大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも(゜▽゜*)

続き書けたで候。

では、どうぞ( *・ω・)ノ


第三百十六話 ちょっとプリズマ☆イリヤ 2wei(ツヴァイ)!⑦

ヒエンside

 

 

 

「うっ……」

 

 

俺は目覚める。

 

頭に伝わる軟らかい感触から判断するにどうやらソファーに寝かされているようだ。

 

そして、ほぼ反射的に言った。

 

 

「知らない天井だ」

 

 

「目覚めて第一声がそれって案外元気そうだね、君……」

 

 

「え……」

 

 

首を横にすれば、眼鏡をかけた男性が苦笑いで俺の様子を見ていた。

 

優しそうな風貌であるが、左目に傷跡があり、黒ずくめの格好をしていた。

 

見るからに物凄く怪しかった。

 

 

「しかし変わった格好をしている奴だな……趣味か?」

 

 

そしてその後ろに控えるように、桜色の和服に赤色の羽織を羽織っている美女がいた。

 

ちなみに趣味、違います。

 

仕事着です。

 

 

「…………」

 

 

さらにその後ろにはサングラスをかけた黒スーツの男性が、腕を組んで待機していた。

 

見るからにヤベェ人だった。

 

俺は軽く周りを見回す。

 

中は少し薄暗いが、どこかのビルの一室のようだ。

 

密室の中に尋常じゃない雰囲気を持つ三人の人間に、ソファーに寝かされた俺。

 

うん。

 

これ、あれじゃね?

 

俺、ピンチじゃね?

 

もしかしたらこの人達、ヤから始まってザで終わる人達じゃね?

 

もしそうだとしたら、滅茶苦茶ヤバくね?

 

命の危機じゃね?

 

これはもう必殺技、画龍点睛(がりょうてんせい)で乗り切るしかない。

 

以上のことから俺のやることは決まった。

 

俺は勢いよく起き上がり、ジャンプする。

 

 

「とうっ!」

 

 

「「「!?」」」

 

 

俺のいきなりの行動に三人は驚くが、女性とサングラスの男性の動きは早かった。

 

女性は短刀を取り出し眼鏡の男性を庇うように前に出て、サングラスの男性は拳銃を構える……が俺の行動に呆気に取られていた。

 

俺はサマーソルトを決めつつ、再びソファーに着地すると同時に頭を下げていたのだ。

 

 

「どうか命だけは勘弁してください」

 

 

渾身のジャンピング土下座だった。

 

 

 

────────

──────

────

 

 

 

「あははは……驚かせちゃってごめんね?」

 

 

「全く、ややこしい真似すんなっつーの」

 

 

「…………」

 

 

眼鏡の男性が苦笑いし、和服の美女はジト目でこちらを見て、サングラスの男性は変わらず腕を後ろに組んで立っている。

 

しかしどこか呆れたように見られているのは気のせいではない気がする。

 

俺はとりあえず正座したまま、話をする。

 

 

「それで私目はどうなるのでしょうか?落とし前をつけさせられるのでしょうか?小指を切り落とされるのでしょうか?マグロ漁船で働かせられるのでしょうか?内臓を売り飛ばされるのでしょうか?それともAV男優デビューさせられ……「少し落ち着け」……ひでぶ!?」

 

 

和服美女にチョップされる。

 

 

鮮花(あざか)みたいに騒がしい奴だな、お前」

 

 

誰やねんそいつ……とは言えず、少し落ち着いた俺は返事を返す。

 

 

「す、すいません。それでここはどこなんでしょう?それに貴方達は?」

 

 

「あ、自己紹介がまだだったね。僕は両儀幹也(りょうぎみきや)、こっちは奥さんの式、こちらは護衛の硯木秋隆(すずりぎあきたか)さん。ここは伽藍(がらん)(どう)っていう知り合いのビルなんだけど、倒れた君を介抱するためにここに連れ込んだってところかな」

 

 

え?

 

ちょっと待って?

 

いきなり情報量が多過ぎて、脳がオーバヒートしそうなんですけど?

 

まさかの『(から)の境界』の登場人物達と遭遇なんて誰が予想できんよ?

 

なんかどっかで見たことあるなーって思ってたらとんだ大物達との邂逅だよ!?

