はやてとヴォルケンズ 後編。
では、どうぞ( *・ω・)ノ
第三者side
新暦65年10月27日木曜日……
その日、シグナムとシャマルははやての担当医師である石田先生に呼び出されたため、海鳴大学病院へと足を運んでいた。
だが石田先生から話された内容は二人の予想を超えるものであった。
「命の危険!?」
「はやてちゃんが!?」
二人は思わず声をあげる。
「ええ。はやてちゃんの麻痺は原因不明の神経麻痺だとお伝えしましたが……この半年で麻痺が
石田先生は辛そうに話す。
「「…………っ!」」
そして二人もあまりの衝撃で言葉が見つからなかった。
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ドシン!!
シグナムは部屋から出ると己の拳を壁へと叩きつける。
シャマルも廊下のイスに座り込み泣き崩れてしまう。
「なぜ!なぜ気付かなかった!?」
「ごめん……ごめんなさい……わたし」
「お前にじゃない……自分に言っている!」
はやての両足の麻痺は病気ではなかった。
はやてが所持する「闇の書」。
「闇の書」ははやてが生まれたときから共にあった。その関係で「闇の書」ははやてと密接に繋がっている。
「闇の書」の独立防衛システムに
抑圧された強大な魔力が……リンカーコアが未成熟なはやての身体を蝕んでいたのだ。
それは健全な肉体機能どころか生命活動さえ阻害していた。
その結果……
はやての身体は麻痺という形によって影響を受けていたのだ。
そしてそれははやてが
守護騎士ヴォルケンリッター
この四人の活動の維持のために、
はやては闇の書の呪いによって静かに……だが確実に殺されつつあった。
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その日の夜……
四人は近くの公園に集まっていた。
「助けなきゃ……はやてを助けなきゃ!!」
ヴィータが涙を流しながら叫ぶ。
「シグナム……どうする?」
獣形態のザフィーラがリーダーであるシグナムに指示を仰ぐ。シグナムは待機状態のレヴァンティンを握ると静かに呟いた。
「我らにできることはあまりに少ない。だが道は……ただひとつだ」
四人はあるビルへと移動していた。
そしてそれぞれの配置につきながら……各々の決意を叫ぶ。
「
「はやてちゃんが闇の書の主として
「我らが主の病は消える!少なくとも進みは止まる!」
「はやての未来を
四人の足元に古代ベルカの象徴……三角形の魔法陣が現れる。
さらにそれらの魔法陣が一つにまとまると……四人はそれぞれの騎士甲冑を身に纏っていた。
「申し訳ありません主はやて。ただ一度だけ……貴方との誓いを破ります!」
そして四人は閃光となって……
それぞれ散っていった。
「闇の書」の魔力を蒐集するために。
◆◆◆
現在シグナムはザフィーラと共にある無人世界へと来ていた。
今回は文明レベルゼロの人間が住んでいない砂漠の次元世界にて、S級クラスの超危険生物のリンカーコアを狙っていたのだ。
そしてザフィーラと別れて散策していたのだが……
(まさかこんな所でまた会うことになるとはな……)
「久しいなキュアヒート」
シグナムは目の前にいる小さな黒衣の少女を観察する。
キュアヒートと名乗る少女は鋭い眼光でシグナムを睨んでいた。
見たところ黒衣の少女に隙は見当たらない。シグナムはレヴァンティンを油断なく構えながら少女に話しかけた。
「お前が倒した巨大ムカデは私のターゲットだったのだがな……それをああもあっさり倒してしまうとは。一応、Sランクの超危険生物なんだが」
「そ、そうだったのですか……」
この少女はシグナムが蒐集しようとしていた超危険生物をアッサリと倒していた。
シグナムは警戒を強める。
目の前にいる黒衣の少女は強いと。
しかしそれと同時に……歓喜もしていた。
「だが……今日はそれ以上に嬉しい日だ。こうしてお前と戦える機会が巡ってきたのだからなキュアヒート」
「そ、それはどうも……」
以前ヴィータが戦っているところを見て以来、目の前の少女と戦ってみたいと思っていたのだ。
そしてシグナムはレヴァンティンを抜刀術のように構え、少女もグローブに炎を灯し構えた。
それを見たシグナムは再度話しかける。
「貴様も炎を使うのか?」
「ええまぁ」
「そうか」
両者は軽く会話した後、再び睨み合う。
(さて、どのように仕掛けてくるのか……まずは様子見で軽く攻めてみるか)
シグナムは方針を決めて戦いに望む。
「…………」
「…………」
そして戦いは唐突に始まった。
「ヒートカノン」
黒衣の少女が右手をシグナムへと向けると炎の弾丸を放ってきた。
真っ直ぐにこちらへやってくる炎の弾丸を、シグナムはあえて前に出ることで紙一重でかわす。
「はっ!」
そしてレヴァンティンを振るう。
だが黒衣の少女はシグナムの速い斬撃を余裕を持ってかわしていく。シグナムはさらに連続で斬りかかる。
しかし……
(驚いたな……全く攻撃が当たらない)
攻撃が当たらないのだ。
黒衣の少女はまるで予知しているかの如く、シグナムの斬撃をかわしていく。
(こちらの動きが予め分かっているかのようだ)
シグナムは分析する。
すると動きがあった。
少女は両手から炎を前方に放ち、その反動で後ろへ下がると同時に……射撃魔法を展開させシグナムへと放ってきたのだ。
炎のスフィアが真っ直ぐにシグナムへと向かっていくが……
《パンツァーガイスト(Panzergeist) 》
レヴァンティンが全身を纏うタイプの装身型バリアでシグナムを包む。炎のスフィアがシグナムに直撃するが……そのまま打ち消した。
そしてシグナムの身体は
なんと黒衣の少女がいつの間にかシグナムの背後へと回り込んでいたのだ。
少女はそのままシグナムの背中に炎の拳を放つ。
だがシグナムは鞘で炎の拳を受け止めると、カウンターで少女の腹に蹴りを放った。
「くっ!?」
蹴りをくらい数メートル後ろへと吹き飛ぶ少女。その間にシグナムはレヴァンティンへ指示を送る。
「レヴァンティン!カートリッジロード!」
《カートリッジロード》
直後、レヴァンティンは炎に包まれ、爆発的に魔力が向上する。
それを見た少女も籠手を変形させる。
そして互いに近距離で技をぶつけ合った。
「
「
ドゴォオオオオオオンンン!!!!!!
