勘違い系エリート秀一!!   作:カンさん

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時系列はモガミン入隊時から大規模侵攻前です。
だいたいこの日記に書かれていることは、C級モブ隊員たちがモガミンに思っている印象です。

ちなみに、日付に深い意味はありません。


C級モブ日記

 A月A日

 

 ボーダー試験に受かった記念に、親から日記をプレゼントされた。

 本当はPNPとかHiiが良かったが、そんなことを言えば勉強をしろと言われるだけだ。

 まあ、正隊員になれればお金を貰えるみたいだし、それまで頑張ろうかな。

 

 A月B日

 

 仮入隊している時に友達が二人できた。

 ちょっと自信過剰なところがあるけど、ノリが合って仲良くなった。

 話を聞いていると、Aはトップを目指すらしい。どうやらライバル校の生徒がA級らしく、それに対抗心を燃やしたAは自分がA級になってやる! と。金持ちのボンボンかと思っていれば、意外と行動力があるんだよなこいつ。

 Bはテレビに出た那須玲という人に憧れて入隊したらしい。……いや、憧れてというか下心があってと言った方が正しいか。こいつ、オペレーターの子と女性隊員の名前、そして何故か胸の大きさを全て把握していやがった。流石に引いたし、てかどうやって知ったんだ。

 

 どっちとも性格に難があるけど、正隊員になったらチームを組むつもりだ。

 そのためにもこの仮入隊を頑張らなくては。

 

 A月C日

 

 今日、入隊試験を終えて帰って来たが……そこで凄い奴と遭遇した。順を追って書いていこう。

 まず、訓練自体は苦も無く終えることができた。仮入隊のおかげか、俺たちのポイントも強さも周りから比べたら頭一つ抜きん出ていた。Aのポイントは1600。Bは1400。俺は1500だ。

 正直、嵐山さんに期待されていると言われた時は――直接ではなく、間接的にだが――嬉しく思い、周りから尊敬の混じった視線を送られた時は優越感に浸れたが……その後に現れた一人の男によって、一気に現実に戻された。

 その男の名は最上秀一。今期で最も強い隊員と言えるだろう。多分こいつが居なかったら、俺たちが注目の的だったはずだ。

 どうやら、最上だけは俺たちと違って本部の方で仮入隊を受けていたらしく、初期ポイントは3800くらいで、戦闘訓練の記録は0.3秒。

 一気に周りの人間が彼の元に集い、俺たちの周りに群がっていた人間は居なくなった。

 鼻を高くして自慢げに話していたAも、女子相手にデレデレしていたBも、呆然と最上を見ていた。かくいう俺もそうであり、しかし肝心の本人は自慢することもなく、かといってデレデレとすることもなく、優越感に浸ることもなく、近くの椅子に座って黙っていた。

 その姿はまさに出来る男って奴で……自分たちとの差を大きく見せられた気分だった。

 

 A月D日

 

 AもBも俺も訓練で好成績を出している。しかし、それでも最上は一人だけ飛び抜けており、いつも全ての訓練で一位を取っている。あいつが居る限り俺たちは一位にはなれない。

 そのことにAもBも不満を抱いていた。いや、Bは女子に人気なのが気に入らないだけみたいだけど。

 俺は気にすると精神的に良くないから、気にしないように努めているが。

 

 とは言ってもあいつはいつも人を惹きつけるようで、今日もやらかしてくれた。

 どういうわけか、いつもはスルーしているランク戦に奴は現れた。当然当たれば勝てるわけがないことを知っている俺たちは、あいつが入った部屋の番号を確認して、あいつが帰るまでモニターを見ていた。Aが将来の敵として対策を練るらしい。立派なことだ。

 と思っていたんだろうけど……結果は失敗に終わった。まず、俺たちの目では追うこともできないほど速く、なんか動きも凄かった。とてもじゃないけど、俺たち素人が対策を練れるほど優しいものではなかった。加えて、何故かあいつはA級隊員とランク外戦をしており、そして圧倒していた。そこまで強いと思っていなかった俺たちは開いた口が塞がらず、力の差にちょっと絶望した。

 その後メガネをかけたC級の子と戦ったけど、それ以上は戦わずその場を去って行った。

 このことがきっかけで、最上のやつはC級隊員だけでなく正隊員からも注目されるようになった。

 正直悔しいな……俺たちとあいつで何が違うってんだよ。

 

 A月E日

 

 今日は酷い目にあった。順を追って説明する。

 まず、とある噂をAが手に入れたところから始まる。

 どうやら、優れたトリオンを持っている人間はサイドエフェクトという力を持っていることがあるらしい。S級の迅悠一さんは未来視という最強の力を持っており、他にもさまざまな力を持っている隊員が居る。

 で、最上もそのサイドエフェクトを持っているらしい。それも迅悠一と並ぶくらい強力な代物を。

 これを聞いたAは何処か暗い笑みを浮かべてこう言った。あいつが強いのはそのサイドエフェクトのおかげだと。それを聞いたBは強く同意し、俺は少し悩んだが……同意しておいた。

