大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも(゜▽゜*)

続き書けたで候。

アダム最終決戦決着です。

では、どうぞ( *・ω・)ノ


第三百一話 歌い舞い踊る戦姫XLII

第三者side

 

 

 

少年達とアダムとの闘いは苛烈を極めていた。

 

アダムが真の姿を現してからも、少年達はなんとか奮闘するものの、徐々に防戦一方となっていく。

 

十四人という圧倒的人数差があるものの、基本的にはアダムの方が強く、地力の差で押されていた。

 

こちらがダメージをうまく与えられたとしても、神の力によってダメージをなかったことにされてしまう。

 

隙を見て少年が放った全力のソーラーアクセルをも、アダムは耐え抜いてしまった。

 

 

『図に……乗るなあああぁぁぁ!!!!』

 

 

そしてアダムは、少年の頭を掴むと地面に何度も叩きつける。

 

 

『がっ!?』

 

 

『ぐぁああ!?』

 

 

そのまま押し付けながら、地面を引きずっていく。

 

だがアダムは攻撃の手を一切緩めず、少年を廃ビルへと投げ飛ばす。

 

その威力は凄まじく、廃ビルは倒壊した。

 

もちろん本部でもその様子はモニターされていた。

 

 

「ヒエン!?」

 

 

リニスが悲痛な面持ちで少年の名前を呼ぶ。

 

見ていられないのかエルフナインは両手で顔を覆い、オペレーターの友里・藤尭両名も苦い顔で見ていた。

 

弦十郎が厳しい表情で指示を出す。

 

 

「ヒエン君の容態を調べろ!今すぐだ!!」

 

 

「はい!」

 

 

友里がキーボードを操作し、少年の容態を調べる。

 

 

「ヒエン君のバイタル確認中……大丈夫です!生きてます!!」

 

 

友里の報告に一同はホッとする。

 

しかし尚もピンチは続く。

 

 

『これで終わりだあぁ!!』

 

 

アダムが黄金錬成を収束し、廃ビルに放ったのだ。

 

廃ビルは爆発し、跡形も無くなる。

 

 

「そ、そんな……」

 

 

エルフナインが絶望的な表情を浮かべるが、リニスが励ます。

 

 

「大丈夫です。ヒエンは生きてます。どうやら地下に落ちたらしく、そのおかげでアダムの攻撃から逃れられた様です」

 

 

「そうですか。良かった……」

 

 

リニスと少年は魔力パスで繋がっているため、リニスには少年の精神状態が現在進行形で分かっている。

 

 

(焦りと不安の感情が入り混じっている?いや、少し落ち着きましたね。何か策を思いつきましたか?)

 

 

そしてモニターに映るアダムは、今度は響達に向けて黄金錬成を連射する。

 

咄嗟にカリオストロと、プレラーティがラピスの盾を形成し、ガードする。

 

すると響達に動きがあった。

 

 

「これは……ラピス・フィロソフィカスのファウストローブを形成するエネルギーを使って!?」

 

 

友里が分析する。

 

なんとサンジェルマンがラピスの力を使ってシンフォギアの力の底上げを試みようというのだ。

 

そのままサンジェルマンは自身の纏うラピスの力を響達に譲渡する。

 

その証拠にサンジェルマンは通常時の姿に戻っていた。

 

さらに響は絶唱を唱え、ラピスの力の増幅を試みる。

 

 

『ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl』

 

 

それを見た藤尭と友里が焦る。

 

 

「無茶だ!フォニックゲイン由来のエネルギーじゃないんだぞ!!」

 

 

「このままではギアが耐えられず、爆発しかねません!!」

 

 

二人の言葉は最もである。

 

この状況を分かりやすく自動車で例えると、普通自動車にスポーツカーのエンジンを取り付けて、無理矢理走るような物である。

 

一時的には爆発的な力を得られるだろうが、車体……この場合は、ギアが出力に耐えられず、崩壊してしまうだろう。

 

するとエルフナインがキーボードを高速で操作し始める。

 

 

「その負荷はバイパスを繋いでダインスレイフで肩代わり!触媒として焼却させます!!」

 

 

なんとイグナイトを使用するために必要不可欠であるダインスレイフを、ラピスのエネルギー焼却の触媒として使用するのだ。

 

エネルギーの分散をさせることでギアの崩壊を防ごうとしているのである。

 

 

「でも、可能なのか!?」

 

 

「可能にする!それが銃後の守りよ!!」

 

 

「四の五の言う余裕もなさそうだ!!」

 

 

