大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも(゜▽゜*)

後日談ラスト

では、どうぞ( *・ω・)ノ


第八十九話 また会おう

ヒエンside

 

 

 

翌日……

 

俺は早朝からベッドの上で悶えていた。

 

うおおおおーーーー!!

泣いたーーーーーー!!

泣いてもうたーーー!!

 

いい年した男が泣いてもうたーー!!

 

昨日、わたくしことヒエンはリンディさんの前で不様にも泣いてしまいました。

 

いやまあ、うん。

 

普段感じてた恐怖やら、不安やら焦燥やらが抱き締められた瞬間に一気に押し寄せてきたんです。

 

だから仕方なかったんやorz

 

しかしリンディさんの体、大変柔らかかったです。いい匂いしました。大人の色気感じました。未亡人いいなとちょっと思っちまいました。

 

あれからリンディさんがやけに優しくなった。

 

あのあと俺の夕食を持ってきてくれて部屋で一緒に食事を取ったし、シャワーを浴びるときも既に着替えを用意してくれていたし、出たあとの飲み物も持ってきてくれたし、就寝時間になるまでずっと部屋の中で喋ってたし。

 

やべぇーよ(|| ゜Д゜)

 

このままじゃ俺、ダメ人間になっちまうよ。リンディさんに甘えちまうよ。

 

いや冷静に考えてダメだ。

 

甘やかされるのと、甘えるのは全然違う。なので少し距離を置くべきであろう。

 

 

 

コンコンコン

 

 

 

「はい」

 

 

 

ガラララ

 

 

 

「おはようヒエン君。よく眠れたかしら?」

 

 

「あ、おはようございますリンディさん。はい、普通に眠れました。」

 

 

噂をすれば影……リンディさんである。

 

 

「昨日言ってたとおり、今からフェイトさんとなのはさんが会うのだけれど…見に行くわよね?」

 

 

「あ、はい。行きます!」

 

 

「じゃあすぐに服に着替えてメインルームにまで来てね。そこで皆、待ってるから」

 

 

「はい。了解です」

 

 

そしてリンディさんは病室を出ていった。

 

そう。

今日はなのはとフェイトが数日ぶりに会う日なのだ。

 

俺はさっそく私服に着替え始めた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

私服に着替えたあと、俺はアースラのメインルームに急いで行った。ちなみに普通の黒Tシャツに青いジーパンである。

 

そこには既にクロノとエイミィの姿があった。

 

俺は二人と合流する。

 

 

「おはようヒエン」

 

 

「おはようヒエン君」

 

 

クロノとエイミィが挨拶してきたので俺も返しておく。

 

 

「おはよう二人とも」

 

 

俺はキョロキョロとメインルームを見回すがテスタロッサ一家はまだ来ていなかった。

 

 

「彼女達ならまだ来ていないぞ?」

 

 

「そっか」

 

 

クロノが俺が見回しているのに気付いたのか情報をくれた。

 

 

「それより君は自分の荷物はいいのか?明日から学校にいくのだろう?」

 

 

「ああ、それなら大丈夫だ。荷物はリニスが持ってきてくれることになってる。なんでも『貴方に任せていては服がぐちゃぐちゃになるので私に任せなさい』だと」

 

 

「あははは。リニスさんらしいね」

 

 

エイミィが苦笑いする。

 

 

「二人とも」

 

 

そこでクロノが俺達に声をかけてくる。

 

クロノの視線の先を辿ると、そこには金髪の姉妹アリシアとフェイト、その後ろにアルフ、リニスが歩いている。さらにその後ろにプレシアとリンディさんが歩いていた。

 

アリシアとフェイトは俺の姿を確認すると、一斉に走り出した。

 

え?

 

走る?

