続き書けたで候。
A's編後日談ラストエピソード。
では、どうぞ( *・ω・)ノ
ヒエンside
クリスマスパーティーから数日の時が過ぎた。
あのクリスマスパーティーでプリキュア世界でのことを話した後は、イリヤ達と異世界で共闘したことも話した。
といっても簡単にではあるが。
イリヤとミユという別世界の魔法少女達と出会ったこと、黒化英霊という敵と戦ったことなどだ。
でまあ、案の定だが滅茶苦茶怒られた。
特にリンディさんとクロノがヤバかった。
「どうして言わなかったの!?」
「どうして言わなかったんだ!?」
と同時に言われた程だ。
なのはとフェイトは怒られて縮こまってしまい、必然的に俺が弁明することになった。
こちらとしては当時PT事件の事後処理で大変だったというのと、フェイトに確認を取らずに勝手に話すのはダメだと思ったからという理由を説明した。
二人には気持ちは分かるが、それでもせめて状況報告はしてほしかったと言われた。
確かに当時俺達は管理局に在籍していなかったが、アースラでお世話になっていた。特に二人には報告するべきであっただろう。
だが俺としては忙しい二人を見ていたため、余計な負担をかけたくなかったという気持ちもあった。
それを言うと二人は溜め息をつき、「これからは何かあったら絶対に報告をするように!」と念を押された。
俺となのは、フェイトはしっかりと頷いた。
あと観賞会で並行世界云々の話はややこしくなるので一切話していない。俺自身も完全に把握できている訳ではないし、分からないことだらけなのでやめておいた。
まあ、その他にも色々あったのだが、それはまた別の時にでも語ろう。
それに大変だったのはここからだった。
俺の行方不明騒動の事後処理についてである。
俺は11月の中旬に行方不明となった。
そして現在は12月末。
つまり約一ヶ月間、行方不明となっていた。
その間、警察も出動しニュースでも報じられる程の多きな騒ぎとなっている。
この騒動を抑えるには何か特別な理由でもないかぎり、並大抵のことでは抑えられないだろう。
そこで力を貸してくれたのがバニングス家と月村家であった。
この二家は俺が行方不明になると探偵を雇って捜索していたらしい。
そしてその圧倒的な財力を持って全国、はたまた外国にまで捜索の範囲を伸ばしていたのだ。
財力があるということは、それだけ周りに及ぼす影響も大きいということ。
俺の事情を知っている二家は協力して情報操作を行ってくれた。
つまりはでっち上げである。
二家のシナリオではこうだ。
俺がどこぞの人身売買組織に誘拐され、どこか遠くの国へ拉致されてしまう。
それを探偵達を総動員して捜索すること一ヶ月、ようやく見つけることに成功した……そして二家のあらゆる力を使ってその組織を壊滅させた……というシナリオらしい。
ちなみにそのシナリオを考えたのがバニングス家で、情報操作を行ってくれたのが月村家である。
なぜ二家がこんなにも力を貸してくれるのかというと、俺が娘達の命の恩人だから……らしい。
アリサとすずかは過去に一度、身代金目的で誘拐されている。
俺がキュアヒートとなって助けることになった月村安次郎が起こしたあの事件である。
アリサとすずかはプリキュアに助けてもらったことが余程嬉しかったのか、両親に何度も自慢していたらしい。
その正体がまさか女装男子もとい、俺であったことは欠片も想像していなかったようだが。
当然ながらアリサとすずかも俺がキュアヒートだということは既に知っている。
俺が観賞会で見せたプリキュア世界から戻る前のやり取り、アンジェ先輩から送られたキュアヒートの石像……つまり俺が直々にプリキュアに任命されてしまったことも知っているのだ。
当初二人は俺の所に詰めよってきたのだが、俺が死んだような表情をしているのを見てこれ以上追い詰めるのは可哀想ということになったそうな。
話を戻そうか。
事後処理はそういう設定でなんとか乗り切った。
そのこともあって警察にも長時間事情を聞かれたが、それだけだった。
けど予想外だったのが、思っていた以上に世間での反響が大きかったことだ。
なぜかというと俺のことがワイドショーで取り上げられることになったり……
俺が記者会見をする羽目になったり……
俺がバラエティー番組に出ることが決まったり……
他にも色々なことがetc……。
つまり芸能人もどきになってしまったのである。
