大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも(゜▽゜*)

続き書けたで候。

では、どうぞ( *・ω・)ノ


第二百九十五話 歌い舞い踊る戦姫XXXVI

第三者side

 

 

 

S.O.N.G本部では、響・切歌とサンジェルマンの戦いをモニターしていた。

 

二人は無事サンジェルマンを撃破する。

 

しかしその直後、突如としてパヴァリア光明結社統制局長アダム・ヴァイスハウプトが姿を現す。

 

S.O.N.G陣営は、要石(かなめいし)を起動させることでレイラインを封じ、神門(かむど)を開かせないことに成功した。

 

だがアダムは予想外の方法で神門を開く。

 

なんと天の星々に位置するオリオン座そのものを使って、神門を開いたのだ。

 

そして神の力の一部を吸収したティキが響達へビームを放ったが、切歌が絶唱で真っ正面から受け止め防いだ。

 

しかしその代償として戦闘不能に陥ってしまう。

 

絶唱はシンフォギア装者、最大最強の攻撃手段である。

 

歌唱にて増幅したエネルギーを一気に放出することで、対象にクリティカルダメージを与えるのだ。

 

だがその反面、そのバックファイアはシンフォギアを纏い、強化された肉体であっても負荷を軽減しきれないほどに絶大である。

 

まさに諸刃の剣ともいえる奥の手なのだ。

 

しかもバックファイアのダメージは、適合係数の高さに伴って軽減されるのだが、たとえ適合者であっても全てのダメージを軽減することはできない。

 

使用すれば深刻な負荷をその身に負ってしまう。

 

これを切歌はLiNKERを多量に摂取し、適合係数を無理矢理引き上げることでその反動ダメージを最小限にしたのだ。

 

映像を見ていた弦十郎は緒川に指示を出す。

 

 

「ただちに切歌君を回収するんだ!救護班の手配を急げ!体内洗浄の準備もだ!!」

 

 

「はい!」

 

 

「お供します」

 

 

「お願いします!」

 

 

緒川とリニスが準備を進めるために走り出す。

 

モニターの前では調が必死に切歌に呼び掛けていた。

 

 

「切ちゃん!切ちゃん!切ちゃん!聞こえる!?切ちゃん!!」

 

 

他の面子も悲壮な顔をして映像を見守る。

 

 

『三人には手を出させない!』

 

 

『ほう。それが答えかな?君が選択した……』

 

 

『神の力。その占有を求めるのであれば、貴様こそが私の前に立ちはだかる支配者だ』

 

 

『実に頑なだね、君は。忌々しいのはだからこそ……しかし間もなく完成する。神の力は。そうなると叶わないよ、君に止めることなど……』

 

 

だがその顔もすぐに驚愕へと変わる。

 

 

 

 

 

 

『そうか。なら、もう一人加わったらどうだ?』

 

 

 

 

 

 

「「えぇっ!?」」

 

 

「「なっ!?」」

 

 

「「はっ!?」」

 

 

「嘘!?」

 

 

「マジ!?」

 

 

「なんだとおぉ!?」

 

 

なのはとフェイトは空いた口が塞がらないような表情をし、翼とマリアは目を点にさせ、クリスと調は純粋に驚き、友里は思わず口に手を当て、藤尭は目を見開き、弦十郎は声を上げる。

 

そこには行方不明という設定で姿を隠している筈の少年がいた。

 

額に炎を灯した少年がいた。

 

少年が突然現れたことに響達も驚いていたが、件の少年は呆けている皆を見た後、はやてに指示を出す。

 

 

『はやて、今すぐ切歌を転送魔法で本部へ連れて帰ってくれ。今頃、治療と体内洗浄の準備ができてる筈だ。時間がない急げ』

 

 

少年の指示を聞いたはやては転送魔法を発動させてS.O.N.G本部へと戻ってくる。

 

はやてが戻ってきたのは丁度メインルームであり、ドサッという音が響いた。

 

 

「切ちゃん!」

 

 

「「はやてちゃん!/はやて!」」

 

 

すぐに調が切歌に、なのはとフェイトがはやてに駆け寄る。

 

 