 

 

「お兄ちゃんー!」

 

「ヒエン!」

 

 

そして金髪姉妹両方が俺の腹へとロケット砲の如く、ダイレクトアタックをかましてきた。

 

 

「ごぼっ!」

 

 

いつもの倍以上の衝撃が腹に伝わってきたため、受け止めきれずに俺は尻から落ちてしまった。

 

テ、テスタロッサダブルロケット……だと。

 

俺は悶絶しながらも前の二人を見ると、金髪姉妹がこちらを見ていた。

 

 

「わあー!お兄ちゃんだ!!」

 

 

「ヒエン!ケガは!?大丈夫!?」

 

 

アリシアは天真爛漫に嬉しそうに、フェイトは泣きそうな顔でこちらを見てくる。

 

この時点で二人の性格がまるで違うと感じた。まぁ、別人なんだから当たり前か。

 

 

「アリシアは数日ぶりだな?フェイトも心配するな。もう全快だ」

 

 

俺は二人の頭をポンポンと叩きながらなんとか起き上がる。その際にアリシアは頭をグリグリ押し付け、フェイトは少し俯きながら照れていた。

 

今、気付いたがアリシアは白いワンピース、フェイトは黒いカッターシャツに白いホットパンツといったラフな格好になっていた。

 

俺達のやり取りはこの場にいる全員に生暖かい目で見られていた。そして俺はある一人の女性と目が合う。

 

プレシアだ。

 

彼女は俺と目が合うと、少しそらしてしまった。彼女からはどこか戸惑うような感情を感じる。

 

俺はクロノに念話を送る。

 

 

『クロノ、プレシアやアリシアも外に出てなのはと会うのか?』

 

 

『いやアリシアはともかく、プレシアは容疑者として最重要人物だ。今回は特例として付き添いありで、見送りにきただけだ』

 

 

『ってことはアースラの中でなら少し話しても問題ないと?』

 

 

『む……何か話したいことでもあるのか?』

 

 

『ああ、アリシアやフェイトについて少し……な』

 

 

『まぁ、少しくらいなら問題ないだろう。なのはとフェイトの約束の時間まであと5分少々ある。君には随分と世話になったし……それまでなら多少多目にみよう』

 

 

『サンキュー』

 

 

俺はクロノにお礼を言うと、まずはリンディさん、リニス、アルフに念話を送った。

 

 

『あー、三人ともプレシアと少し話したいからアリシアとフェイト任せてもいいかな?一応クロノから5分だけ許可もらったんだけど』

 

 

『既にクロノから念話で聞いてるから大丈夫よ』

 

 

リンディさんがそう返してきた。俺は思わずクロノを見た。クロノはこちらに視線を合わせず知らんぷりをしていた。

 

子供か。

いや子供だったなそういえば。

 

俺は再度クロノに念話でお礼を言ったあと、アリシアとフェイトをリニスとアルフに任せ、プレシアの前へと歩いていった。

 

プレシアは俺と目を合わせようとしなかった。

 

 

「………」

 

 

「………」

 

 

俺はまず自分から話すことにした。

 

 

「調子……どうだ?」

 

 

「別に……普通よ」

 

 

プレシアはぶっきらぼうに答える。

 

 

「そうか。身体は大丈夫か?病気は治ったって聞いたんだけど」

 

 

「ええ……。あなたのおかげで……病気は無事完治したわ」

 

 

「そっか」

 

 

少し気まずい……。

いや大分気まずい……。

だが気になることは聞かないといけない。

 

 

「アリシアやフェイト……リニスやアルフとは、ちゃんと話せたか?」

 

 

「……ええ。アリシアにはフェイトに謝ってと何度も言われたわ。それで……フェイトには……私なりにちゃんと謝罪はしたつもりよ。リニスとアルフとも少しだけど……話したわ」

 

 

「そっか。実を言うと、聞きたいことはそれだけだったんだ。あのとき、虚数空間でも言ったけどプレシア……あんたにはこれからしっかりと自分と……そして家族と…向き合ってほしい。俺の言いたいことはそれだけだ」

 

 

「………」

 

 

そして俺はクロノ達のところに戻ろうとして……

 

 

「……あなたのおかげで救われたわ。感謝してる」

 

 

そこで俺はプレシアに向き直り、こちらも返した。

 

 

「どういたしまして」

 

 

そうして俺は戻ろうとしたが…最後に聞いておかなければならないことがあったことを思い出した。

 

 

『そういえばプレシア……()()()()()()()()()()()()()()()()()()は誰にもいってないよな?』

 

 

『念話……ね。ええ、安心しなさい。私は執務官に()()()()()()()()()()()としか言っていないわ』

 

 

『そうか。それだけが心配だったんだ。これからも()()()他言無用でたのむ。下手な輩にそんな情報が漏れれば、アリシアが危険にさらされることになる』

 

 

『分かっているわ。それと……これは別に忠告ではないけれど、あなたこそ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

こいつ…

リニスかクロノからでも聞いたか?

