赤龍帝イッセーとリアスちゃんのベリーハード   作:超人類DX

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間が空いた理由。

生々しすぎて修正やら消してやらの繰り返しが多すぎたばかりに、一瞬投げ出した。



同志
抗う者達


 クソ野郎を抹殺する為にアザゼルさんとも組む事になり、その対価として彼が隠し持っていた隠れ家にて衛生的にもかなりマシになった暮らしが保証された。

 

 これは正直な所ありがたい。

 俺の場合は例え虫やらゴミやらでも食いながら生き永らえる事は可能だけど、リアスちゃんにまで同じ事はさせたくなかったので、安全な食事の確保はマジにありがたい。

 

 とはいえ、アザゼルさんからは『お前達を匿っている話を知るのは堕天使側では俺しか居ない。だからバレる真似だけは極力控えてくれ』と言われてるので、目立った真似は前以上に控えなければならないけど。

 

 

「しかしまぁ、堕天使の領土っていうからどんなもんだと思ってたけど、案外普通に普通で普通だったな。

もっとこう……薄暗くてギャーギャーとカラスが鳴いてるような空間かと思ってたんだけど」

 

『人間の暮らしが奴等の技術に近づいていった……というのが歴史の裏側だからな』

 

「ほーん……」

 

 

 それまでドライグとの二人三脚だったのが、ひょんな事からリアスちゃんと一緒になり、目が覚めたリアスちゃんの兄ちゃんから密かにバックアップ……そして親友の仇の為に結託してくれた堕天使さんと、ここ数ヵ月でビックリするくらい進まず仕舞いだった状況が進展していっている事を思い返しながら、俺はアザゼルさんから借りた……あの倉穴と比べたら豪勢だと感じる小さな家でボーッとしてる訳だが……。

 

 何だか自分達に対して今までに無いくらいに良い方向に進みすぎて逆にちょっと不安を感じるのは、ちょっと臆病すぎなのかな?

 

 

「アザゼルさんはクソ野郎の力の攻略法を日夜探して徹夜らしいけど、何とかして見付からないものだろうか……」

 

『そこはもう希望にすがる意味で考えんと駄目だろうな

。何せ俺達ですら10年以上見付けることは不可能だっとんだ』

 

「だよねー……。

相変わらずあのクソはハーフ堕天使のかーちゃん蘇らせたとか何とかでますます英雄様になってるしー」

 

 

 ココに来てからも鍛練は絶対に怠らない。

 見た目とは裏腹に意外にも研修者気質だったアザゼルさんから色んな装置を貰うんだけど、その中には赤龍帝……いや神器の気配を遮断する腕輪だーとか、鍛練で暴れても音や気配や力が漏れないバリアー装置とかあるお陰で結構派手に動いても周りにバレずに済んでる。

 

 

「俺自身の見た目を変化させるアイテムとか……あの人ってワルイルドな顔だけどかなり凄いよね。たぬえもんみたいだわ」

 

『たぬえもん?

あぁ、お前の親父と餓鬼の頃よく見てキャッキャしてた奴か?』

 

「そうそう、決め台詞はダミ声で『C4ばくだーん』って言う未来の狸型ロボットのたぬえもんよ。

餓鬼の頃本気で欲しくて父さんと母さんにねだってたっけ――弟か妹も欲しいとか言いながら」

 

 

 まあ、本人はたぬえもんとは似ても似つかないイケメンで、マジで見た目とは裏腹にいい人? いやいい堕天使さんなんだよな……。

 リアスちゃんにも親切だし……。

 

 

 

 兄との事もまだ解決したという訳ではないし、私の中ではまだもしかしたら『考えが変わってしまう』という疑念が残ってるので、私はまだ信じることが怖い。

 

 

「リアス嬢。サーゼクスからの手紙だ」

 

「あ、は、はい……ありがとうこざいますアザゼル殿」

 

「う……。お、おいおい……別に礼なんて要らねーさ、俺は只預かったんだから。

……。なーんかやっぱり調子狂うな」

 

 

 あの日、一誠と戦ってからというものの私のもとには兄からの手紙が送られ来る。

 冥界内の事情、実家であるグレモリー家の動き等々、そしてあの男についての報告、そして私と一誠の身の心配をするような内容が決まって書かれている。

 

 

「へぇ、リアスちゃんのかーちゃんも手放しでクソ野郎を認めた……と」

 

「ミリキャスが心配だわ……」

 

「あれ、確かあの魔王さんの娘さんだっけ? 確かに心配だな……あのクソ野郎的な意味で」

 

 