新聞の見出しにも……
『突如消えた高校生!人身売買組織からの奇跡の生還!?』
として載ることになった。
当然ながらマスコミが俺の家の前で張り込んでいるので戻ることはできない。
という訳で俺は現在、落ち着くまで高町家でお世話になっている。
父さんと母さんは俺が行方不明になっていた影響で止めていた仕事を終わらせるために再び外国へと飛んだ。速攻で終わらせて年末までには日本に戻ってくるようだ。
リニスはというと、翠屋でも圧倒的な戦力として活躍しているため日々忙しそうである。その割には楽しそうに過ごしているので充実しているのだろう。
そして現在、俺は何をしているのかというと……
高町家のリビングで忍さんと話していた。
「ふーんだ……」
「お、お姉ちゃん……」
しかしその肝心の忍さんがいじけているのだが。
そしていじけている忍さんをすずかが慰めていた。
俺の側で待機しているなのは、フェイト、はやては苦笑いしていた。
アリシアはというと机にあるお菓子を頬張り、アリサは呆れていた。
なかなかにカオスな空間である。
なぜこんな状況に陥っているのかというと、すずかが俺達に『夜の一族』について説明に来たのが事の発端である。
俺がクリスマスパーティーでプリキュア世界に行っていたという事実を暴露する前、既になのは達は魔法少女もとい、魔導師であることを身内の人間に話していた。
そのことに影響を受けたすずかが、皆に隠し事はしたくないとのことで俺達に自分が吸血鬼の一族である『夜の一族』であることを話しに来たのだ。
話を聞いたなのは達は当初は驚いたものの、当然受け入れた。
すずか自身、自分が吸血鬼であることにどこか臆病になっているところがあった。
しかし俺の観賞会をきっかけに、彼女はこの世界は不思議なことでみちあふれていることを知った。
俺が思うに彼女の中でさざなみ寮の存在が一番大きいと思う。
ほら。
あそこの住人って普通じゃない人ばかりやん?
でも皆、普通に海鳴で元気に暮らしている。
そういう人達の存在が、すずかに自分と向き合う勇気……精神的余裕を与えてくれたのではないかと思っている。
実際にすずかは久遠のことをよく可愛がっている。対して久遠もすずかによくなついている。
すずかは大人しく控え目な印象のある女の子であるので、臆病な久遠とは相性はいいのだ。
そう思うとあの観賞会はやって良かったかもしれない。
そう。
やって良かったんだ。
そう思わないとやってられない(投げやり
するとそこに様子を見守っていた忍さんがある事を言い出した。
すなわち記憶を残すか、消すかの選択である。
そこで若干イライラしてた俺が八つ当たり気味に一言。
「いや消すわけないでしょ?常識的に考えて」
なのは曰く、そのとき空気が凍ったらしいのだが、俺は気付かずに続ける。
「っていうか空気的にも消すなんてあり得ないでしょ。消された本人は気付かないからいいけど、周りが気まずいわ。だいたい年末のこのクソ忙しい時期に記憶なんて消したら日常生活にも支障きたすかもしれないじゃないですか。それに記憶消すっていったって【夜の一族】の部分の記憶のところだけ消すんでしょうけど、正直忍さんっておっちょこちょいだから、記憶丸々消すなんていうやらかしをしそうで怖いですし……。それにただでさえ、俺の事後処理の事とかで周りに迷惑かけてるのに、記憶なんて消したら余計ややこしくなると思いません?それに……俺に関しても前にノエルに【夜の一族】については既に知ってるので、『そういうのめんどくさいからいい』って伝言で伝えたんですけど、伝わってないです?」
すかさず忍さんも反論。
「し、知ってるわよ!ノエルからしっかり伝言で聞いてるわよ!そのあまりの内容に空いた口が塞がらないくらいの衝撃を受けたわよ!それよりヒエン君!貴方一体私のことなんだと思ってるの!?記憶丸々消しそうですって!?なめないで!私だって月村家の次期党首なんですから微妙な力のコントロールくらいできます!だいたい何よ!めんどくさいからいいって!初めて言われたわよそんなこと!でもね、ウチでは代々こうして聞いてるの!習わしなの!しきたりなの!伝統なの!!」
段々と涙目になりながら……であるが。
っていうか気のせいでなければ幼児退行してないかこの人。
とりあえずこれ以上泣かれるとめんどくさいことになりかねないので謝っておこう。
「……すいませんでした。少し言い過ぎました」