 

見たところ、この二人結婚していることから原作終了後と思われる。

 

 

「ソ、ソウナンデスカ。オセワカケテスイマセン。ア、オレハ、オオゾラヒエンデス。ドウゾヨロシクオネガイシマス」

 

 

俺はなんとか片言で言葉を返す。

 

焦る気持ちを抑えて、マルチタスクを駆使して思考する。

 

 

(落ち着け、焦るな。とりあえず何があったかを思い出せ)

 

 

俺は自身に何があったかを思い出す。

 

 

(確か士郎とお昼ごはんの買い物に来てから……桜さんと遭遇……それから、ああ……からかおうとして吹き飛ばされたんだっけ……)

 

 

完全に俺の自業自得じゃねえか。

 

彼女に吹き飛ばされた俺は、この人達にそのまま保護されたのだろう。

 

それにしても、桜さんのあのパンチは重かった。

 

完全に世界を狙えるぞ、あれは。

 

その事を思い出すと、士郎と桜さんがいないことに気付く。

 

 

「あの、幹也さん……でいいですか?」

 

 

「うん、いいよ」

 

 

「俺の他にも、あと二人いませんでしたか?」

 

 

俺の質問に彼は答える。

 

 

「ああ、士郎君と桜さんなら今はウチの娘と遊んでくれてるよ。ちょっと呼んでくるね」

 

 

「あ、すいません」

 

 

そして幹也さんは二人を呼びに行った。

 

 

「「「…………」」」

 

 

残される俺、式さん、硯木さんの三人……であったが、その直後、式さんが話しかけてきた。

 

()()()()()()()()()()()

 

その瞳を見た瞬間、俺は全身に鳥肌が立った。

 

彼女は短刀を構えてこちらを威圧する。

 

 

()()()()()()()?」

 

 

俺は冷や汗を流しながら思考する。

 

恐らくここは分岐点(ターニングポイント)だろう。

 

答えを誤れば、俺はただではすまない筈だ。

 

彼女は、『モノの死』を形ある視覚情報として視て捉える異能……直死の魔眼の使い手なのだから。

 

 

「お前は明らかに普通の奴とは違う。なんせ()()()()()()()()()()()()()()()()からな。それ以外にも何かありそうだ」

 

 

式さんの後方では、硯木さんも懐に腕を伸ばしている。

 

恐らく拳銃を持っているのだろう。

 

 

「正直に答えた方が身のためだぞ?」

 

 

俺は覚悟を決める。

 

ここでごまかしても彼女にはすぐ看破されるだろう。

 

なら正直に話すしかない。

 

 

「……確かに俺は普通の人間じゃありません。式さんの言う通り、隠してる秘密もいくつかあります。だけど誓って言えます。皆さんに危害を加えるつもりは決してありません」

 

 

俺は話す。

 

 

「もし俺の言葉が信用できないっていうなら、そのまま俺を斬ってもらっても構いません。貴方にはその権利があります。だけど……」

 

 

そして俺は死ぬ気化して、式さんを見据える。

 

ここでセットアップしないのは、少しでも怪しげな動きを見せれば、その時点でジ・エンドだからだ。

 

 

「俺にも待ってくれている子達がいるんでね、そう簡単にやられる訳にはいかないんですよ。悪いですが……そのときは全力で抵抗させてもらいます」

 

 

俺も立ち上がり、負けじと威圧するように彼女を睨み付ける。

 

仮に戦闘になった場合、すぐにでも距離を取らなければならない。

 

 

「「…………」」

 

 

睨み合うこと数秒、先に視線を逸らしたのは彼女だった。

 

 

「……安心しろ。お前を斬る気はないよ。ただオレはお前の出方を見たかっただけだ。()()()()()()()()()()()

 

 

その言葉を聞いた俺は、息をはきながらソファーに座る。

 

 

「はぁ……」

 

 

今までで一番緊張した。

 

なんせ相手は下手をすれば、()()()()()()()()()()()()()のだから。

 

それが直死の魔眼の力だ。

 

防御力、耐久力、頑強さ関係なく「死の線」そのものをなぞるだけで相手を殺すことができるのだ。

 