いやあの二人が安易に情報をもらす訳がない。

 

 

『なんのことだ?』

 

 

『とぼけなくてもいいわ。あのときあなたが虚数空間から出てきたとき、あなたから()()()()()()()()()()()()()()()()しただけよ』

 

 

『………そうか。忠告感謝する』

 

 

……なんてやつだ

 

普通()()()魔力感知なんぞできないぞ?そんなもの砂場から金を探せといっているようなものだ。

 

やっぱり『大魔導師』は伊達じゃないな。

 

今更ながら思う。

 

よく勝てたな俺。

 

そして俺はクロノの所へと戻る。

 

 

「もういいのか?」

 

 

「ああ。聞きたいことは聞けた」

 

 

「そうか……そろそろ時間だ。いこうか。では艦長、エイミィ、あとはよろしくお願いします」

 

 

「ええ」

 

 

「まっかせなさ~い」

 

 

するとクロノの後に続くようにフェイト、アリシア、アルフ、リニスが転送装置に乗り、先に転送されていった。

 

俺も後に続こうとしたが、リンディさんに呼び止められる。

 

 

「ヒエンくん!」

 

 

「?なんでしょう?」

 

 

「いい?無茶だけはしちゃダメよ?それと何かあったらすぐに連絡してきなさい?定期検診も必ずくること?いいわね?」

 

 

「は、はい」

 

 

リンディさんが俺の両手を掴みながら言ってくる。

 

あのリンディさん?

あなたキャラ変わりすぎでは?

 

俺が内心ドキマギしながら対応していると、ニヤニヤしながらこちらを見てくるエイミィ、呆れた様子で見ているプレシアの姿があった。

 

途端に恥ずかしくなった俺はペコリと三人に頭を下げ、お世話になりました!と言ってから転送装置でアースラを後にした。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

転送装置で転送されるとそこは、海鳴臨海公園の橋の上であった。

 

まだ朝が早いためか、人通りはない。

 

すると側にフェイト、アリシア、アルフ、リニス、クロノの姿があった。

 

 

「遅いぞ。何をしていたんだ全く…」

 

 

クロノが呆れた目で見てくる。

 

 

「あー、すまん。リンディさんと話してた」

 

 

そこに…

 

 

 

タタタタ……

 

 

 

足音のようなものが小さく聞こえてきた。

 

一同が視線を向けると、そこにはこちらに走ってくるなのはの姿があった。肩にはユーノも乗せている。

 

なのはは俺達の姿を確認すると、大きく手を振ってきた。

 

 

「フェイトちゃん……」

 

 

「ん……」

 

 

嬉しそうに見つめ合う二人。

 

なんと百合百合しい雰囲気だろうか。

 

二人の様子に苦笑いする俺達。

 

ちなみに今回も相棒を通して録画はバッチリですΣd(・∀・´)

 

 

「お兄ちゃん肩車してー」

 

 

「アリシア、お前は将来大物になるよ」

 

 

こんな雰囲気でも我が道をいくアリシア、マジアリシアさん。

 

俺はアリシアの要望通り、肩車する。

 

 

「おおー高い」

 

 

そりゃそうだ。

俺の身長は170cmある。

ちなみにこの中で一番高い。

 

 

「それじゃ…僕達は向こうにいるから」

 

 

「あ……うん……ありがとう…」

 

 

「ありがとう」

 

 

クロノが告げるとなのは、フェイトがお礼を言ってきた。

 

そして俺達は橋の向こうのベンチへと向かうのだった。

 

 

 

ヒエンside end

 

◆◆◆

 

なのはside

 

 

 

なのははフェイトと二人きりになると、海を見ながら口火を切った。

 