「別に私だって言いたくて言ってる訳じゃないのよ……。ただ確認しようと思ってただけで」
「……場の空気で判断できそうな気もしますがね」(ボソリ
「聞こえてるわよヒエン君!」
とまあこんなことになりつつも日常を穏やかに過ごしている。
ここ数日、療養していたおかげで身体の筋肉痛はずいぶんとマシになった。
それこそ日常生活を送る上では全く問題ない。
ただ負荷の大きいオーバードライブを要所要所で使った影響は大きく、溜まっている疲労を完全に無くすにはまだ十分な休養が必要である。
「そういえば昨日ヒエン君が記者会見したときのニュース、見出しに載ってるよ」
とここでなのはが新聞のニュース欄で見つけたのか教えてくれる。
「テレビでもお兄ちゃんのこといっぱい言ってるもんね」
アリシアもせんべいをパリパリと食べながらチャンネルをいじくる。
「まあ当然よね。一ヶ月行方不明になってた高校生がいきなり現れたんですもの」
「お母さん達も記者会見前まで情報規制するのが大変だったみたい」
アリサとすずかも話す。
この二人は俺の記者会見の時に付き添ってくれたので結構詳しい。
「今、ウチのマンションの前も報道陣でいっぱいだよ」
「しばらくはまだこのままやろうなぁ」
フェイト、はやても心配そうに話す。
「まあでも大丈夫よ。年が明けたらさすがに収まるでしょうし。そのために皆で匿ってるんだから」
忍さんが胸を張りながらドヤ顔する。
俺の視線はある一点で釘付けになるのだがその瞬間、隣にいる未来の魔王様からとんでもない威圧感を感じたのですぐに視線をそらした。
「本当に皆さんには、お世話になります」
俺は今世間から結構注目を浴びてる関係で皆から匿ってもらっている。
まさかこんなにも大事になるとは、事件解決後は欠片も予想していなかった。
「そういえばずっと気になってたんですけど」
するとすずかがこちらをジッと見る。
なんぞ?
「どうしてヒエンさんは【夜の一族】について知ってるんですか?」
「あ」
言われて気付いた。
俺としたことがなんと初歩的なミスをしてしまったのか。
一同が俺を見る。
これは誤魔化しきれない気がする。
正直に言った方がいいか。
俺は使い魔であるミニッツ達を出す。
ポンッという音が聞こえた。
「「「「「ガァウ~」」」」」
「「ガゥ……」」
七匹のミニッツを出す。
普段は心の奥にいる臆病なアオッツとアイッツも社会勉強という名目で出しておく。
するとミニッツを見た女子達の目がこれでもかと言わんばかりに輝く。
俺は気にせず説明する。
「アリサとすずかの側にこいつらを置いて、俺も【夜の一族】についての説明を聞いてたから」
「えっと、それは私がアリサちゃんにしたときの説明を?」
「うん」
俺の言葉にすずかが驚く。
そこで俺はミニッツは相棒の魔力で生み出されたプログラムであり、【調和】の能力で姿を消して側にいさせたことを説明した。
盗聴まがいのことやってました……なんてバカ正直には言えないので、というかそう言っては俺が犯罪者みたいな扱いになってしまうので、拐われてしまった二人が心配だったので護衛を兼ねていたということにした。しておいた。
話せば意外と分かってくれた。
と、そこで俺は未だに震えているアオッツとアイッツに目を向ける。
二匹は俺の両手の中で未だにビクビクと震えている。
この二匹は特別臆病だ。
ここ一ヶ月でなんとか主の俺には心を開いてくれたが、他には目もくれようとしない。
そこで俺は考えた。
アリサとすずかの二人なら……この二匹をなんとかできるのでは?と。
二人は家で動物を多く飼っている。
その関係で動物にも慣れているだろう。
そろそろこの二匹にも、もう少し人に慣れてもらわねばならない。
俺は二人に声をかける。
「二人に少し頼みがあるんだ」
「「頼み?」」
「この二匹をしばらく預かってほしい」
俺は両手で震えている二匹を二人に預ける。
ちなみにアオッツをアリサに、アイッツをすずかに預けた。
「この子達……」
「……震えてるね」
「その二匹は特別臆病でな、そろそろ他の人にも慣れさせたいんだ。動物に慣れてる二人なら大丈夫だと思ったから」
二匹は俺に不安そうな視線を向けてくるが、俺は二匹の頭を優しく撫でる。
「そう心配するな。二人とも優しいお姉ちゃんだから。そろそろお前達も友達とか作っていかないとな?」
「「ガゥ……」」
すると二人は言った。
「分かったわ」
