大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも(゜▽゜*)

やっと続き書けたで候。

やたらと時間がかかってしまいました。

なんとか年内に投稿できたので、それで良しとしましょう(震え声。

シリアルとシリアスが若干、混じってます。

では、どうぞ( *・ω・)ノ


第三百二十二話 帰ってきてから……

第三者side

 

 

 

そこはプリキュア世界のとある異空間……

 

この異空間には、あらゆる闇の勢力から地球を守ってきた歴代のプリキュア達が住んでいる。

 

正確には死後、輪廻転生せず、自らの意志でこの異空間に残ることを決めたプリキュア達が、現世の生きとし生ける者を見守ることができるように、一万年前にある三人のプリキュアによって作られた高次元の空間である。

 

歴代プリキュア達の間では、この異空間はプリキュア界と呼ばれている。

 

プリキュア界は、組織化されている。

 

現世をさ迷う死者の魂をあの世へと導く死神部隊や、死者の魂が天国地獄行きどちらかを判断する閻魔部隊、邪悪な気を持つ悪人を浄化するための天使部隊など、その仕事は多岐に渡る。

 

簡単に言えば、あの世への入り口を兼ねている。

 

そしてその組織のトップを努めるキュアアンジェは現在、紅茶を飲んで一息ついていた。

 

 

「ふぅ、平和ですね……()()()

 

 

アンジェは金髪の髪をいじりながら、もの憂いげに呟く。

 

 

「まさか砂漠の使徒の壊滅後、あらゆる闇の勢力が裏で暗躍することになろうとは……」

 

 

約半年前のクリスマスの決戦で砂漠の使徒に無事勝利し、地球を守ったプリキュア達であったが、それは始まりに過ぎなかった。

 

砂漠の使徒が壊滅したのをきっかけに、あらゆる闇の勢力が秘密裏に暗躍し始めたのだ。

 

 

「皮肉なことに、砂漠の使徒がそれらの抑止力になっていたという訳ですか……」

 

 

砂漠の使徒は、様々な闇の勢力から危険視されていた。

 

それは圧倒的な強さを持つデューンの影響もあったのだろう。

 

ここ数百年は、どの勢力も()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 

「いえ、砂漠の使徒だけではありませんね。ドツクゾーンに、ダークフォール、ナイトメアにエターナル、ラビリンスといった複数の巨大組織も抑止力となっていた」

 

 

しかしそれらの組織は、数年前に全てプリキュアによって壊滅させられた。

 

それぞれ個々に狙っていたプリキュアに破れたのだ。

 

その際に地球は、何度か世界滅亡の危機に瀕した事も、勿論あった。

 

だからこそ砂漠の使徒が、ここぞとばかりに攻め込んできたのだが。

 

アンジェは紅茶を飲み終えると、空中モニターを展開させる。

 

そこには世界地図が映っており、赤い点のような印がついていた。

 

 

「……昔は数えるほどしかいなかったプリキュアも今では全世界にいるとは。確認できるだけでもアメリカとインド、フランスにスペイン、イギリス、ロシアときて、オーストラリアにイタリアの八ヶ国ですか。……まるでプリキュアのバーゲンセールですね。あの決戦以降、爆発的に増えましたからねぇ

 

 

アンジェは目を閉じる。

 

こころの大樹に接続して、世界中にいるプリキュア達のこころの花を介してその実力を測る。

 

 

「ふむ。さすがプリキュアというだけあって全員それなりに戦い慣れているようですね。中でも突出して強い子達というのは……スペインのマタドールプリキュアくらいでしょうか。……次は新たに増えた日本のプリキュアの様子でも見てみましょうか」

 

 

アンジェは集中する。

 

 

「最近新しく誕生したプリキュアは、スイートプリキュアに、スマイルプリキュア、ドキドキ!プリキュアに、ハピネスチャージプリキュアの四組ですか。……多いですね」

 

 

アンジェは指をパチンと鳴らす。

 

すると彼女の秘書がテレポートでやってくる。

 

黒いワンピースを着た小柄な眼鏡の少女だ。

 

 

「お呼びでしょうか?」

 

 

「日本に新しく誕生したプリキュアの資料と、最新の調査報告書の書類をここへ」

 

 

「少々お待ち下さい」

 

 

少女が消える。

 

数秒後、資料と書類を持って現れた。

 

 

「ありがとうございます。持ち場に戻って大丈夫ですよ」

 

 

「また何かあれば、お呼び下さい」

 

 

そして少女はアンジェの飲んでいた紅茶のティーカップを回収すると、再び消える。

 

それを見届けたアンジェは、資料に目を通し始めた。

 

 

「スイートプリキュアの敵対勢力がマイナーランド、スマイルプリキュアの敵対勢力がバットエンド王国、ドキドキ!プリキュアの敵対勢力がジコチュー、ハピネスチャージプリキュアの敵対勢力が幻影帝国。ううむ……幻影帝国以外、初めて聞く名前ばかりですね」

 

 

アンジェは溜め息をつく。

 

 

「しかしそれにしても最近、日本で暗躍してる闇の勢力、ちょっと多過ぎませんかね?いえ、理由はだいたい予想できますが……」

 

 

日本を活動拠点にしている闇の勢力は意外と多い。

 

それはなぜか?