 

 

「あはは……いっぱい話したいことあったのに……ヘンだね。フェイトちゃんの顔を見たら忘れちゃった」

 

 

 

「……わたしは……」

 

 

 

フェイトも海を見ながらなのはと話す。

 

 

 

「………そうだね……わたしも上手く…言葉に出来ない…」

 

 

 

「………」

 

 

 

「………」

 

 

 

二人は一旦、黙り混む。

 

 

 

サー

 

 

 

風が二人の間を優しく吹いた。

 

 

 

「だけど……うれしかった…」

 

 

 

「……?」

 

 

 

フェイトの言葉になのはは首を傾げる。

 

 

 

「まっすぐに向き合ってくれて……」

 

 

 

「……うん……友達に……なれたらいいなって思ったの」

 

 

 

二人は再度、互いに見つめ合い優しく笑い合う。

 

 

 

「でも……今日もうこれから出かけちゃうんだよね…?」

 

 

 

「そうだね……少し長い旅になる」

 

 

 

「また……会えるんだよね…?」

 

 

 

「少し悲しいけど…やっとほんとの自分をはじめられるから」

 

 

 

「そっか……」

 

 

 

サー

 

 

 

再度、二人の間を風が吹き抜ける。今度は少し強かった。

 

 

 

「来てもらったのは……返事をするため」

 

 

 

フェイトは少し俯きながらも言葉を紡ぐ。

 

 

 

「君が言ってくれた言葉……友達になりたい……って」

 

 

 

「うん……うん!!」

 

 

 

フェイトは少し顔を紅潮させながらなのはと向き合う。

 

 

 

「わたしにできるなら……わたしでいいなら……って。だけどわたし、どうしていいかわからない…だから……教えて欲しいんだ……どうしたら友達になれるのか……」

 

 

 

そんなフェイトになのはもしっかりと向き合う。フェイトの瞳をしっかりと見つめる。

 

 

 

「友達になるの…簡単だよ?すごく簡単…」

 

 

 

そして優しく笑ってこういった。

 

 

 

 

 

 

「名前を呼んで……はじめはそれだけでいいの」

 

 

 

 

 

 

なのはは言葉を続ける。

 

 

 

「君とかあなたとか…そういうのじゃなくて…ちゃんと相手の目を見て、はっきり相手の名前を呼ぶの。わたし高町なのは!なのはだよ…」

 

 

 

「……なのは……」

 

 

 

「うん…!そう!」

 

 

 

フェイトはなのはの名前を嬉しそうに呼ぶ。

 

 

 

「なのは……」

 

 

 

「うん……」

 

 

 

なのはもフェイトが名前を呼ぶ度に笑う。

 

 

 

「……なのは…」

 

 

 

「……うん……」

 

 

 

二人の目にはいつしか涙が流れていた。

 

 

 

「ありがとう………なのは…」

 

 

 

「うん……」

 

 

 

ポロポロ

 

 

 

ポロポロ

 

 

 

「なのは……」

 

 

 

フェイトはなのはの涙をソッと右手で優しくはらう。

 

 

 

「少し…わかったことがある」

 

 

 

そして優しく泣きながら……優しく笑いながら……()()()()()分かったことをなのはへと伝える。

 

 

 

 

 

 

「友達が泣いてると…おんなじように自分も悲しいんだ」

 

 

 

 

 

 

なのはは思わずフェイトへと抱きついた。

 

 

 

「フェイトちゃん……!」

 

 

 

フェイトもなのはを優しく受け止めた。

 

 

 

「ありがとう…なのは……今は離れてしまうけど…きっと…また会える…そうしたらまた……君の名前を呼んでもいい?」

 

 

 

「うん…………うん…うん…っ!!」

 

 

 

「会いたくなったら……きっと…名前を呼ぶ。だからなのはも…わたしを呼んで?なのはに困ったことがあったら……今度はきっとわたしがなのはを助けるから」

 

 

 

「……………っっ……」

 

 

 

サー

 

 

 

二人の間を風が優しく吹き抜ける。

 

 

 

まるでその風は二人が()()()()()になったことを祝福しているようであった。

 

