「……、……」
「ん……んん……」
……誰だ、俺を起こすのは……。家族だってそんなことしないし、ましてや起こしに来る幼なじみなんて二次元でした見たことねぇ……。
「……、……」
……ああ夢か、夢だこれは。どうせ夢なら戸塚に起こしてもらいたいなぁ。戸塚東京の大学に行っちゃったからなぁ。夢だけでも会いに来てくれないかなぁ。
「せんぱ〜い、起きてくださいよぉ〜」
…………。ちっ。
「なんだ一色か」
「なんですかその反応〜」
「いやぁ、どうせ夢なら戸塚に起こしてもらいたかったなって」
「うっわ……」
夢でも一色にドン引きされちゃったよ……。
「ていうか〜夢じゃないですよぉ!」
「夢じゃなければ一色が俺を起こしに来るわけがないだろ」
「むぅ。じゃあこれでどうですか?」
一色は両手で俺の両頬をつまむと、むぎゅーってしてきた。
えーなにこの頬っぺたつねり。顔が近いこともあり、恥ずかしさで全く痛みを感じないんですけど。やっぱり夢なの?
「い、一色、わかったからもう離せ」
「やっとわかってくれましたか〜。おはようございます先輩」
「あ、あぁ。おはようございます。……じゃねえよ。なんでいるのお前?」
普通に挨拶返しちゃったぞ。ほんとなんでいるのこいつ?ていうかなんで俺のこと起こしてるの?
「……先輩、私に何か言うことないんですか?」
……うむ。
「ご、ご機嫌麗しゅう?」
「なんでそうなるんですか……」
いやだって何も思いつかないんだもん……。何かあるの?
「……じゃあいいです。小町ちゃんも待ってるので早く起きてきてくださいね」
そう言うと一色は扉を閉めて部屋から出て行った。扉を閉める力が少し強かったのは気のせいだろうか……。
……目が覚めてきて思い出したよ……。今日一色の誕生日じゃん。
そう。今日4月16日は一色いろはの誕生日である。
俺はそのことを小町が用意した朝食を食べながら思い出した。
なんでもこれから一色と小町は買い物に行くらしく、俺のことも荷物持ちとして連れて行く気らしい。……だから昨日小町が予定空けといてと言ってたのか。
普段なら絶対ついていかないが、今日一色は誕生日だしなぁ。
それに一色、俺が誕生日忘れててちょっと機嫌悪いみたいだし……。
さっきから『私怒ってますよ?ぷんぷん!』みたいなオーラ出してる……。はぁ、仕方がない。行きますか。
小町と一色に早く支度しろと急かされたので、ちゃっちゃっと朝食を済まし、支度を始める。服を適当に選んでると、小町が入ってきた。
「お兄ちゃん今日何の日かちゃんとわかってるの?」
「一色の誕生日だろ?」
「わかってるのになんでおめでと言わなかったの?」
「あ、いやそれはな……」
「あぁ!わかった!お兄ちゃんサプライズだね?誕生日忘れてるフリして後からプレゼント渡すんだね?キャー!それ小町的に超ポイント高い!」
「え、いや……」
「あ、お兄ちゃん今日これとこれ着てね。じゃあ小町、いろは先輩と玄関で待ってるから。いやぁお兄ちゃんもたまにはやるなぁ」
「お、おい、小町……」
小町は行ってしまった。
…………妹よ。財布に300円しか入ってない俺がどうやってプレゼントを用意すると……?
浪人生はお小遣いなど全くもらえないのである。
第7話お読みいただきありがとうございますm(_ _)m
ここから数話いろはすの誕生日回続きます♪
それでは第8話でお会いしましょう。