 

日本のプリキュアは、世界で比べてもその実力はトップクラスであり、闇の勢力からも優先的に狙われているからだ。

 

これまで暗躍していた闇の勢力全てが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そのことから、闇の勢力の間では、日本を制圧することは一種の強さを証明する手段となっており、皆必要に狙っているのだ。

 

それだけではない。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことも要因の一つですか……」

 

 

アンジェは調査報告書の書類を読み進める。

 

書類の表紙にはこう書かれていた。

 

 

 

【魔導師ヒエンと闇の勢力についての詳細報告】と。

 

 

 

「やはりデューンとの直接対決で全世界に素顔を(さら)してしまったのはまずかったですね……。おかげでこうしてあらゆる闇の勢力からあの子が狙われる羽目になってしまった……」

 

 

プリキュアと砂漠の使徒のクリスマスの決戦に注目していたのは、何も世界中の人間だけではない。

 

闇の勢力達も注目していたのだ。

 

中でも特に注目されていたのが、プリキュアを率いて、自らも前線で戦っていた魔導師の少年である。

 

少年は、圧倒的な強さを持つデューンと互角に渡り合うだけでなく、策を用いることであのデューンを出し抜いた。

 

当然、闇の勢力の間では、少年の存在は相当に危険視されている。

 

プリキュアでないにも関わらず、浄化する術を持ち、多種多様な魔法で相手を翻弄、戦闘能力も高く、その上、頭も切れるとあって、件のプリキュアより優先的に狙われることも仕方がないと言えた。

 

その関係もあって、魔導師ヒエンは日本のプリキュア達の影のリーダー、総大将という位置付けになっていた。……本人のあずかり知らぬ所で。

 

 

「……それに巷では、プリキュアハンターなる者、ファントムも現れている様ですし。しかもその強さは、あのダークプリキュアをも凌駕する可能性があるとか」

 

 

空中モニターには赤い髪色のした男性が映っている。

 

 

「間違いなく、日本のプリキュアのリーダーと思われているヒエンも狙われるはず。あの子なら大丈夫だとは思いますが、用心するに越したことはありませんね。こちらの世界に安易に遊びに来ないように後で忠告しておきましょう」

 

 

アンジェは顎に手を当ててブツブツ呟く。

 

 

「あとは、妖精達にもファントムに気を付けるように、忠告しておきましょう。そうすれば、それぞれのパートナに伝わるでしょうし」

 

 

そしてアンジェは次々と仕事を片付けていく。

 

プリキュア界のトップということもあって、彼女も忙しいのだ。

 

 

「大変です!アンジェ様!!」

 

 

すると別の歴代プリキュアが現れる。

 

そのプリキュアは、少しウェーブの掛かった長いピンクの髪が足元まであり、コックコートをモチーフにした白いロングドレスに紫色の薄手のエプロンを羽織っている。

 

頭にはコック帽をモチーフにした白と紫の王冠を被っており、先端が泡立て器のようになっている長めの王笏(おうしゃく)を手にしており、背中には妖精の羽のようなものを生やしている。

 

彼女の名はルミエル。

 

プリキュア界の料理長を務めており、百年前にプリキュアとして戦っていた歴代プリキュアの一人だ。

 

ちなみに百年前は、彼女一人だけがプリキュアであったため、決められた名前などはない。

 

ルミエルは彼女の本名である。

 

妖精達の間では、『伝説のパティシエ』と語り継がれるほど有名な存在である。

 

 

「どうしたのですルミエル?そんなに慌てて……」

 

 

アンジェはルミエルに話しかける。

 

するとルミエルは慌てて言った。

 

 

「あの子が……ヒエン君がまたやらかしました!!」

 

 

実を言うと、歴代プリキュア達も少年の事情や、並行世界の秘密、その他もろもろ()()知っている。

 

それは事前にアンジェが、彼女達に理由を教えていたことが大きい。

 

アンジェは、少年が生まれる前から、その存在を知っていた。

 

だからこそ、ずっと見守っていた。

 

少年が何が好きで、何が苦手なのかも比較的分かっている。

 

基本的に少年は、不器用である。

 