「私はいいからすぐに切歌さんを!LiNKERを多量摂取してるんです!!」

 

 

その言葉を聞いた友里がメディカルルームに連絡を入れる。

 

すると連絡を受けたフィリスが職員を引き連れて、ストレッチャーを持ってやってきた。

 

 

「切歌ちゃんをこちらへ」

 

 

弦十郎が切歌をストレッチャーへ乗せると、フィリス達はすぐにメディカルルームへと向かった。

 

そして弦十郎は簡単な指示を出す。

 

 

「友里、緒川とリニス君に切歌君の回収が完了したことを伝えておけ」

 

 

「了解しました」

 

 

一同は改めてモニターを見る。

 

そこには少年と、響、サンジェルマンが共に並び立ってアダムを睨み付けていた。

 

 

『立花響、大空氷炎……私たちは互いに正義を握り合い、終生分かり合えぬ敵同士だ』

 

 

『だけど今は同じ方向を見て、同じ相手を見ています』

 

 

『つまり目的は一緒って訳だ』

 

 

『敵は強大、圧倒的。ならばどうする?立花響、大空氷炎』

 

 

『いつだって、貫き抗う言葉は一つ!』

 

 

『お前達の言葉を借りるならこう言うんだろうな』

 

 

そして三人同時に叫ぶ。

 

 

『『『だとしても!!』』』

 

 

あまりの怒濤の展開に映像を見るメンバーも唖然となる。

 

 

「ねぇ、なのは。私いつになってもこの感覚に慣れないよ……」

 

 

「うん、私もだよ。でも来るかもしれないとは思ってたけど……本当に来ちゃったねヒエン君……」

 

 

「向こうで直接見たけど、リアクションなんも取れへんかったわ」

 

 

なのは、フェイト、はやてが話す。

 

それを聞いていた他の面子も話し出す。

 

 

「なのは達の言ってたことがよく分かったわ……」

 

 

「これは確かに……心臓に悪いな」

 

 

「ここで現れるなんて誰も予想できねぇよ……」

 

 

「……ビックリした」

 

 

マリア、翼、クリス、調も驚いたようだ。

 

すると弦十郎が呟く。

 

 

「……ヒエン君は病院から抜け出したのか?」

 

 

「ええ、その様です。警護の者達からの報告では、病室がもぬけの殻だった様です」

 

 

その報告を聞いていた真面目組が一言。

 

 

「「「「これは少しOHANASHIをしないといけないね/いけないわね//いけねぇな」」」」

 

 

ちなみにその真面目組とは、なのは・フェイト・クリス・マリアの四人組である。

 

さらにちなみに病室にいた少年は分身である。

 

その様子を後ろの方で見守っていた()()は冷や汗をかいていた。

 

 

(御愁傷様です……オリジナル(お兄様))

 

 

そして始まる少年・響・サンジェルマンの三人組対アダムの戦い。

 

 

「付近住人の避難は!?」

 

 

「間もなくです。急がせています!」

 

 

弦十郎は周囲の状況を確認させる。

 

一般人がいた場合、巻き添えを食うのは目に見えているからだ。

 

するとティキの姿が映る。

 

彼女は赤い光を身体から発していた。

 

 

「あんなものが神を冠する力だと言うのか……!」

 

 

「間に合わないの!?」

 

 

翼とマリアが焦った表情をする。

 

こうしている間にもティキは神の力を吸収し続けているからだ。

 

 

「そうだ!神殺し!こっちにだって対抗策があったはずだろ!?」

 

 

「緒川の指示で調査部が動いている!だが、新たな情報については……」

 

 

クリスが打開策として弦十郎に【神殺し】のことを尋ねるが、どうも結果は芳しくないらしい。

 

 

『響!』

 

 

『了解!』

 

 

『『せぇーの!!』』

 

 

『ぐぁあああ!?』

 

 

そしてアダムとの戦いは少年と、響が見事なコンビネーションを披露していた。

 

なんと同時攻撃でアダムを追い詰めていたのだ。

 

そこにすかさずサンジェルマンも攻めていく。

 

それを見たなのは達が驚く。

 

 

