大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも(゜▽゜*)

続きかけたで候。

今回で振り返り終わり。

では、どうぞ( *・ω・)ノ


第三百六話 振り返ろう 後編

ヒエンside

 

 

 

冷火が吼える。

 

 

「一体どういうことですか!?吸血鬼とアンドロイド!?暗殺者にチャイニーズマフィア!?最早どこから突っ込んでいいのか全く分かりません!!」

 

 

「えっと、どういうことと言われても言葉通りの意味なんだが」

 

 

「うにゃぁああああ!!」

 

 

冷火が俺の胸ぐらを掴みながらユラユラと揺らす。

 

ちょっと君、普通の人間と違ってマテリアルなんだから力強いいぃぃぃ!?

 

 

「お、落ち着け冷火!ちゃんと説明するから!!」

 

 

「フゥー!フゥー!フゥー!」

 

 

落ち着かんかい。

 

発情してる雌猫みたいになってるから。

 

俺は映像を進めていく。

 

 

「闇の書事件が終わってしばらく経った頃かな。俺はまだ世間から注目を浴びてたんだ」

 

 

俺は説明する。

 

約一ヶ月間、行方不明になってた影響で高校生活に支障をきたしていたこと。

 

報道陣や雑誌の記者などが日夜取材に来ていたことで、とてもではないが学園に行ける状態ではなかったこと。

 

あと授業についていけないというのもあった。

 

その対策として学園側から掲示された案が、月村家でノエルから授業を教わることであった。

 

 

「どうして月村家で教わることになったんですか?」

 

 

「風芽丘学園の理事長をしてるのが綺堂さくらさんって人なんだけどな、月村家と綺堂家は親族同士の繋がりがあるんだ。その(つて)でなんとかしてもらった」

 

 

「綺堂さくらさん……ああ、確かすずかさんと忍さんの従姉妹の方でしたね」

 

 

「そう。そもそも月村家の女性陣は、吸血鬼だからな。さくらさんは、人狼と吸血鬼のハーフだし」

 

 

「は?」

 

 

冷火は口をポカーンと空けたままとなる。

 

俺はつい後で飲もうと思っていた炭酸サイダーをシェイクしてぶちこんでみる。

 

 

「ぶふぅっ!?」

 

 

勢いよく冷火の口の中に入っていく炭酸サイダー。

 

およそ女の子として出してはいけない声を出す。

 

そのとき俺の顔が鷲掴みにされる。

 

アイアンクローである。

 

 

「……何をするんですか?」

 

 

「いでででで!?口が空いてたからつい!?」

 

 

「ついで人の口に炭酸サイダーを突っ込むんじゃありません!!」

 

 

俺の首から下が凍らされる。

 

さぶっ!?

 

無茶苦茶さぶっ!?

 

 

「お兄様、そのままで話してどうぞ」

 

 

「いやちょっと……絵面的にそれはどうかと」

 

 

「話してどうぞ」

 

 

「それに寒いし」

 

 

「話してどうぞ」

 

 

「いやだから」

 

 

「ハナシテ……ドウゾ?」

 

 

「ハイ」

 

 

分かったから氷魔剣を造形するんじゃありません。

 

それより顔濡れてるから早く拭きなさい。

 

仕方ないので俺は首から下が凍ったまま、夜の一族について説明する。

 

月村家は【夜の一族】という昔から存在する吸血鬼の一族の一家系であること。

 

海鳴市を裏から統べる存在であることを話した。

 

 

「そしてメイドのノエルとファリンも、自動人形と呼ばれるアンドロイドだ」

 

 

「ノエルさんとファリンさんがアンドロイド!?」

 

 

「ああ。自動人形は寿命の長い夜の一族のために大昔に作られた存在……らしい」

 

 

「らしい?」

 

 

「資料が残されてないから確証的な意見がないんだってさ」

 

 

「そうなんですか」

 

 

「ちなみに言っとくと、風芽丘学園の教師のほとんどは夜の一族の関係者だな」

 

 

「つまりは教師のほとんどが吸血鬼……ということですか?」

 

 

「そうなる」

 

 

冷火はまたしても驚愕する。

 

さっきからこの子驚いてばっかりね。

 

 

「でだ、俺は月村家でただお世話になるのもあれだから、すずかの付き人として執事をすることになったんだ」

 

 

「お兄様の執事ですか。……ちょっと見てみたいです」

 

 

「それはまた今度な」

 

 

「むぅ」

 

 

冷火が頬を膨らませる。

 

可愛らしいが先に進む。

 

 

「それで月村家で執事をしながら過ごしてたとき、新年パーティーが開かれることになったんだ」

 

 

俺は映像を見せる。

 

芸能人やアスリート、IT社長など有名どころの人達がたくさんいた。

 

恭也君と美由希さんもそれぞれ忍さんとさくらさんの護衛として、パーティーに参加していた。

 

俺もこのときすずかの護衛も兼ねていた。

 

 

「で、すずかの挨拶周りが終わってゆっくりしてたら、一人の男が近寄ってきたんだ」

 

 

映像には茶髪の美男子が映っていた。

 

 