物覚えは悪く、新しいことを始めたら、慣れるまでには、それなりに時間がかかる。

 

そんな不器用な少年のことを、歴代プリキュア達も、まるで出来の悪い弟又は息子、さらには甥っ子を見守るような感覚で見守っていた。

 

そもそもプリキュアになる人物は、大多数がお人好しで、温厚な者がほとんどである。

 

そんな者達が普段から事件や事故、トラブルに巻き込まれやすい少年のことを心配しないはずがない。

 

というか心配しすぎて、【ヒエンを見守り隊】なる物まで作り出す始末である。

 

特に生前、家庭を持っていた者達の力の入れ具合が尋常ではない。

 

少年のことを生まれた時から知っているため、その想いの強さも半端ではないのだ。

 

ちなみにルミエルもその一人である。

 

アンジェは呆れたように返す。

 

 

「あの子がやらかすなど……いつものことでしょうに。一体何があったのです?」

 

 

するとルミエルは大声で言った。

 

 

 

 

 

 

「それが、プリズムフラワーの力を使って、なのはちゃんの入浴現場に直接突撃したのです!!」

 

 

 

 

 

 

「ぶっ!?」

 

 

アンジェは思わず吹き出す。

 

 

「それも真っ正面から正々堂々!思わず見ていた私達も唖然とするほど!!」

 

 

「あの子は一体何をやっているのですか!?」

 

 

「それがマンションの屋上でくつろいでいると思ったら、急にオーロラを展開させて、()()()()()()()()()()()()()()()()ので……」

 

 

アンジェは直ぐ様、こころの大樹に接続し、少年の様子をモニターする。

 

そこには、黒焦げになってうつぶせに倒れている少年、顔を赤くさせてバスタオルで身体を隠しているなのは、あたふたしているイリヤ達、唖然としているカラフル猫達に、何事かと様子を見に来た高町家の面々がいた。

 

とりあえず、アンジェのすることは決まっていた。

 

現状把握である。

 

少年の記憶を読み取ると、原因はすぐに分かった。

 

別の並行世界からの帰り道に()()()なのはの所へと行ってしまったのだ。

 

 

(本当にこの子を見ていると退屈しませんね……)

 

 

「はぁ……」

 

 

アンジェは思わず溜め息をつく。

 

余談ではあるが、少年が桜を助けるために挑んだ間桐臓硯との戦いを見たとき、数千匹の虫が出てきたときは、ルミエルと二人揃って悲鳴をあげたのはご愛嬌である。

 

 

 

────────

──────

────

 

 

 

一方イリヤ達はというと……

 

虹色のオーロラをくぐった先に待っていたのは、ピンク色の光線であった。

 

 

「きゃあ!?」

 

 

「くっ!?」

 

 

「あっぶないわねぇ!?」

 

 

三人はかろうじてかわすことに成功する。

 

 

「なになに!?一体なんなの!?」

 

 

イリヤは慌てる。

 

そのとき……

 

 

「「ぎゃああああああ!?」」

 

 

「遠坂凛!?」

 

 

「お嬢様!?」

 

 

オーロラの向こう側から、凛とルヴィアの断末魔が聞こえてきた。

 

すると、オーロラはそのまま消えてしまった。

 

イリヤは呟く。

 

 

「あ、あぁー……凛さんと、ルヴィアさん……大丈夫かなぁ」

 

 

《あの二人なら大丈夫です。次出てくる時には、ピンピンしているでしょうし。まあ、次いつ出てくるかなんて、現時点では全く分からないんですけど~》

 

 

「ここでメタい発言はやめてー!?」

 

 

ルビーのメタ発言にイリヤがすかさず突っ込む。

 

と、そこに……

 

 

「イリヤさん……?」

 

 

「ほぇ?」

 

 

名前を呼ばれたイリヤが振り向くと、そこにはタオルで身体を隠しながら唖然とこちらを見るなのはと、黒焦げになってうつ伏せに倒れている少年の姿があった。

 

その状況を見て、イリヤは全てを察した。

 

 

「……なんかこの光景デジャブを感じる」

 

 

《これって私とイリヤさんが初めて会った時のシチュエーションと似ていますねぇ。やっぱり魔法少女とお風呂は切っても切れぬ関係なんですね!!》

 

 

「あのときのことは忘れてぇ!!」

 

 

イリヤとルビーのやり取りに、クロが呆れて物を言う。

 

 

「ほら、いつまでも漫才してないでこの状況どうにかしたら~?なんだか騒がしくなってきたみたいだし」

 

 

と、ドタドタという音が聞こえてくる。

 

誰かがここへ近付いているようだ。

 

その頃、美遊はというと、一人冷静に行動していた。

 

