小南の戦闘服で
下のヒラヒラしてるところピラリとめくっても
「キャッ!?……何してんのよ」
って最初はスカート捲られたみたいに恥ずかしがるんだけど、スカートじゃないしトリオン体だから恥ずかしがるのが恥ずかしいと取り繕うんですよね、でも
「ちょっと、いつまでしてんのよ……!」
5分10分ずっと捲り続けていると頬が赤く染まって両手で抑えに掛かるんだけど、プルプル震えて捲りあげ続けて最終的には大斧でぶった切られる
迅は、未来を視る──。
◆
『はぁ!!』
小南が大斧化させた双月で、ガトリンを両断しようと振り下ろした。それを見た太刀川が回り込み弧月を構える。
しかし、小南の大斧は空振りガトリンの姿が搔き消える。それと同時に周囲に大量のガトリンが現れ、彼の背後から伸びるブレードトリガーが太刀川と小南を何度も何度もすり抜け──いつの間にか二人は両断されていた。
──迅は、未来を視る。
◆
『俺が仕掛ける』
カメレオンを使い、姿を消す風間。
それに呼応するように小南、太刀川、村上がそれぞれ援護にまわる。派手に動き、姿を消した風間へのマークを外すために。
ラタリコフがトリオン反応元に踊り手で仕掛けるが、攻撃手組の連携で通らず、ウェンが操る犬型トリオン兵も召喚した傍から斬り殺されていく。
ボーダーの連携は、アフトクラトルにも通じるほどに上手く、此処にいるメンツもトップクラス。その自負はあるが、慢心はしていない。
──しかし。
『──がっ!?』
ガトリンの処刑者の一閃が風間を真っ二つにした。
何が起きたのか理解できず、太刀川達は──。
──迅は、未来を視る。
◆
『うお、いきなり増えた!』
ガトリンと斬り合っていた太刀川の額に薄っすらと冷や汗が浮かび上がる。
突如目の前の敵たちが分身し、襲い掛かる。二刀の弧月で対処するが、何体も増えたガトリンの攻撃の圧力は凄まじく、体の端から徐々に削られていく。
さらにトリオン兵、踊り手も分身を作り出し、風間達もまた削られていく。
無視すれば分身の中に混じる本物に喰われかねない為、どうしても後手にまわってしまう。
どうにかして幻影の種を明かさなければ……。
全員がそう考えたところで、ふと目の前のガトリンが大砲を構え、銃口にエネルギーが溜まり──。
──迅は、未来を視る。
◆
『ちょっと! これ不味いんじゃない!?』
前衛のウェン、ラタリコフ、犬型トリオン兵を突破した小南と風間は攻めあぐねていた。
砲撃のチャージをしているガトリンを止めなければ、障壁など簡単に貫通し門誘導装置を破壊されていしまう。
しかし、今の彼を止めるにはいくらトップランカーである小南と風間であろうと戦力不足。かと言って村上と太刀川はウェンたちの足止めで精いっぱいだ。無視して突っ切ろうものなら、後ろから斬られておしまいだ。
それに、小南と風間がこの前衛陣を抜け出せたのも二人が比較的身軽で機動力があったからだ。太刀川たちではどうしても足を止めれてしまう。
しかし、身軽だからこそガトリンの処刑者と相性が悪い。小南の双月と風間のスコーピオンでは固いこの防御を抜けない。小南の大斧なら抜けるだろうが、隙が生じてしまう。
焦るボーダー組に対して、無情にもガロプラ側は最後の一手を打った。
小南と風間を弾くと同時に大砲を構える。それを止めようと動く二人に村上に切られながらラタリコフが妨害。太刀川が射線上に入り両防御するも──。
──迅は、未来を視る。
何度も……何度も……。
◆
「ここまで視えるといっそ清々しいな」
突破される未来を視た迅は風刃でウェンの藁の兵を無力化しつつ、ガトリンにも斬撃を走らせて小南の援護を行う。しかし、ガトリンは斬撃を見ることなく回避して小南を弾き飛ばした。
迅の隣に着地した彼女は、内部通信でラタリコフを抑えている風間に問うた。
『どう? 風間さん』
『ああ。間違いない。繋がっているな』