「ヒエン君と響さん、息ピッタリだ」

 

 

「うん。サンジェルマンさんの攻撃のタイミングもバッチリだよ」

 

 

「二人とも戦い方が似てるから直感的に互いのやろうとしてることが分かるんやろね。それに合わせるサンジェルマンさんも流石やなあ」

 

 

するとそこにクリスが突っ込む。

 

 

「感心してる場合かお前ら!鉄火場のど真ん中で、やり合ってた相手の手と手を取るなんて、どんな戦い方だ!?」

 

 

「それが存外ガツンと来ることを知らぬ雪音ではあるまい」

 

 

すかさず翼が一言。

 

思わずクリスは言葉を詰まらせる。

 

 

「ぅ……だ、だからって簡単に倒せる相手じゃないぞ」

 

 

かつてクリスもフィーネの手先として響の前に敵として立ち塞がったことがあるのだが、なんの因果か敵である響と共闘したことがあるのだ。

 

そのことを思い出したのか、顔を赤くしていた。

 

 

「そうね。盤面は刻一刻と振りになっているわ」

 

 

マリアが現状を冷静に分析する。

 

 

「「「大丈夫です!!」」」

 

 

だが魔法少女三人娘が声をあげた。

 

 

「ヒエン君と響さんならきっと……」

 

 

「うん」

 

 

「絶対大丈夫」

 

 

一同は映像を見守る。

 

だがそこに変化が訪れる。

 

ティキの醸し出す赤い光が、勢いを増したのだ。

 

モニターも例に盛れず、光の反射で見えなくなる。

 

 

「あっちはどうなっていやがる!?」

 

 

「モニター回復!」

 

 

「映像回します!……なっ!?」

 

 

「「「「「……っ!?」」」」」

 

 

「なん……だと……?」

 

 

モニターが回復すると一同は目を見開く。

 

そこにいたのは……

 

 

 

巨大な人魚のような、不気味さを醸し出した、完成した神の姿があった。

 

 

 

神力顕現(しんりょくけんげん)。持ち帰るだけのつもりだったんだけどね、今日のところは』

 

 

「『ごめんなさい……あたし、アダムがひどいことされてたから、つい……』」

 

 

『仕方ないよ、済んだことは。だけどせっかくだから……』

 

 

そして無数の淡い光が投影され、その内の一つが消えると、巨大な姿をしたティキが動き出す。

 

 

『知らしめようか、完成した神の力を。ディバインウェポンの恐怖を!』

 

 

圧倒的な脅威が動きだそうとしていた。

 

 

 

第三者side end

 

◆◆◆

 

ヒエンside

 

 

 

圧倒的な存在感を放つ巨大な物体が、俺達の目の前にいる。

 

単純な大きさだけでなく、神の力という濃密な生命エネルギーを纏っている影響もあるのだろう。

 

正直、気圧されて今にも倒れてしまいそうだ。

 

だがここで引くわけにはいかない。

 

ディバインウェポン。

 

アダムはそう呼んでいた。

 

神の力を纏った巨大兵器。

 

そんなものを野放しにすれば、どれほどの人達が犠牲になるのか考えたくもない。

 

すると、急にディバインウェポンの肩が光り出す。

 

 

「!?」

 

 

直感的にまずいと悟った俺は呆然としていた二人を抱えて、空高く飛び上がる。

 

 

「わ、わわ!?」

 

 

「どこを触って……!?」

 

 

直後、先程まで俺達がいた場所が大爆発を起こした。

 

続けてディバインウェポンは周囲を無差別に攻撃する。

 

辺りにあった建物は全て崩れ、焼け野原のようになってしまった。

 

 

(なんて破壊力だ……)

 

 

単純な攻撃力であれば、ナハトヴァール侵食暴走体にも匹敵、いや凌駕するかもしれない。

 

 

「ヒ、ヒエン君……?」

 

 

「そろそろ降ろしてもらえないかしら……?」

 

 

「あ、悪い」

 

 

抱えていた二人から声がかかったので地面に降りると、ゆっくりと降ろした。

 

 

「見てみたまえこの光景を。素晴らしいと思わないか?」

 