脱衣場からバスタオルを一枚取ると、なのはへと渡す。

 

 

「早くこれで身体を拭いて。いつまでもそんな格好でいると、風邪を引いてしまう」

 

 

《今はとりあえず拭くことを推奨します》

 

 

「あ、ありがとうございます、ミユさん、サファイアさん」

 

 

なのははバスタオルを受け取ると、身体を拭き、巻いていく。

 

すると声が聞こえてきた。

 

 

「「なのは大丈夫(か)!?」」

 

 

「さっき、爆発音が聞こえたぞ!?」

 

 

一同が目を向けると、なのはの姉:美由希と、兄:恭也、父:士郎が焦ったようにやってきた。

 

 

「あ、お兄ちゃん、お姉ちゃん、お父さんも……」

 

 

そして遅れて母:桃子がやって来る。

 

 

「あらあら、これは一体どういう状況なのかしら?」

 

 

「お母さんまで……」

 

 

とりあえず美遊とクロは、イリヤへと視線を向ける。

 

その視線には『なんとかしろ』という意味合いが含まれていた。

 

そして追い詰められたイリヤがしたことは……

 

 

「お、お邪魔してます……」

 

 

頭を下げて挨拶することだった。

 

 

「「「「ニャー…………」」」」

 

 

一部始終を見ていたカラフル猫達は、とりあえず様子見に徹していた。

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 

 

一先ず状況把握が先決と判断した高町家の大黒柱である高町士郎は、なのはに先に着替えさせてから、イリヤ達を連れてリビングへとやってきた。

 

ちなみに気絶する少年は恭也が運んできた。

 

互いに簡単に自己紹介を済ませた後、イリヤが緊張しながら、このような状況に陥った原因を説明する。

 

 

「……つまり君達は、この世界に来たときになのはの入浴現場に遭遇した……と。そういう訳なんだね?」

 

 

「ええと……はい」

 

 

イリヤは萎縮しながら頷く。

 

その説明に恭也と美由希は、ソファーで眠る少年に呆れた視線を向ける。

 

 

「それにしてもこいつは……」

 

 

「相変わらずやらかすねぇ……」

 

 

なのはは両手で顔を覆いながら呟く。

 

 

「うぅ~……裸見られた。もうお嫁にいけない」

 

 

そんななのはを見ながら、桃子は笑顔で言う。

 

 

「安心しなさい、なのは。万が一のときは、ヒエン君に責任を取ってもらえばいいのよ~」

 

 

イリヤはそんな桃子を見ながら思う。

 

 

(なのはちゃんのお母さん……うちのママとどこか似てる!?主に絶対に逆らえなさそうな所とか!?)

 

 

自身の母であるアイリと、なのはの母である桃子の絶対的に逆らえない何かに戦慄していた。

 

中々にカオスな空間である。

 

と、ここで美遊が発言する。

 

 

「その、ヒエンさんに悪気があった訳ではないと思うんです。それに、ヒエンさんが助けに来てくれなかったら今頃私達は……」

 

 

「色々ヤバかったものねぇ」

 

 

高町家に説明するときにバゼットと戦っていたことも簡単に話した。

 

勿論、詳細は省いて。

 

すると美由希が発言する。

 

 

「ああ、大丈夫だよ。別に疑ってる訳じゃないから。ただ、不思議なこともあるもんだなと思って。あと、()()()()()()()()()()()()

 

 

美由希は()()()()()()()()()()()

 

それを見た恭也が()()()()()()()()()()

 

 

()()()()()()()?」

 

 

「「「「っ!?」」」」

 

 

「「えぇっ!?」」

 

 

恭也の言葉にカラフル猫四匹と、なのは&イリヤが驚愕する。

 

 

「その反応からして、やはり君達には何かあるようだな」

 

 

恭也が説明する。

 

 

「どうして分かったか説明すると、君達は猫にしては()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

美由希も説明に加わる。

 

 

「それと、そこで気絶しているヒエン君が以前、黒猫になってたことがあってね?私達、それで()()()()()()()()()()()()()()()()()()っていうのもあるの」

 

 

イリヤは思った。

 

 

(さ、さすがなのはちゃんのお兄さんとお姉さん!この時点でもう既に規格外だよ!?)

 

 

《それにこの方々、相当強いですよ?今のイリヤさんでは確実に瞬殺されます。クロさんとも恐らく、良い勝負出来るんじゃないですか?》

 

 

(心の中にまで話しかけてこないでよルビー……ってこの人達そんなに強いのおぉ!?)

