「おき………さい」
どこからか声が聞こえる。
「おき……くだ……い」
聞き覚えのある声だ。
「おきてください」
暗闇が蔓延る闇の世界から俺は目覚めた。
はい、ただ瞼開けて起きただけです。すいません。
しかし目を開けたその先には天使がいた。いや違った。神様見習いのエルの顔があった。
ドアップで。
え?
どういうことこれ?
というか妙に後頭部が柔らかいんですが!?
と俺が後頭部の妙な柔らかさにドキマギしているとエルが声をかけてくる。
「おはようございます」
「………おはようございます」
とりあえず挨拶を返す俺。挨拶って大事だよね!!しかし、このままではよく分からないのでエルに聞くことにする。
「あの~エルさん?これはどういう状況なんでしょう?」
「グラフ様が貴方の願いを叶えているときに、貴方は気を失ってしまったので私が膝枕で介抱していたんです」
その言葉を聞いたとき俺の中で何かが迸った。
膝枕………だ…と!?
何かエルが他にも言っていた気がするが今の俺には大して気にする余裕はなかった。
このとき俺は思った。
もう死んでもいい。
あ、でももう既に死んでたorz
おい?今呆れたやつ。君も男ならわかるから!目を開けたら美少女に膝枕って生きてるうちでも一生あるかないかだよ!?既に死んでるけど!
今はまだ神様見習いとはいえ、将来のアテナ様に膝枕ですよ!?絶世の美少女といっても過言ではないのですよ!!
俺は過労死で死んでしまったが、今ならその死も報われたように思える。というか彼女なんて今までいなかったし…
とりあえず考えても悲しくなってくるだけなので気にしないことにする。
うん。
しかし我ながら単純すぎて呆れるな。
「考えているところ悪いんじゃが、お主の心の声はハッキリと聞こえとるからな?」
俺は突如聞こえてきた声にビクリとする。そして視線を横に向けるとこちらを呆れた目で見ている神様の姿があった。
そして神様は俺に顔を向けエルの方にクイッと顔を向けた。
俺はそれに習うようにエルに顔を向けると彼女の顔は紅一色となっていた。
つまりってーと、あれですか。
俺の下らない思考もとい、考えていたことが全部駄々漏れだったと!?
「その通り」
その言葉を聞いた瞬間、俺は即座に立ち上がりこういった。
「オウ!ジーザス!」
◆◆◆
「ほれ、そこで某ボクサーのように真っ白に燃え尽きとらんでこっちに来るんじゃ」
ハハハ……燃えて燃えて燃え尽きた。それはもう真っ白にな…
「あの私はもう気にしてないので、その、元気だしてください。それに美少女って言われてちょっとビックリしただけですので」
「あ、うん。心配してくれてありがとう」
俺のことを心配してくれるのか…ええ子や、かなりええ子や。この子はきっといいお嫁さんになるんだろうなあっと考えていると…
「姉ちゃん姉ちゃん、この兄ちゃんがいいお嫁さんになるだろうなあっだって」
ちょっ!?
アラン少年!?
何いっちゃってくれてんの!?
ってかアラン少年も俺の心の声聞こえるのかよ!?
「まあこの空間自体が少し特殊じゃからのう~」
神様は我関せずといった感じで、アラン少年は顔を紅くしたエルに追いかけられていた。
なにこのカオス?
と色々あったがようやく本題へ。
「お主、まずは自分の姿を見てみよ?」
とそう言って神様は杖を再び地面にコツンとさせる。すると俺の目の前に立ち鏡が現れる。
そして自分の姿を見たとき俺は驚愕した。
服装は黒ジャージと変わらないが、姿は沢田綱吉となっていた。唯一違うとすれば彼が茶髪なのに対し、俺は黒髪といったところだろうか。
年は原作同様、彼と同じ中学2年生といったところだろうか。幾分か若返っているようだ。
ってかなんで若返ってんの?
