大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも(゜▽゜*)

続き書けたで候。

では、どうぞ( *・ω・)ノ


第三百十七話 ちょっとプリズマ☆イリヤ 2wei(ツヴァイ)!⑧

ヒエンside

 

 

 

とりあえずあれから軽く談笑した後、解散する流れとなった。

 

だが俺としては、気がかりなことが一つだけあった。

 

それは桜さんのことである。

 

彼女の髪の毛は紫色に変化している。

 

ということは、必然的に間桐(まとう)の魔術に関わっていることになる。

 

そして俺の気のせいでなければ、彼女の身体から邪悪な気配がするのだ。

 

恐らくstay nightと同じ刻印蟲(こくいんちゅう)が身体の中にいるのだろう。

 

念のために相棒に俺の視線を通して、彼女の身体をスキャンしてもらうと案の定、心臓部分に蟲のような物がいることが判明した。

 

この心臓部分にいる蟲が間桐臓硯の本体であろう。

 

それだけでなく、彼女の身体の至るところに小さな蟲らしき反応があったのだ。

 

唯一、不幸中の幸いなことは、この世界では第四次聖杯戦争はなかったため、彼女の身体に聖杯のカケラは埋め込まれていない。

 

よって桜ルートのようにアンリマユが実体化することもないし、マキリの黒い聖杯になることもない。

 

ただこのまま放っておけば、近い将来彼女が不幸になることは間違いない。

 

彼女とは今日知り合ったばかりだが、話してみて分かった。

 

彼女はただの普通の優しい女の子だ。

 

大切な俺の友人だ。

 

なら、俺のやることはもう決まっていた。

 

 

 

間桐臓硯をぶっ潰す。

 

 

 

彼女の不幸の元凶を取り除く。

 

それだけだ。

 

そうと決まれば、動き出すのは早い方がいい。

 

ただ相手は500年以上も生きている正真正銘の化け物だ。

 

まずは相手の情報を知ることが先決だ。

 

いくら原作知識があるといえど、ここはプリヤ主体の世界である。

 

俺の持つ知識と、実際の情報にどれだけ差異があるのか、まずはそれを確かめなければならない。

 

幸いこの伽藍の洞には情報収集に長けた人物に、死を視覚情報として捉える魔眼を持つ人物がいる。

 

この二人に協力を要請してみるのもアリかもしれない。

 

というか、ここは確か探偵事務所としてもやっていた筈。

 

俺はダメ元でお願いしてみることにした。

 

俺はソファーでくつろいでいる式さんに近寄り、小声で話しかけた。

 

 

「あの、式さん、ちょっといいですか?」

 

 

「ん?なんだ??」

 

 

「少し確認したいことがありまして。さっきの話の続きなんですけど」

 

 

「……言ってみろ」

 

 

「式さんはあのとき、俺の中にある複数の命が見えるって言ってましたよね。それって、もしかして式さんの瞳が青色に変わったことに関係してます?」

 

 

ここで俺は先程の話題を彼女に繰り出す。

 

いきなり直死の魔眼の名を出しても警戒させるだけなので、ボカして確認を取る。

 

 

「……まあな。全ての万物には生まれた時から綻びがある。オレはその綻びを『死』の要因として読み取り、視認することができる。直死の魔眼ってやつさ」

 

 

「直死の魔眼……」

 

 

やはり本人の口から聞くと迫力が違うな。

 

 

「お前のことは、この眼で見たから分かっただけだ」

 

 

「……そうだったんですか」

 

 

そして俺は本題を切り出す。

 

 

「なら、その直死の魔眼で()()()()()()()()()()()()?」

 

 

「……お前、()()()()()()()?」

 

 

どうやら当たりのようだ。

 

 

「はい。実は俺には、超直感っていう物事を感じ取ることに特化した能力があるんですよ。それで感じるんです。彼女から禍々しい気配を……いや、正確には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

 

俺はソッと視線を桜さんへと向ける。

 

彼女は未那ちゃんと談笑していた。

 

 

「……あいつの心臓にはとても小さな蟲が寄生している。その他にもいくつか、身体のあちこちにいるようだがな」

 

 

俺は無言になる。

 

すると俺の様子を見た式さんが、こちらをチラチラ見ながら話してきた。

 

 

「……オレにかかればそんな蟲共の処理は朝飯前だ。だが、心臓に寄生している奴だけならまだしも、他の蟲達は無理矢理殺してしまえば、あいつにも少なからず影響が出る」

 