 

するとアダムがこちらに話しかけてきた。

 

奴は両手を広げながら仰々しく言う。

 

その態度が実に腹立たしい。

 

 

「人でなし。サンジェルマンはそう呼び続けていたね、何度も僕を」

 

 

「「「…………」」」

 

 

「そうとも。人でなしさ、僕は。何しろ人ですらないのだから」

 

 

「アダム・ヴァイスハウプト。貴様は一体?」

 

 

アダムは静かに空中から降りてくる。

 

 

「僕は作られた。()()の代行者として」

 

 

()()?」

 

 

「だけど廃棄されたのさ。試作体のまま……。完全すぎるという理不尽極まる理由をつけられて!」

 

 

話の内容からしてアダムを作った奴らが存在するらしい。

 

そしてアダムはその()()とやらに恨みがあるようだ。

 

 

「ありえない……。完全が不完全に劣るなど……」

 

 

「「「…………」」」

 

 

「そんな歪みは正してやる。完全が不完全を統べることでね!!」

 

 

そのときディバインウェポンの口が光る。

 

 

「っ!!」

 

 

直後、響が動き出す。

 

 

「何を!?」

 

 

「さっきみたいの撃たせる訳には!」

 

 

そしてバーニアを吹かし、ディバインウェポンに向かって突撃する響。

 

 

「はああああああっ!!」

 

 

響のパンチが顔に炸裂する。

 

 

「ティキ!?」

 

 

顔が光り、頬が砕ける。

 

すると光を吐き出そうとしていたディバインウェポンの顔が、強制的に上へと変更された。

 

直後、空に向かってビームが放たれる。

 

そのまま地面に落下していく響。

 

するとディバインウェポンが、響に巨大な腕を振るおうとする。

 

 

「まずい!?」

 

 

今の響は隙だらけで無防備な状態。

 

攻撃されれば大ダメージは免れない。

 

咄嗟に俺はソニックムーブを発動させると、高速で響をかっさらう。

 

 

 

ブオン!!!!!!

 

 

 

直後、凄まじい程の風切り音が聞こえてくる。

 

そのあまりの音の大きさに、今頃になって冷や汗が吹き出してくる。

 

 

「あ、あぶねえぇ……」

 

 

と今度は空から爆発音が聞こえ、凄まじい光量が視界を捉えた。

 

ティキの放ったビームが宇宙空間で爆発したのだ。

 

 

「あ、あのヒエン君?そろそろ離れてくれると……た、助かるかなあ……なんて」

 

 

「うん?あ、悪い!?」

 

 

すると俺は未だに抱き着いたままになっていた響に気付く。

 

彼女は縮こまり、顔を赤くさせながらこちらを上目遣いで見ていた。

 

響は俺よりも10cm程低いので、必然的に俺が彼女を抱き締めるような形となる。

 

こんなときに不謹慎だが……

 

女の子って柔らかい(世界の真理。

 

俺は地面にゆっくり降りると、響を解放する。

 

 

「あ、ありがとう……」

 

 

「お、おう」

 

 

響が顔を赤くさせながらお礼を言ってくるので、とりあえず返しておく。

 

 

「ああ……こんな力の為にカリオストロは……プレラーティは……!」

 

 

そしてサンジェルマンの小さく聞こえた呟きによって、意識が強制的に切り替わる。

 

ディバインウェポンもとい、ティキは空中をゆっくりと浮遊していた。

 

その側にはアダムもいる。

 

 

「『ア、アダム……ティキ、頑張った。ほ、褒めて、て、て……』」

 

 

「いい子だね、ティキはやっぱり」

 

 

「『だったら、ハグしてよ。抱きしめてくれないと、伝わらないよ』」

 

 

「やまやまだよ、そうしたいのは。だけど出来ないんだ。手に余るそのサイズではね」

 

 

「『イケズ……そこもまた、好きなんだけどね』」

 

 

するとサンジェルマンは銃を構え、連射した。

 

ディバインウェポンにダメージを与える。

 

 

「全力の銃弾で!」

 

 

次々と全身にダメージを与えていくが……

 