 

 

なのはside end

 

◆◆◆

 

ヒエンside

 

 

 

「「「ううぅぅ…………」」」

 

 

俺達はなのはとフェイトのやり取りを、離れた所で見守っていた。

 

というかテスタロッサ一家全員、泣いていた。俺とクロノはそんな光景を呆れた目で見ていた。

 

そして俺は頭の上に顔を乗せながら号泣しているアリシアにハンカチを渡していた。

 

 

「うえええーん。フェイトーなのはー。ありがとうーおにいちゃーん」

 

 

泣くか喜ぶかどっちかにしようぜアリシアさん。

 

アルフがフェレット状態のユーノを膝に乗せながら泣いている。

 

 

「…あんたんとこの子は……なのははホントに……いい子だねぇ……フェイトが…あんなに笑ってるよ…」

 

 

「……うん……」

 

 

アルフが泣きながらなのはを褒めていた。

 

でもアルフ……

 

オメーなのはと最初に会ったとき……

 

 

『オイタが過ぎるとガブッといくよ?』

 

 

とか言ってなかったっけ?(゜-゜)

 

他にも……

 

なのはとフェイトが市街地で戦ってたとき、なのはがフェイトにジュエルシードを集める理由聞いてたときも……

 

 

『優しくしてくれる人たちのトコでぬくぬく甘ったれて暮らしてるガキんちょになんか……何も教えなくていい!』

 

 

とか言ってなかったっけ?

 

というかまだその映像残ってるぞ?

 

なんだったら暴露しようか!?щ(゜▽゜щ)

 

 

「ヒエン……」

 

 

そのとき……

 

隣に座っているリニスから底冷えしたような声が聞こえてきた。

 

 

「あなた……また変なことを企んでいませんか?」

 

 

リニスのその言葉に全員の顔が俺の方へと向いた。

 

 

「………」

 

 

俺は無言で顔を逸らす。

 

 

「はぁ。あなたとわたしは精神リンクでつながっているのですよ?いくら()()()()()()()()()()()()これだけ近ければ、あなたの精神の動揺など嫌でも感じられるのですよ?」

 

 

「………ナ、ナンニモカンガエテナンテイナイヨ」

 

 

俺は必死に視線を逸らす。するとベンチに座っているクロノと目が合った。

 

 

「そういえば……」

 

 

クロノは俺をジッと見ながら……皆に聞こえるような声で話す。

 

 

「ジュエルシードの数が……()()()()()()

 

 

 

ギクッ

 

 

 

俺はその言葉を聞いたとき…緊張した。()()()()()()()()。そんな俺の些細な行動を歴戦の執務官と、一流の使い魔が見逃すはずがなかった。

 

 

「あのときなのはとフェイトが……戦闘空間で戦ったときに映っていたジュエルシードの数は全部で1()9()()だったんだ」

 

 

「え!?」

 

 

「そうなのかい!?」

 

 

ユーノとアルフが新事実に驚く。

 

 

「そして僕はヒエン……貴様に1個ジュエルシードの回収を頼んでいたことがあったなあ?」

 

 

「あ、ああ」

 

 

「でもどうしても……あと1()()()()ジュエルシードが見つからないんだ。海鳴市のどこを探しても」

 

 

「た、大変じゃないか!?」

 

 

「あれは1個だけでも相当なエネルギーを持ってるんだよ?」

 

 

クロノの言葉にユーノとアルフが慌てる。

 

 

「でも安心してください。そのジュエルシードはもう封印されているはずです」

 

 

とここでリニスが答える。

 

 

「え?どういうことですか?」

 

 

「ここにいる……私のマスターが既に封印していますから。()()()()()()()()

 

 

リニスのその言葉を聞いたとき、ユーノの視線が思わず鋭くなる。

 

 

「まさか兄さん……一人でジュエルシード封印したんですか?それも……誰にも言わずに?」

 

 

「………」

 

 

おおー!

やっぱり気付いてやがったー!?

 

このまま全部、有耶無耶(うやむや)にできると思ったのに!!

 

虚数空間の件で完全にバレていやがる!?