風間と戦っていたラタリコフは……と言うよりもガロプラの三人は必ず視界に仲間の姿が映るように動いている。それに気づいた風間が迅に確認を取り、未来視にて相手の動きの規則性を読み解き、先ほど検証を行い──現在に至る。
『加えて最上のサイドエフェクトを疑似再現しているんですよね?』
『確か体感時間……速度? の操作だったわね』
門誘導装置前に陣取りながら、村上は油断なくレイガストを構え、交流が無い小南は曖昧ながらも秀一のサイドエフェクトの厄介さに舌を巻く。
そんな二人の通信に、ガトリンと斬り結びながら太刀川が割って入る。
『と言っても、オリジナル程巧くは無いだろう。んでもって、対処方法は熟知してる』
そう言いながら一刀でガトリンの視線を誘導しつつ、視界の外から二刀目を振って斬り傷を負わせた。するとガトリンはシステムクロノスを解除し、本来の戦い方をして太刀川と斬り合う。
それを見た小南はなるほど、と頷いておおまかな対処方法を知る。
そうなると問題は視界の共有だ。システムクロノスにより、どんな攻撃も最適なタイミングで回避、防御されてしまう。
迅の予知により何とかこちらが負ける連携をさせないようにしているが、これ以上は無理だ。
加えて、どれだけ未来を手繰り寄せても太刀川に風穴が空く未来が消えない。
状況は膠着状態。しかし、着々とボーダー側が押され始めている。
このままでは負ける。
ふとそう考えた迅をチラリと見た太刀川は、
『風間さん、ちと頼みがあるんだけど──』
◆
通信で出水は言っていた。
最上は、相手のトリガーで基地内部の何処かへと飛ばされた、と。
つまり敵に基地内部と外部を自由に行き来する能力はなく、しかしそれと同時に彼の反応を隠蔽する力を有している事になる。
出水は那須、熊谷と共に特殊ラッドMの追跡を続行し、できれば捕獲して最上の救出をしようと動いていた。
それと同時に。
基地内部に居た特殊ラービットを倒し余裕のあるいくつかの隊員に、最上の捜索任務に充てている。
時間がたてば最上が倒され、最悪連れ去れる可能性があるかもしれないが、それと同時に複数人の増援が彼のもとにたどり着く。
──つまり、追い込まれているのはハイレインの方だった。
余裕そうな表情を浮かべているが、このままでは逃げられる可能性が高い。
ゆえに、トリガー角の力を最大限使用し、秀一へとありとあらゆる攻撃を仕掛けるが……。
砲撃は弧月で逸らされ、疑似泥の王による攻撃は見てから回避され、磁力片は旋空でことごとく叩き落され、卵の冠は弾丸トリガーで綺麗に丁寧に撃ち落される。
「……」
「この男……!」
秀一は、既にハイレインの攻撃を見切っていた。
それどころ、攻撃を利用して此処が屋外ではなく屋内である事を確認している始末。逸らされた砲撃により、風景に波が生じているのを眺め、顔色変えずこちらを見た際はハイレインはゾッとした。
実際は「なにあれ?」とハイレインを見ただけだったが。
それはともかく。
ハイレインの内心の焦りなど知らず、強く踏み込み駆け出した。それに呼応し床から黒く染まったトリオンの棘が襲い掛かる。トリオンを多量に使ったのだろう。床が見えなくなるくらいに、それこそ足場すべてが棘になる勢いで偽りの空へと秀一を縫い付けようとする。
しかし、秀一にとってコレは既に外敵ではなくただの足場だ。身を翻し、側面に足を付けて跳ぶ。これを繰り返す事により、まるで泥の王が彼をハイレインの元に運んでいるかのように見える。
それを見たハイレインはシステムクロノスを起動。ゆっくりと動く秀一に向かって、磁力片、砲撃、キューブ化弾丸を一斉に放った。
確実に秀一を倒すために最適な弾道を設定し、発射。並みの兵士ではなす術もない。
(だが……何故だ。撃ち落せる自信がない)
ハイレインの予想通り、秀一は旋空を一つ放って攻撃を防いだ。
磁力片を弾いて砲撃を反射させ、それをキューブ化に当てて相殺。そして空いた空間に体を入れて速度を落とすことなくハイレインに肉薄する。
この時、ハイレインは悟った。