「こいつの名前は氷村遊。夜の一族の純潔種の吸血鬼だ。海鳴市では、月村家・綺堂家・氷村家の三家が夜の一族の中心として名を連ねていたんだ」

 

 

そして氷村と話したあと、奴の『サプライズを用意しておいた』という伝言を伝えるため、俺達はさくらさん達と合流した。

 

それからしばらく談笑していると、突如爆発音が響いた。

 

所々で火の手があがり、屋敷は炎に包まれる。

 

それらにすぐに対応するさくらさんと忍さん。

 

警備員に指示を出し、パーティー参加者をひとまず中央に集めて座らせる。

 

そのあとスプリンクラーが作動すると思われたとき、会場の扉から数人の男女が吹き飛んできた。

 

そして扉の先から氷村遊がやってきたのだ。

 

対峙するさくらさんと氷村遊。

 

すると奴は驚くべきことを言い出した。

 

 

『ここに【夜の一族】の関係者が集まったのは実に都合が良かった。目撃者共々、口封じできるからね。ここで全員……皆殺しだ』

 

 

「皆殺し!?」

 

 

「ああ、奴は会場にいる人達を一人残らず殺そうとしたんだ」

 

 

そして現れる自動人形達。

 

奴らが動き出そうとする前に、俺が既に動いていた。

 

二重捕縛魔法(ダブルバインド)で奴らを拘束し、蹴り飛ばしたのだ。

 

すると氷村が目を血走らせながら、一直線に俺の方へと向かっていく。

 

 

『劣等種が……下等な劣等種が……高貴で華麗な純血種たる吸血鬼のこの僕に……一体何をしたああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!????』

 

 

爪をとがらせ俺へと攻撃する。

 

しかし映像の俺は体捌きでそれらをかわし、奴の攻撃に合わせるようにカウンターを入れていく。

 

そして右手に炎を纏わせ、奴のアゴをアッパーで吹き飛ばした。

 

 

「流石ですね、お兄様」

 

 

「いくら攻撃が早かろうが隙だらけだったからな。むしろやりやすかった」

 

 

奴は仰向けに倒れるがすぐに起き上がり、目を赤く光らせ夜の一族としての能力を発動させる。

 

すると周囲の瓦礫が幾つも浮き、真っ直ぐに俺へと向かう。

 

俺は向かってくる瓦礫をパンチとキックで破壊していくと同時に、奴の懐へと潜り込む。

 

だが氷村はコウモリに変化して逃れる。

 

そして今度は、コウモリの集団が俺へと襲いかかる。

 

しかし俺はブリッツアクションを発動させてその場から消え、コウモリの集団の後ろ側へと回り込む。

 

と同時にホールディングネットを発動させて捕獲し、そのままコウモリ共を床へと叩きつけると、左手を向けて炎の銃弾を連射で放った。

 

 

『ぐぁあああああ!?』

 

 

コウモリに変化していた氷村の姿が元に戻る。

 

 

『どうした氷村遊?こんな下等で劣等種なクソガキに手も足も出ないか?あんたは高貴で華麗な純血種の吸血鬼なんだろ?』

 

 

『く……くうううぅぅぅ……』

 

 

『あんた……今までまともにケンカすらしたことないんだろ?確かにあんたの人間離れした身体能力や吸血鬼としての能力は強力だ。だがな、あんた自身がそれらの能力を扱いきれていないんだよ。まさに宝の持ち腐れってやつさ』

 

 

『だ、だまれえぇぇぇ……か、下等な劣等種が……下等生物が……この僕を見下すなああああぁぁぁぁ』

 

 

『大人しく投降しろ氷村遊。そしてここにいる人達を解放するんだ』

 

 

俺は氷村に投降を進めるが、奴は突然笑いだす。

 

隣で見ている冷火が、不快そうな表情をする。 

 

 

『く、くくくくくく……何を勝った気でいる小僧。僕はまだ負けていない。そういえば……』

 

 

氷村はすずかの方へと視線を向ける。

 

 

『貴様はあの月村の娘の執事だったな。そうだ丁度いい。イレイン!おいイレイン!!』

 

 

そのときイレインが俺を吹き飛ばし、氷村の元にまでやってくる。

 

冷火はそのことに違和感を覚えたようだ。

 

 

「お兄様、あのイレインという女の攻撃に全く反応できていなかった様ですが……」

 

 

「超直感にも弱点はある。それが生物以外の攻撃には全く反応できないことだ」

 

 

「まさか……」

 

 

「ああ、イレインは自動人形だ」

 

 

『お呼びでしょうか遊様』

 

 

『リミッターを外せ!こいつは……この小僧は、僕にケガを負わせた明確な敵だ!!』

 

 

『遊様の敵……』

 

 

そのときモニターの忍さんが声をあげる。

 

 

『ダメ!逃げなさいヒエン君!イレインは自動人形の最終機体!「自我」を植え付けようと自律回路に重きが置かれたせいで制御が甘いの!だからリミッターを外した途端……暴走する可能性があるわ!!』

 

 

「暴走……ですか?」

 

 

「見てれば分かるよ」

 

 

映像は続く。

 

 