 

「そう……ですか」

 

 

大したものだ。

 

彼女は魔術師でないにも関わらず、魔眼の力だけで直感的にそう理解したらしい。

 

桜さんの中にいる蟲、刻印蟲。

 

それは間桐の魔術の結晶であり、魔術刻印の一種に近い。

 

刻印蟲はほぼ完全に桜さんの体と結びついており、一体化しているのだろう。

 

式さんの言葉からして殺せないこともないのだろうが、そうすると桜さん本人に悪影響が出る可能性も否めない。

 

ここは間桐臓硯だけをなんとかすることに集中した方が良さそうだ。

 

 

「お前、どうするつもりだ?」

 

 

式さんがこちらをジッと見てきたので、俺は間髪入れずに答えた。

 

 

「決まってるでしょう。彼女を助けるんですよ」

 

 

「……お前になんとかできるのか?」

 

 

胡散臭そうに見られる。

 

失敬な。

 

 

「心配しなくても俺は普通の存在じゃないので、なんとかできる可能性は高いと思いますよ」

 

 

「……どうしてそこまでするんだ?話を聞けば、お前、あいつとはさっき知り合ったばかりなんだろ?」

 

 

「別にそんな大層な理由なんてありませんよ。でもまあ、強いて言うなら、友達だから……ですかね?」

 

 

俺は苦笑いしながら答える。

 

別に誰かに頼まれた訳でもないし、誰かに言われた訳でもない。

 

これは俺が勝手にやり始めたことだ。

 

ただの俺の我が儘だ。

 

だからこそ失敗は許されない。

 

俺のやり始めたことで別の誰かを巻き込む訳にはいかない。

 

だから確実に間桐臓硯は倒さなければならない。

 

 

「だったらその話、僕にも一枚噛ませてくれないかな?」

 

 

すると俺達の後ろから、ある男性の声が聞こえた。

 

振り向くとそこには、笑顔の幹也さんの姿があった。

 

 

「幹也か」

 

 

「……もしかして今までの話、全部聞いてました?」

 

 

「まあ、大まかにはね。ああ、心配いらないよ。話を聞いてたのは僕だけだから」

 

 

「そ、そうですか……」

 

 

他の面子には聞こえてなかったか。

 

良かった。

 

この話は特に士郎と桜さんには聞かれる訳にはいかない。

 

まあ、幹也さんが聞いてくれてるなら話は早いか。

 

確かこの人、魔術については認知してる筈だし。

 

 

「それでヒエン君、僕にも手伝わせてくれないかな?」

 

 

「ええと……」

 

 

俺はとりあえず式さんに視線を向ける。

 

幹也さんには予め相談する気ではいたが、奥さんの式さんの許可は必要だろう。

 

 

「こいつは言っても聞かないからな。なら最初から巻き込んだ方がいい」

 

 

俺はその言葉に目を丸くする。

 

 

「え、あの、その言葉だとまるで式さんも手伝ってくれるみたいに聞こえるんですけど……」

 

 

「……そのつもりだが?」

 

 

「えぇ!?」

 

 

俺は驚く。

 

まじで?

 

あの両儀式が?

 

完全に断られると思ってたのに……。

 

 

「……なんでそんなに驚く?」

 

 

「いや、驚きもしますよ!?だって式さんですよ!?初対面の俺でも分かるくらいに無愛想で無口を彷彿とさせるあの式さんがですよ!?これは驚くに決まってるじゃないですか!!」

 

 

俺は大声で話す。

 

 

「だって式さん、身内とは話すけど、他人にはそっけないイメージあるし、基本的に何に対しても無気力そうな感じもするし、まるで駄目人間をそのまま体現したかのようなイメージがある人じゃないですか!?」

 

 

気付けば熱弁していた。

 

そして彼女に俺は顔を鷲掴みにされていた。

 

 

「だ・れ・が……駄目人間だぁ?」

 

 

「すいません!つい本音があぁ!?」

 

 

俗に言うアイアンクローである。

 

あれぇ?

 

なんか式さんが段々リニスに見えてきたぞぅ(白目。

 

っていうか物凄く痛いんですけどぉ!?

 

 

「あはははは。二人ともいつの間にか、

すっかり仲良くなったんだねぇ」

 

 

「幹也さん!一体どこをどう見たらこの状況が仲良くしてるように見えるんですかねぇ!?」

 

 

つーか!