「任せてください」
力強く頷いてくれたので俺も安心だ。
少し安心した俺はこたつの上に置いてあるみかんをいただいた。
────────
──────
────
そうそう。
闇の書の件は結局、原作と同じく『闇の書事件』 と呼ばれることになった。
クリスマスパーティーの後に、はやては検査を受けて体調も特に問題なかったので退院。
リインフォース達は時空管理局本局にて事情聴取があった。
担当者はレティ提督なのでそうそう悪いことにはならないだろう。
はやてもはやてでこれからのことを考えているのか、これを期に魔法の世界へと足を踏み入れるつもりらしい。
石田先生にもその旨は伝えているようで、「しっかり頑張りなさい」と背中を押してもらったようだ。
ヴォルケンリッター達は、当分本局で検査や面接などがあるため忙しい。
リインフォースはというと、実は防衛プログラムの侵食暴走体を切り離した際に魔導書の機能の大半も同時に切り離してしまったらしく、力の殆どを失ってしまった。
かろうじて融合能力は残っているものの、俺達と戦ったときほどの能力は残っていない。
それでも並の魔導師に比べれば全然凄いのだが。
魔力ランクはAランクといった具合だ。
そして俺がナハトをダブルヒートバーナーで防衛プログラムの
それがナハトが加えていた金色のペンダントである。
その金色のペンダントには夜天の魔導書の力がある程度封じられている。
リインフォースは自身の能力を時間をかけて取り戻すのと同時に、それを使って自分の力を継ぐ新たな魔導の器を作り出そうと考えているらしい。
はやてもやる気らしく、一生懸命協力するそうだ。
この話を聞いたとき、俺はある意味安心した。
リインフォース
原作ではA'sのテレビ版、映画版共にラストで出てきた。
はやてをサポートするために生み出された人格型ユニゾンデバイスである。
本格的に登場するのはStrikersからであり、氷結魔法を得意としている。
身長約30cm程で浮遊しており、よく妖精と勘違いされることも多い。
予備知識として一応人間の子供と同サイズになることも可能らしい。
あのクリスマスイブの日、リインフォースを助けたときから、もしかしたら彼女が生み出されないのではないかと内心ヒヤヒヤしていたが、はやて達から話を聞いたときは心の底から安堵した。
話がなければ俺の方からそれとなく提案しようかと考えていた程だ。
「「「「「ガゥガゥガゥガゥ」」」」」
あとはギル・グレアムやリーゼ姉妹に関してだが、リンディさんの話によれば三人とも管理局を退職し、故郷のイギリスに帰るそうだ。
そこで余生を過ごしながら自分にできることを探すとのこと。
ギル・グレアム曰く……償いらしい。
リーゼ姉妹も一緒になって主を支えていくようだ。
「「「「「ガゥガゥガゥガゥ」」」」」
ちなみに三人とも魔力封印をされるので魔法は使えなくなる。
そしてしばらく監視される。
魔力や魔法が使えなければ元提督といえど、ただの一般人。
リーゼ姉妹も格闘戦闘などべらぼうに強いが、魔力や魔法を封じらればただの猫姉妹。
何もできはしない。
とはいえ俺もそこまで心配してはいない。
闇の書事件が無事解決した今、もう彼らが罪を犯すことなどないだろう。
「「「「「ガゥガゥガゥガゥ」」」」」
というか俺はこれから自分の事を考えなければならない。
まずは一ヶ月間、行っていなかった学校生活に関してか。
あぁー……憂鬱だー。
主に勉学に関して。
いくら転生者で前世で社会人の経験があるとはいえ、勉学のことまではさすがに覚えていない。
リアル完全記憶能力でもあれば余裕なんだろうけどー。
一応、休学扱い?いやこの場合は公欠扱い?誘拐されていたということで留年することはないだろうが……
また死ぬ気で勉強しなきゃいけない生活か。
ヤダナー(現実逃避
「「「「「ガゥガゥガゥガゥ」」」」」
「……ねぇヒエン君?さっきから何やってるの?」
するとこたつで暖を取っているなのはが話しかけてくる。
「……ミニッツでお手玉しながら今までの事を振り返りつつ、これからの事を考えて憂鬱になってた」
「また器用なことを……。それよりこれからの事考えてたって、何か悩み事?」
「まぁ、悩みっつーか、これからやること多いなーって。主に学校関係で」
「あぁー」
「まあ悩んでも仕方ないし、成るようになるだろ。とりあえず当面の目標は『留年しないように頑張る』だな」