『了解しました。遊様に傷を負わせたこの男を敵と認定。リミッターを解除後、排除します』

 

 

イレインはゆっくりと呟いた。

 

 

『リミッター……解除……』

 

 

静寂が場を包む。

 

イレインはキョロキョロと周りを見渡すと高笑いを始めた。

 

 

『……自由時間…………あははははっっ!!!!』

 

 

狂いだしたかのように笑いだすイレイン。

 

彼女は粗方笑うと満足したのか、氷村へと話しかける。

 

 

『あんたが……私の起動者?』

 

 

『あ、ああ。そうだ』

 

 

氷村もイレインの様子に驚いていたが、なんとか返事を返す。

 

 

『……ありがとう……。永い眠りから起こしてくれて』

 

 

『ふん。礼には及ばん』

 

 

『それにしてもあんた……ふーん……一族なんだ』

 

 

『そうだ。僕は選ばれし夜の一族の純血種だ』

 

 

氷村は起き上がると指示を出す。

 

 

『さあやれイレイン!あの目障りなクソガキを始末しろ!!』

 

 

そのとき、全く予想外なことが起こる。

 

 

 

ザシュッ……

 

 

 

『ぐ…………ああ…………っっ!?』

 

 

氷村が音を立てて崩れ落ちる。

 

 

『『『『『きゃあああ!?』』』』』

 

 

イレインが氷村にブレードで斬りつけたのだ。

 

あまりの展開に冷火は言葉をなくす。

 

猫達も驚いているようだ。

 

 

『あーらら……起動者を切っちゃった』

 

 

『き……きさまっ……一体なんの……つもりだ?』

 

 

『別にいぃ~、ただあんたみたいなのにこの私が使われるのもなんだか癪だなあって思って。それよりこの状況ピンチよねぇ。そういうわけで……イレイン……「自分の身を守るため」の、自律的防御行動に入りまーす』

 

 

そしてイレインは不敵に微笑みながら、左手に展開したブレードを構える。

 

 

『それにしてもあんた、私の噂を知らなかったのねぇ。なんか可哀想っていうか、バカっていうか』

 

 

『噂?』

 

 

俺の呟きに忍さんが答える。

 

 

『さっきイレインは自動人形に「自我」を持たせる研究の粋の成果を集めた最終機体って言ったわよね?だからその……彼女のそれは強すぎて……』

 

 

「それが故の暴走……ですか」

 

 

「ああ」

 

 

冷火の呟きに俺は答える。

 

 

『……私は自由になる。……やりたいようにやる』

 

 

イレインは周りを見渡し、言った。

 

 

『追われたりすると厄介だわ。だから……目撃者は……皆殺しね……』

 

 

その言葉にキレた俺が奴へと殴りかかる。

 

 

『目覚めたところ悪いんだが、お前にはまた眠ってもらうことになる。ここにいる全員を皆殺しにするなんて……流石に見過ごせないんでな』

 

 

『へえー。ただの人間が言うじゃない。じゃあまずは……あんたから始末させてもらおうかしら』

 

 

『やれるものならやってみろ』

 

 

するとイレインが呟く。

 

 

『来なさい。私の可愛い妹達』

 

 

五体のレプリカ、イレインに似た自動人形達が奴の隣に並ぶ。

 

すると俺の隣にもある五人が並ぶ。

 

 

『全く何を一人でやるつもりだお前は……』

 

 

『流石に一人じゃ厳しいでしょ。加勢するよ?』

 

 

恭也君に、美由希さん。

 

 

『私達もお供します』

 

 

『皆が楽しんでるパーティーを台無しにしたんです!許せません!!』

 

 

ノエルと、ファリン。

 

 

『このパーティーの責任者として私も加勢させてもらうわ。それにあんなのでも私の兄だから。身内の起こした落とし前……ここでつけるわ』

 

 

さくらさん。

 

 

『皆、ありがとう。じゃあ皆にはレプリカ達の相手をしてもらいたい。その代わりイレインの相手は俺がする』

 

 

『任せておけ』

 

 

『任せて』

 

 

『お任せ下さい』

 

 

『任せて下さい!』

 

 

『任せなさい』

 

 

恭也君と美由希さんが両手に小太刀を構え、ノエルとファリンが両腕からブレードを展開させ、さくさらんは夜の一族としての能力を発動させたのか目が赤くなる。

 

 

『No1からNo5はあいつらの相手をしなさい。私はあの炎のガキンチョを始末するから』

 

 

『『『『『了解しました』』』』』

 

 

レプリカ達も両腕からブレードを展開させ、イレインも左手のブレードを構えると同時に右手に鋼鉄性のムチを展開させる。

 

俺もグローブに炎を灯し、構える。

 

 

『それじゃ……いくぞ!!』

 

 

そしてそれぞれの相手と激突したのだ。

 

 

「なんですか……この胸熱展開は!」

 

 

「なぜ急にテンションが上がってるんだ……?」

 

 

「敢えて言うなら、『オラちょっとワクワクしてきたぞ』状態ですっ!」

 

 

「おい、どこで覚えたその言葉?」

 

 

「掲示板です」

 

 