 

そんなところでノホホンと和んでる暇があったら奥さん止めてぇ!!

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 

 

話を終えると、そのまま解散となった。

 

というか式さんになぜ協力してくれるのか聞いたら桜さんが娘の未那ちゃんと仲良くしてるから……らしい。

 

思わず、「なるほど。ツンデレですね」と言ったら、再びアイアンクローされたが。

 

でもまあ、幹也さんと式さんの協力をなんとか取り付けることに成功したので結果オーライである。

 

そして後日、俺は打ち合わせのためにまた伽藍の洞に来ることとなった。

 

そのときに裏の世界に詳しい人を紹介すると言われた。

 

その時点で俺はその人物に察しがついていた。

 

完全に蒼崎橙子(あおざきとうこ)さんですね。

 

本当にありがとうございます。

 

俺の正体に関してはそのときに説明しようと思う。

 

勿論、転生者や原作知識は省いて。

 

そして桜さんと途中で別れた俺達は、そのままアインツベルン家へと帰って来た。

 

経過時間は、一時間とちょっと過ぎた辺りか。

 

まあ、気絶していたのも十数分だけだったみたいだし、許容範囲だろう。

 

その後は、士郎の作った昼飯をご馳走になった。

 

滅茶苦茶、美味しかった。

 

俺も料理はするが、士郎の作った料理とは天と地の程の差があった。

 

士郎さん、マジパネェッス。

 

あまりにも美味しすぎて出されたオカズを全て平らげてしまい、ごはんも何杯もおかわりしてしまった。

 

皆が俺の食べっぷりに驚いていた。

 

美味しいから仕方ないんや。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

伽藍の洞での式さん達との邂逅から数日が過ぎた。

 

現在、俺は何をしているかというとホテルの部屋でボケーッとしていた。

 

エーデルフェルト家はまだ建築中なので仕事がないのである。

 

あまりにも暇だったのでトレーニングをしていたのだが、魔法のトレーニングはする場所がないので、身体を鍛えるだけに留めている。

 

封時結界を展開することも考えたのだが、プリヤの世界とはいえ魔術師のような存在がどこにいるかも分からないので安易なことはしないことにした。

 

すると美遊が部屋に入ってきた。

 

彼女も今は仕事がないのでメイド服ではなく、ラフな格好をしている。

 

話に戻るが、今日の俺の予定としては、改めて伽藍の洞に訪れることになっている。

 

幹也さんから打ち合わせがしたいと連絡が来たのだ。

 

そろそろ約束の時間が迫ってきたので、俺はルヴィア嬢から渡された財布と携帯電話を持つ。

 

 

「ちょっと出てくる」

 

 

「分かりました」

 

 

「美遊はこの後どうするんだ?」

 

 

「イリヤ達と買い物に行くことになってます」

 

 

「そっか。なんかあったら連絡してくれ」

 

 

「はい」

 

 

そう言うと俺はホテルを後にする。

 

今日も服装は執事服である。

 

オーギュスト氏曰く、【執事足るもの、なるべく執事服でいるべし】らしい。

 

ちなみに他の面子はそれぞれ私用で出ている。

 

俺は商店街を歩き、人気のない道を歩いていく。

 

十数分歩くと一つの古びた廃ビルが見えてくる。

 

あれが伽藍の洞だ。

 

四方を塀で囲まれたこの廃ビルは、希代の魔術師であり、封印指定の人形師でもある蒼崎橙子氏特製の強力な結界に覆われている。

 

なので特別に用事のある人でもない限り、この廃ビルの存在を認知することもできない。

 

俺は昨日、この廃ビルの存在を知ったため、入ることができるのだ。

 

俺は階段を上り、四階のドアの前に立つ。

 

そしてノックした。

 

 

「空いてるよー」

 

 

中から幹也さんの声がする。

 

 

「し、失礼しまーす」

 

 

俺は恐る恐るドアを開けて入る。

 

中には四人の人物がいた。

 

幹也さんと式さんの両儀夫婦の他に、黒髪の女性とオレンジ色の髪をした女性がいた。

 

すると幹也さんが笑顔で話しかけてきた。

 

 

「いらっしゃいヒエン君」

 

 

「あの、これつまらない物ですが」

 

 

俺は例の如く翠屋のシュークリームを渡す。

 

 

「これはご丁寧に」

 

 

すると隣で幹也さんの隣で見ていた式さんが、興味深そうに中を覗く。

 

