あと二・三話書いたら時間が飛びます。
では、どうぞ( *・ω・)ノ
ヒエンside
俺は現在、アースラへと来ていた。あれから三日ほどで退院できた。だが最近、結構高校を休んでいるので留年しないように少し注意しなければならない…。
そして今日は俺以外にもアースラへと来ている人物が二名いる。医師のフィリスさんと、さざなみ寮管理人の耕介さんである。
「ふぇー」
「これは…すごいな。まるでSF映画だ」
俺達は海鳴臨海公園で待ち合わせた後、転送魔法でアースラへとやって来た。今日二人がやってきたのは、リンディさんとクロノに会うためだ。
フィリスさんがここに来たのは、俺の担当医師となったためらしい。俺の担当医師は、はやてと兼用で石田先生がしてくれていたのだが、事情が事情ということで石田先生からフィリスさんに替わったのだ。この人は俺の事情を知っているため、魔導師についての詳しい話を聞きに来たらしい。
耕介さんはさざなみ寮のことについて説明するために今日来たとのこと。
ちなみにフィリスさんは黒色のスーツであり、耕介さんも灰色のスーツを着ている。ちなみに俺もバリアジャケットを展開して黒スーツとなっている。
そしてアースラの奥へと進むと一つの扉が開く。三人で中に入ると、出迎えてくれたのは懐かしき茶室であった。
「「………」」
初めて入る二人は空いた口がふさがらないような表情となっていた。
まぁ、気持ちは分からんでもない。
俺も初めて来たときはよく似たようなリアクションをしてしまった。そして中にいたリンディさんとクロノは俺達に気付くと、軽く一礼してから声をかけてきた。
「初めまして。このアースラの提督兼艦長をやっているリンディ・ハラオウンです。会えて光栄ですわ。槙原耕介さん、フィリス・矢沢さん」
「僕は時空管理局執務官クロノ・ハラオウンと申します。お二人ともよろしくお願いします」
耕介さんとフィリスさんも慌てて頭を下げる。
「これはご丁寧に。俺…いや自分はさざなみ女子寮管理人の槙原耕介と言います」
「海鳴大学病院で医師をしているフィリス・矢沢です。お二人ともお忙しい中、お時間を作っていただきありがとうございます。今日はよろしくお願いします」
二人も頭を下げて挨拶した。
「さあ、こんなところで立ち話もなんですからどうぞ座ってください」
リンディさんが手をポンと叩くと、俺達を座敷へと案内した。
座敷には赤い座布団が三つ置いてあり奥から耕介さん、フィリスさん、俺の順で座る。
耕介さんの向かい側にリンディさんが座り、その隣にクロノが座った。
そして俺達の前には茶菓子と抹茶が置かれていた。リンディさんはもちろん抹茶の中にミルクと砂糖を入れて飲んでいた(命名 リンディ茶)。
耕介さんとフィリスさんは驚いていたが、クロノが話を切り出してきた。
「まずはわざわざご足労いただきありがとうございます。それではさっそくなんですが……お二人は僕達と話し合いたいということでしたが……」
すると耕介さんがこちらを見ながら話す。
「はい。この子が関わったPT事件…でしたか。恥ずかしながら自分達も異能の力を宿していながら、この件に関しては全く気付いていませんでして…。なのでアースラの皆さんにまずはそのお礼を申し上げたくて…。海鳴を救っていただきありがとうございました」
耕介さんが頭を下げる。
突然の事にクロノは狼狽する。
「あ、頭を上げてください!ぼ、僕達は管理局員として当然の事をしたまでですから!!」
「ありがとうございます」
クロノの様子に少し苦笑しながら、耕介さんは頭を上げた。
「それで……話の内容なんですが…この子についてなんです」
耕介さんが俺に視線を向ける。それにつられて全員の視線が俺に向く。そして肝心の俺はというと茶菓子に夢中となっていた。
「ふぁ?」
「「「「………」」」」
全員に見られているが、俺は気にせず抹茶をいただく。
にげぇ。
「あははは…。この子には私の家族が何度か世話になりまして。そして今度も……巻き込んでしまいました」
皆は黙って耳を傾ける。
「さすがに家族が何度も世話になっている少年に…大ケガして助けてもらったのに借りを返さないというのは……寮を預かっている管理人として…いや人として自分を許容できません。そこで彼がお世話になっているアースラさんに提案があります」
耕介さんはジッと前を見る。そして予想外の言葉を言った。
「俺達と同盟を結びませんか?」
その言葉を聞いたとき俺は抹茶を吹きそうになった。
「ぶっ!?」
「ヒエン君!?」
隣に座っているフィリスさんが背中をさすってくれる。そしていつの間にか名前で呼ばれていることに少し感動した。
ってそうじゃない。