「微力ながらお手伝いします」

 

 

リニスも加わり、四人は猛スピードでバイパスを構築していく。

 

その間にも響は絶唱を歌っていく。

 

 

『Emustolronzen fine el zizzl』

 

 

「本部バックアップによるコンバートシステムを確立!響さん!!」

 

 

四人の奮闘もあってなんとかバイパスを繋ぐことに成功した。

 

 

『バリアコーティング!リリース!!』

 

 

響が呟くと同時に、皆の体が黒くなっていく。

 

 

『抜剣!!』

 

 

そして同時に叫んだ。

 

 

『『『『『『ラスト・イグニッション!!』』』』』』

 

 

響達は自身の色をモチーフにしている光を纏っていた。

 

 

 

────────

──────

────

 

 

 

それを見たなのは達も顔を見合わせ、頷いた。

 

 

「レイジングハート、私達も最大出力に」

 

 

《ですがマスター、今リミッターを解除してしまうと、その後の反動ダメージで動けなくなります》

 

 

「そんなに?何分くらいなら持つの?」

 

 

《持って10分が限界です》

 

 

「十分だよ」

 

 

フェイトとはやてもリミッターを解除することを決意する。

 

 

「バルディッシュ、私達も」

 

 

《Yes sir.》

 

 

「リインフォース、私達も気合い入れていこか」

 

 

《御意!》

 

 

なのは達もリミッターを解除し、魔力光を纏う。

 

すると爆音が響く。

 

音のする所を見れば、上空で少年がアダムと激突していた。

 

連射される黄金錬成を、両手に展開した小型シールドで防いでいたのだ。

 

その様子を見たなのは達と、響達は目を見開く。

 

 

「……やっぱり生きてたんだ」

 

 

「良かったね、なのはちゃん」

 

 

「はい。でも心配かけた罰として、後でしっかりOHANASHIしないと」

 

 

「そうだね。私も協力するよ!」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

すると少年がアダムを吹き飛ばしていた。

 

 

「じゃあ私達も援護に行こう!」

 

 

「「「「「はい!/おう!/了解!」」」」」

 

 

響の号令で、全員で少年の元へと駆けつけた。

 

 

 

第三者side end

 

◆◆◆

 

ヒエンside

 

 

 

空中にて俺達はアダムと対峙する。

 

奴は身体から出る神の力の出力をあげてきた。

 

しかしこちらも制限時間はあるが、全員リミッターを解除した本気の全力だ。

 

勝機はある。

 

そして俺は皆に、作戦を簡潔に伝える。

 

 

「皆、一瞬でいい。奴の動きを止めてくれ。その隙に俺か響がアダムに最大火力の一撃をぶちこむ。どうやら俺の【調和】の能力でも少しくらいなら神の力を無力化できるみたいだからな。これを利用しない手はない」

 

 

全員から了承の返事が返ってくる。

 

そして俺は隣にいる響に話しかける。

 

 

「響、少しでも隙があれば積極的に攻めていくぞ。同時に攻めれば、奴の注意力も散漫する筈だ」

 

 

「分かったよ!」

 

 

響が凛々しい表情で答える。

 

何この漢前女子。

 

滅茶苦茶イケメンなんですけど。

 

 

「塵と消えろ!不完全共ォオオオ!!」

 

 

するとアダムが黄金錬成のエネルギー弾を無数に配置し、こちらに放ってきた。

 

それに気付いた俺は、直ぐ様声をあげる。

 

 

「コンビネーション1(ワン)!シューターシフト!」

 

 

「「「セット!シュート!!」」」

 

 

それに反応したなのはと、フェイト、はやてが瞬時に魔力弾をセットし黄金錬成のエネルギー弾と相殺させる。

 

 

「冷火!」

 

 

「はい!ワイドバーナー!!」

 

 

そして冷火が両手を向けてワイドバーナーを放ち、さらに放たれる黄金錬成を一掃する。

 

冷火は俺のマテリアルなだけあって、俺と同じく死炎魔法を使える。……だがどうしても俺の放つ砲撃より威力は一歩劣ることになるが。

 

 

「いきます!アイスメイク……限界突破(アンリミテッド) 一勢乱舞(いっせいらんぶ)!!」

 

 

だからこそ彼女はそれを補うために手数で攻める。

 

無数の氷の武器を高速で造形し、アダムに一斉にぶつけたのだ。

 

冷火の一番得意とする攻撃が、ファーストエディションを使用した氷の造形魔法である。

 

彼女は主に攻撃や防御面で氷を使用し、相手の意表を突く面で炎を使用する。

 