 

 

イリヤが高町兄妹の戦闘力の高さに戦慄していると、カラフル猫達が突如発光した。

 

一同が眩しさに目を瞑る。

 

そして再び目を開けると、そこには四人の少女が立っていた。

 

一同はその四人を見ると目を見開く。

 

見覚えがあったからだ。

 

主に少年のやらかし関係で。

 

少女達は変身を解くと、リーダーと思わしき赤髪のツーサイドテールの少女が話し始めた。

 

 

「えっと、皆さん、こんな形で挨拶申し訳ありません。私はハートキャッチプリキュアのキュアブロッサムこと、花咲つぼみと申します。ヒエンさんには大変お世話になりまして……その、ヒエンさんを驚かしたくて私達、猫になってました……」

 

 

簡単な自己紹介を済ませた後、つぼみは説明する。

 

インターミドルの応援に並行世界からやってきたこと、その際に猫になって驚かそうと思っていたこと。

 

しかし少年がイリヤ達を助けるために別の並行世界に飛んでしまったため、皆に正体を話す暇がなかったので様子を見ていたことを話した。

 

 

「なるほど。それでずっと猫の姿に……」

 

 

恭也が納得する。

 

すると美由希が士郎へ話す。

 

 

「とりあえずどうしようかお父さん?ヒエン君気絶してるし、このまま放っとく訳にもいかないと思うけど」

 

 

「そうだな。とりあえずリニスさんに連絡してウチに来てもらおうか」

 

 

「分かった。それじゃ、私、電話してくるね」

 

 

「頼んだ」

 

 

美由希はリニスに連絡するために電話機へ向かった。

 

続いて桃子が発言する。

 

 

「それじゃ、リニスさんが来るまで、つぼみちゃん達とイリヤちゃん達にお茶をご馳走しないと。丁度新作のケーキが幾つかあったのよ~」

 

 

「手伝うよ、母さん」

 

 

「私も手伝う!」

 

 

桃子はそのまま台所へお茶の準備に向かい、それを手伝うために恭也となのはも後をついていった。

 

高町家の周囲では(主に少年関係で)一騒動起こるので、突発的な出来事にもすっかり慣れているのである。

 

トントン拍子で話が進んでいくので、唖然とする彼女達に士郎は笑顔で話しかける。

 

 

「まあ、こうして知り合ったのも何かの縁だし、皆、ゆっくりしていきなさい。ヒエン君のその世界での様子もどうだったか、正直気になるしね」

 

 

一同は頷くことしかできなかった。

 

その後、連絡を受けたリニスが高町家へとやってくると、士郎から説明を受けたとき、深々と頭を下げた。

 

後をついてきた冷火と、テスタロッサ姉妹も説明を聞いて唖然としていた。

 

そして元凶である少年がなかなか目覚めないので、人数の都合上、イリヤ達は高町家で、つぼみ達は少年のマンションで泊まることになったのだった。

 

余談ではあるが、こちらの世界にやって来る前の時間帯は昼頃であったため、イリヤ達は全く眠くならなかったので、久し振りに会ったなのはと夜遅くまでガールズトークをすることになる。

 

その際にすっかり夜更かししてしまい、朝になってから眠ることになってしまったのは言うまでもない。

 

そしてつぼみ達も冷火やテスタロッサ姉妹と同じように話し込んでしまい、夜更かししてしまうのだった。

 

 

 

第三者side end

 

◆◆◆

 

ヒエンside

 

 

 

目を覚ますと、ソファーで寝かされていた。

 

周りを見回すと、高町家のリビングであった。

 

するとジュージューと何かを焼く音が聞こえてくる。

 

これは多分、目玉焼きかな?

 

俺はかけてあったタオルケットをどけると起き上がる。

 

 

「あら?おはようヒエン君。身体は大丈夫?」

 

 

するとエプロン姿の桃子さんが声をかけてくる。

 

俺は直ぐ様、返事をする。

 

 

「おはようございます桃子さん。身体は大丈夫……です」

 

 

そしてそのとき、何が起こったのかを思い出した。

 

あぁー、なのはには悪いことしたな。

 

謝らないと。

 

 

「あの、なのはは?」

 

 

「なのはなら、まだ寝てるんじゃないかしら?昨日はイリヤちゃん達と夜遅くまで話してたみたいだから」

 

 

「あ、そういえばイリヤ達もいたんだった……」

 

 

「もう少しで朝ごはんできるから、なのはとイリヤちゃん達起こしてきてくれる?皆、なのはの部屋で眠ってるから」

 

 

「分かりました」

 

 

俺はリビングを出て階段を上がり、なのはの部屋へと向かう。

 

そして部屋の前についたので、ドアを開けると……

 

 

「おーい、皆、朝ごはん……」

 

 

「んあっ……んちゅっ……」

 

 

「んふぅ……むちゅ……あの、クロエさん……私達、女の子同士……んんっ!?」

 

 

「はむっ……れろっ……んちゅ……ぷはぁ……いいじゃない。別に減るもんじゃないし……それに貴女も何だかんだ言いながら、嫌がってないじゃない?」

 

 

「はぁ……はぁ……だからってこういうのは……んんんっ!?」

 

 

「お邪魔しました」

 

 

 

バタン

 

 

 

なあにこれぇ?