話し合いがどうとか言うから連れてきたのに、いきなり何を抜かすかこの男は。
「同盟…ですか」
クロノは顎を触りながら考える。
「ヒエン君から聞いているとは思いますが……俺達のいる寮は普通ではありません」
「ええ…。話は聞いています。退魔師、超能力者、精霊、獣人といった異能の力を持った人物達が住んでいると」
「はい。ですが中には普通の一般人として過ごしてる女の子もいます。俺のように裏の世界を知っているのはごく数人です」
まぁ、話を聞く限りでは一般人が知らないような相手をしなければならないらしいし。退魔なんてその類いだ。
「そして…隣にいる女性……フィリスも裏の世界を知っている…超能力者です」
「なんですって!?」
「あらあら…」
クロノとリンディさんが驚く。
俺はというと黙って話を聞いていた。
するとフィリスさんが少しこちらを不安げな目で見てくることに気付く。
上目遣いだった。
思わずフィリスさんの頭を撫でた俺は悪くない。
「な、何をするんですか!?」
フィリスさんが俺の手を払う。
だが全くもって痛くない。
「ヒエン…一応君に関係する話をしているので真面目に聞いてほしいんだが?」
「スイマセン」
クロノが額を手で押さえながら言っている。少しふざけすぎた。真面目に聞こう。
「フィリス……準備はいいかい?」
「あ、はい。大丈夫です」
するとフィリスさんは改めて座り直し、リンディさんとクロノに目を合わせた。
「お二人は……HGSという言葉に聞き覚えはありますか?」
「い、いえ…私は知らないわ」
「僕もです」
するとフィリスさんは語り始める。
「HGSとは、高機能性遺伝子障害病という病気なのです」
「病気?」
「はい。遺伝子が何らかの原因で変調をきたし、超能力が使えるようになる病気のことです」
「そんな病気が地球にあったなんて…」
フィリスさんの言葉に驚くリンディさんとクロノ。
「そして…ここからはオフレコで頼みたいのですが」
「ええ大丈夫よ?この部屋には盗聴機も何も仕掛けられていないから」
「ありがとうございます。話を続けますが私は……クローンなのです」
そしてフィリスさんは己の過去を語り始めた。
なんだか話が段々と大事になってきたな。
◆◆◆
フィリスさんは語った。
「劉機関」というチャイニーズマフィアによってHGS能力を使った兵器転用目的で、患者同士を人工授精して作られた生体兵器であること。
自身の姉であるリスティ・槙原から生まれたクローンであり、かつてその命を狙い、戦いを挑み敗れたこと。
そしてその姉の周りの人物によって救われたこと。
自身の保護者である養父の影響を受け、医師を目指すようになったこと。
生体兵器として作られた自身の力を平和的に使うことで…組織へ復讐しているということを語ってくれた。
「以上が…私の過去です」
「「………」」
話を聞いていたリンディさんとクロノは、予想外の話の重さに唖然としていた。
そしてフィリスさんがこちらを見る。
「ごめんなさいね?ビックリしたでしょう」
「まぁ、それなりに」
俺は普通に答える。
俺の反応が予想外なのかフィリスさんは驚く。
「怖くないの?」
「全然、全く、これっぽちも」
俺はキョトンとした表情でフィリスさんを見る。
しかし……どこに怖い要素があるというのか?
こんなに可愛らしい容姿をしているというのに。
というより昔がなんであれ、現在この人は人の命を救っている仕事をしているのだ。
なら…そこは誇るべきだ。
それに俺から言わせたら…今は今、昔は昔である。
実を言うとフィリスさんの過去は前世の知識として知っていた。とらハ2のヒロインをリスティさんにしたときに、刺客としてフィリスさんが出てきたことを覚えている。
フィリスさんの過去も俺の原作知識と大して変わっていなかった。
「ありがとうございます。ふふっ」
フィリスさんがどこか嬉しそうに笑う。
俺はその笑顔に癒されていた。
もうずっと見ていたいほどである。
しかしこれで確信した。
フィリスさんマジ天使」
ボオン!!!!
すると隣から爆発音らしき音が聞こえた。
隣を見るとフィリスさんが顔を真っ赤にしていた。
「ま、まままま…またあなたはそういうことを!?」
「え?」
フィリスさんが何やら慌てているようである。
どうしたのだろう?
「あらあら」
「相変わらずマイペースな…」
「あはははは…」
するとリンディさんは何やら楽しげに…クロノは何やら呆れるように…耕介さんはどこか苦笑いしながら…こちらを見ていた。
「話は分かりました。ですが一つだけいいでしょうか?」
「はい。なんでしょう?」
クロノがフィリスさんに話しかける。
どうしたのだろう?