逆に俺は攻撃や防御面で炎を使用し、相手の意表を突く面で氷を使用している。

 

全くの逆なのだ。

 

しかしだからこそ俺よりも氷の扱いは、お手の物である。

 

いつか彼女と真っ正面から模擬戦してみるのも面白いかもしれない。

 

 

「くっ……生意気に、人類ごときがあああぁぁぁぁ!!」

 

 

すると奴は攻撃を食らいながら両腕を伸ばしてきた。

 

 

「マリア!翼!」

 

 

俺はマリアと翼の名を呼ぶ。

 

 

「任せなさい!」

 

 

「心得た!」

 

 

二人はアダムの両腕を斬り落とす。

 

しかし何やら様子がおかしい。

 

 

「これは!?……ギアが軋む……悲鳴を上げている!?」

 

 

「この無理筋は長くは保たない!」

 

 

なるほど。

 

無理矢理出力を上げているせいか、シンフォギアにもかなりの負担がかかっているのだろう。

 

その証拠にマリアと翼の動きは、通常のイグナイトを解放した時よりも鋭い。

 

恐らく今の彼女達は、エクスドライブに匹敵するほどの出力上昇をギアにもたらしていると思われる。

 

するとアダムが腕を再生させて呟いた。

 

 

「引き上げたのか?出力を……シンフォギアのリビルドを……この土壇場で!?」

 

 

奴は驚き、なぜか一瞬動きが止まる。

 

これは……隙だらけだな。

 

 

「調!切歌!」

 

 

「はい!」

 

 

「合点デス!」

 

 

今度は調が巨大なヨーヨーでアダムの体を締め上げ、切歌が鎖付き手裏剣のようになったアームドギアを投げつける。

 

 

「つまるところは!」

 

 

「一気に決めれば問題ないデス!」

 

 

調のヨーヨーと、切歌の手裏剣でアダムにダメージを与える。

 

 

「ナイスだ二人とも!いくぞ響!!」

 

 

「了解!!」

 

 

俺達もそれに乗じて攻める。

 

俺は両手の籠手を手甲に変化させエネルギーを収束させる。

 

そして奴の顔面をひたすら殴る。

 

 

灼熱の加速(バーニングアクセル) 連打(ストライク)!」

 

 

さすがにソーラーアクセルの連続使用は身体に負担がかかるので、今は避けておく。

 

響もバーニアを吹かせて連続パンチを奴の腹に繰り出す。

 

 

「「おおおおおおおお!!!!」」

 

 

俺と響は雄叫びをあげながら、アダムの顔と腹を高速でひたすら殴る。

 

 

「ぐ、鬱陶しいハエ共が!」

 

 

アダムは錬金術で数多もの風の刃を生み出し、俺達に放とうとしてくるが……

 

 

「アクセルシューター・バニシングシフト!」

 

 

なのはのアクセルシューターがそれを相殺する。

 

その直後、俺達と入れ替わるようにフェイトが大剣を横凪ぎに振るう。

 

 

「はぁあああ!」

 

 

《Blade Impulse.》

 

 

衝撃波ブレイドインパルスがアダムの腹を捉え……

 

 

氷聖剣(コールドエクスカリバー)!」

 

 

冷火の大剣がアダムの頭に炸裂する。

 

 

「はっ!効かないんだよおぉぉ!!」

 

 

だが奴は並行世界の自分にダメージを押し付けることでなかったことにする。

 

しかし俺達の攻撃はまだ続いている。

 

 

「離れてろお前ら!」

 

 

すると超巨大なミサイルが接近してきた。

 

 

「頼んだクリス!」

 

 

クリスの用意したミサイルだ。

 

タマに思うけどシンフォギアって、物理法則かなり無視してるよね。

 

ギアのどの部分でそんな物を生み出してるんだっていう。

 

 

「エクスドライブじゃなくても!」

 

 

クリスが巨大ミサイルを発射する。

 

 

「うおおおおおおっ!?」

 

 

だがアダムは調と切歌の拘束を無理矢理解くと、驚きながらもそれを()()()()()()()()()()

 

だが追撃は止まらない。

 

 

「眼下の敵を打ち砕く力を今ここに。撃て、破壊の雷!」

 

 

「ぐぁ!?」

 

 

魔力チャージを完了させたはやての破壊の雷を食らったアダムは、ミサイル事、埼玉スーパーアリーナらしき場所にぶつかり、大爆発を起こす。

 

 

「おおおおおおおおおっ!!」

 

 

そして響が右手にドリルを展開させて上空から突っ込んでいく。

 

 

(これで決まれば!)

