主人公ついに目覚めるの巻。
では、どうぞ( *・ω・)ノ
第三者side
12/20 PM3:36
その日も神咲那美は学校を早々に終わらせると、さざなみ寮に戻ってくる。
普段の彼女のルーティンワークであればそのまま神社へ向かってアルバイトの巫女をしているのだが、最近はあることをしてから神社へと向かっている。
彼女はそのまま二階へと上がり、奥の部屋へと進んでいく。
そしてドアを開ける。
「ただいま戻りましたリニスさん」
「おかえりなさい、那美さん」
そこには茶髪の女性リニスと……
「ヒエン君の様子はどうですか?」
ベッドで眠っている少年の姿があった。
「変わらず眠っています。でも徐々に顔色も良くなってきているので目覚めるのも近い……とフィリス先生が」
「そうですか……良かった。じゃあいつもの、早目に済ませちゃいますね?」
「お願いします」
そして那美は眠っている少年に近づき、その胸に手を起き、眩い光を発する。
彼女の能力、ヒーリングを発動させたのだ。
那美はヒーリングで少年の身体を癒していく。
そしてその様子をリニスはジッと見つめていた。
「…………」
少年があの砂漠の無人世界で魔力を蒐集されてから既に約十日の月日が流れていた。
そしてリニスはある責任を感じていた。
(あのとき私が許可を出さなければこんなことには……)
リニスは眠ってる少年を見る。
(それに……どうしてこの子ばかりがトラブルに巻き込まれなくてはならないのですか……)
少年はPT事件から始まり、その後の久遠の祟り狐の件、並行世界での戦い、そして今回の闇の書の件である。
これまで少年は数々の大きな事件・トラブルに巻き込まれている。
その度に少年は事件解決に奔走し、その度に大ケガを負っていた。
実を言うとリニスの知らない事件は他にもあるのだが、リニスがそのことを知るのはもう少し後のことになる。
(この僅か一年でここまで事件やトラブルに巻き込まれるなんて……これではまるで
そしてその思考になぜか
(いや、ふと考えてみましたが、考えてみればみるほど明らかにおかしい。いくらなんでも……
リニスの思考はあながち間違いではない。
少年は転生者である。
その関係で少年には神の加護というものがついている。
そしてその神の加護が少年をトラブルに巻き込まれやすくするという体質にしてしまっているのだ。
少年がこれまで多くの事件やトラブルに巻き込まれた背景には、この加護の存在があるのも大きい。
そしてリニスは思考を続ける。
(そもそもがおかしい。人一人が事件やトラブルに巻き込まれることなど、人生でそう何度もあるはずがない。あったとしても一度や二度遭遇すれば良い方でしょう。なのに……
思考を続ける。
(いや、おかしいことは他にもあります。ヒエンに助けを求めてきたというキュアアンジェの存在……彼女はなぜヒエンに助けを求めたのです?……
さらに思考を続ける。
(ヒエンは強くなりました。私が指導を始めたときと比べて格段に。並みの者であれば今の彼の足元にも及ばないでしょう。ですが……世界は広い。その気になればヒエンより強い者などこの世界には幾らでもいる。ですが助けを求めたキュアアンジェには、なぜかヒエンが選ばれた)
さらにさらに思考を続ける。
(それにヒッツから見せられた記録映像ではキュアアンジェはヒエンのことを昔から知っているような口振りでした。ヒエンもそのことには多少驚いていたものの、特にこれといったリアクションもなかった。ですが、あの素直な性格のヒエンが
リニスは結論を出す。
(恐らくヒエンとキュアアンジェは何かを隠している……)
「…………スさん!リニスさん!!」
「……はい?」
そのとき那美の呼ぶ声でリニスは現実に戻る。
目を向けると心配そうに顔を覗き混む那美の姿があった。
「大丈夫ですか?」
「失礼。少し考え事をしていました」
「……ヒエン君のことですか?」
「……はい」
那美も眠っている少年に視線を向ける。
「久遠が戻ってきてから……私はヒエン君に何があったかを既に知っています」
「確か久遠の