「何を言っておる?転生するのだから元から若いに決まっておろう?」
「あ、そうなんですか。ってか記憶はあるままなんですね?」
「お主は少々事情が特殊じゃからの。それは仕方あるまいて。それより説明するぞ?」
「はい、お願いします」
そして俺は神様からの説明を聞いた。
神様曰く、転生した際にはこれらの出来事はある一定の年齢になると前世の記憶として思い出すとのこと。つまり今の姿の俺がその世界にはおり、この出来事は知識として処理されるのだそうだ。
それを聞いて俺は正直ホッとした。
いやだって、いわゆる憑依とか融合みたいなものかなって思ってたし。それで元々あったその体の人格を破壊するんじゃないかとか正直色々考えた。
だが俺自身がそもそもいるのであれば何も問題はないだろう。知識が増えるだけだ。
そして身体スペックや、才能なども沢田綱吉、ツナと変わらないらしい。何より興奮したのが彼と同じ死ぬ気の炎を操れるというのと、超直感が使えることだ。
そしてもうひとつ。
「そこからは私とこの子が説明させていただきます」
そこにエルとアラン君がやってくる。
「一つ大切なことを言っておきます。貴方が転生したとき、かなりの確率で、物語に巻き込まれると理解してください」
「え!マジで!?」
「はい、マジです。転生者というのはある意味、神の加護がついています。その加護の影響か、トラブルに巻き込まれやすい体質になるようです」
「oh…」
「無駄に良い発音じゃな」
神様が何か言っているが気にしている余裕がない。しかしふと、気になることがひとつ思い浮かぶ。
「あの、今気になったんですけど転生者っていっぱいいるんですか?」
俺は神様に聞いたつもりだったがエルがその質問に答えてくれた。
「いえ、滅多にいません。転生者というのは神様が認めた者にしか権利はありません。心悪しきものが力を持てば、下手をすれば世界を崩壊させたり、あらゆる人々の人生を壊しかねないからです。通常は皆さん、輪廻転生の輪からは外れませんから」
「あれ?俺はいいの?」
「はい。貴方の歩んできた人生を見て問題がないと神様は判断したようです」
俺は神様の方を向く。
「そうなんですか?」
「うむ。エルの言ったとおりじゃよ。お主の魂をここに運ぶ際にしっかりと確認したからの」
これはあれか。
俺はとりあえず悪い奴には見られてないのか。
良かった。
どうせ見られるなら良い人の方がいい絶対。というか悪い奴に見られたらショックを受けて落ち込む自信がある。っていうかこんな平々凡々な人生でも歩んできた甲斐があったんだな。
「で話に戻るんですが貴方にデバイスをお渡ししようと思ったのです。出てきてくださいな」
「デバイス……ってうわ」
俺がエルに確認を取ろうとしたとき、俺の胸の中からオレンジ色の小さな光がでてくる。そしてその光はエルの手に収まり、段々と形を成していく。
『ガァウ!』
そこには沢田綱吉の相棒と呼べるBOXアニマルのナッツの姿があった。
「え!?ナッツ!?」
「いえ、この子はナッツでありナッツではありません。貴方の記憶に存在するナッツを元に私が作り出したデバイスです」
「デ、デバイス…俺の」
俺はナッツ?に触れようと指を伸ばす。するとナッツ?はくすぐったそうに目を細めて俺の指に身を預ける。
か、か、か………
かわいい!!!!!!
「この子に名前をあげてください。この子は貴方の心から作り出した貴方専用のデバイス。いわば貴方と一心同体といっても過言ではありません」
「一心同体?」
「はい。この子は貴方と魂でつながっているんです。言うなれば独立内蔵型と言えばいいでしょうか?」
なんだろう?
なんかこうこの心の底から沸き上がってくるこの感じは。なんとも言えない感じではあるのだが、悪い気はしない。
とりあえずこの感覚は隅に置いておいて今は俺の相棒の名前を決めるか。
う~ん
ナッツじゃそのままだし…
とりあえず思い付くまま言葉を思い浮かべてみるか。
オレンジ…炎…熱い…
心…一心同体…魂…
よし決めた!
「熱き魂……死ぬ気の炎の魂……死炎魂という意味を込めて……ヒート・スピリッツ、お前の名前はヒート・スピリッツ!愛称ヒッツだ!」
『ガァウ!』
ヒート・スピリッツ、ヒッツがこちらを向いて笑顔で鳴く。どうやら気に入ってくれたようだ。
「ヒート・スピリッツ、ヒッツですか。良き名ですね」
「そうかな?」
「はい。しかしスピリットではないのですね?」
「うん。こいつは俺の心から生まれたんだろ。だったらこいつももう一人の俺みたいなもので、魂はこいつと俺の二つあるから複数系かなって」
「なるほど。しっかり考えてくれたんですね。では、セットアップしてみましょうか?」
「え?セットアップ?」
セットアップってあの変身!みたいなやつ!?
