今回は少し短いで候。
では、どうぞ( *・ω・)ノ
第三者side
その日、砂漠の無人世界から戻ったシグナムはさっそくヴォルケンリッター達に知らせていた。
「闇の書の完成直後の永久封印……??」
シャマルが呟く。
「ああ、オオゾ……キュアヒートの推測は我らにとって無視できるものではない。少なくとも奴等……仮面の男達が闇の書の完成を狙っているのは確かだ」
シグナムが神妙そうに話す。
「完成した闇の書を利用するものだとばかり思っていたが……まさか封印だとは……」
「あの野郎!あのとき助けたかと思ったら、そんな狙いがあったのかよ!!」
ザフィーラとヴィータも驚く。
「でもよ!闇の書は完成したらすぐに……」
「ああ、
ヴォルケンリッターは闇の書のシステムの一部である。
闇の書については……彼女達が一番良く分かっている。
「……まぁ、一応家の周りには厳重なセキュリティを張ってあるし、万が一にもはやてちゃんに危険が迫る様なことはないと思うけど」
分かっている……。
「念のためだ。シャマルはなるべく主の傍を離れん方がいいな」
「うん」
ある一人を除いて……。
「ねぇ」
そのときヴィータが皆に話しかける。
「闇の書を完成させてさ……はやてが本当のマスターになってさ……」
俯きながら話す。
「それではやては幸せになれるんだよね?」
ヴィータの言葉に皆が首を傾げる。
「なんだいきなり?」
「闇の書の
シグナムとシャマルは首を傾げてヴィータに話しかける。
ヴィータは返事を返すが……
「そうなんだよ……そうなんだけどさ……私はなんか、なんか
彼女だけは……どこか違和感を感じていた。
だがそれは間違ってはいない。
ヴィータを除くヴォルケンリッター達は
闇の書本体に重大なバグがあることに。
そしてそれ故に……
闇の書のシステムの一部であるヴォルケンリッター自身にもバグがあることに気付けないのも無理はなかった。
記憶違いというバグに……。
そのとき……
ガタンッ!!!!!!
「「「「!?」」」」
それも二階から。
二階には現在、一人しかいない。
この家の家主はやてだ。
ヴォルケンリッターの四人はすぐに二階へと上がり、寝室に向かう。
そしてドアを開けて目を見開く。
「はやて!?/
そこにはベッドから車椅子に乗ろうとしたのか、床に倒れているはやての姿があった。
◆◆◆
「うん、大丈夫みたいね。良かったわ」
「はい、ありがとうございますー」
所変わって海鳴大学病院……
はやては現在、病室にいた。
あの後、倒れてるはやてを発見したシグナム達はすぐに救急車を呼び病院へと向かった。
病院についてしばらくして、目を覚ましたはやては担当医である石田先生の診察を受けていた。
「はぁ、ほっとしました」
「せやから、ちょう目眩がして胸と手がつっただけやて言うたやん。もう……皆して大ごとにするんやから」
「でも、頭打ってましたし」
「何かあっては大変ですから」
大丈夫だというはやてを他所にシャマルとシグナムは安静にしているように伝える。
「はやて、良かった」
「心配かけてごめんなヴィータ」
はやてはヴィータの頭を撫でる。
「それじゃはやてちゃん、来てもらったついでにちょっと検査とかしたいから、もう少しゆっくりしてってね」
「はい」
石田先生の言葉にはやては苦笑いで返す。
「さてシグナムさん、シャマルさん。ちょっと……」
「はい?」
「??」
すると石田先生ははやてから見えない位置でシグナムとシャマルを呼び出す。
呼び出しを受けた二人はそのまま廊下へと出ていく。
「どうかしましたか先生?」
「ちょっとお二人には話しておかなければならないことがありまして……」
「話しておかなければならないこと?」
石田先生の言葉に少し緊張する二人。
「今回の検査ではなんの反応も出てないですが、つっただけということはないと思います」
「はい。かなりの痛がり様でしたから」
シグナムは思い出す。
はやては胸を押さえながらまるで苦しむ様に痛がっていた。
「麻痺が広がり始めてるのかもしれません。今までこういう兆候はなかったんですよね?」
「とは思うんですが……はやてちゃん、痛いのとか辛いのとか、隠しちゃいますから」
「発作がまた起きないとも限りません。用心のためにも少し入院してもらった方がいいですね。大丈夫でしょうか?」
「はい」
シグナムは静かに頷いた。
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──────
────
「入院!?」
はやての驚く声が病室に響く。
「ええ、そうなんです」
シャマルが静かに話す。
「「…………」」
はやてとヴィータが不安そうに顔を合わせる。
「でも検査とか、念のためですから心配ないですよ。ね?」
「はい」
そのとき花瓶の花を変え終えたシグナムが病室に戻ってくる。
「それはええねんけど……私が入院しとったら皆のごはんは誰が作るんや?」
「「「…………」」」
はやての言葉に思わず黙る三人。
だがいち早く復帰したシグナムがなんとか返す。
「そ、それはまぁ、なんとかしますから」
「そうですよ!大丈夫です!!……たぶん」
「…………」
心配そうな顔になるはやて。
心配事が完全に主婦のそれである。
「毎日会いにくるよ!……だから大丈夫」
「ヴィータはええ子やなあ。せやけど毎日やなくてもええよ?ここやることないし、ヴィータきっと退屈や」
「うっ……」
「その気持ちだけで十分や。じゃあ、お言葉に甘えて私は三食昼寝付きでのんびり休ませてもらおうかな?」
そしてはやてはゆっくり目を瞑る。
だがすぐに目を覚まし……
「あ、あかん!すずかちゃんがメールくれたりするかも!?」
はやての心配にシャマルがすかさずフォローを入れる。
「私が連絡しておきますよ?」
「うん、お願い」
そして皆は病室を出る準備をする。
「では、戻って着替えと本を持ってきます」
「ゆっくり休んでください」
「またねはやて」
そして三人は病室を出ていく。
「…………」
それを見送ったはやては……
「……く、くうぅぅ……」
直後に痛む胸を押さえた。
「こ、これは……ちょっと……ヤバいのかなぁ」
彼女は痛む胸を押さえながらソッと呟く。
するとふと……本当にふと……ここ数ヶ月会っていないある少年のことが頭をよぎった。
「ヤバいといえば……元気かなぁヒエン兄ちゃん」
はやては呟く。
「この前見たときはまた大ケガしてたからなぁ。大丈夫かなぁ……」
ソッと呟く。
「久しぶりに……会いたいなぁ」
そんな彼女の呟きは誰にも聴こえなかった。
今思えばなのはの世界も結構ハードな経歴の持ち主って多い気がする。
その最たる例がはやてな気がする。
僅か9歳で両親が事故で他界し、一人暮らし。なおかつ足が動かないために車椅子生活。そして闇の書のマスターに選ばれる。そして急に現れた守護騎士達のお世話をしている。
うん。
僕なら軽く五回は現実逃避してるレベルです。
もう少ししたら最終決戦編に入ります。
では、また(・∀・)ノ