ディバインウェポンは光り出し、無数の映像と思われるものが具現化する。

 

そして再び一つになると()()()()()()()()()()()()動き出した。

 

 

「それでもか……」

 

 

「あの現象はヨナルデパズトーリのときの……」

 

 

そうか。

 

神の力を吸収しているのなら、ダメージを無かったことにすることもできるか。

 

しかも質の悪いことにヨナルデパズトーリより強いときた。

 

サンジェルマンは諦めずに再び攻撃するが、再度ダメージを無かったことにされる。

 

 

「あんなの一体どうやって倒せば……」

 

 

俺は響が弱気になっていることに気付くと声をかける。

 

 

「弱気になるな響。諦めるなんてお前らしくないぞ?」

 

 

「ヒエン君……でも」

 

 

「いいことを教えてやる。戦いや物事において絶対なんて物は存在しない。どんなに強い相手でも、どんなに強力な攻撃や防御の手段があろうとも、必ず穴はあるし、崩し方も存在する」

 

 

俺は言葉を続ける。

 

 

「確かにディバインウェポン、ティキの攻撃力は厄介だ。さっきのビームでこの辺り一帯を一瞬で焼け野原に変えたし、加えてあの巨体、防御力も並じゃない。それにダメージもなかったことにされる」

 

 

「だったら……」

 

 

「だが弱点がない訳じゃない」

 

 

「弱点?」

 

 

響が首を傾げる。

 

俺は説明する。

 

 

「ああ。見れば奴はあの強大な神の力、ディバインウェポンを全く使いこなせていない。攻撃手段は、肩と口から出したビームだけだし、スピードもまるで大したことはない。あれだけの巨体だ。細かい動作がまだできないんだろうよ」

 

 

「言われてみれば……」

 

 

「それに……奴の身体の中心を見てみろ」

 

 

「中心って、あの赤いクリスタル?」

 

 

「あそこにティキがいるだろ?」

 

 

「あ、ホントだ!」

 

 

「ディバインウェポンはティキが神の力を吸収した姿。恐らく、あの赤いクリスタルから身体全体に神の力を循環させているんだろう。つまり、あの赤いクリスタルは人間で言う心臓の役割を持っていると考えられる。ということはだ、あそこをぶち抜けば……」

 

 

「ディバインウェポンを止められる!?」

 

 

「そうだ。そして響……()()()()()()()()()だ」

 

 

俺の言葉に響は息を飲む。

 

 

「以前バルベルデで戦ったヨナルデパズトーリ、覚えてるか?」

 

 

「うん」

 

 

「あいつも神の力を持っていただろう?()()()()()()。なぜだと思う?」

 

 

()()……()()()()()()()??」

 

 

「そうだ」

 

 

響には神の力を無効化させる何かがある。

 

その理由は分からないが、今この場においては、彼女こそが最大の切り札なのだ。

 

 

「だから響、お前にはあの赤いクリスタルを壊すことだけに専念してもらいたい」

 

 

「任せて!」

 

 

すると響が勢いよく返事をする。

 

もうちょっと渋るかと思ったんだが、いつの間にか元気になっていた。

 

まあ、元気になってくれたんなら心配いらないか。

 

そして俺は後ろに視線を向ける。

 

 

「話は聞いてただろ?」

 

 

「ええ」

 

 

そこにはサンジェルマンがいた。

 

 

「サンジェルマンさん!!」

 

 

響がさらにテンションをあげる。

 

 

「サンジェルマン、お前にも協力してもらいたい。俺とお前で響の、あの赤いクリスタルへの道をこじ開ける」

 

 

「それしか手は無さそうね」

 

 

サンジェルマンは仕方ないとばかりに頷く。

 

パヴァリア光明結社の幹部クラスの錬金術師、それもリーダーを務めていた彼女が援護に入ってくれるのだ。

 

これほど頼もしい相手はいない。

 

するとアダムが話しかけてきた。

 

 

「相談は終わったかい?なら始めようか、人類の支配を」

 

 

「なに?」

 

 

アダムの言葉にサンジェルマンが返す。

 

 

「不完全な人類は支配されてこそ完全な群体へと完成する。人を超越した僕によって」

 