 

奴らが言っているのは俺が以前、一人で八束神社で倒したジュエルシードに寄生された狂犬のことを言っているのだろう。

 

ただひとつ言わせてほしい。

 

違うんや!?

ただ報告するの忘れてただけやねん!!

 

そして俺の肩の上にいるアリシア以外、ジリジリと俺との距離を詰めてくる。

 

 

「さぁ、いい加減認めなさい。もうデータも揃っているのですよ!?」

 

 

リニスが逆転裁判張りに、人差し指を突き付けてくる。

 

まるで探偵や弁護士に追い詰められた犯人の気分である。

 

というかあっちは感動的な場面なのに、なんでこっちはいつも通りのコミカルな空気になってんだよ!!

 

そして追い詰められた俺は開き直ることにした。

 

 

「た、倒したとも。だけど余裕だったぞ?楽に倒せたから報告すんのつい忘れてただけだ」

 

 

するとそこに相棒が出て来てある映像を全員に見せる。

 

案の定それは、ジュエルシードに寄生された狂犬と俺が戦っている映像であった。

 

かなり苦戦して戦っており、果てには地面に叩きつけられていた。フラフラになりながらも立ち上がり、幻影で狂犬の動きを制限させながら、氷で動きを止める。そして最後に特大の砲撃で倒した場面であった。

 

皆がモニターに夢中になっている間に、逃げようとすると……

 

 

 

ガッ!!

 

 

 

後ろから誰かに両側を捕まれた。

 

ギギッとゆっくり向くと、そこには見慣れた茶髪のツインテールの少女と、金髪のツインテールの少女がいた。

 

え?

なんでここにいんの?

さっきまで百合百合しく抱き合ってなかった?

 

 

「あれだけ騒いでいれば嫌でも気がつくよ?それと少し黙ろうか?」

 

 

「あんなのと一人で戦ってるなんて聞いてないよ?」

 

 

二人とも少し目の光が消えていた。

 

 

「お兄ちゃん……時には諦めも肝心よ?」

 

 

俺の頭の上に顔を乗せているアリシアからそんなセリフをいただいた。

 

そして俺の説教が強制的に始まったのは言うまでもない。

 

とりあえずこれからは、報告・連絡・相談はしっかりするよう約束させられた。

 

もし一回でも破った場合は、なのはから罰ゲームとして女装させられることになってしまった。

 

 

 

ナンテコッタイorz

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

5分後……

 

 

 

俺達は橋の上にいた。

 

 

「フェイトちゃん…思い出にできるもの…こんなものしかないんだけど…」

 

 

なのはが自分のくくっていた白いリボンを外し、フェイトへと手渡した。

 

確かあれはなのは曰く、勝負リボンだったはずだ。

 

 

「じゃあ…わたしも…」

 

 

フェイトもくくっていた黒いリボンをなのはへと手渡した。

 

 

「……ありがとう……なのは…………きっとまた……ね…」

 

 

「うん…!フェイトちゃんきっとまた……!」

 

 

なのはとフェイトはお互いの手を取りながら話していた。

 

そして俺達も……

 

 

「では、ヒエンきっとまた……」

 

 

「うん……できればずっと向こうにいてくれても構わんぞ?」

 

 

「フン!」

 

 

 

ゴン!!

 

 

 

「………!!」(声にならない悲鳴)

 

 

俺は地面に正座させられながら、リニスから拳骨をいただいていた。

 

あっちはなんか感動的な友情ENDみたいな感じなのに、なぜこちらはいつものノリなのだろうか?