「はい。正確には久遠の見た記憶を夢として第三者に見せる能力なんですけど」
「それで知ったのですね?」
「はい。久遠はヒエン君から黙っとくように命じられていたみたいですけど……あの子素直で分かりやすいからあっという間に皆にバレちゃいました」
那美は苦笑いで話す。
「でもヒエン君の居場所については頑なに語ろうとはしなかったんです。なので、近い内に皆でヒエン君の居場所を探しだして迎えにいこうとしてたんです」
「そうだったのですか」
「リニスさんはヒエン君の居場所は知らなかったんですか?」
「…………詳しいことは言えませんが数日前にこの子の居場所を突き止めまして。秘密裏に様子を見ていました。この子は訳もなく姿を隠しはしないので」
「そうだったんですね。行方不明のヒエン君がいきなりこの状態で現れたときは驚きました。……彼はまた、何か危険なことに巻き込まれているんですね?」
「はい。現在、ヒエンは命を狙われている……とまではいいませんが危険な状況であることに変わりはないのでアースラと同盟を組んでいるさざなみ寮の皆さんに助けを求めたのです」
現在、アースラとさざなみ寮は同盟を結んでおり協力関係にある。
その同盟内容が海鳴市で起こる怪異現象、又はそれに属する事件や出来事を協力して解決するというものだ。
そして今回の闇の書の件に関してもアースラからさざなみ寮に簡単にではあるが、内容は伝わっている。
だが捜査情報など安易に漏らせる情報ではないため、詳細な情報はまだ伝えていない。
今回は少年がまた仮面の男達に狙われるかもしれないので、急遽避難所としてアースラからさざなみ寮に場所を移したのだ。
コンコン……コンコン……
そのとき窓を叩く音がする。
リニスと那美が視線を向けると、窓の外には黄色い小ライオンがいた。
「戻ってきたみたいですね」
リニスは窓を開けて黄色い小ライオンを中へと入れる。
「ガァウ~」
「お疲れ様ですキッツ。情報収集はどうでしたか?」
「ガゥ」
すると黄色い小ライオンはリニスの頭に乗り、思念を伝える。
「……なるほど。ヒッツの情報は正しかった様ですね。これで確証が得られました」
(闇の書の主は八神はやて。そしてその保護責任者の名は……ギル・グレアム)
「ありがとうございますキッツ。リビングにお礼のドーナツを用意しているので食べて下さい。良ければ那美さんも一緒にどうぞ」
「ありがとうございます。おいでキッツちゃん」
「ガゥ♪」
黄色い小ライオンは那美に飛び付く。
そして三人で一緒に部屋を出ていく。
(しかし……フェイトとなのは、アリシアの新しくできた友達が闇の書の主で、そしてその保護責任者がクロノの父親の師匠とは……)
「はぁ……因果なものですね。闇の書の主、その守護者、そしてかつての闇の書の被害者達……まさか闇の書に因縁のある者達がこの海鳴市に集結するとは……一体どれほどの天文学的確率なのでしょうか」
そう小声で呟いたリニスはすぐにクロノとリンディに連絡を入れるために二人と別れ、寮の外へと出ていった。
だからこそ気付けなかった。
眠っていた少年の指が少し動いたことに。
第三者side end
◆◆◆
ヒエンside
「…………」
瞼がゆっくりと開く。
目の焦点が合わず、景色がボヤける。
しばらくボーッとしていたが段々見える様になってきた。
そして自分が眠っていたのだとなんとなく理解する。
「…………」
再びボーッとしていたが、やがて意識も段々と覚醒する。
「こ、ここは……?」
そしてゆっくりと起き上がり、周囲の状況を確認する。
どこか見覚えのある洋室だ。
「もしかして……さざなみ寮……か?」
そして俺が軽く戸惑っていると……
『ガゥ』
「相棒……」
こころの中にいる相棒から『大丈夫?』との思念が届いた。
だが俺は相棒の様子にどこか違和感を覚えた。
「あれ?相棒……分身体は?」
相棒の分身体が出てこないのだ。
いつもならすぐに出てくるのだが。
『ガゥガゥ』
「へ?クロノと調べ物?」
『ガゥ!』
どうやら相棒の分身体はクロノと行動を共にしているらしく、現在アースラにいるらしい。
『ガォ?』