 

「世迷うなよ人形」

 

 

「錬金術師失格だね、君は。支配を受け入れたまえ。完全を希求するならば!」

 

 

「支配からの解放。その全てが利用され無駄に消えてしまった。思想も理想も、生贄と捧げた数多の命までも!」

 

 

アダムは不敵に笑う。

 

そのことに俺は怒りを覚えた。

 

 

「何がおかしい?」

 

 

「いや、実に滑稽でね。ディバインウェポンの前では何もかもが無力だというのに君達は抗うことをやめない。これを滑稽と言わずになんという?」

 

 

「黙れよ欠陥人形が」

 

 

「……なんだと?」

 

 

アダムは俺に厳しい視線を向けるが、俺は気にせず言葉を続ける。

 

 

「一つお前に良いことを教えてやる。この世に完全なものなんて存在しない。それに俺から言わせれば……お前の方が実に滑稽だよアダム」

 

 

俺は言葉を続ける。

 

 

「自身を完璧完全な存在と言いながら、自らは決して動かず、部下の力を借りて神の力を顕現させる。そしてそれを横取りし、我が物顔で力を振るい、まるで自分自身が神様にでもなったかのように振る舞う。そのあげくが……人類の支配なんて言い出す始末だ」

 

 

そして俺は首を横に振りながら、やれやれといった具合で言った。

 

 

 

 

 

 

「やってることが幼稚なんだよ……お前」

 

 

 

 

 

 

その言葉に奴がキレた。

 

 

「黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れえええぇぇぇぇ!!!!!!」

 

 

そして帽子に炎を纏わせ、こちらへ投げつけてきた。

 

 

「はっ!」

 

 

俺は拳に炎を纏わせ、帽子を弾き飛ばす。

 

 

「行け、響!」

 

 

「了解!」

 

 

そして、それを合図に響がティキに向けて走り出す。

 

 

「くっ!()()()()()()!?」

 

 

アダムが何やら焦ったように呟く。

 

 

(()()()()()?一体何に対して言った?)

 

 

だが呆けている暇はない。

 

俺はその間にフェイクシルエットで三十体の響を出し、響の周りを走らせる。

 

 

「わ、私がいっぱい!?」

 

 

そして自動操作(オートそうさ)に切り替える。

 

これならティキも翻弄される筈だ。

 

 

「行かせるものか……【神殺し】!」

 

 

(なに?神殺し?)

 

 

そのとき銃弾が響く。

 

サンジェルマンがアダムに牽制として撃ったのだ。

 

そしてサンジェルマンが俺の隣に並ぶ。

 

 

「足引っ張るなよ、サンジェルマン」

 

 

「誰に物を言っている?そちらこそ油断すると足元を掬われるぞ」

 

 

そして俺達はディバインウェポンに同時攻撃を繰り出す。

 

 

「「はあ!!」」

 

 

俺のオレンジの砲撃と、サンジェルマンの炎狼弾がティキの左腕と右腕に直撃する。

 

 

「『邪魔……するなああぁぁぁ!!』」

 

 

すると奴はダメージを無かったことにすると、両肩からビームを繰り出す。

 

俺達はそれを左右に分かれながらかわす。

 

見れば響や幻影達もかわしていた。

 

そして俺は射撃魔法でティキに攻撃する。

 

攻撃は通り、身体が傷付いていくが、その光景を見ていた俺はあることに気付く。

 

 

「ダメージを無くしてる間は、少し動きが止まるようだな」

 

 

といってもほんの数秒だが。

 

それに……

 

 

「俺の攻撃した所で()()()()()()()()()()がいくつかあった……」

 

 

もしかしたら俺の【調和】の能力でも、奴らの【神の力】に対抗できるのかもしれない。

 

それにアダムの言っていた【神殺し】……明らかに響に対して言っていた。

 

まさかガングニールには【神殺し】の能力があるというのか?