「はい、そのセットアップです。今から私の言葉を繰り返してください」
「わ、わかった」
と言うかナチュラルに心読まれてたよな今。と思いつつも少し緊張している俺。そしてエルは言葉を紡ぐ。
「我、調和を受け継ぐ者なり」
「我、調和を受け継ぐ者なり」
「契約のもと、その力を解放せよ」
「契約のもと、その力を解放せよ」
「炎は大空に、氷は夜空に、そして熱き魂はこの胸に」
「炎は大空に、氷は夜空に、そして熱き魂はこの胸に」
「この手に魔法を。ヒート・スピリッツ、セットアップ!」
「この手に魔法を。ヒート・スピリッツ、セットアップ!」
ヒッツの起動呪文を唱えたあとヒッツが俺の胸に吸い込まれて行く。
そして俺は光に包まれた。
◆◆◆
光が収まる。
俺は自分の格好に驚いた。全身は黒スーツで固められ、両腕には黒い籠手がついていた。
はて?
この格好は確か原作のツナが未来編でミルフィオーレファミリーの最強部隊
この黒い籠手はなんなのだろう?ツナは確かグローブだったような?まぁ俺は黒好きだしデザインがかっこいいから気に入ってるけど。
「その籠手僕が作ったんだよ~」
ここでアラン君登場。
それよりマジか!?
君、見た目5歳くらいだよね!?
「僕、天才だから~」
なるほど。なぜかこの子を見ていると納得できる。
「それより兄ちゃん。
「お、おう。
すると急に俺の体が光だし、しばらくすると収まった。そして再び体を見てみると背中に漆黒のマントが追加されていた。
「お、おおおお!!!???」
こ、これは!?
原作ナッツ防御形態の
「それは
「す、すげえ~」
「もう一回、
「お、おう。
すると俺の体がもう一度光だす。
すると俺の右腕の籠手が少し大きくなり形が変わる。すると原作ナッツの攻撃形態にそっくりなI世のガントレット(ミテーナ・ディ・ボンゴレ・プリーモ)になった。
「それが
「うん。シンプルでいいと思う!」
「これが私達姉弟から貴方に贈るプレゼントです」
「がんばってね~」
エル、アラン君がそれぞれ俺に贈る言葉を言ってくれる。
「ありがとう」
「そのデバイス…いえ、貴方の相棒ヒッツはまだまだ赤ちゃんのようなもの。貴方が成長を遂げれば自ずとヒッツも成長するでしょう。精進なさってください」
「わかった。色々頑張ってみるよ」
「そろそろ良いかの?」
「あ、はい。大丈夫です」
そこで神様が声をかけてきたので俺は神様に向きなおす。
「さて、どうじゃ生まれ変わった気分は?」
「はい。皆にこれだけやってもらったんです。ちょっと怖いけど今を全力でがんばって生きていこうと思います」
「そうかの?向こうにいけば色々大変じゃと思うがこちらも支援はするので安心するがよい。それはそうとお主に大切なことを聞くのを忘れておった。お主、名前はどうするのじゃ?」
「名前…ですか?」
「うむ。せっかく生まれ変わるんじゃ。自分で決めるがよい」
「うーん…名前か」
どうするかなあ?
沢田綱吉は…違うな。
俺はツナに似せただけであってツナじゃない。
だったら能力から決めてみるか?
ツナは大空の炎の使い手で…
あとは炎だけじゃなくて氷も使ってたよな?
うーん…大空…炎…氷…
大空に輝く炎と氷…
そうだ。この名前にしよう。
「ヒエン……名前は大空 氷炎(おおぞら ひえん)でお願いします」
「ヒエンか。良い名ではないか。では転生者ヒエンよ、これから良き人生を進むがよい」
「はい。色々ありがとうございます。あの一つ聞いてもいいですか?」
「なんじゃ?」
「あの、なんでここまでしてくれるんですか?」
「なに、ただの神の気まぐれじゃよ。お主のような若者が消滅してしまうのはただ見ていられなかっただけじゃ」
「気まぐれでも、それでも俺が救われたことに代わりはありません。神様、エル、アラン!本当にありがとう!」
俺は三人に深々と頭を下げる。俺は魂が消滅してしまうということに全く自覚がなかったが、この三人に救われていなければ恐らく自覚することもなく消滅していたのだろう。
そう思うと少し恐怖を覚える。
「お主はこれからのことを考えるがよい」
「またお会いしましょうね」
「今度は一緒に遊ぼうね兄ちゃん」
三人はそれぞれ俺に言葉を送ってくれる。本当にこの三人に会えて良かった。
「では、目を閉じるがよい。これからお主を送る」
そして俺は目を閉じ、意識を失うのだった。
お気に入り件数増えてて焦りましたorz