「なぜ我々にその話をしてくれたのですか?」
クロノが真剣な声音で話す。その顔から冗談や嘘は許さないといった表情が読み取れた。
それとは対称的にフィリスさんはどこか憂いをおびたような表情で話した。
「一つはあなた方に信用してもらうためです」
「信用…ですか?」
「はい。ヒエン君は私達が無理矢理聞き出したにも関わらず…私達を信用して今回の件を全て話してくれました」
「………」
「なのに……一方的にコチラだけが聞くというのは…フェアではないでしょう?それに…」
「それに?」
「私にとって、今回の事件は他人事に思えませんでしたから…」
「フェイト…ですね」
「はい…」
アリシアのクローンとして生まれた人造魔導師フェイト。そしてリスティさんを倒すために産み出された生体兵器フィリスさん。
フィリスさんからしてみれば、フェイトのことは放っておけない存在なのだろう。
優しいフィリスさんと、思いやりのあるフェイトのことだ。二人を会わせれば確実に仲良くなる気がする。
「クロノ、リンディさん」
俺は二人に話しかける。
「その…色々ややこしい事態にした俺が言うのもなんだけど、さざなみ寮の人達は信頼できる。個性的すぎる面子だけど…お人好し度がヤバイんだ。そんな人達が何か考えているとは思えない」
というか考えてたら軽く人間不信に陥るまである。
「それは分かっているさ。僕達としても現地の協力者ができるということは悪い話じゃないからな。ですよね艦長?」
「そうね。それに私としても個人的にさざなみ寮の皆さんと仲良くしたいって思っちゃったわ~」
「か、艦長…」
リンディさんがニコニコしながら話している。これはあれだな。気に入った反応だな。
あ、クロノが頭抱えてる。
「あの…それじゃ…」
「ええ。同盟の話、受け入れさせていただきます」
「あ、ありがとうございます!」
耕介さんが嬉しそうな反応をする。
だが少し待とうか?
「あの、結局どういうことなんだ?」
「はぁ…」
するとクロノが露骨にため息をついた。
なんでやねん。
「君は今回の話の
「えーっと、さざなみ寮とアースラが同盟組んだんだよな?」
「まぁ、非公式だがな」
「で…なんのために組んだんだ?」
そこが分からないのだ。
耕介さんが何がしたいのかが俺にはよく分からない。
「
クロノは俺を見ながら告げた。
「は?」
俺?
「今回…君は僕達の知らない所でトラブルに巻き込まれたが、見事にそれを解決した。しかしその代償に君は大ケガを負ってしまった」
「………」
「そこで耕介さんが君がトラブルに巻き込まれたときに対処するために、僕達…つまりアースラに同盟を持ちかけてきたんだ」
「はい?」
どういうことだってばよ?
「恐らく君はまた何らかのトラブルに巻き込まれたとき……解決するために奔走するだろう?」
「た、たぶん…」
まぁ、そりゃそういう星の元に生まれたし。
「またトラブルが起こってしまったときのために、共に協力して解決しようというための同盟だ。といってもさずかにこの会合事態、公式のものではないので記録としては残せないがな」
俺は耕介さんに視線を向ける。
「言っただろう?
「あー…初めの方でそんなこと言ってましたね」
それにしては少し…いや大分大げさな気がする。
「それにフィリスが魔法の知識について知りたいと言っていたからね。そのためでもある」
「私はこの子の担当医師ですから…。患者の扱う力の一端を少しでも理解しないと…治療などできませんから…」
フィリスさんが俺を優しげに見る。
なんか照れるのですが…。
ってそうじゃない。
「いや、それが俺のためだと言うのはなんとなく分かりました。ただ…別に同盟なんて大それたことをしなくても良かったのでは?」
主にそれが理由なら別に同盟なんてする理由はないと思うのだが。
「それについては…体裁的な理由もある」
「体裁?」
クロノが答える。
「いいか?例えばだが…この海鳴市で魔導師が起こした事件が起こったとしよう。当然、僕達管理局はそいつを逮捕するために動き出す」
「ああ」
「だが動き出すのは何も僕達だけじゃない。事件によっては、現地の警察も動き出すだろう。裏の世界の住人もだ。例えば……さざなみ寮に住んでいる人達とか…な」
「………」
「そこでもし僕達が何かの偶然で邂逅したらどうなると思う?」
「…恐らく戦闘になるだろうな」
異能の力を持った者同士、戦うことになるかもしれない。
「だが僕達は…アースラとさざなみ寮は
「ああ…」
「そう考えると……ジュエルシードの時はラッキーだったかもしれないな。下手をすれば僕達は戦い合っててもおかしくはなかった」
「………」
「だが…こうして同盟を組むことができた今、
「そ、そうか…」
なんか理由としては無理があるような気がするが…まぁいいか。
その後、俺達は互いに情報交換をしてから帰路についた。
そうそう。
リンディさんは、この会合で耕介さんとフィリスさんとすっかり仲良くなってしまった。今度、さざなみ寮にクロノと遊びにいく約束までしたようだ。
それだけじゃない。
フィリスさんに至っては暇を見ては、アースラで魔法の知識を学ぶ様だ。アースラの医務官とも情報交流するようである。フィリスさんの顔がすごく輝いていた。
本当これからどうなるんだろうなぁと俺は思いを馳せるのだった。
早くA`s本編入りたい…。
では、また(・∀・)ノ