 

 

だが万が一ということもある。

 

 

『聞こえるか四人共?合図したらやってほしいことがあるんだ』

 

 

俺は保険も兼ねてなのは達に()()()()()をした。

 

そして頼み事を済ませた後に、響の後に続こうとする。

 

だがその時、予想外な事が起こった。

 

なんと響のペンダントが紫に変色すると、そのまま落下してしまったのだ。

 

 

「っ!?」

 

 

バランスを崩した響は、地面に激突する。

 

 

「響!?」

 

 

響は起き上がれないようだった。

 

なぜ突然こんなことに?

 

そして俺はある可能性に気付く。

 

 

「まさか……ギアの反動汚染!?」

 

 

しかもアダムに追い打ちをかけようというこのタイミングで!?

 

 

「フフフフ……」

 

 

すると立て直したアダムが響に話しかける。

 

 

「動けないようだな、神殺し。ここまでだよ、いい気になるのも」

 

 

「くぅっ……ああっ!!」

 

 

響はなんとか動こうとするも身体に力が入らないのか、全く動く気配がない。

 

 

「フフフフ……」

 

 

するとアダムは口にエネルギーをチャージしていく。

 

そのエネルギーには神の力が相当に圧縮されているようだった。

 

あんなものを至近距離から食らえば、いくらシンフォギアで身体を保護しているといっても全身が吹き飛んでしまう。

 

俺は直ぐ様、響の前に降りる。

 

 

「ヒエン君!?」

 

 

響が驚いているが、反応している暇はない。

 

 

「ほう?貴様も来たのか?だが無意味だ。二人まとめて消し飛ぶがいい!!」

 

 

一か八か、()()()でアダムから放たれるエネルギーを吸収するしかない。

 

そして俺は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を行った。

 

 

「手を伸ばせ!!」

 

 

「「「「「はあああああっ!!」」」」」

 

 

そのとき翼達が身に纏うシンフォギアを響に向けて飛ばす姿が視界の端に映る。

 

 

「終わりだ!これで……」

 

 

だが無情にもビームは放たれた。

 

 

 

ヒエンside end

 

◆◆◆

 

第三者side

 

 

 

響がアダムへ追撃を行おうとしたとき、突如落下してしまう。

 

その原因を本部では既に看破していた。

 

 

「まさか……反動汚染!?」

 

 

「このタイミングで!?」

 

 

「そうだ!響さんのギアだけ汚染の除去がまだ!?」

 

 

響は神の力が纏わりついた際に、繭によって囚われていたため、ギアの汚染除去をする時間がなかったのだ。

 

 

『動けないようだな、神殺し。ここまでだよ、いい気になるのも』

 

 

そしてアダムはエネルギーをチャージする。

 

すると少年が響を庇う様に前に出た。

 

 

「ヒエン君!?また無茶するつもり!?」

 

 

友里が少年の行動に突っ込むが、事態は進んでいく。

 

 

『ほう?貴様も来たのか?だが無意味だ。二人まとめて消し飛ぶがいい!!』

 

 

そして無情にもビームは放たれた。

 

 

 

 

 

 

ドガァアアアアアアアンン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

大爆発が起こり、一同は焦る。

 

 

「「「「「ヒエン(君)(さん)!?」」」」」

 

 

『フフフフ……フハハハハハハ!』

 

 

アダムが大きく笑い声をあげる。

 

しかし……

 

 

『ん?』

 

 

様子がおかしい。

 

 

「この反応は……!?」

 

 

藤尭が叫ぶ。

 

 

「エネルギーが……吸収されている!?」

 

 

その言葉に反応したのはリニスだった。

 

 

「まさか……零地点突破・改!?」

 

 

土煙が晴れる。

 

そこにいたのは、アダムの放ったビームを吸収している少年の姿だった。

 

 

 

第三者side end

 

◆◆◆

 

ヒエンside

 

 

 

「零地点突破・改」

 

 

俺は零地点突破・改を使い、アダムから放たれたビームを吸収する。

 

そして全て吸収し終えた瞬間に、身体に変化が起こった。

 

 

 

ドクン……

 

 

 

「がっ!?」

 

 

 

心臓の鼓動が聴こえたと思った束の間、突然全身が燃えるように熱くなる。

 

 

 

ドクン……

 

 

 

「ぐ……」

 

 

 

あまりの熱さにたまらず膝をつく。

 

 

 

ドクン……

 

 