 今にして思えば、俺もあいつに対して嫉妬していたんだ。だから、皆に便乗して面白おかしくあいつの陰口を言った。俺たち以外にあいつに対して嫉妬していた奴らが、頷きながら笑っていたのに気分が良くなってしまって、あることないこと言って……多分そこで俺たちの運命は決まっていたんだ。

 俺たちがあいつのことを話している時に、一人の少年が現れた。先日最上に負けたA級隊員の緑川だ。あいつは妙に綺麗な笑顔を浮かべて、俺たちにこう言ったんだ。

 自分に稽古をつけてくれって。

 AもBも俺も、気分が高揚していて正常な判断ができなかった。何で最上に負けて自信を無くしているんだ、とかアホなことを考えたのか。何故年上の俺たちが慰めようとか考えたのか。

 緑川は指導してもらいに来たんじゃない。指導しに来たんだ。

 俺たちは三人ともこっ酷くやられて、キツイ一言を言われた。戒めのためにも此処に書いておく。

 

 つまんないことしている暇があるなら、強くなる努力をしたら?

 

 ……おっしゃる通りだ。

 

 A月F日

 

 俺たち、死ぬのかもしれない……。

 AもBも顔を青くさせて震えていた。俺もだけど。

 

 最上は正隊員になった。そのおかげで俺たちは訓練で良い成績を出せるようになった。

 でも、とある真実が露見した。

 最上は近界民(ネイバー)を憎んでおり、復讐をするためにボーダーに入った。

 実際、そういう理由で入る人は居た。でも、あいつのは異常だ。

 この前、こっそり防衛任務を見学しに行ったんだけど……やばかった。あいつ、無表情なのに、凄い苛烈に近界民(ネイバー)を殺していた。

 ああいうのが殺気って言うんだろうな。ピリピリと肌が痛く感じて、あの噂を広めたことを後悔した。

 今では三人仲良く震えている。

 ああ、とんでもない奴を敵に回してしまったようだ。

 

 A月G日

 

 俺たち、最上の眼中になかったみたいだ。いや、近界民(ネイバー)しか見ていないだけかもしれないが……。でも、正直へこんだ。

 ほっとして、妙な気分になるとか初めての経験だ。周りの訓練生たちも腕を上げて来て差が無くなって来たし。今日のランク戦でも負けたし。

 そう言えば、妙に強いメガネが居たな。攻撃はてんでダメだけど、防御が上手かった。何処か見覚えがあったけど……気のせいか。

 

 A月H日

 

 最上に師ができたらしい。

 A級の三輪という人だ。その人も近界民(ネイバー)を憎んでいるらしく、最近本部で良く一緒に居る。

 訓練しているところをこっそり覗いたが……凄いな、と思った。

 最上の動きは相変わらず凄いし、しかしそのダメなところを指摘できる三輪という人も凄い。というかあの最上に怒鳴ることができること自体凄い。

 あいつ、あれ以来人が寄らなくなったからな。近界民(ネイバー)を憎んでいる復讐者って知られて。そしてそれは正隊員も同じで、防衛任務で度々暴走しているらしい。そして、それを抑えることができるのはあの三輪という人だけ。

 Bは喜んでいたが、Aは神妙な顔をしていた。変なことをしなければ良いんだけど。

 

 B月A日

 

 なかなかBに上がれない俺たち。

 そうこうしているうちに季節は夏となった。

 俺たちは訓練もそこそこに海に行ったり祭りに行ったりと夏を満喫していた。

 明後日は山に行くんだよな。虫よけスプレー買わなくちゃ。

 

 

 B月B日

 

 今日、凄いことが起きた。そしてやはりというかその中心人物はあの最上だった。

 初めはB級だけで行われるはずだった混成チームのランク戦。あのS級の迅さんやA級の太刀川さん、風間さん。他にもA級隊員が参加していてお祭り騒ぎみたいなことになった。

 試合内容は、正直凄かったとしか言いようがなかった。

 A級隊員たちの強さも凄かったが、それ以上にあの人たちに喰らい付いていく最上の凄さを改めて実感した。そしてそれは周りの奴らも同じで――これ以上ないほど俺とあいつの差を感じた。

 ……ああいうのが天才って言うんだな。隣に座って試合を見ていた何処かの正隊員の言葉が、嫌に頭に残った。

 

 

 B月C日

 

 先日のチーム戦が原因で、最上は色んな隊から勧誘されまくっているらしい。

 特に荒船隊と諏訪隊が積極的で、次点で鈴鳴第一、王子隊。他にも様々なB級部隊があいつを手に入れようと躍起になっている。掌返しというのを見た気がする。

 ちなみに、Aからの情報によるとA級一位の太刀川隊までもが勧誘したとか。

 本当、一気に人気者になったなあいつ。

 

 

 B月D日

 

 どうやら、最上は部隊に入る気はないみたいだ。

 Aの情報網でも真実は分からず、さまざまな噂が蔓延っている。

 復讐するための時間を、お遊びに使いたくないだとか。

 三輪先輩以外の人間に頭を垂れるのを嫌っただとか。

 