やだ。

 

この子、ネット住民になってた。

 

まあ、気にせず進める。

 

そして始まる、恭也君達対レプリカ達の戦い。

 

そんななか、俺もイレインとの戦いを始めていた。

 

 

『クソガキイイイイイィィィ!!!!!!』

 

 

『イレイイイィィィィィィン!!!!!!』

 

 

互いに挑発を繰り返した後、真っ正面から激突する。

 

しかし俺はイレインに苦戦する。

 

イレインの強さの秘密……

 

それは奴の身体に備わっている複数の機能。

 

硬いボディに、屈強な腕力、高速移動を可能とする脚力に、切れ味の凄まじいブレード、電撃が付与されているムチなどがあった。

 

 

「強いですね……」

 

 

「アンドロイドだからな。正直、かなり戦いづらかった」

 

 

「戦ってる場所も問題ですしね」

 

 

「周りに一般人がいたからな。必然的に近接戦闘で奴を倒すしかなかった」

 

 

その後、形態変化の新機能を使うことでなんとかイレインと渡り合う俺。

 

途中、レプリカ達に背中を斬りつけられるなどのハプニングがあったが集束打撃・太陽の加速(ソーラーアクセル)で奴を倒すことに成功した。

 

レプリカ達も恭也君達によって無事倒された。

 

 

「それでこの騒動を起こした氷村遊は記憶を全部消されて綺堂家で再教育中。氷村家はこれで事実上消滅した訳だ。イレインは初期化されて忍さんが今現在も修復中。レプリカ達は既に修復が完了して屋敷の警護に当たらせてるらしい」

 

 

「……そうなのですか。でもイレインはまだしもレプリカ達は、私はまだ屋敷内で見たことがありませんが……」

 

 

「庭を見回ってるんじゃないか?月村家は敷地がやたらと広いし」

 

 

「ううん……」

 

 

「今度聞いてみるか。あ、冷火……このことは」

 

 

「分かってます。お兄様から聞いたことは誰にも言いません」

 

 

「頼むぞ」

 

 

そして次へと進む。

 

 

「次は裏の世界の暗殺者とチャイニーズマフィアとドンパッチした話だな」

 

 

「一体全体どうなったらそんなことに巻き込まれるのですか……」

 

 

俺は話す。

 

インターミドルの訓練に本格的に入ってからある歌姫と知り合ったことを。

 

 

「フィアッセさん知ってるだろ?」

 

 

「あ、はい。翠屋でよく見る綺麗な方ですよね」

 

 

「あの人、実は世界的に有名な歌手でな。六月末に開かれたコンサートのために四月頃に来日してたんだ」

 

 

「フィアッセさん、歌手だったんですか!?」

 

 

「ああ、それでフィアッセさんは幼い頃から高町家と親交があってな、恭也君と美由希さんとは幼馴染なんだ」

 

 

「へぇ」

 

 

「そのときに桃子さんから紹介されて、仲良くさせてもらってる訳だ」

 

 

「フィアッセさん綺麗ですよね。まさに女性の憧れです」

 

 

「だよな。で、そんなある時、少しスランプに陥ってた俺は、インターミドルのトレーニングをサボって駅前で暇を潰してたんだ」

 

 

「スランプだったんですか?」

 

 

「まあ色々悩みがあったんだよ。で、そのときに市長選挙の演説があったんだ」

 

 

「はい」

 

 

「そして、そこで爆弾テロに遭遇した」

 

 

「ダウト」

 

 

「おい」

 

 

俺はつい待ったをかける。

 

 

「別に嘘なんてついてないぞ?」

 

 

「なぜか無性に言わなきゃいけない衝動に駆られたんです!」

 

 

「はぁ……続き話すぞ」

 

 

俺は説明する。

 

そこで見た違和感を感じた白髪の男がいたこと。

 

その男が携帯端末のような機械のボタンを押すと、爆弾が爆発したこと。

 

その直後に、大剣を持った男が議員を殺そうとしたこと。

 

それを防ぐためにそいつに戦いを挑んだが、生身でセットアップした俺と渡り合ったこと。

 

俺は映像を見ながら話す。

 

 

「こいつの名はグリフ。裏の世界で暗殺を生業としている剣士であり、【切断魔(スライサー)】と呼ばれる殺し屋だ」

 

 

「殺し屋……」

 

 

「それだけじゃない。体内エネルギー『気』を操る『闘気(オーラ)使い』でもある」

 

 

闘気(オーラ)使い?」

 

 

「裏の世界には武術を極めた達人という人種がいるらしい。そいつらに共通して言えることが一つ。皆一様に、『気』を自在に操る術を持っている。グリフもその一人だ」

 

 

「…………」

 

 

冷火は言葉が出ないようだ。

 

俺は続ける。

 

 

「そして俺はなんとかこいつを退けた後、ある人と知り合った。それが御神美沙斗さんだ。この人は美由希さんの本当の母親でもある」

 

 

「本当の母親……ですか?」

 

 

「まあ訳アリってことだ」

 

 

「そうですか……分かりました。深くは聞きません」

 

 

「助かる」

 

 

そして俺は話す。

 