 

なんかなのはがクロに迫られてたんですけど……

 

なんか二人とも滅茶苦茶ディープキスしてたんですけど……

 

すると俺は思い出す。

 

確かプリヤの原作では、クロは元々イリヤと一つの存在だったはずだ。

 

クロは、聖杯戦争のために必要となるはずだった()()()()()()の、魔導機として調整された記憶と、知識により形成された別人格である。

 

恐らく、stay nightでの人格が元々のクロだと思われる。

 

クロは、アイリさんによってその人格を封印されていたが、クラスカード・アーチャーを実体化の核とすることによって、意志と体を取り戻すに至る。

 

その後は、自らの立場を得るためにイリヤの命を狙っていたのだが、紆余曲折あって、最終的には従妹として家族となるのだ。

 

クロは作中で、【存在していることが奇跡みたいな状態】と言われており、魔力を常に消費しながら活動しており、魔力が切れると消滅の危機を迎える。

 

そのためにキスなどで他人の体液を摂取することで、魔力を収集せざるを得ない状態にあり、イリヤから供給された場合、他の一般人の10倍の効果があるらしい。

 

つまりこちらの世界で言うリニスや、アルフのような存在なのだ。

 

なのはにキスをしていたのは、バゼットとの戦いで消費した魔力を、彼女から直接摂取していたのだろう。

 

ディープキスなのは、クロの趣味だろうが。

 

 

(ここは一肌脱いでやるか)

 

 

まあ、要は魔力が減らないようすればいいのだ。

 

デバイスを用意してやれば、クロの問題も解消するはずだ。

 

 

(ルビーとサファイアだから……エメラルドだな)

 

 

某モンスターゲームのタイトルにならって名付ける。

 

ルビーが五芒星、サファイアが六芒星なのでエメラルドは七芒星でいこうか。

 

クロは元々、サーヴァント並の戦闘力を有しているのでvividに登場するクリスやティオのような補助制御型のデバイスがいいだろう。

 

 

(そうと決まれば……この後、あの人に相談してみるか)

 

 

デバイス作製したいって言ってたし、丁度良い機会だ。

 

 

「と、そうだ。こんなところで考え事してる場合じゃない。皆、起こさないと」

 

 

そして俺は再び部屋に突撃する。

 

 

「くちゅ……むちゅ……うちゅ……ちゅううううううぅぅ」

 

 

「んんんっ!んんんぅぅぅっ!!??」

 

 

クロがなのはにさらに激しいディープキスをしていた。

 

なのはは少し涙目になっており、抵抗しようとしていたが、クロの方が腕力は圧倒的に上なのか、両手を押さえられていた。

 

チュッチュッと扇情的な音が聞こえてくる。

 

つーか、やたらと大人なキスしてやがる。

 

というかこれ以上は、なのはが持ちそうにないのでそろそろ止める。

 

 

「やめんか」

 

 

俺はクロの頭にチョップを入れる。

 

 

「きゃん」

 

 

「何、朝からR-15みたいなことやってんだ」

 

 

「あら?ヒエンじゃない」

 

 

「全く……ほら、なのはを離してやれ」

 

 

「ヒエン君……はぁ……はぁ……ありがとう……はぁ……はぁ」

 

 

なのはは息を乱しながらベッドに仰向けに倒れる。

 

クロとのディープキスで相当に体力を消耗したのか、顔も火照っている。

 

不覚にも僅か十歳の少女にドキッとしてしまった。

 

 

「っは!いかんいかん」

 

 

俺は首をブンブンと振り、意識を切り替えると、布団で眠っているイリヤと美遊を起こしにかかる。

 

どうやらベッドでなのはとクロが眠り、布団でイリヤと美遊が寝ていたようだ。

 

 

「ほら、二人とも朝だぞ~」

 

 

するとイリヤがムクリと起き上がる。

 

 

「うみゅ?」

 

 

「おはようイリヤ」

 

 

しかし寝ぼけているのか、俺の顔に両腕を伸ばしてくる。

 

この展開……前にもあったな。

 

 

「秘技、ミユガード」

 

 

俺は咄嗟に眠っている美遊を盾にする。

 

するとイリヤが美遊の唇にキスをした。

 

 

「おはようの……チュー……」

 

 

「ん?んんっ!?」

 

 

タイミングよく美遊が目覚め、顔を真っ赤にさせる。

 