 

「ぐぁあああ!?」

 

 

 

まるで身体の中を直接焼かれているかのようだ。

 

このままではまずい。

 

吸収したエネルギーが膨大すぎて、いずれ()()()()()()()してしまう。

 

それが直感で理解できた。

 

 

「う、うぉおおおおおおお!!」

 

 

だからこそ額の炎、グローブから最大出力で身体の中から湧き出る炎を逃がしていく。

 

だが()()()()()()

 

()()()()()()()()()()()()()

 

なら身体のあらゆる所から発散させていくしかない。

 

 

(頭、腕、手、足……身体のありとあらゆる部分から炎を発散させろ!全身、身体の中にある細胞一つ一つに意識を傾けろ!!)

 

 

そしてそれがきっかけとなったのだろう。

 

突如、全身から炎が湧き出たのだ。

 

 

 

 

 

 

ゴォオオオオオオ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

「ヒエン君……全身から炎が……」

 

 

「なんだそれは?……なんなんだそれは!?」

 

 

それを間近で見ていた響とアダムが驚く。

 

 

「まさかこれは……」

 

 

それは俺も例外ではなかった。

 

 

 

しかし俺は知っている。

 

 

 

()()()()を知っている。

 

 

 

原作知識で知っている。

 

 

 

()()()()()()()……」

 

 

 

死ぬ気の到達点。

 

死ぬ気の到達点とは、全身の細胞が死を覚悟することで到達する死ぬ気モードの最終形態、その極致だ。

 

カテキョー原作、虹の代理戦争編にて登場した夜のアルコバレーノであるバミューダ・フォン・ヴェッケンシュタインと、沢田綱吉(ツナ)の二人がその極致に至っている。

 

バミューダは、チェッカーフェイスから死ぬ気の炎を抜き取られ、その憎悪と絶望から第8属性の炎である夜の炎を生み出し,死ぬ気の到達点に至った。

 

対してツナはアルコバレーノであるリボーンを救いたいという希望から大空の炎の死ぬ気の到達点に至った。

 

そういえば、カテキョー最終42巻でリボーンはこう語っていた。

 

 

 

‐死ぬ気とは迷わないこと、悔いないこと、“そして自分を信じること”‐

 

 

 

カテキョー原作でツナは幾多の困難を死ぬ気で潜り抜けてきた。

 

死ぬ気を繰り返す度に、彼は自分の知らない自分に出会い、それが本当の自分だということに気付いた。

 

そして本能的に感付いたのだ。

 

死ぬ気の向こうにある究極の死ぬ気。

 

それこそが死ぬ気の到達点なのだと。

 

彼はリボーンの撃った死ぬ気弾がきっかけで、細胞が死を覚悟し、死ぬ気の到達点へと至ることに成功した。

 

俺の場合は、アダムの神の力が圧縮されたビームを吸収したことがきっかけとなったのだろう。

 

身体が爆散するかもしれないという死の恐怖が、俺の細胞に死を覚悟させたのだ。

 

そして死ぬ気の到達点に至ったことで、一つ確信したことがある。

 

 

(これで奴に……アダムに勝てる)

 

 

神の力を纏い、完全体となったアダムに対抗できる。

 

俺の中の細胞一つ一つが、俺に直接語りかけてくるのだ。

 

アダム(こいつ)を倒せと。

 

それに今の死ぬ気の到達点(この状態)なら、別にオーバードライブ時の姿でなくともいける。

 

俺はオーバードライブを解除すると、フルドライブ時の姿へと戻る。

 

その際にリミッターを戻しておくことも忘れない。

 

そして茫然とするアダムに話しかけた。

 

 

「俺の全ての細胞がお前を倒すために死を覚悟した」

 

 

「まさか……神の力を直接吸収したというのか!?人の身でありながら!?」

 

 

「どうした?えらく慌てているじゃないか?もしかして……俺が怖いか?」

 

 

「ほざけ!」

 

 

アダムが黄金錬成を収束してこちらに放ってくる。

 

だが今の俺にとって、それはなんの脅威にもなりはしなかった。

 

 

「ふっ!」

 

 

俺は軽くグローブに炎を纏うと、それを真横に弾き飛ばした。

 

弾き飛ばした黄金錬成は爆発する。

 

 

「なんだとぉ!?なら直接だ!!」

 

 

「ふん」

 

 

アダムは巨大な手で俺を叩きつぶそうとする。

 

が、俺はそれを片手で受け止める。

 

そして空いた手で、その巨大な手を殴り飛ばした。

 