 

「シュークリームか」

 

 

「うまいんですよ、これ」

 

 

「へぇー」

 

 

「無愛想な式さんでも思わず笑顔になってしまうほど……っていでででででで!?冗談!冗談ですからあああぁぁ!?」

 

 

「お・ま・え・は……一々オレを罵倒しないと気が済まないのかぁ?」

 

 

「あはははは。本当に仲良いね二人とも」

 

 

そして例の如くアイアンクローも受ける。

 

 

「黒桐の言うとおり、あの式がねぇ……」

 

 

「ええ、意外です……」

 

 

オレンジ色の髪の女性蒼崎橙子さんと、その弟子であろう黒桐鮮花(こくとうあざか)さんが唖然としていた。

 

 

 

────────

──────

────

 

 

 

気を取り直して、各自自己紹介する。

 

 

「蒼崎橙子だ」

 

 

「弟子の黒桐鮮花よ。よろしくね」

 

 

蒼崎橙子さんと黒桐鮮花さん。

 

この二人は「空の境界」に登場する。

 

ここで二人を軽く紹介しよう。

 

 

蒼崎橙子さんは建築事務所、伽藍の洞の所長であり、魔術師兼人形師でもある。

 

彼女の作る人形は、本物と遜色ないくらいの代物であり、表の世界では人形展を開く程の実力の持ち主だ。

 

魔術師としての腕前もトップランクで、その実力を認めた魔術協会から最高位の魔術師の称号として『冠位』の座と『赤』を授けられている。

 

『魔術師が最強である必要はなく、最強のものを作り出せばよい』という考えを持ち、戦闘では主に使い魔に戦わせている。

 

他にもルーン魔術の基盤ともなる原初のルーンを復刻したり、魔術戦に耐えられる人形(オートマタ)の作成も可能と、まさに超一流の魔術師なのだ。

 

 

続いての黒桐鮮花さんは、幹也さんの妹で橙子さんの弟子でもある。

 

実は彼女は、兄の幹也さんに恋心を抱いており、式さんを恋敵にしていた……が、結局、式さんと幹也さんはくっついた。

 

その影響で、式さんと話すときは必ず喧嘩腰になってしまうが、その実力を認めてはいる。

 

鮮花さんは唯一「発火」の魔術が使え、彼女最大の得意技でもある。

 

彼女の攻撃方法は少々特殊であり、炎で対象を焼くのではなく、対象自体に発火させるというものだ。

 

彼女には元々魔術師としての才能はなかったが、先天的な属性で発火現象を持っている為、橙子さんからその発動と制御習得のために魔術を習っている。

 

戦闘時には火蜥蜴(ひとかげ)の皮手袋をはめ、詠唱には音楽記号を用いている。

 

ちなみに彼女は魔術師ではなく、魔術使いである。

 

そのことについては本人も特に気にしてはおらず、式さんへの対抗手段として魔術を習っているので問題ないらしい。

 

 

そんな二人と俺は現在向き合っていた。

 

とりあえず俺も自己紹介する。

 

 

「初めまして、大空氷炎です。ぶっちゃけると魔法使いです」

 

 

「「「「は?」」」」

 

 

俺の言葉に四人は目を丸くする。

 

サプライズって大切よね。

 

 

「証拠をお見せしましょう」

 

 

唖然としている四人を畳み掛けるように俺は変身魔法を使って幹也さんに変身する。

 

 

「み、幹也が増えた……」

 

 

「兄さんが二人に……」

 

 

インパクトって大切よね。

 

その証拠に特に式さんと鮮花さんが驚いている。

 

続けて橙子さん、鮮花さんに変身してから最後に式さんに変身する。

 

 

「と、このように本人の声に似せることも可能です」

 

 

式さんは坂本真綾さんボイス寄りの声なので、かなり出しやすい。

 

そして俺は分かりやすい例として、式さんよりスタイルを良くしてみる。

 

 

「さらにこのように本人より胸だって大きく出来るって、いででででで!?」

 

 

「ど・う・し・て……わざわざ()()()()()()胸を大きくする必要があるんだぁ?」

 

 

本日二度目のアイアンクローを受けながら俺は説明する。

 

段々この痛みにも慣れてきちゃったよ。

 

 

「い、いやここまできたら弄らないと駄目かなって。でも安心してください、式さん。世の中にはこんな言葉があるんです。『貧乳はステータスだ!希少価値だ!』って!!だから全く気にする必要はないんですよ!式さん!!」