グリフはフィアッセさんの命を狙っていること。

 

その決行はチャリティーコンサートの日であり、美沙斗さんはフィアッセさんを守るために来日してきたこと。

 

そしてフィアッセさんの護衛として恭也君と美由希さんを鍛えにきたことを話した。

 

 

「で、グリフを退けた俺も奴に狙われるだろうと言われた。それだけじゃなく、グリフのバックにいるチャイニーズマフィア『(ロン)』の連中にも」

 

 

「…………」

 

 

「周りの人達にも危害を加えられる恐れがあったからな。だからあちらが事を起こす前にこちらから仕掛けることにした。美沙斗さんの助手になって(ロン)の支部を叩き潰すってことにな」

 

 

「な、なんだか思っていた以上に大変な事態になっていたんですね」

 

 

「ああ。それで俺の力を見せるために美沙斗さんと模擬戦をしたんだが……完敗だったよ」

 

 

「お兄様が負けたんですかっ!?」

 

 

「ああ」

 

 

俺は美沙斗さんとの模擬戦を見せる。

 

完成された御神の剣士の強さは想像以上であった。

 

気を用いることで遠距離でも斬撃を自在に飛ばすし、神速を使用することで一瞬で距離を詰めてくる。

 

技のバリエーションも豊富で基本の技から奥義、はたまた極意をも使用する。

 

それだけでなく、鋼糸や飛針などにも気を纏わせることで攻撃力や耐久力も上げているのだ。

 

 

「御神の剣士……なんて強さですか」

 

 

「美沙斗さんは達人級(マスタークラス)だからな。今の俺の素の身体能力じゃ、絶対に敵わない。セットアップしてようやく……といったところだ」

 

 

「と、とんでもないですね……」

 

 

「で、そこから三週間程、美沙斗さんと一緒に日本全国にある(ロン)の支部を潰して回ったんだ。途中から恭也君と美由希さんも混ざって、四人で軽く50は潰したかな。支部を潰し回ったのはチャリティーコンサートの襲撃を諦めさせる狙いもあったんだけどな」

 

 

「そうだったんですか」

 

 

「結局、コンサートの襲撃はあったけど」

 

 

俺は映像を続ける。

 

コンサート当日、ホテルにはフィアッセさんの幼馴染であるエリスさんと知り合う。

 

当初は彼女とフィアッセさんの護衛のことで揉めるが、なんとか折衷案を出すことで納得してもらった。

 

そして俺は黒猫フォームでフィアッセさんの側にいることに。

 

前衛に恭也君、後衛に美由希さんがつく。

 

美沙斗さんは怪しい人物がいないか見回っていた。

 

そしてホールを移動していると、そいつらはやってきた。

 

金で雇われた殺し屋共だ。

 

だが恭也君と美由希さんは冷静に対処する。

 

フィアッセさんを連れて逃げる俺達。

 

しかしそこにグリフの奴が現れる。

 

即座に美由希さんが立ちはだかり、俺達は走り出す。

 

地下駐車場にたどり着くと今度は(ロン)の構成員達が現れる。

 

恭也君にその場を任せた俺達は、ある部屋へとなんとかたどり着いた。

 

 

「美由希さんも恭也君もフィアッセさんを守るために必死に戦ってくれた」

 

 

『はぁあああああ!!』

 

 

映像に映るのは、グリフと激闘を繰り広げる美由希さん。

 

 

『御神不破流の前に立ったことを……不幸と思え!!』

 

 

(ロン)の構成員達を駆逐していく恭也君。

 

 

「そして俺もこの出来事を仕組んだ黒幕と対峙した」

 

 

だが俺達の前にも一人の男が立ちはだかる。

 

 

【スナッチ・アーティスト】

 

 

【クレイジーボマー】

 

 

の名で呼ばれている白髪の男。

 

その名もファン。

 

 

「この男、ファンはフィアッセさんをずっと狙ってたストーカー野郎なんだ」

 

 

「ストーカー……ですか?」

 

 

「ああ。こいつ、フィアッセさんにとんでもないことを言い出したんだ」

 

 

俺はその映像を見せる。

 

 

 

『私と結婚しよう』

 

 

 

「「「「「…………」」」」」

 

 

沈黙が場を支配する。

 

あまりのことに冷火と猫達は真顔で硬直している。

 

 

「こいつの目的はフィアッセさんを直接手に入れることだった。このとき、本気で結婚できると思っていたようだ」

 

 

「女の敵ですね」

 

 

「ニャー!フシャア!!」

 

 

するとピンク色の猫が威嚇していた。

 

猫もむかつく程か。

 

 

「勿論、フィアッセさんは断ったけどな」

 

 

『冗談はそこまでにしてもらおうかストーカー野郎』

 

 

映像の俺は右手で後ろのフィアッセさんを庇う。

 

ファンはというと俺の言葉に反応する。

 

 

『ストーカー……だと?』

 

 

『当たり前だろうが。そもそもフィアッセさんの命を狙っておいて結婚しようだと?自惚れるのも大概にしろよクソ野郎が』

 

 

俺は少し声を荒げながらファンへと話す。

 

 