「死の線」は存在の死に易いラインであり、その線をなぞり立ち切れば、対象がどんなに強靭であろうと切断される。

 

つまり文字通り、"死"に至らしめることができる。

 

それは生物だけに留まらない。

 

"いつか来る終わり"を持って存在しているモノ、"寿命"を持つ限り、あらゆるモノを殺すことができる。

 

概念ですら例外ではない。

 

例えば、体内の毒物や病んだ内臓などの原因となるモノを殺すことで治療として応用することが出来るし、限定的ではあるが未来といった時間を殺すこともできるのだ。

 

俗に言うチート能力の一つでもある。

 

見れば彼女も魔眼を解除していた。

 

 

「迫力ありすぎでしょ、式さん……」

 

 

俺はつい愚痴をこぼす。

 

正直、まだ油断はできないので額の炎を抑えた状態、死ぬ気化だけはそのままにしておく。

 

 

「まあ、くぐってきた場数の違いだ。でもそういうお前だって、臨戦態勢でこっちを威圧してきたじゃないか」

 

 

「あんなのただの強がりですよ。いや、別に強がりって訳でもないか……。でも正直、かなりビビりましたよ」

 

 

いや本当に。

 

さすが『空の境界』の主人公。

 

お見それしました。

 

 

「……その相手にあれだけ啖呵を切れれば大したもんだ。それと、そろそろ説明してほしいんだが、お前の中に見える複数の命はなんなんだ?」

 

 

「それはたぶん、こいつらですね」

 

 

俺は心の中から相棒とナハトの分身体を呼び出し、両肩に乗せる。

 

 

「ガァウ」

 

 

「きゅ」

 

 

それを見た式さんが目を点にさせる。

 

 

「俺の心に宿ってるヒッツとナハトです。ほらお前ら、挨拶」

 

 

「ガァウ~」

 

 

「きゅー」

 

 

二匹に挨拶させる。

 

すると途端に式さんがソワソワし始めた。

 

ああ、触りたいのね。

 

ただ俺に強く言った手前、自分からは言い出しづらいと見える。

 

なんだ、ツンデレか。

 

 

「触ります?」

 

 

「……ああ」

 

 

式さんは両手を使い、恐る恐る二匹の頭に触れる。

 

すると優しく撫で始めた。

 

二匹も撫でられるのが気持ちいいのか、されるがままになっている。

 

 

「……おお」

 

 

目が輝いている。

 

可愛い物好きなんだろうなぁと、俺は遠い目をしながらその光景を見守っていた。

 

 

「連れてきたよー」

 

 

すると、しばらくして幹也さんの声が聞こえてきた。

 

その瞬間、相棒とナハトはポフンと消える。

 

 

「あ……」

 

 

そのときの式さんの一瞬浮かべた悲しそうな表情を見たら、罪悪感が半端なかった。

 

 

「って、どうしたの式?なんだか機嫌悪くない?」

 

 

「別に……なんでもない」

 

 

幹也さんが式さんに当たられている。

 

うん、後でもう一度撫でさせてあげよう。

 

幹也さんの側には士郎と桜さんがおり、もう一人十歳くらいの少女がいた。

 

その子は水に濡れたような長い黒髪であり、なおかつ黒いブラウスを見事に着こなし、幼さ特有の愛らしさを持っていた。

 

そして、なぜか俺の方をジーっと見て、()()()()()()()()

 

え、なんで?

 

なぜか地味に超直感が警鐘を放っている。

 

こういうときは、たいてい俺にとって良くない事が起こる前兆である。

 

 

「目、覚めたんだなヒエン。体調は大丈夫か?」

 

 

「大丈夫。この通りピンピンしてる」

 

 

士郎が話しかけてきた。

 

その手にはオボンがあり、クッキーがある。

 

旨そうだ。

 

俺はピョンピョン跳ねることで、彼に大丈夫だとアピールする。

 

 

「その、さっきはすいませんでした!私ったらはしたない真似を……って、そうじゃなかった……お怪我はありませんか!?どこか痛むとか!?」

 

 

すると今度は桜さんが勢いよく話しかけてくる。

 

その手には紅茶が入れられたカップがあった。

 