 

うん。

不公平だと思うんだ。

 

 

「あなたという男は……また会おう!くらいの気の聞いたことを言えないのですか!?」

 

 

「え?リニスという名の鬼から離れられる絶好の機会を俺が喜ばないはずが……【バチバチ!!】ウワァーサミシイ!!チョーサミシイ!!!だから至近距離からのジェットスマッシャーはやめてください!!お願いします!!」

 

 

流れるような土下座を敢行した。

 

そんな俺達のいつものやり取りを全員呆れた目で見ていた。やめろ。そんな目で俺を見るな。虚しくなるorz

 

そうそう…

今回の裁判が終わるまでリニスもテスタロッサ一家についていくこととなった。

 

これは俺が主としてリニスに命じた。

 

リニスは元々、テスタロッサ一家の使い魔だったのだ。だったら最後まで付き合わせるべきだと俺は考えた。

 

決して合法的にリニスの鬼の訓練がサボれるからといった狙いはない。ないったらない。

 

リニスは最後まで渋っていたが、なんとか納得させられた。

 

そのとき、つい「計画どおり!」と声に出してしまい、某キラの顔真似をしているところをバレて拳骨を頂いてしまったが。

 

 

「……アルフさん、リニスさん、アリシアちゃんも元気でね」

 

 

「元気で」

 

 

なのはとユーノが、アルフとリニス、アリシアにお別れの言葉を送る。

 

 

「本当に色々ありがとね…なのは…ユーノ…ついでにヒエン」

 

 

「……なのは、ユーノ。ヒエンのことよろしくお願いします。部屋の合鍵は好きに使ってください。それとヒエン!あなたは、なのは達にくれぐれも!くれぐれも!!迷惑をかけないように!!」

 

 

「また私とも楽しくおしゃべりしようねなのは!ユーノ!また肩車してねお兄ちゃん!!」

 

 

「アリシア以外、一番の功労者である俺への対応が一番雑な件について」

 

 

「「あはははは…」」

 

 

フェイトとアリシアが苦笑いをしていた。

 

 

「それじゃあ……僕もいく」

 

 

「クロノ君も…またね」

 

 

「またなクロノ」

 

 

フェイト、アリシア、リニス、アルフ、クロノの五人が転送魔法で送られていく。

 

 

「バイバイ……またね……クロノ君、アルフさん……リニスさん……アリシアちゃん……フェイトちゃん…!」

 

 

「またな…」

 

 

なのはと俺がブンブンと手を振る。

 

 

五人も手を振り返してくれた。

 

 

そして五人は転送魔法で送られていった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「………なのは…」

 

 

「うん……平気。きっとまた…すぐに会えるもんね」

 

 

ユーノがなのはに声をかける。

 

なのはもしっかりと答えた。

 

しかしあれだな。

 

なのはの髪を下ろした姿……本当に桃子さんにそっくりだな。

 

そして立ち上がり移動を開始しようとすると……

 

 

 

グウー

 

 

 

「あー…腹減ったー」

 

 

そういや朝早かったからな。

 

朝飯食ってなかった。

 

ふと視線を感じたので見ると、そこには呆れた目で見ているなのはとユーノの姿が…。

 

なんすか?

 

 

「いや、ホント兄さんってどこまでもいつも通りだなあと」

 

 

「そんな褒めるなよ」

 

 

「それは褒めてないと思うけど……」

 

 

そんななのはを尻目に俺はリニスに渡されたバッグを抱えて歩き出す。俺の後ろをなのはが小走りでついてくる。

 

なんかこう見ると、ドラゴン○エストで歩く仲間みたいだな。

 

 

「それはそうと……早く帰って朝ごはん食べてもう一眠りするかなあ」

 

 

「それならウチに朝ごはん食べにきなよ?」

 

 

「慎んでお断りさせていただきます」

 

 

「断るのはやいよ!?」

 

 

「そりゃああれだよ。あれがあれしてあれするんだよ?」

 

 

「つまり何もないんだね?」

 

 

「はい。ありません」

 

 

「どうせコンビニで弁当買って家で食べるんでしょ?だったらウチで食べた方がいいよ」

 

 

「いや、ウチに帰ってダラダラしたいです」

 

 

「もうー!あーいえばこういう!!とにかく!!ウチに朝ごはん食べにくるの!!はい決定!!」

 

 

「横暴反対」

 

 

「もうー!!いいからいくよ!!」

 

 

なのはが俺の手を取りながら歩いていく。

 

その顔は笑顔で輝いていた。

 

俺はそんな彼女の笑顔を見ながら高町家を目指すのだった。

 




次回から幕間で書いていきます。
いくつか書いたあと、本格的にA'sに入っていきます。

では、また(・∀・)ノ

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