なんかこいつら朝からキスばっかりしてやがるな。

 

 

「ん?……ほ、ほびゃあああああ!?」

 

 

イリヤの悲鳴が高町家に木霊する。

 

少し高町家が揺れた気がする。

 

 

「はぁ……とにかく朝ごはんできてるから皆、降りてこいよ。あとクロ、なのはにあまり刺激的なことは控えてくれ。この子、そういうのにあまり慣れてないんだ」

 

 

するとクロは拗ねたように返す。

 

 

「ちょっとしたご挨拶じゃない。欧米じゃ、こんなの当たり前よ?」

 

 

「欧米でも朝から女の子同士で、しかもあんな激しいディープキスなんてしねぇよ。あとここは日本だ。というか魔力が欲しかったらそう言え」

 

 

俺はクロの頭に手を置くと、魔力を分ける魔法、ディバイドエナジーを発動させる。

 

すると途端にクロが身体を抑える。

 

 

「え……な、なにこれ……ひゃん!?ヒ、ヒエンの温かくて熱いものが私の中に入って……ひゃ……や、やめて……くすぐったい」

 

 

「おいやめろ。そのリアクションと表現を今すぐやめろ。俺が社会的に死ぬから。ってか、そこまで大袈裟な事でもないだろ?ただ魔力を送ってるだけなのに。というか、こんな場面誰かに見られたら色々誤解され……」

 

 

 

 

 

 

「なにをやっている……」

 

 

 

 

 

 

ゾワリ……

 

 

 

 

 

 

そのとき全身を鋭い殺気で浴びせられる。

 

俺は首をギギギギッッと、ゆっくり振り向く。

 

するとそこには阿修羅がいた。

 

より詳細に言えば、小太刀を構えた恭也君(シスコン)がいた。

 

 

「母さんからなのはを起こしにいったヒエンを呼びにいってほしいと言われて来てみれば……これは一体どういうことだ、ヒエン?」

 

 

恭也君は厳しい顔で部屋を見回す。

 

俺も釣られて部屋を見回す。

 

ベッドの上ではなのはが顔を火照らせながら、仰向けに寝ている……息を乱しながら。

 

ベッドの下では、クロが身体を抑えながら俺を見上げる……顔を真っ赤にしながら。

 

布団の上では、イリヤと美遊がそれぞれ枕を持ちながら涙目でこちらを見ている……上目遣いで。

 

以上のことから俺は状況を即決で判断した。

 

 

(とんでもない誤解のパターンだこれ……)

 

 

恭也君の目には、恐らく俺が、四人のいたいけな少女に手を出した変態の構図に映っていることだろう。

 

だが誤解だ。

 

全て誤解だ。

 

 

「待て、落ち着け恭也君。君はとんでもない誤解をしている」

 

 

「ほう?何が誤解なんだ??」

 

 

俺は恭也君を刺激しないように話しかける。

 

その際に、俺はなぜか身体が勝手にセットアップしつつ、死ぬ気モードにもなっていたが。

 

どうやら俺の本能は、戦闘態勢に移行していたらしい。

 

つまりそれだけ……

 

 

(今の恭也君は危険だということ……!!)

 

 

早く彼を説得しなければまずい。

 

時間をかければかけるほど、こちらが不利になっていく。

 

この騒ぎを聞き付けてやってくるのは一人だけじゃない。

 

 

「うん?なのはの部屋の前でなにやってるんだ恭也?……これは一体どういうことかなヒエン君??」

 

 

ほら!

 

言ったそばからああああぁぁぁ!!!!

 

 

(まさか朝っぱらから、全力のシスコンと親馬鹿の相手をせねばならないとは……)

 

 

二人がゆっくりと近付いてくる。

 

士郎さんの手にもいつの間にか、小太刀があった。

 

っていうかなんで二人とも小太刀なんて持ってるんだ?

 

 

「……今からちゃんと説明するので、ジリジリと近付いてくるのをやめてもらえませんか?」

 

 

「それは……」

 

 

「君次第だね」

 

 

俺は咄嗟にリングバインドで二人の四肢を拘束する。

 

 

「……これはどういうつもりだい?」

 

 

「……やはり何かやましいことがあるのか?」

 

 

「この状況で俺が言えた義理じゃありませんが、少し頭を冷やしたらどうです?今のお二人はどう見ても冷静じゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

焦ってて気付かなかったが、冷静に考えればそうだ。

 

なぜ小太刀をちらつかせる?