 

「なぁ……にぃ!?」

 

 

アダムが驚きの声をあげる。

 

そして俺は奴に拳を向けて言った。

 

 

「アダム……死ぬ気でお前を倒す」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「いくぞ」

 

 

俺はその場から消えると、アダムの眼前に現れる。

 

 

「なっ……はや」

 

 

そして勢いよく殴り飛ばした。

 

 

「ぐぁああああ!?」

 

 

吹き飛んでいくアダム。

 

だが俺はアダムよりも早く回り込み、再度殴り飛ばす。

 

アダムの巨大な身体は面白い様に吹き飛んでいく。

 

 

(軽く力を入れただけでこの威力……これならいける)

 

 

俺は連続で奴を殴っていく。

 

通常攻撃が効いているのだ。

 

ならこのままダメージを蓄積させて一気に大技で決めた方が得策だ。

 

それにどうやら死ぬ気の到達点(この状態)で攻撃すると、ダメージをなかったことに出来ない様だしな。

 

 

「図に乗るなよ小僧ォオオオオ!!」

 

 

するとアダムは体勢を立て直すと、再生させた両腕を伸ばしてくる。

 

俺は紙一重でそれらをかわし、さらに接近しようと試みるが、あろうことかアダムから俺の方へ高速で接近してきた。

 

そして俺に蹴りを繰り出してきた。

 

咄嗟にガードするが……

 

 

「重い!?」

 

 

受け止めきれずに吹き飛ばされてしまった。

 

 

(さっきとは威力が段違いだ!神の力の出力を上げてきたか!?)

 

 

「死ねぇええええ!!!!!!」

 

 

「やばっ……」

 

 

そのとき風鳴機関を吹き飛ばした規模の黄金錬成が、俺に向かって放たれた。

 

だが威力は神の力で強化されているこちらの方が圧倒的に上だろう。

 

俺は咄嗟に炎を前方に出し、防ごうとするが……

 

 

「伏せて!」

 

 

()()()()()()()()()()響が俺の前に現れ、三角形のフィールドで守ってくれた。

 

 

「響!?」

 

 

「今度はこっちから!」

 

 

すると響は左足から緑色の鎌を生やし、それを斬撃として飛ばした。

 

 

「あれは切歌の呪リeッTぉ(ジュリエット)……」

 

 

「やぁあああ!」

 

 

「今度は翼の、蒼ノ一閃!?」

 

 

響は左手から青い斬撃を飛ばす。

 

 

「神殺しいぃ……いいってもんじゃないぞ、ハチャメチャすれば!」

 

 

するとアダムは地面に手を当て錬成陣を作る。

 

斬り飛ばされた身体の一部が錬成陣に触れると、小型のアダムに姿を変える。

 

すかさず響はピンク色の円形に乗り込むと、そこに飛び込んでいく。

 

 

「あれは調の禁月輪……皆のアームドギアの技を使えるのか?」

 

 

そういえば先程、皆が反動汚染で動けない響に向かってエネルギーを譲渡していたな。

 

皆の技を使えるのはその影響なのだろう。

 

 

「てえええええいっ!!」

 

 

アダムが黄金錬成を無数に放つ。

 

響は禁月輪でかわしていくが、遂にアダムに捕らえられる。

 

 

「ぐぅ!?」

 

 

「まずい!?」

 

 

「してる場合じゃないんだ、こんなことを……こんなところで!」

 

 

アダムは響を握りつぶそうとする。

 

 

「くうっ!」

 

 

「降臨は間もなくだ、カストディアンの。それまでにこの力を完全に物にしなければならない。アヌンナキに対抗し、超えるだけの力を!!」

 

 

「ううっ!!」

 

 

「なのにお前達はぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

アダムがさらに力を入れて握り潰そうとしたとき、一人の声が聞こえた。

 

 

「ぶっ飛ばせ!アーマーパージだ!!」

 

 

見れば離れた所にクリスがいた。

 

他の皆も居り、こちらをジッと見つめていた。

 

クリスの声を聞いた響はというと、雄叫びをあげながら、纏っていたシンフォギアをエネルギーに変える。

 

 

「うあああああああっ!!」

 

 

そしてアダムの手を吹き飛ばし、アダムの腕をつたって走る。

 

ただその影響で、変身は解けてしまったが響の目は、まだ欠片も諦めてはいなかった。

 

彼女は走りながら赤いペンダント、ガングニールに語りかける。

 

 

「無理させてごめん、ガングニール。一撃でいい。皆の想いを束ねてあいつに!!」

 