そして俺はお手玉していたミニッツ達をソッと下ろす。
「これからのことかー。私はどうしようかなー」
「何かやりたいこととかないのか?」
「なんの話?」
するとフェイトがお餅を焼いたのか皿一杯に持ってきた。
「いやこれからのことについてなのはと話してたんだ。何かやりたいことないのかーって」
「やりたいこと……か。私はあるよ?」
「ふえぇ。フェイトちゃんのやりたいことってなんなの?」
「それは俺も興味あるな」
フェイトは少し照れながら話す。
「私、執務官になりたいんだ。
「…………」
俺は言葉をなくす。
「……フェイトちゃんならやれるよ」
「そうかな?」
「うん。絶対大丈夫」
「ありがとうなのは」
なのははフェイトの夢を純粋に応援する。
そしていつものように二人で甘い百合百合しい空間を作り出していた。
誰かブラックコーヒーくれ。
それよりも、もうフェイトは将来のことについて考えていた。
脱帽した。
俺なんぞ目先のことしか考えてないのに。
「なのはとヒエンは何か考えてる?」
「……私は執務官は無理だと思うけど、方向はたぶんフェイトちゃんと一緒。ちゃんと伝えたいんだ。自分の魔法」
「お、俺もよく似たもんかな」
俺も見栄を張ってそう答える。
年下の女の子が自分の目標らしきものを掲げているのだ。
ここは年長者として俺もしっかりと答えておかなければなるまい。
「そっか。二人なら……きっと大丈夫」
するとフェイトは優しげな微笑みをこちらへ向けた。
罪悪感がマッハでヤバくなった。
するとミニッツ達が我慢の限界を迎えたのか机に置いてあるお餅に群がる。
「おいこら。そんなに一気に群がったら……」
ものの数秒でなくなった。
「「「「「ガァウ~」」」」」
「きゅー」
「ナハトお前もか」
そしたらいつの間に出て来たのかナハトも一緒になって食べていた。
「あははは……まだまだお餅いっぱいあるから大丈夫だよ。フェイトちゃんお餅もっとお願いしまーす」
「はあーい」
するとフェイトがさらに皿一杯に持ってきた。
正月前に食べるお餅はかなり美味しかった。
────────
──────
────
お餅を食べた後、俺は気晴らしに外へと出る。
マスコミは俺の家をマークしているため、マンションに集中している。
変装して出ていけばバレることはないだろう。
俺は変装用の眼鏡をかけ、その足である所へと向かった。
たどり着いたのは海鳴臨海公園の灯台の下だ。
「…………」
海を眺める。
風が無性に冷たい。
「もっと強くならないとな……」
そんな言葉が急に出てきた。
「ガァウ」
「きゅー」
すると俺の両肩に相棒とナハトが現れる。
二匹とも高町家でゆっくりしていたはずだが、俺がいなくなったことに気付いたのか俺の元にまで向かってきたらしい。
まあ本体は俺の心の中にいるからすぐに分かるか。
二匹とも何か思うところがあるのか俺の顔をジーっと見つめる。
「別に……特に変な意味はないよ。まぁ、思うところがないと言えば嘘になるけど」
「「…………」」
「はぁ……」
観念して話す。
「……またいつとんでもない奴が出てくるか分からないだろ?だからそういう奴に備えてしっかり力をつけないとな……って話だ」
まずはオーバードライブをしっかりと使いこなせるようにならないといけない。
あれが間違いなく現時点での俺の切り札なのだから。
すると二匹が元気よく鳴いた。
「ガァウ!」
「きゅ!」
二匹から『『任せろ!嫌でももっと強くしてあげる!!』』との思念が届く。
「あの二人とも?まだ俺、病み上がりだからそんな気合い入れなくても大丈夫よ?」
「ガゥガゥ!」
「きゅう!」
『さっき身体スキャンしたけど体調的には問題ないよー』『むしろ健康のために少しは身体動かさないとダメ』と言われた。
え?
なにそれ?
もう体調的に問題ないの?
あのクリスマスの激戦から数日しか経ってないけど!?
「いやいやいや、この前フィリス先生からもしっかり休まないとダメって言われただろ?」
「ガゥ!ガゥガゥ!」
「きゅー!きゅきゅ!」
『フィリス先生には定期的に身体データ送って報告はちゃんとしてるー』
『軽い運動ならもう問題ないって言ってたから大丈夫ー』
『それにここ数日寝る前に定期的に治癒魔法で回復してたから……』
『疲労はもうない』
『『大丈夫だ。問題ない』』
との思念が届く。
ちょっと待て。
無性にツッコミたいことができたからちょっと待て。
え?