が、勢いが強すぎるのか紅茶がこぼれそうなのでなだめる。

 

 

「ああ、大丈夫大丈夫。特に怪我とかもないし、痛みもない」

 

 

「そ、そうですか。良かったです……」

 

 

俺の様子に安心したのか、桜さんは心底ホッとしたように息をはく。

 

 

「むしろ世界を狙える良いパンチだったと感心したいまである」

 

 

「も、もう!からかわないで下さい!!」

 

 

「いや別にからかってないけど。むしろ本気だけど。アームレスリングのチャンピオンだって目指せるぞ」

 

 

「全然嬉しくありません!!」

 

 

桜さんは俺の言葉にプイッと首を横に向ける。

 

うん。

 

あざとい。

 

超あざとい。

 

天然的にあざとい。

 

話してみて分かったが、プリヤの世界の桜さんはstay nightの方に比べると、少し明るい気がする。

 

 

「そんなに女の子をからかう物じゃありませんよ?執事のお兄さん♪♪」

 

 

すると十歳くらいの少女が話しかけてきた。

 

恐らくこの子が式さんと幹也さんの娘さんだろう。

 

『劇場番 空の境界 未来福音』でも出ていた。

 

確か名前は……

 

 

未那(まな)

 

 

式さんが少女の名を呼ぶ。

 

 

「紹介するよ、この子は僕達の娘の両儀未那。未那、挨拶しなさい?」

 

 

「はい、パパ」

 

 

未那ちゃんは笑顔で挨拶する。

 

 

「初めまして、両儀未那です。私、実は貴方に興味があるんです!執事のお兄さん!!」

 

 

とりあえず俺も自己紹介しておく。

 

 

「え、えっと初めまして。執事やってる大空氷炎です。あと俺に興味持っても面白いことなんて一つもないよ、未那ちゃん」

 

 

「そんなことはありません!私の直感がお兄さんは只者じゃないと言っているんです!!」

 

 

「格好のせいじゃないかな?」

 

 

「自慢じゃありませんが、私、直感を信じて外れたことがないんです。だからお兄さん、私と友達になりましょう?」

 

 

そう言うと未那ちゃんは俺の手を両手で取る。

 

ちょっと君、初対面からグイグイ来すぎじゃないかな?

 

 

「はははは、なつかれてるなヒエン」

 

 

「未那ちゃん、とても良い子なんですよ」

 

 

どうやら士郎と桜さんの二人とも仲良くなっていたようで、微笑ましい物を見るような目でこちらを見ている。

 

俺は助けを求めるように両儀夫妻に目を向けるが、何やら二人で話しているらしくこっちを見ていない。

 

ならばと思い、硯木さんの方を見るがこっちをジッと見るだけでなんの反応もなかった。

 

おい、それでいいのか両儀家。

 

とりあえず俺に残された選択はこの妙にグイグイくる少女と友人になることだけだった。

 

 

 

ヒエンside end

 

◆◆◆

 

第三者side

 

 

 

幹也と式の二人は、お茶菓子を食べながら、事務所のくつろぎスペースで楽しそうに話す四人を見る。

 

 

「未那があそこまで積極的になるなんて珍しいよね、式。光溜(みつる)君以来じゃないかな?」

 

 

「さあな。あいつに何か思うところがあったんじゃないか?」

 

 

式の視線の先にはマジックを披露している執事服の少年の姿があった。

 

 

「そういえば、その光溜はどこに行ったんだ?今日は姿を見てないが」

 

 

「あれ?聞いてない?彼、橙子(とうこ)さんの付き添いで今朝から出てったよ」

 

 

「付き添い?」

 

 

「うん。橙子さんの人形展の手伝い」

 

 

「そうか。それにしてもこの茶菓子うまいな」

 

 

「そうだよね。これ桜ちゃんが作ってくれたんだよ」

 

 

「桜って……あの紫の奴か」

 

 

式は桜の方に視線を向ける。

 

そして小さく一言。

 

 

「心臓付近にいるのは……虫か?」

 

 

式は魔眼を発動させて()()()()()()を見ていた。

 




次回、間桐家にケンカ売ります。

勿論、相手になるのは外道で有名なあの蟲爺さん。

では、また(・∀・)ノ

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