 

 

「なるほど。得心(とくしん)がいったわ」

 

 

するとアダムと戦っていたサンジェルマンが呟く。

 

 

「あの無理筋な黄金錬成はシンフォギアに向けた一撃ではなく……局長にとって不都合な真実を葬りさるためだったのね」

 

 

サンジェルマンは何やら納得した表情をしているが、正直俺はまだよく分かっていない。

 

っていうか一人だけ納得してやんと、こっちにも分かるように説明せんかい。

 

 

「おいサンジェルマン、一体どういうことだ?」

 

 

「はぁ……察しが悪いわよ大空氷炎」

 

 

「ため息をついてないで、分かるように説明してほしいんだが!?」

 

 

俺はティキの身体を三重捕縛魔法(トリプルバインド)で拘束しながら声をあげる。

 

 

「局長が風鳴機関で黄金錬成を放ったときのことは覚えているかしら?」

 

 

「忘れる訳がないだろう」

 

 

あのときが全裸野郎アダムとの初めての邂逅である。

 

忘れる訳がない。

 

 

「あのとき風鳴機関でバルベルデドキュメントを解析していたでしょう?その中には【神殺し】の記述についても書いてあったのよ」

 

 

「そうか!それで……」

 

 

「そう。局長は【神殺し】の情報を気取られないように風鳴機関事、情報を葬り去ったのよ」

 

 

「だからあのとき突然現れやがったのか」

 

 

「その辺で黙っててもらおうか!言ったはずなんだけどな……(さか)しすぎると!」

 

 

するとアダムがこちらに向かってきた。

 

サンジェルマンは銃剣を構えて迎え撃つ。

 

剣同士の金属音が鳴り響く。

 

 

「バカな!?」

 

 

なんとアダムは自分の左腕を剣に見立てて斬りかかって来たのだ。恐らく錬金術で硬度を強化しているのだろう。

 

っていうか普通にキモい。

 

 

「潰えて消えろ!理想を夢想したままに!」

 

 

斬り合う二人。

 

 

「そのまま行け!立花響!」

 

 

「っ!?」

 

 

「はぁあああああ!!」

 

 

見れば響はティキの元へとたどり着くことに成功していた。幻影達による撹乱作戦も上手くいったのだろう。

 

 

「乗りすぎだ……!調子に!!」

 

 

「私は進む!前に前に!ここで怯めば取り戻せないほどに後ずさる!」

 

 

さらに剣戟(けんげき)を加速させる二人。

 

 

「屈するわけにはぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

そしてサンジェルマンは、銃剣に炎のエネルギーを収束させ、青白い炎のレーザーをアダムへと放った。

 

 

「ぐぁああああ!?」

 

 

吹き飛ぶアダム。

 

 

「行け!立花響!!」

 

 

「響!そのままぶっ飛ばせ!!」

 

 

俺も響へと激を飛ばす。

 

 

「寄せ付けるな!カトンボを!」

 

 

アダムは吹き飛びながらも、ティキへと指示を出す。

 

 

「はああああああああああっ!!」

 

 

「『アダムを困らせるなぁぁぁぁっ!!』」

 

 

響の拳と、ディバインウェポンの拳がぶつかり合う。

 

だが打ち勝ったのは響であった。

 

 

「『あああああああっ!!』」

 

 

ディバインウェポンの右腕が崩れる。

 

奴は無数の映像を投影してダメージを無かったことにしようとするが……()()()()()()

 

 

「『きゃあああああ!?』」

 

 

俺もさらなる追撃として攻撃を繰り出す。

 

 

火炎の大剣(フレイムブレイド)ver殲滅(ジェノサイド)!」

 

 

数百本の炎の大剣を生み出し、奴へと攻撃する。

 

ディバインウェポンの身体には無数のヒビが入る。

 

奴は何度もダメージを無くそうと並行世界の自分を何度も投影するが、()()()()()()()()()()()()()()()があった。

 

俺の方は響のように完全に無効化させることはできないようだ。

 

 

(これはたぶん……単純に出力が足りないのかもしれない)

 

 

するとディバインウェポンが反撃してくる。

 

なんと全方面にエネルギーを開放させ、その応用で衝撃波を放ってきたのだ。

 

空中で身動きのとれない響はまともに食らってしまう。

 

 

「ぐうっ!!」

 

 

「終わりだな、これで」

 