互いの強烈な必殺技が炸裂し、爆発が起こる……が、シグナムは即座に直感に従い、上空へ跳躍する。
そのとき
シグナムはそのまま砲撃直後で硬直しているであろう少女に
(捉えた!)
と思った。
しかし……
ガキン!
(なにっ!?)
完全なる不意をついた一撃にも関わらず……その一撃すらもかわした黒衣の少女の姿があった。
体勢を立て直した少女はそのままグローブから放った炎をブースターに接近戦を仕掛けてくる。
シグナムもレヴァンティンに炎を付加したまま、剣を振るう。
ガキイイイイィィィィンン!!!!!!
炎の魔剣と炎の拳が激突する。
その衝撃で周りの砂は吹き飛ぶ。
「…………っ!」
剣と拳がせめぎ合う。
その影響でギチギチと音が鳴り響く。
(この見た目で……なんという力の強さだ!?)
黒衣の少女の予想外の力の強さに思わず目を見開くシグナム。
気付けば少女に話しかけていた。
「その華奢な肉体からは想像できないほどに力が強いな!」
「これでも一応鍛えてますので!」
すると少女は左手をシグナムに向けると、砲撃を放ってきた。
「!?」
咄嗟に身体を捻るシグナム。
砲撃はそのまま砂漠に当たり爆発が起こる。
そしてお返しとばかりに縦一線にレヴァンティンを振るった。
「攻撃とはこうやるんだ。
《シュトゥルムヴィンデ(Sturmwinde) 》
レヴァンティンの刀身から衝撃波を放ち、少女を吹き飛ばす。だが少女も吹き飛びながらもシグナムへと砲撃を放っていた。
互いの攻撃が直撃する。
「まさか……吹き飛びながらも砲撃を放ってくるとは」
直撃を食らったにも関わらず、シグナムは悠然と立ち続ける。
しかしその騎士甲冑は
シグナムは前方に目を向ける。
そこには未だに戦意を喪失させずに鋭い眼光でこちらを睨み付けている黒衣の少女の姿があった。
シグナムはこれまでの戦闘の評価を少女に告げていた。
「ふむ。攻撃のキレや早さも申し分ない。鍛えているというのもあながち嘘ではなさそうだな」
「いってくれますね……」
(それにスピードも以前戦ったテスタロッサと同等か、それ以上に速い。力もまだ温存しているのか余裕も感じられる……)
ここまでの攻防でシグナムは完全に理解した。
''目の前の少女は強い''と。
「ふっ」
「?」
そう考えたとき……
思わずシグナムは笑っていた。
その様子を目の前の少女は訝しげに見る。
「いや悪い。戦っているときに不謹慎だが……楽しいと感じてしまってな」
「楽しい?」
「武人の
「生粋の武人なのですね貴方は……」
「そうだな。だが……」
しかしシグナムは笑顔から一瞬で真剣な表情へと変わる。
「私にはそれを差し置いてでも為さねば成らぬことがある。悪いが……お前の魔力を貰い受けるキュアヒート」
(そうだ。私には為さねば成らぬことがある。そのために決めたはずだ!主のためならば騎士の誇りさえ捨てると!!)
そんなシグナムの真剣な雰囲気が伝わったのか少女も言葉を返した。
「私個人としては貴方達に魔力を分け与えたいのは山々なんですが……訳あって貴方達に魔力を奪われる訳にはいきません。ですがそれでも奪うというのなら……死ぬ気で奪い取って見せなさい!!」
そして両者が再び激突しようとしたとき……
《Thunder Blade》
突然、二人を囲うように
(この魔力の波動は……)
「そこの二人!戦闘を中止して下さい!!」
シグナムと少女が上空に視線を向けると……
(やはりお前かテスタロッサ……)
そこにはバルディッシュを構えたフェイトの姿があった。
次回は管理局サイドからの三つ巴の戦いへ。
では、また(・∀・)ノ