君達フィリス先生に俺の身体データ送ってたの?
一体いつの間に?
確かにここ数日で随分身体軽くなったなって思ってたけど!?
治癒魔法で癒してたのかよ!?
それと盛大にネタぶっこんできてんじゃねーよ!?
「ガゥ~」
「きゅ~」
「軽くセットアップしろってか」
「ガゥ!」
「まあ確かにやることなんてないけど……いや積みゲーを消化するという俺の使命が」
「きゅ!」
「ちょっとだけね……はいはい分かりましたよ」
あかん。
ウチの小動物達が強引すぎて泣ける。
「しゃーない」
そしてセットアップしようとしたとき……
「こんなところで何やってるの?」
「まだ寒いのに……風邪引いちゃうよ?」
「ミニッツちゃん達からここにいるって聞いて迎えにきたよー」
後ろにいつの間にか魔法少女三人娘がいた。
はやての車イスをリインフォースが押している。その後方ではヴォルケンリッター達がこちらを見ていた。
皆、もう戻ってきてたのか。
「いや軽くセットアップしようかと思ってな?こいつら曰く、もう体調もいいみたいだし。それに鈍った身体も軽く動かしたくてな」
俺が首をグキグキと動かす。
そこになのはが苦言を呈する。
「だからっていきなり動かしたら身体に悪いよ」
「大丈夫大丈夫。軽く動かすだけだから。そうだお前達、暇なら今から軽く模擬戦でもしないか?」
「私はいいけど、でも……」
フェイトも遠慮がちに言うので俺は言った。
「なんだ自信ないか二人とも?」
「「む」」
すると二人はムッとし頬を軽く膨らませる。
続けて俺は言う。
「まあ自信ないなら仕方ないなあ。思えば……俺ってなのはとフェイトに負けたことないしな」
そうなのだ。
俺は今までこの二人には負けたことがないのだ。なのはには模擬戦で一度引き分けただけで後は勝っているし、フェイトとも決着はついたことがないが負けるとも思わない。
「そこまで言われたらさすがにね……。フェイトちゃん?」
「うん。分かってるよなのは」
「「相手になってあげる!!」」
「そうこなくっちゃ」
俺は不敵に笑う。
「じゃあなんか楽しそうやし、私らも混ぜてもらおうか?なあリインフォース?」
「ご命令とあらば、我が主」
はやても乗り気だ。
「結界頼むシャマル!」
「はいはい。お任せを~」
シャマルは笑顔でこちらに手を振る。
他のヴォルケンリッター達もどこか楽しそうにしていた。
「じゃあデバイスを構えろ三人とも」
各々がデバイスを構える。
「レイジングハート」
《Yes, my master.》
「バルディッシュ」
《Yes, sir.》
「リインフォース」
「はい我が主」
「相棒」
「ガァウ」
そして一斉に唱えた。
「「「「セーーットアップ!!」」」」
俺達は光に包まれ、バリアジャケットへと換装する。
と同時に皆が空へと勢いよく翔けだした。
俺は三人の表情をチラ見する。
その表情は笑顔であった。
楽しそうに笑っていた。
今回の事件は苦しいことや、痛いことばかりだった。
心が折れそうな時だって何度もあった。
でも……
その度に仲間が助けてくれた。
周りの人々が協力してくれた。
皆のおかげで……
皆が頑張ったおかげで……
こうして笑い合うことができた。
それがたまらなく嬉しかった。
だから頑張れた。
だから諦めずにやり遂げることができた。
「さあ、やるか!勝つぞ相棒!そして……サポートは任せたぞナハト!」
「ガァウ!」
「きゅ!」
俺も笑顔で空を翔け出した。
空は綺麗な青空だった。
俺達は自分達の未来へ……
これからに向かって飛びだした。
ちなみに模擬戦は、俺はなのフェイコンビに集中的に狙われ脱落し、その攻撃直後の隙を狙ったはやてによって二人が落とされた。
勝者ははやてであった。
祝 A's編完結!!
なんとかプリキュア編の話数を超えることができたー!!(゚∀゚ 三 ゚∀゚)
まあ次のクロスオーバーは戦姫絶唱シンフォギアと既に決まってるんですがね?(白目
次は『幕間 月村家
なんでA's編で夜の一族の話を持ってきたのか……
全てはこの幕間のための伏線だったのさ!(ネタバレ
といっても五・六話で終わらす予定です。
どうぞお楽しみに。
では、また(・∀・)ノ