおおお!!」

 

 

 

そして俺達はそのリングの中央でぶつかり合っていた。

 

威力は見事なまでに拮抗していた。

 

しかし互いにギリギリな状態であった。

 

俺は魔力が、アオ選手は体力が既に底を尽きかけているからだ。

 

ここからは意地と意地のぶつかり合い。

 

この意地を最後まで貫き通した者が、この試合の勝者となる。

 

本音を言えばオーバードライブでさらに強化したかったが、そんな魔力など欠片も残っていない。

 

 

 

「はぁああああああああ!!!!!!」

 

 

 

「おぉおおおおおおおお!!!!!!」

 

 

 

俺達は互いに雄叫びとも言える叫び声でぶつかり続ける。

 

ここまで来たら負けたくない。

 

絶対に勝ちたい。

 

そのとき……

 

 

「くっ……はぁ……はぁ……」

 

 

アオ選手が息を乱し始めたのだ。

 

数秒経つ毎に息の乱れはひどくなる。

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 

そして僅かに姿勢を崩した。

 

その隙を俺は見逃さなかった。

 

 

「今だ!!」

 

 

その瞬間、俺は身体から放たれる死ぬ気の炎のエネルギーを全て右手に集中させる。

 

一片のエネルギーの無駄もないように、全ての炎エネルギーを収束させる。

 

試合後に動けなくなったっていい!

 

後のことは後で考える!!

 

だから今だけは……

 

今この瞬間だけは……

 

 

 

 

 

 

「死ぬ気で競り勝つ!!!!」

 

 

 

 

 

 

するとソーラーアクセルが膨張し、エネルギーが増大する。

 

そして真·鳴り音を完全に飲み込んだ。

 

 

「ここまで……ですか……」

 

 

するとアオ選手はやり切ったような……全てを出し切ったような……清々しい表情をしていた。

 

 

「おりゃあああああ!!!!!!」

 

 

そしてアオ選手にソーラーアクセルが炸裂した。

 

彼女は壁まで吹き飛び、そのまま気絶してしまった。

 

 

アオ·セフィラ

LP3000→0

 

 

『試合終了〜!!激闘を制したのはヒエン選手!!KO勝利ですッ!!!!』

 

 

こうして俺はアオ選手との激闘を制した。




次回は、久しぶりのボンちゃん登場。

ボンちゃんの試合です。

オカマ拳法炸裂します。

では、また(`・ω・´)ゞ

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