 

 

「死ね」

 

 

「ぎゃあああああ!!??」

 

 

顔の骨が少し陥没した気がする。

 

 

「という訳で魔法使いなんです、はい」

 

 

数分後、気を取り直して自己紹介する。

 

 

「何事もなかったかのように始めたわねこの子……」

 

 

「また濃い奴が来たな……」

 

 

鮮花さんと橙子さんは額に手を当てて呆れていた。

 

人生気にしたら敗けなんです。

 

 

「話に戻るが、魔法使いとはどういうことだ?」

 

 

すると橙子さんが厳しい目をこちらに向けてくる。

 

俺は気押されることなく、事情を説明する。

 

 

「えっと、説明すると長くなるので俺の記憶をお見せします。相棒」

 

 

「ガァウ」

 

 

相棒が俺の肩に出てくると、式さんを除く三人が驚くがスルーし、四人に手を合わせてもらい、相棒を式さんの頭の上に乗せる。

 

 

「おい、だからなんでオレなんだ」

 

 

「こいつ、式さんのこと気に入ってるみたいなんで」

 

 

そしてここにきて二度目の記憶の追体験をしてもらう。

 

勿論、転生者と原作知識のことは省いてある。

 

すると四人は疲れきった顔をしていた。

 

っていうかこの世界に来て記憶見せまくりだな。

 

 

「……お前の事情は理解した。まさか並行世界の住人だとは……」

 

 

「貴方、本当に魔法使いなのね……」

 

 

「ヒエン君、今まで苦労してたんだね……」

 

 

「お前、やっぱり面白いな」

 

 

橙子さん、鮮花さん、幹也さん、式さんがそれぞれ話す。

 

俺はそれに適度に返しつつ、本題に入る。

 

 

「これで俺が何者かは理解してくれたかと思います。で、ここからが本題なんですが……」

 

 

「桜ちゃんのことだよね」

 

 

俺の話に幹也さんが続く。

 

 

「あれから桜ちゃんの背後関係について軽く調べてみたんだ。そしたら面白いことが分かったよ」

 

 

机の上には書類が纏められたのか、ファイルが置かれる。

 

幹也さんが説明してくれる。

 

桜さんの名字、間桐(まとう)はかつてマキリと呼ばれ、主にロシア方面で活動していたらしい。

 

イギリスの方でも名は知られているらしく、貴族としての記録が残っていた。

 

しかし数百年前に没落してからは、マトウに名を変えて、日本に移り住み、貴族として力を奮っていたらしい。

 

中でも幹也さんの興味を引いた情報が、マキリ・ゾォルケンという名の人物である。

 

現在の間桐家の当主は間桐臓硯だが、幹也さんはこの間桐臓硯がマキリ・ゾォルケンではないかと考えているらしい。

 

その根拠が、実は間桐家の戸籍は何度も改竄されており、何百年にも渡って間桐臓硯が間桐家の当主として君臨していたのだ。

 

幹也さんの考えでは、この間桐臓硯いや、マキリ・ゾォルケンが全ての元凶ではないかと疑っている。

 

俺はその話を聞いて、僅かな期間でここまで調べた幹也さんに感服していた。

 

これは凄いというレベルを明らかに超えている。

 

俺は原作知識のおかげで間桐臓硯のことをある程度知っているが、この人は何も知らないゼロからの状態で調べあげたのだ。

 

異常にも程がある。

 

すると橙子さんが呟く。

 

 

「マキリ・ゾォルケンとは、またとんでもない大物が出てきたな」

 

 

「橙子師、知ってるんですか?」

 

 

鮮花さんが話を振ると、橙子さんが話す。

 

 

「ああ、マキリ・ゾォルケンは主に蟲を使い魔として操る。奴自身、昔から卓越した蟲使いとして有名だからな。それに大昔から裏の世界で暗躍している。……聖杯戦争は知っているか?」

 

 

「はい、確か『あらゆる願いを叶えるとされる万能の願望機、聖杯の所有をめぐり、一定のルールを設けて繰り広げる争い』……それら全てを聖杯戦争と呼ぶと専門書には書いてありました」

 

 

鮮花さんが答える。

 

 

「そうだ。奴は英霊をマスターの使い魔『サーヴァント』として成立させるシステムや、絶対遵守の命令を聞かせる『令呪』を作り上げた。聖杯戦争の基礎を創り上げた人物といっても過言ではない」