「うん?何があったか覚えてるかって?」
その言葉を聞いて俺は考える。
「そういえば……どうして俺は眠って……」
そして思い出す。
『さて……貴様はもう用済みだ。それに貴様を生かしておけばさらに厄介なことになるのは目に見えている。ここで消えろ』
『まぁいい。当初の目的は達成した。貴様を消すことなどいつでもできる』
俺のリンカーコアを奪った白い仮面の男と……
『忠告しておこう。貴様が平穏無事に過ごしたいなら……この件にはもう首を突っ込むな』
そして俺、フェイト、シグナムの三人をあっという間に拘束した黒い仮面の男のことを……
奴らのことを思い出した。
「……そういえば魔力を蒐集されたんだったな」
俺は現状を理解する。
そして想定していた……一番最悪な展開になったことも同時に理解した。
「恐れていたことが現実になったか……」
恐らくだが俺のリンカーコアを蒐集したことで闇の書の管制人格は、俺の死ぬ気の炎を使用した魔法、
それは同時に俺の能力……死ぬ気の炎、大空の炎の真骨頂【調和】をも使用できる可能性が出てきたということ。
(まずいことになった……)
ただでさえ厄介な闇の書の管制人格がさらに強化されてしまった。
それだけじゃない。
俺の魔導師としての資質も問題だった。
俺はどちらかといえばなのはや、フェイトのように一芸に秀でたタイプの魔導師ではなく、クロノのようなオールラウンダー寄りの魔導師である。
相手によって戦闘方法を変えるタイプだ。
だからこそ今回はその資質が厄介だった。
俺には基本的に不得意な魔法というものがない。
なぜなら全ての魔法に適正があるからだ。
どれも平均的な数値であるがorz
数値だけ見ればザ・平凡、ザ・凡人といっても過言ではない。
話が脱線したな……。
つまり俺は平均的な魔法数値をカバーするために
そして俺は今回闇の書にリンカーコアを蒐集されてしまっている。
つまり俺の習得魔法を闇の書も全て使えるということだ。
それも俺よりも完璧に……。
(原作以上に厄介な存在になっちまった……)
『ガゥ!』
するとそんな俺の思考を遮るように相棒が一声鳴いた。
「相棒……」
『ガゥガゥ!』
「……そうだな。今はできることをやっていくしかない」
相棒から『悩んでても仕方がないでしょ!』と喝を入れられた。
そして気を取り直した俺は相棒に尋ねる。
「そういえば相棒、俺が魔力を蒐集されてから何日経った?」
『ガァウー』
「…………は?十日?」
『ガゥガゥ~』
「え?『言うの忘れてたけどなのはやフェイト、アリシア、クロノやリンディさん、さざなみ寮の皆には変装してたこともうバレてるから~』って………………え?マジ?」
『ガゥ』
「…………本当だ。変身魔法が解けてる」
俺は遅まきながら自分の現状を理解すると同時に……即座に判断する。
「よし、逃げるか」
そしてベッドから立ち上がり、軽くストレッチする。
少しふらつくが立てないほどではない。
「……そんな病み上がりの状態でどこに逃げるというのです?」
「そんなの決まってる。このままじゃ説教されるのは目に見えるからな。姿を隠しつつ情報収集もするんだよ。闇の書が復活するまでもう時間もないからな」
「……また無茶をするつもりですか?」
「人生なんて無茶無謀みたいなもんだろ?それにこんなところで悠長に眠ってる場合じゃない。下手をすれば世界が滅びるかもしれないんだ」
「……それでまた大ケガしても?」
「舐めてもらっちゃ困る。これでも結構強くなったんだ。そう簡単に大ケガなんてしない……え?」
ちょっと待て。
俺は一体誰と話しているんだろう?
そして俺がギギギッッッと効果音が鳴りそうな音でゆっくり振り向くと……
ゴゴゴゴゴゴゴ………………
そこには三人の女性がいた。
思いっきり知り合いの女性達がいた。
その人達は笑顔だった。
そして……
背後に阿修羅が見えた。
「「「とりあえず……そこに正座しなさい」」」
「……はい」
様子を見に来ていたリニス、フィリス先生、那美さんにソッコーでバレたのだったorz
次回、ついに闇の書のページが埋まる?
では、また(・∀・)ノ