 B月E日

 

 ……今日、俺は酷く落ち込んだ。

 昔、AやBと共に流したあの噂が再び広まっているようだ。どうやら先日のチーム戦で活躍し、さらに注目され始めた最上に嫉妬した奴が広めたみたいだ。

 というかBだった。

 ただ、Bもここまで酷くなると思っておらず、今は後悔して泣いているだろう。

 

 ……緑川が問い詰めてきたとき、なんで俺は嘘を吐いたのだろうか。

 Bを守るため? いや、違う。俺がただ怖くなっただけだ。

 多分、あいつも気が付いている……。

 あーあ。なんでオレ、あの時一緒になって馬鹿やったんだろう。

 

 

 B月K日

 

 あー、明日も訓練かー。というか、書くことが無いな。

 

 と思っていたら、あったわ。

 最上に対する陰口が最近無くなりつつある。

 まあ、A級トップクラスに鍛えられているあいつを敵に回したい奴なんていないだろうけど。

 それでも無くならないのは、人の汚いところか。

 俺が言えたものじゃないけど。

 

 

 

 C月A日

 

 あー、学校行くの面倒だなあ。

 訓練も怠いなあ。

 AもBも最近サボりがちだし、俺も休んでいいかなぁ。

 あと一月くらいランク戦でポイント稼げるし、正隊員になったら防衛任務あるし、今のうちにできることをした方が良いか。

 

 

 C月B日

 

 今日ランク戦をしていたら、久しぶりに最上を見かけた。いつもなら太刀川さんたちと訓練しているはずだが……その太刀川さんたちは合宿で三門市に居ないらしい。

 で、何となく最上のランク戦を見たんだが……やっぱ凄いなぁ。

 基本敵に近づいてスコーピオンで攻撃し、離れた相手にはバイパーで四方から攻める。時にはあの合成弾で吹き飛ばしたり……。

 ポイントも実力もどんどん駆けあがっていくなあ。

 あれでトリガー構成を模索中ってんだから大したものだよ。

 

 あと、いつの間にか最上を勝手にライバル視していたAはいつものようにうるさかった。

 

 

 C月I日

 

 

 今日は小さな近界民(ネイバー)の駆除で疲れた。

 

 

 D月A日

 

 

 久しぶりにボーダーに来たけど……色々と面白い噂を聞いた。珍しくAが興奮していた。Bはいつものようにサボっていたが。

 何でも、今日入隊した隊員が最上と同じように一秒切りをしたらしい。

 さらに基地の外壁を撃ち抜いたというスナイパー、あの風間さんと引き分けたB級にあがったばかりの隊員。

 Aも詳しい情報を調べているようだ。

 

 

 D月B日

 

 例の三人はどうやら玉狛支部所属の人間で、その一人――三雲修という男は最上とライバルなようだ。Aのような妄想ではなくガチのだ。

 しかし、納得できる話だ。

 今では城戸派の最上。玉狛派の三雲という構図が出来上がっている。

 珍しく来て話を聞いたBがアニメの展開みたいで面白いと言っていた。

 まあ、確かにそうだよな。

 ところで、その最上が最近見当たらないんだが……。

 

 

 D月C日

 

 最上はS級隊員になっていた。

 正直今も驚きでいっぱいで何が何だかという感じだ。

 Bは賄賂を使ったのか? とか言っていたがそれをAが否定した。どうやら上層部が直々に選んだそうで、前任者である迅悠一が指導しているらしい。そのせいで最近顔を見なかったらしい。

 

 しかし、今さらだけどあいつはホントに凄い奴だ。

 入隊時には既にA級隊員を圧倒する力を持っていて、短期間でB級に上がり、様々な記録を更新して、他の隊員に一目置かれて、そしてついには頂とも言えるS級隊員になった。

 本当、あいつは凄くて――羨ましい。

 あーあ。俺もあんな風になりたいな。

 




ここから下からは、前回の投稿後に頂いた感想についての感想です。
単なる独白みたいなものなので、読み飛ばしていただいても構いません。





それでは













三  バ  カ  人  気  す  ぎ


おかげで風間隊とか太刀川隊とかの印象が薄くなっちまった|д゚)
まあ、そうなるように書くようにしたのは私なんですけどねw
ちなみに、これを受けた三バカは「理解者ではない、真実に辿り着いた者だ!」などと述べており、以降本編に登場しないことが決定した。
そもそも接点がないので絡みをしませんがねw


ちなみに今のところワ―トリ◆フレンド(モガミンTS)の番外編を書くつもりはありません。
自分がそういうジャンルを書くのが苦手
どうしても想像できない
というか主人公の具体的な容姿とか明らかにしていない
等々理由がさまざまありますので、期待するだけ無駄かと。
期待していた(そこまで居るのか分からないが)方々には申し訳ありませんがご了承ください。


最後に一言。

生駒隊も王子隊もキャラ濃いなあw
昔のあだ名を偶然言われてへこむ主人公を書きたくなったw

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