 

 

橙子さんは続ける。

 

 

「表舞台から消え、時機をうかがっているとは聞いていたが、まさか孫がいるとはな。その間桐桜といったか。その少女の心臓に小さな蟲が止まっていたんだな、式?」

 

 

「ああ、かなり小型のやつだ」

 

 

「十中八九、その蟲がマキリの本体だ。奴は自身の魂を蟲に宿すことでこの世に留まっている。恐らく、その娘に生ませた子供から肉や霊体を喰らって身体を乗っ取るつもりなのだろう」

 

 

「外道め……」

 

 

鮮花さんが呟く。

 

 

「ちょっと待って下さい、橙子さん。そのマキリさんが魔術師なら、桜ちゃんも魔術師ということになるんですか?」

 

 

幹也さんの質問に橙子さんが答える。

 

 

「それは分からん。だが魔術師でなくとも奴に利用されていることは確かだろう」

 

 

ここで俺も発言する。

 

 

「……つまり桜さんを助けるためには間桐臓硯、マキリ・ゾォルケンを倒せばいいんですね?」

 

 

「端的に言えばな」

 

 

俺は思考する。

 

情報は集まった。

 

この世界の間桐臓硯は、俺の知る間桐臓硯と遜色ないようだ。

 

すると橙子さんが俺に視線を向けてくる。

 

 

「ヒエンといったか。お前はどうするつもりだ?」

 

 

「今夜、行動を起こすつもりです」

 

 

「それはマキリの奴に挑むということか?」

 

 

「そうですね、そうなります」

 

 

俺の言葉に鮮花さんが驚く。

 

 

「なっ!?危険よ!?」

 

 

「それは承知の上です。ですがこのまま放っておけば、桜さんが良いように利用され続けるのも事実です」

 

 

「それは確かにそうだけど……」

 

 

「それに用が済んだら、いつ口封じされてもおかしくない」

 

 

橙子さんが話す。

 

 

「マキリは500年前から存在する妖怪のような奴だ。生半可な相手ではないぞ?」

 

 

「自慢じゃありませんが、これでも人外じみた奴らとは戦い慣れていますので、全く問題ありません」

 

 

「そういえば、お前は現役の封印指定執行者にも勝利していたんだったな」

 

 

「バゼットですね」

 

 

一応、こちらの世界に来るときのきっかけの映像も記憶の追体験時にチラッと見せている。

 

それで思い出したが、バゼットの力を借りることも少し考えたが、話がややこしくなりそうだったのでやめておく。

 

というか橙子さん、サラッとバゼットのこと人外扱いしてるっていう。

 

 

「そうか。なら、何も言わん」

 

 

すると橙子さんは懐からタバコを取り出し、吸い始める。

 

なかなか匂いのきついタイプのようだ。

 

 

「何か作戦はあるの?」

 

 

鮮花さんが心配そうに聞いてくる。

 

これに俺は余裕をもって答える。

 

 

「もちろん」

 

 

「ほう?それは一体どんな作戦なんだ?」

 

 

俺の言葉に橙子さんが興味深そうに聞いてくる。

 

それに俺はサムズアップしながら力強く答えた。

 

 

「真っ正面から叩き潰す」

 

 

「「それは作戦とは言わ(ん)(ないわ)!!」」

 

 

思いっきり、二人に突っ込まれた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

深夜、俺は深山町と呼ばれる場所に足を運んでいた。

 

ホテルには俺の分身が待機しているのでルヴィア嬢達には、俺が出歩いていることはバレてはいない。

 

そして俺の目の前には、『間桐』と書かれた大きな洋館があった。

 

丘の頂上近くにある西洋風の建物だ。

 

外から見ると、割れた窓ガラスがそのまま放置されている箇所があった。

 

恐らくそこは生活スペースではないのだろう。

 

内部は薄暗く、正直お化け屋敷に見える。

 

 

「気味悪いな」

 

 

俺は一人言を呟く。

 

それに反応したのは二名いた。

 

 

「なんだ怖じ気づいたのか?ほら、さっさと行くぞ」

 

 

「ちょっと待ちなさい。ここ一応、敵地のど真ん中よ?」

 

 

なぜか俺の付き添いとしてついてきた式さんと、鮮花さんである。

 

今からこの三人で間桐邸に殴り込みにいくのである。

 

本当どうしてこうなった?

 




次回、vsマキリの蟲爺。

では、また(・∀・)ノ

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