 

抜いてはいないが、まるで脅しの道具だ。

 

これではまるで俺が犯罪者の扱いのようではないか。

 

 

「普段のお二人なら冷静に俺の話を聞いてくれるでしょう?なぜ小太刀をちらつかせるんです?それじゃまるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()みたいじゃないですか」

 

 

「「…………」」

 

 

すると恭也君と、士郎さんは立ち止まり黙る。

 

そこにようやく息が整ったのか、なのはが二人に言った。

 

 

「お父さん、お兄ちゃんも……二人ともなんだか怖いよ?」

 

 

なのはは続ける。

 

 

「ヒエン君は私達をただ起こしに来てくれただけだよ?朝から騒がしかったのは、ちょっと私達四人だけでやんちゃしちゃったから」

 

 

なのはがクロに視線を向ける。

 

クロも少しは申し訳ないと思っているのか、多少いじけながら話す。

 

 

「なのはの言う通りよ。ヒエンは私達に何もしてないわ。少し私達が騒がしくしちゃっただけ……」

 

 

イリヤと美遊も続く。

 

 

「う、うん!ヒエンさんはただ私達を起こしに来てくれただけです!!」

 

 

「はい。そのときに私達が騒がしくしちゃったんです。だからお騒がせしてしまって……申し訳ありませんでした」

 

 

美遊が頭を下げる。

 

それを見たイリヤとクロ、なのはも頭を下げた。

 

すると二人はやっと冷静になったのか、気まずい顔をしていた。

 

 

「……すまない。少し考えれば分かることだったね」

 

 

「こちらも申し訳なかった。なのはが何かされたんじゃないかと、気が気でなくてな……」

 

 

クロは自覚があるのか、気まずそうに視線を逸らした。

 

 

「ヒエン君、色々すまなかった。俺は君のことを疑ってしまった」

 

 

「すまなかった……」

 

 

「……別に気にしてませんから、もう顔を上げてください」

 

 

俺はバインドを解除する。

 

二人はそのまま少し風に当たってくるといって、外へと出ていった。

 

 

「は、はあああぁぁぁ……」

 

 

それを見送った俺は息をはきながら座り込む。

 

その際に死ぬ気モードと、セットアップも解除される。

 

すると気を抜いたからか、ドッと冷や汗が出てきた。

 

 

「こ、怖かった……」

 

 

《いや~凄い迫力でしたねぇ》

 

 

《あの気迫、お父様もただ者ではありませんね》

 

 

するとルビーとサファイアは隠れていたのか、今頃出てきやがった。

 

 

「お前ら、様子見てたなら一緒に説明してくれても良かっただろうに」

 

 

《いえ、私達が出てしまっては余計にややこしくなってたと思いますよ~?》

 

 

《姉さんと同意見です。ここは私達ではなく、ミユ様達が発言された方が、解決すると判断致しました》

 

 

「さいで」

 

 

なんだか朝っぱらから疲れた。

 

そして少し気まずい朝ごはんをいただいた後に、俺は一旦、自宅へと戻った。

 

 

 

────────

──────

────

 

 

 

自宅へと戻ると、つぼみ達とリニス達が話していたのでそこで俺も加わることに。

 

どうやらプリキュア世界での俺の様子を聞いていたらしく、リニスから色々小言を言われた。

 

いつになるか分からないが、また遊びに行くときに、リニスが俺がお世話になった人々に挨拶に行くと言い出したので、リニス同伴で俺も行くことになったのだった。

 

それからしばらく数日間、つぼみ達とイリヤ達は海鳴市を観光しながら過ごしていた。

 

そして俺も学校が本格的に夏休みに入ったので、インターミドル中は一時的に、住居を地球の海鳴市からミッドチルダへと移すことになった。

 

一々、地球からミッドチルダで転送装置で行っては手続きの時間がかかる上に、面倒だからだ。

 

約一月半、高級ホテルの部屋を五つ予約した。

 

五部屋も取ったのは、並行世界の皆の分だ。

 

足りないときは追加でまた部屋を取る予定である。

 

それだけお金が有り余ってるのだ(ドヤ顔。

 

広域次元犯罪者のミラーを捕まえてからは特に。

 

まあ、そんなことはさておき……

 

遂にインターミドルの地区予選、地区選考会が幕を開けることになる。

 




キスシーンの効果音って難しいですね。

まあ、プリヤで百合シーンなんぞいくらでもあるし、問題ない問題ない(ヾノ・ω・`)

あ、あと言っとくと、クロの餌食にフェイト、はやて、アリシア、アリサ、すずか、ギンガの六人も入ります(無慈悲。

ティアナとスバルはまだ幼いので彼女のストライクゾーンには入ってません。

ハートキャッチ勢もシンフォギア勢も彼女より年上が多いので、餌食にならんとです。

そしていよいよ、地区選考会だー。

いやーここまで長かった……ホントウニナガカッタ。

では、また(・∀・)ノ

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