 

「立花響っ!?」

 

 

それを見た俺はすぐに響の元へと向かう。

 

 

「響!」

 

 

そして衝撃波から庇うように抱き締めた。

 

 

「ぐああっ!?」

 

 

「ヒエン君!?」

 

 

「……安心しろ。なんともない!」

 

 

「ウソ!物凄く痛そうだったよ!?」

 

 

「痛くない!」

 

 

物凄い衝撃だった。

 

だがこの程度であれば耐えられる。

 

 

「ヒエン君!私をあそこまで投げ飛ばして!!」

 

 

「いけるのか?」

 

 

「大丈夫!あとは任せて!!」

 

 

「なら……舌噛むなよ!!」

 

 

俺は響の両手を掴み、徐々に回転していく。

 

そしてハンマー投げの要領でティキの元へと投げ飛ばした。

 

 

「はぁあああああ!!」

 

 

響は雄叫びをあげながら真っ直ぐに向かっていく。

 

それに呼応するように首元のマフラーは輝き、右腕はドリルへと変形する。

 

 

「神殺し、止まれぇぇぇぇっ!!」

 

 

アダムが焦るように叫ぶがもう遅い。

 

 

「八方極円に達するはこの拳!如何なるものも破砕は容易い!!」

 

 

「……っ!ハグだよティキ!さあ!飛び込んでおいで!神の力を手放して!」

 

 

「アダム!大好きぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 

するとティキは容易く()()()()()()()()、赤いクリスタルのままアダムの元へと向かう。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 

だが時既に遅く、響のガングニールがティキに炸裂した。

 

 

「きゃああああああああああああっ!!」

 

 

ティキの上半身と下半身が別れ、スプラッタな感じになる。

 

まあ自動人形(オートスコアラー)だから問題ないだろう。

 

一方のディバインウェポンは、ティキが離れた影響で光の粒子となって消滅した。

 

 

「なんとかやったか……」

 

 

俺は着地すると息をホッとはく。

 

さて、あとはアダムとティキだが……

 

 

「アダム好き。大好き。だから抱きしめて。離さないで。ドキドキしたいの」

 

 

「恋愛脳め。いちいちが癇に障る。だが間に合ったよ。間一髪」

 

 

奴の視線の先には神の力の粒子が漂っていた。

 

 

「人形へ……神の力を付与させるための……ああ、これがあった」

 

 

すると自身の持つ左腕へと視線がいく。

 

それを見た俺は焦る。

 

 

(野郎……まさか!?)

 

 

「断然約に立つ。こっちの方が!」

 

 

アダムは左腕を掲げて叫ぶ。

 

 

「付与させる!この腕に!その時こそ僕は至る。アダム・ヴァイスハウプトを経た、アダム・カドモン!!」

 

 

そして神の力の粒子はアダムの元へと向かい……

 

 

「新世界の雛形へと!」

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

「っ!?どういうことだ……?」

 

 

俺は驚く。

 

アダムも予想外だったようで慌てている。

 

光の粒子の向かう先に視線を向けてみる。

 

その視線の先には……()()()()

 

 

「何……?これ?」

 

 

神の力は響の身体に集まっていき……

 

 

「どうしたの?……えっ?」

 

 

響が苦しみ出す。

 

 

「あ……うわあああああっ!!」

 

 

そして光り出し、黒く赤い斑点がある(まゆ)のような姿になってしまった。

 

 

「ありえない!宿せないはず……穢れなき魂でなければ神の力を!?」

 

 

「生まれながらに原罪を背負った人類に宿ることなど……!」

 

 

それを見た俺も唖然としていた。

 

 

「なんだよ……あれ」

 

 

その繭から聞こえる鼓動音が、やけに大きく響くのだった。

 




もう少しでコラボ終わります。

次のインターミドル編後編では、オリキャラいっぱい出る予定です。

SM女王にオカマ、クール系に熱血漢。

子供っぽい大人に神童、ロリータにエロいお姉さん。

なんでかって?

普通のキャラ出したっておもしろくないだろおおおおあおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!Σ(゜Д゜)

では、また(・∀・)ノ

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