 

すると聞き覚えのある三人の声が聞こえてきた。

 

 

「借りを返せるワケだ!」

 

 

「利子つけてノシつけて!」

 

 

「支配に反逆する革命の咆哮をここに!!」

 

 

プレラーティ、カリオストロ、サンジェルマンがこちらを見ていた。

 

響は三人の方に一瞬視線を向けた後に、聖詠を唱える。

 

 

 

「バァリシャ ネスケェェェル ガングニール……」

 

 

 

それはいつもより力強かった。

 

 

 

まるで皆の想いを一つに束ねているかのような……

 

 

 

まるで皆の心を直接繋いでいるかのような……

 

 

 

そんな力強さのある聖詠だった。

 

 

 

 

 

「トロォォォォォォォン!!」

 

 

 

 

 

 

それと同時に響はアダムの巨大な手に飲み込まれるが……

 

その手を吹き飛ばしながら、()()()()()響が飛び上がる。

 

 

「黄金錬成だと!? 錬金術師でもない者が!!」

 

 

それを見たアダムが攻撃しようとするか……

 

 

「俺を忘れてもらっちゃ困るぜ」

 

 

その攻撃を俺が弾き飛ばす。

 

 

「小僧ォオオオオ!!!!」

 

 

「一緒にいくぞ響!」

 

 

「うん!」

 

 

俺と響は同時に駆け出す。

 

 

「もういい!全開パワーで一思いに潰してくれる!!」

 

 

すると神の力を最大出力にまで高めたのだろう。

 

高速でこちらに肉迫してきた。

 

 

「「!?」」

 

 

そして俺達は強力なラリアットを食らってしまう。

 

 

「ぐあ!?」

 

 

「うわあ!?」

 

 

吹き飛んでいく俺と響。

 

だがすぐに体勢を立て直すと、再度突貫する。

 

アダムは火・水・風・土の錬金術を駆使してこちらに攻めてくる。

 

俺達は必死にかわしながらアダムに向かっていく。

 

そして俺達は互いの動きをカバーしながら、奴の錬金術に対処する。

 

響に当たりそうな攻撃は、俺が前に出ることで弾き飛ばし、その直後の隙を狙われた俺を庇う様に響も前へと出て対処する。

 

まさに阿吽の呼吸であった。

 

響の動きが手に取る様に分かる。

 

響も俺の動きが分かるのだろう。

 

視線を合わせずとも互いの気持ちが通じあっているかのようだ。

 

そして再度アダムと激突するが……

 

 

「くっ!?やはりダメか!?」

 

 

「パワーで押し負ける!?」

 

 

「ふはははははは!その程度か……小僧に神殺しイィィ!!」

 

 

アダムの追撃にやられそうになったとき、()()()()()()()()()

 

 

「させへん!リインフォース!」

 

 

《封縛!》

 

 

「バルディッシュ!」

 

 

《Lightning Bind.》

 

 

「アイスメイク……牢獄(プリズン)!」

 

 

アダムは腹を紫のバインドで拘束され、四肢を金色のバインドによって封じられていた。オマケに氷の牢屋に閉じ込められる始末である。

 

俺達が目を向けると、フェイト、はやて、冷火の姿があった。

 

だがアダムは焦ることなく、対処する。

 

冷静にバインドを引きちぎっていく。

 

 

「この程度で僕を止めることなどできない!」

 

 

だろうな。

 

だが彼女達が動き出したということは、()()()()()()()()()()という事だ。

 

俺は念話で合図を出す。

 

 

『今だ、なのは!』

 

 

『了解!』

 

 

俺が上空を見上げると、巨大な桜色の球体が完成していた。

 

アダムからは氷の牢屋が視界を遮って見えていない。

 

つまり今の奴からは完全に死角からの攻撃となる訳だ。

 

 

「響、少しだけ離れるぞ」

 

 

「う、うん」

 

 

俺と響はひとまずアダムから距離を取る。

 

今から放たれる攻撃は凄まじいものだからな。

 

 

「いくよ!全力全開!!スターライトオォォォ……ブレイカーアアアァァァ!!!!」

 

 

《StarLight Breaker.》

 

 

そしてチャージされていた魔力が一気に解放され、桜色の奔流がアダムに勢いよく撃ち込まれた。

 

 

「ぐ、ぐぁああああああああああああああああああああああ!?」

 

 

アダムの悲鳴が響く。

 

 

「な、なんだこれはああアアァァ!!??」

 

 

アダムはダメージをなかったことにしようと何度も無数の映像を投影するが、投影したところで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