──無理だ、と。
秀一が思いっきり弧月を振り下ろし、ハイレインの体が両断され、地面を切り裂く、
途端、弧月の剣先から「ジジジ……」と音が鳴り、周りの風景が歪む。
そして偽りの世界を作っていたトリガーが機能を停止し、秀一は本当の世界へと戻る。
此処は、訓練室だった。ミラが転移させたのはこの場所だったのだ。
トリガーが壊れたことにより、彼の反応がボーダーに伝わる。同時に、捜索に当たっていた隊員たちに情報が送られ、急行する。
「だが、その前に……!」
キューブ化弾丸をまとわせて、ハイレインがかける。
速攻で倒し、クロノスの鍵を奪取し、本国で奪取する。そう思っての行動だったが──。
秀一に駆け付ける者たちに、行儀の良い者は居ない。
天井が斬り崩され、壁は砲撃により木っ端微塵に破壊される。
そしてそれぞれから複数の影が飛び出し、ハイレインを斬り付けた。泥の王の能力によりダメージは無いが、速すぎる増援にハイレインの足が止まり、そして後退する。
同時に、駆け付けた増援部隊二チームが、秀一の前に庇う様に立ち塞がった。
「よー! 元気そうだなモガミン」
「いや、ほんとよく無事だね……あれ明らかにマニュアル操作だよ」
米屋が労り、何故か痩せた雷蔵が敵の特異性を見抜き、
「千佳、お前は下がっていろ」
「う、うん」
すぐに対処できるように動く三雲と雨取。
そして……。
「シュウイチ、無事か?」
「最上、怪我はないか?」
「おい、突貫して分断されるとはどういうことだ。もう少し考えろ死にたくないなら」
遊真、三輪、ヒュースがそれぞれ秀一に声を掛け……三人同時に睨み合った。
「ミワ先輩、ヒュース。アンタたちも来てたんだ」
「それはこっちのセリフだ、ネ……空閑。そしてこのカナダ人は着いてきただけだ」
「オレは最上と同じ部隊だ。手のかかる隊長の尻拭いをするのは隊員として当然のこと」
「シュウイチはそこまで酷くない」
「次口開く脳天に風穴空けるぞネ……カナダ人」
この人達何しに来たんだ。
思わず秀一が呆れていると、放置されていたハイレインがキューブ化弾丸を展開した。
戦闘態勢に入った相手に呼応し、それぞれトリガーを構えるボーダー達。
その中でも、ハイレインが見るのはヒュースだ。彼を見て口を開き……しかし止める。
敵同士となった以上言葉は不要。それに、言葉を交わすのなら、直接がいいのだろう。
その時、ヒュースは心の奥底にある己の言葉でハイレインと立ち向かう。
ならば、元隊長としてそれくらいなら受け止めてやる。
視線が一瞬交差し──躊躇なく弾丸が、それぞれ放たれた。
中間地点にいくつものキューブが落ちていき、ヒュースが叫ぶ。
「──モガミ!」
バイパーを展開してない方の手をパッと開き、直ぐに人差し指をハイレインへと突き刺す動作をする。
それを見た秀一は棒立ちから一転してバイパーを展開、弾道設定、そして発射。
向かう先は、ヒュースとハイレインの弾の衝突地点。弾道は槍のように細長く鋭く変化する。そして……。
「っ!」
ハイレインの弾幕を突き破り、本人へと殺到する。ハイレインの体がパシャッと音を立てて弾け、そこを遊真、三輪、米屋、雷蔵の攻撃手組が仕掛ける。
「分割して核を狙え!」
遊真が首を刎ね、三輪が胴体を横に分断する。
上半分の胴体に米屋が刺突を繰り返し、その間に雷蔵は下半分を弧月で細切れにし、指示を出す。
「空閑くん。おそらくその頭に核がある!」
「了解」
両腕にスコーピオンを生やして接続し、遊真のマンティスがハイレインの頭に突き刺さる。
すると、ハイレインの頭部に亀裂が入り──。
◇
同時刻。
大砲のチャージを終えていたガトリンは、機を伺っていた。この一発を当てるかどうかで勝負が決まる。慎重になるのも無理はない。
システムクロノスは既に切っている。確かに強いが、慣れていない現状太刀川の様な近接のやり手に使えば逆に隙を晒すことになると判断したからだ。