『お前、フィアッセさんを手に入れるのが目的だと言ったな。ならば聞く。どうして彼女が大切にしている者を傷つけようとする?どうして彼女の大切な物を壊そうとする?』

 

 

『面白い質問だねぇ。そんなものは簡単だ。私はね、昔から欲しいと思ったものは見境が付かなくなる性質(たち)でねぇ。どんなことをしてでも手に入れる』

 

 

『どうして……そこまで……』

 

 

フィアッセさんが唖然とした様子で聞き返す。

 

するとファンはにやけながら言った。

 

 

『"愛する"ということはそういうことなんじゃないかい?』

 

 

『つまりは……お前がフィアッセさんを"愛している"からフィアッセさんの大切な人達を傷つけても問題ない……フィアッセさんの大切な物を壊しても問題ない……そう言いたいのか?』

 

 

『そうさ。彼女には私がいればいい』

 

 

奴がそう言葉を吐いた瞬間、画面の俺は額の炎の炎圧をあげて最大パワーで殴りかかっていた。

 

 

 

ドガンッッッッッ!!!!!!

 

 

 

奴との間合いを一瞬で詰め、顔面に炎の拳を叩きつける。

 

 

『ぐぁああああ!?』

 

 

奴の顔に俺の拳がクリーンヒットし、ホテルの壁を貫通して吹き飛んでいった。

 

 

「ナイスですお兄様」

 

 

「ニャア!ニャア!」

 

 

冷火とピンク色の猫からサムズアップをいただく。

 

もう突っ込まんぞ……。

 

すると数秒して奴はこちらへと戻ってきた。

 

 

『やってくれるね少年。君は邪魔だなぁ』

 

 

『邪魔するのは当たり前だろ。俺は彼女の護衛なんだ。お前の妄想に付き合ってる暇はないんだよ』

 

 

『私は彼女を手に入れなきゃならない。赤の他人の君に口出しされる(いわ)れはないんだがねぇ』

 

 

『赤の他人……ね』

 

 

画面の俺はフィアッセさんの側へと行く。

 

 

『お前に良いことを教えてやるよ。俺とフィアッセさんは赤の他人じゃない。むしろお前が羨む関係だ』

 

 

『……何が言いたい?』

 

 

そして俺は彼女を勢いよく抱き寄せて、言った。

 

 

『フィアッセさんは……いや、フィアッセは俺の女だ』

 

 

『『なっ!?』』

 

 

「「「「「は?/にゃ?」」」」」

 

 

俺の言葉にファンとエリスさんが驚く。

 

そして冷火と猫達の目がやばい。

 

特にピンク色の猫の目なんて、混沌の闇を思わせるほどに真っ暗なんですけどおおぉぉぉ((((;゜Д゜)))

 

詳細に言葉にできないけどヤバイ。

 

マジナンカヤバイ。

 

俺は冷や汗をかきながら言葉を紡ぐ。

 

 

「いやあれだから。奴に精神ダメージを負わせるための冗談だから。本当に付き合ってる訳じゃないから」

 

 

「「「「「…………」」」」」

 

 

冷火達は何も言わない。

 

俺は映像を続けることにする。

 

 

『…………はっはっは。あーはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!!!!!』

 

 

すると何を思ったのか、ファンは突然笑い声を上げる。

 

そして奴は懐に手を入れ、何かのスイッチらしきものを取り出した。

 

 

『これはこのホテルに仕掛けてある爆弾(プレゼント)のスイッチでねぇ、妙な動きをしたら爆発させるよ?』

 

 

奴は爆弾の起動スイッチを見せびらかす。

 

 

『最新型の自信作なんだ。ステージ上はまず軽く吹き飛ぶね』

 

 

「卑怯な……」

 

 

冷火は真剣に映像を見る。

 

彼女は良い意味で言えば、純粋だ。

 

悪い意味で言えば、世間知らずだ。

 

だからこそこういった映像を見せるのは彼女のためになる筈だ。

 

奴は言う。

 

 

『友人達、それとなんの関係もない一般人の命を散らせたくないなら……私と一緒に来てもらおうかフィアッセ・クリステラ』

 

 

『…………っ!』

 

 

フィアッセさんは唇を噛みしめる。

 

その様子を見た俺は彼女に安心させるように言う。

 

 

『大丈夫ですよ。爆弾は起動しませんから』

 

 

『何を言っているのかな?もしかして冗談だと思っているのかい?残念だがそれはないよ。それにこの爆弾の威力は……フィアッセにエリス、君達二人は過去に経験済みだ』

 

 

奴の言葉にフィアッセさんとエリスさんは顔を青くさせる。

 

 

『どういうことだ?』

 

 

『なに、彼女達が十代後半の頃かな。数年前に彼女達は私が仕掛けた爆弾の被害に合っているんだよ。まあ結局、あるボディーガードのせいで殺害依頼も失敗してしまったんだけどねぇ』

 

 

『『っっっ!!!』』

 

 

『なに?』

 

 

俺は質問する。

 

 

『おい、そのボディーガード……もしかして黒髪の日本人だったか?』

 

 

『ん?ああ、そういえばそうだったね』

 