しかもこのスターライトブレイカーは、()()()()()()()()()()()()()()()()とされているので、しばらくはこの状態が続く。

 

 

「あああアアアアァァァァアアアアッッッ!!!!!!!!????????」

 

 

アダムの断末魔は続く。

 

これは奴の精神を折ることも視野に入れている攻撃である。

 

だがあまりにも効果覿面(こうかてきてん)であったので、正直提案した俺も驚いている。

 

というか一点集中に収束されたスターライトブレイカーの威力よ。

 

周囲に被害を出さないように威力を調整しながら撃っているのだが、逆に圧縮した分、攻撃力が増しているようだ。

 

それも神の力を纏った完全体のアダムが叫ぶ程に。

 

さすがなのはさん。

 

さすが未来の魔王様。

 

マジハンパネェッス((((;゜Д゜)))

 

そして待つこと数分……

 

遂になのはの攻撃が止まった。

 

 

「今だ響!この千載一遇のチャンスを逃すな!!」

 

 

「合点承知!!」

 

 

俺は形態変化を使い、両手の籠手を手甲に変化させてアダムに高速で迫る。

 

響も右手と、左手を変形させアダムに向かって高速で動く。

 

 

「「うぉおおおおおおお!!」」

 

 

そして俺達は遂にアダムの懐に潜り込むことに成功する。

 

後は神の力でも再生できない程の最大火力の一撃を食らわせるだけだが……

 

 

 

「マダダ。マダダアアアアァァ!!!!」

 

 

 

白目を向いていたアダムが復活した。

 

 

「ウォオオオオオオオオ!!!!」

 

 

「こいつ……まだ!?」

 

 

そして雄叫びをあげながらこちらへと攻撃してきた。

 

 

「「うぉおおおおおおおぉおおおお!!!!」」

 

 

「ウォオオオオオオオオォオオオオ!!!!」

 

 

三者の雄叫びが木霊する。

 

俺の右拳とアダムの左拳が激突した。

 

響の左拳とアダムの右拳が激突した。

 

その瞬間、凄まじい程の衝撃波が辺りに迸る。

 

 

「「おおおおおおおおおお!!!!」」

 

 

俺と響はさらにエネルギーを込めていく。

 

 

「ナアァァァァニイィィィ!?」

 

 

俺はさらに全身から炎が溢れ出し、響の黄金のシンフォギアもさらに輝きを増していく。

 

 

「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」」

 

 

アダムが徐々に後退していく。

 

 

「ナゼダ!?ナゼタカダカニンゲンゴトキガココマデノチカラヲヲヲ!!??」

 

 

そしてついに奴の両腕を弾き飛ばすことに成功した。

 

 

「理由は一つ!それは俺達が死ぬ気だからだ!!」

 

 

俺達は懐に潜り込む。

 

俺が右手で殴ると、響が左手で殴る。

 

 

 

「「オラオラオラオラオラオラオラオラ!」」

 

 

 

俺が左手で殴ると、響が右手で殴る。

 

 

 

「「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」」

 

 

 

それを交互に繰り返していく。

 

 

 

「「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!」」

 

 

 

高速で繰り返していく。

 

 

 

「「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!!」」

 

 

 

そして互いに雄叫びをあげながら……ひたすら殴り続けた。

 

 

 

 

 

 

「「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!!!!」」

 

 

 

 

 

 

俺と響のオラオララッシュを受けてアダムの体が浮かび上がっていく。

 

 

「「オラアァアアアアアアアア!!」」

 

 

渾身の力を込めた俺達の無数のパンチが炸裂し、アダムを空高く打ち上げる。

 

 

「「はああああああああああああっ!!」」

 

 

最後に両者共に最大パワーの両手パンチを繰り出した。

 

 

 

 

 

 

TESTAMENT W

 

 

 

 

 

 

そしてアダムの身体を貫いた。

 

 

 

 

 

 

「砕かれたのさ、希望は今日に」

 

 

 

 

 

 

アダムが呟く。

 

 

 

 

 

 

「絶望しろ、明日に……」

 

 

 

 

 

 

静かに呟く。

 

 

 

 

 

 

「未来に!」

 

 

 

 

 

 

そして笑い声をあげながら……

 

 

 

 

 

 

「フフフフ…………ハハハハ…………ハーッハッハッハッハ!!」

 

 

 

 

 

 

奴は爆散したのだった。




次回コラボ戦姫絶唱シンフォギアAXZ最終回です。

では、また(・∀・)ノ

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