反対に後衛で錯乱を担当しているウェンは使いまくっている。特にドグの操作ではそれが顕著で、普段の二倍の数を使用している。
ラタリコフは風間と相手をしつつ、切り替えて使用し引き気味になって戦っている。
しかしそれでも、迅の予知により攻めあぐねていた。
おそらく大砲を撃ちたがっているのもバレてるし、タイミングも把握される。
ガトリンはそれを理解しながら、それでも通す策を考え──。
「っ……」
迅の表情が強張るのを見て、決意を固める。
彼は一言部下たちに伝えた。
『──撃つぞ』
◇
「──違うっ」
崩れ落ち、流動体となったハイレインの体が攻撃組に襲い掛かる。
近くにいた遊真は片腕を犠牲にし、三輪と米屋は雷蔵の旋空弧月により無傷。
後ろへと下がりつつ、雷蔵は内部通信で全員に伝えた。
『床にヒビがあった。多分そこから逃がした』
雷蔵の推測通り、ハイレインは秀一のバイパーで体を弾き飛ばされた時点で核を床に埋めていた。それを聞いた秀一が旋空を放つが、突如門が開きそこから飛び出した特殊ラッドMがハイレインの核を回収する。
『無事ですか、隊長』
「オリジナル同様、仕事のできる奴だ」
またあの空飛ぶゴキブリか、と秀一がバイパーを放ち、雨取とトリガー臨時接した三雲が巨大なアステロイドを放った。
「──助かる」
しかし……。
「ちょうど、トリオンを切らしてた所だ」
キューブ化、そして還元しトリオン回復。
思わず秀一は舌打ちし、三雲は唇を噛む。
それを特殊ラッドMは空を飛びながら眺め、内部通信でハイレインに問いかける。
『クロノスの鍵に加え、金の雛鳥が居ます。捕獲しますか?』
『いや、欲張ると痛い目にあう──今回は退こう。データを元に次の戦いに繋げる』
『了解しました』
ハイレインがトリオンを譲渡し、特殊ラッドMが門を開く。モールモッドを複数体放逐し、そのまま身を翻して撤退行動に移る。
それを見た秀一はバイパーを放とうとし、一瞬躊躇する。また回復されてしまう、と。
その姿を心なしか嘲笑するかの様に目を細めて特殊ラッドMは観察し──。
「──いい加減、鬼ごっこにも飽きた」
「──もう逃さない」
次の瞬間。
周囲を囲うように放たれたバイパーに退路を断たれ特殊ラッドMは削られ──。
「決めるぞ、隊長」
「──っ」
ヒュースと共にバイパーを放ち、秀一の弾丸が特殊ラッドM、ハイレインの核を貫いた。
◇
ガトリンが大砲を構えると同時にウェンの藁の兵が発動。突如ガトリンが増えた事に迅以外の思考に空白が生まれる。
「太刀川さん、右から三番目!」
迅が叫び、太刀川が反射で動く。
二刀の弧月で斬りかかるも、処刑者のブレードで受け止められ、それどころか上から抑え込まれて固定されてしまう。
それを見た迅は己の失策を悟った。
「──まさか、未来予知を逆手に取られた!?」
ガトリンは未来予知について半分以上気づいていない。しかし、トリガーの能力を理解し、完璧に近い形で対処している事は理解している。
故にそこを突いた。
ボーダー側にとって最も不利であろう一手を打ち、その対応をさせて次の一手を叩き込む。
「ちっ……射線が読めない……!」
ドグに纏われつかれながら、村上は舌打ちする。太刀川の体で大砲の矛先が見えない。
それを見た小南が十数体のドグを蹴散らして援護に向かおうとし。
『小南、変われ』
『え?』
視界が変わる。目の前には踊り手を展開した状態で驚いた表情を浮かべるラタリコフの姿が。
一瞬膠着するもすぐにお互いにトリガーで斬り結び、文句を言おうと小南が視線を風間へと向けた瞬間──ドグにトリオン体を破壊されながら、太刀川の背を風間のマンティスが貫いていた。
それを見た迅は──。
「……無茶するなぁ」
苦笑し、肩から力を抜いた。
迅は見えていないが──マンティスは太刀川以外に貫いた物がある。
それは……。
「──見事」
「風間さん、ナイス」
ガトリンの大砲だった。
エネルギーが漏れ爆発寸前の中、二人は風間に賞賛の言葉を送り──そのまま爆発した。