 

『もう一つ聞かせろ。あんたは脅迫状を出すときに黄色いクローバーマークをつけると聞いたんだが本当か?』

 

 

『その通りだよ』

 

 

『……お前が覚えているそのボディーガードは俺の知り合いでな。お前がその人にケガを負わせたせいでその人の家族はバラバラになりかけた。お前がその人にケガを負わせたせいである女性が罪悪感を感じて未だに過去に捕らわれて苦しんでいる』

 

 

『ほう』

 

 

「お兄様、その、今の質問はもしや……?」

 

 

「お前の思ってる通りだよ冷火。ケガをしたボディーガードは士郎さん、バラバラになりかけた家族は高町家。そしてその罪悪感で苦しんでいる女性が……」

 

 

「フィアッセさん……という訳ですか」

 

 

「ああ」

 

 

映像は続く。

 

 

『それを聞いて何も感じないのか?』

 

 

『別に何も?それより君は彼女から離れてもらおうか?逆らうようならこのホテルが火の海に変わるが?』

 

 

『さっき言ったはずだぞ。爆弾は起動しないと』

 

 

『ふっ。まだそんな世迷い言を』

 

 

『なら……ためしてみろよ。俺の言葉の意味が分かるはずだ』

 

 

『……後悔することになるぞ』

 

 

奴は勢いよくボタンを押す。

 

しかし何も起こらなかった

 

 

『なぜだ!?なぜ爆発しない!?』

 

 

『この部屋を結界で隔離した。何度スイッチを押そうが爆弾は起動しないぞ』

 

 

『結界……だと!?』

 

 

『そうだ。そしてこの結界は俺を倒せば解除される』

 

 

『なら君を倒せば爆弾は起動する訳だ』

 

 

『そういうことだ』

 

 

そして互いに近付き、接近戦を開始する。

 

 

『ぬん!』

 

 

『ふっ!』

 

 

ファンはトンファーの刃で攻撃を仕掛け、俺は籠手でそれを受け止め、パンチを放つ。

 

互いに近距離で技をかけ合う。

 

 

『『はぁ!!』』

 

 

 

ガキンッッッッッ!!!!!!

 

 

 

籠手とトンファーがぶつかり合う。

 

俺は化勁で奴の攻撃を受け流し、円地で背後へと回り込む。

 

しかし奴の姿がぶれ、蜃気楼のように消えてしまった。

 

 

『どこへいった?』

 

 

俺は目を閉じて奴の気配を探る。

 

するとフィアッセさんの後ろにいる希薄な存在を感知した。

 

俺はブリッツアクションを発動させて、フィアッセさんを捕らえようとしていたファンを捕らえた。

 

 

『捕まえたぞ』

 

 

『まさか……完全に気配を消した私を察知し、そのうえ回り込むとは……』

 

 

『お前には感謝している。特訓の成果を確認できたからな』

 

 

そして奴の腹へビッグバンアクセルをぶちこむ。

 

 

『がはっ!?』

 

 

ファンは床へと倒れた。

 

 

「おお!凄いです!!」

 

 

「正直、苦戦する程でもなかった」

 

 

そこから奴はゆっくりと起き上がり、もう一つ仕掛けてあった爆弾を爆発させようとするが、エリスさんとフィアッセさんの手によって防がれた。

 

 

「まあ、ここで俺の戦闘は終わった訳だ」

 

 

今度は恭也君と美由希さんの戦闘映像を見てみる。

 

それを見た冷火は感心するような声を出す。

 

 

「お二人ともお強いですね。特に機動力が人間離れしています」

 

 

「二人が使ってるのは、『神速』と呼ばれる御神流の奥義だ」

 

 

「神速……ですか?」

 

 

「ああ。神速の正体は極限まで高めた集中力で脳のリミッターを強制的に外し、その処理速度を極端に上げる技だ」

 

 

「脳のリミッターを?」

 

 

「ああ。これにより思考及び判断能力、知覚能力が爆発的に上昇する。つまり自分以外の動きが全てスローに見える訳だ。だがデメリットも当然存在する。脳のリミッターを強制的に外すんだ。身体にかかる負担は相当なものだ」

 

 

「でもお二人とも普通に何度も使われてますが……」

 

 

「それは気を纏うことで身体にかかる負荷を最小限に抑えているからだ。実際、気を修得する前の二人は一日に使える神速の回数は三~四回が限度だったからな」

 

 

「そうだったんですか……」

 

 

二人の戦闘映像が終わる。

 

恭也君は(ロン)の構成員達をあっという間に制圧し、美由希さんもグリフに追い詰められるものの美沙斗さんが助けに入ることで事なきを得た。

 

というかこの戦闘を乗り越えてからの二人の成長スピードが凄まじい。

 

最近、模擬戦はしていないので、そろそろさせられるかもしれない。

 

うわぁ……嫌だなあ。

 

 

「で、なんとか襲撃を乗り越えたフィアッセさんはコンサートを無事終える事ができた訳だ」

 

 

映像に映るのは翠屋でコンサート成功のお祝いパーティーをしているところだ。

 

皆、美味しそうに料理を食べている。

 

このとき俺は肉しか食べていなかったのを覚えている。

 

 

「……お兄様、ふと思ったのですが海鳴市は魔境か何かですか?」

 

 

「言いたいことは、なんとなく分かる。俺から言えることは一つだけだ。気にするな。一々気にしてたら、身が持たないぞ」

 

 

「……分かりました」

 

 

冷火は渋々ながら納得する。

 

この子は聞き分けが良いので助かる。

 

 

「……はくしっ!」

 

 

するとくしゃみが出る。

 

どうやら身体を冷やしてしまったらしい。

 

 

「あ、このままでは風邪を引いてしまいますね。すぐに解除します」

 

 

冷火が氷を解除してくれる。

 

ようやく解放か。

 

俺は腕を回しながら調子を確かめる。

 

特に問題はなかった。

 

 

「キリもいいし、振り返りはこれくらいにしとくか」

 

 

「え?シンフォギアの世界は??」

 

 

「疲れたからまた今度」

 

 

「えぇー」

 

 

「はいはい、文句言わない。それより晩御飯の支度するぞ。もう18時前だしな」

 

 

「はーい」

 

 

とりあえず説明を終えた俺は、晩御飯の支度を開始する。

 

すると何を思ったのか、冷火が神妙な表情で話しかけてきた。

 

 

「そういえばお兄様、もし……もしですよ?私や、他の世界で知り合った皆さんが、もうどうしようもないほどのピンチで、絶体絶命、限りなく絶望的でなにも出来ない状況だったとしても……助けを求めたら……真っ先に助けに来てくれますか?」

 

 

冷火が何やら不安そうに聞いてきたので、俺は答えた。

 

 

「当たり前だろ」

 

 

冷火は唖然としながら呟く。

 

 

「即答するとは予想外です……」

 

 

「誰かを助けるのに理由なんていらないだろ?それに皆、俺の大切な人だ。大切な仲間だ。その人達が困ってるなら、たとえ世界の裏側でも異世界でも、どこにでも助けにいってやるよ。勿論冷火、お前もだ」

 

 

俺は言葉を続ける。

 

 

「本当にもうどうしようもないと思ったら、遠慮せずに呼べ。目一杯叫べ。そうすれば俺が絶対に助けてやる。なんとかしてやる」

 

 

俺は冷火の頭を撫でながら言った。

 

 

「約束だ」

 

 

俺は表情をキリッとさせて言う。

 

何も根拠なく言っている訳ではない。

 

相棒の額には、人の想いに強く反応するイマジンストーンがついている。

 

もし俺と繋がりのある人達が何かしら強く思えば、その想いに反応する確率は高い筈だ。

 

すると冷火が俯きながら呟いた。

 

 

「……お兄様、いつか刺されますよ。でも、ありがとうございます」

 

 

なぜか殺人予告もされた件について。

 

そのあとは普段と変わらず過ごしていた。

 

ちなみにカラフル猫四匹は、このままなし崩し的にウチに泊まることになった。

 

リニスになんて説明しようか迷ったが、そういえば今日はミッドチルダに用事があっていないんだった。

 

説明は帰って来たときにすればいいか。

 

余談ではあるが、遊びに来たテスタロッサ姉妹がカラフル猫四匹に夢中になったのは仕方がなかったのかもしれない。

 

 

 

ヒエンside end

 

◆◆◆

 

第三者side

 

 

 

『約束だ』

 

 

中継されていた映像が終わる。

 

少年の話を聞いていたオールスターズの面々は、顔を赤くさせていた。

 

彼の大切な人と、大切な仲間という言葉を聞いて恥ずかしくなったのだ。

 

だが彼の今までの戦いの足跡を見てきて、言葉が出てこなかった者もいる。

 

まさか僅かな期間で、ここまで命のやり取りを経験しているとは予想していなかったからだ。

 

それは側で付き添いとして見守っているつぼみの祖母、薫子も例外ではなかった。

 

彼女は以前、少年の過去に関わった事件を聞いたことがある。

 

だが彼が帰ってからの事件は、彼女としても気になっていたので一緒になって聞いていたのだが……。

 

 

(……話に聞いてはいたけど想像以上ね。ヒエン君の物事に巻き込まれる確率が異常に多すぎる。本人の性格を抜きにしても……)

 

 

薫子は皆に話しかける。

 

 

「皆、話を聞いて思うところはあると思うけど今日はもう帰りなさい。気になるなら、また明日来ればいいわ。あの子は相変わらず話題に事欠かないみたいだしね」

 

 

薫子の言葉に皆は苦笑しながら頷く。

 

そして皆、挨拶をして帰っていく。

 

一人残った薫子は呟いた。

 

 

「……あの子にも平穏な毎日が訪れるといいのだけど」

 

 

彼女の様子を妖精のコッペは心配そうに見つめていた。

 




シンフォギアの振り返りは、またの機会に。

次は久し振りにミッドチルダのナカジマ家にお邪魔します(イソノーヤキュウシヨウゼー。

そこでインターミドル出場選手について触れます。

先に言っておくと変人しかいないです。

では、また(・∀・)ノ

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