 アザゼル殿から借りた家のリビング。

 そこが現在私達の生きる拠点であり、一誠と一緒に強くなる為の場所で、兄からの送られた手紙を読みながら揃って苦い表情を浮かべてしまう。

 

 この前アザゼル殿から聞かされた朱乃のお母様を蘇らせたという話を聞いて以降、とうとう次は冥界にまで手が伸びている様で、グレイフィアはもう完全にあの男の手中に収まってしまった様なのが震えて文字が乱雑な手紙を見ればよく解ってしまう。

 

 

「あのクソ野郎は見た目さえ良ければ年齢とか無関係だからな……。

ただまぁ安心院なじみがあの魔王さんとミリキャスって子に常時付いてるみたいだから、何かしらの対策だけはしてると思うよ」

 

「そうね……。今の私じゃ何もすることは出来ないし、そう思うしか無いわよね」

 

 

 ミリキャス……。

 あの子は私が冥界に一時幽閉された時から一度も会ってなかってけど、手紙の内容から察するに自分の母親が他の男と堂々と逢い引きをしている現実に激しくショックを受けているみたいだったけど、あの安心院って女の子と触れ合ってからはその精神を持ち直しているとも書かれていたのであの男の事はあれど少しだけホッはしている。それでもやっぱり心配だけど。

 

 

『どうであれ、力はほぼ無くなったとしてもあの女の傍なら誤魔化せるだろう。

それにあの魔王も易々と渡すほど弱くは無いしな』

 

「だな、あの魔王さんってあの時絶対本気じゃなかったし。いよいよとなったら……出来れば逃げて欲しいね」

 

「………うん」

 

 

 弱い私ではまだどうすることもできない。

 それが今の私に突き付けられた現実である以上、ミリキャス達に関しては兄とあの安心院って人に任せるしか無いし、私ができるのは足手纏いにならないために、少しでも自分の力を磨く事だけなのだから……。

 

 

『そういえば孕んで無かったみたいだな小娘よ?』

 

「へ? あ……う、うん……検査の結果はそうだったわ。

な、何だかそんな状況じゃないのは分かってるけど、微妙に残念な気がして……」

 

「今度はしっかりするよ。いや、今度の機会があるかは分かんないけど」

 

「……。私は一誠が良ければ何時でも良いけど……」

 

「え!? ……………。リアスちゃんにそんな事を言って貰えるなんて、明日にゃ俺死ぬのかな……」

 

 

 

 

 

 

 ……。俺の介入によるせいなのか、それとも単なる転生神の趣味なのか。

 この世界は原作と性別が逆なキャラがチラホラ居るみたいだ。

 サーゼクスの息子の筈のミリキャスが女の子だった事で殆どその疑念は確信した。

 

 

「ミ、ミリキャス・グレモリー……です」

 

「よろしく、俺は綾瀬和正だよ」

 

 

 所謂TSか? 元々の原作でもまだ子供で中性的だったというのもあるが、このミリキャスは髪も長いし『行方不明』のリアスに面影があるようにも見えなくもない。

 まあ、中身は本人と似ても似つかない大人しそうな子供で、今も俺を前に照れてるのかサーゼクスの後ろに隠れてしまった。

 

 

「あ、ごめんね? ミリキャスはちょっと人見知りだから……」

 

「いや大丈夫です。でも出来たら仲良くなりたいな」

 

 

 ふむ、悪くないな。

 あの無能我が儘とは違って控え目な所は好感に思える。

 今はまだ初めて対面しているせいだからというのもあるが、その内手にするのも悪くないな。

 

 

「あ、あの僕……お勉強の途中なので……」

 

「勉強? へぇ、偉いじゃん。見てあげようか? こう見えて冥界文字も覚えてるから力になれるぜ?」

 

「ゲストであるキミにそんな真似はさせられないよ。それに勉強なら家庭教師を雇っているから平気だ。さ、ミリキャスはもう一度皆さんにご挨拶してから行きなさい」 

 

「は、はい……!」

 

 

 この世界に横で煩そうな馬鹿はもう既に居ないのだから……。

 

 

 

 わかんない。どうしてお母さんはあの人を好きになったんだろう。

 洗脳っていうからかなり怖かったけど、それを加えても僕はあの人を好きになれないと思う。

 

 

「はぁ……」

 

 

 お父さんに言われてお部屋に戻った僕は、どっと押し寄せてきた疲れで重く感じる身体に億劫さを感じながらも部屋の鍵を閉める。

 暫くはお父さんがあの人を此処に来させないようにする為に戻ってこないし……というか暫くあの人やあの人の事を好きだと公言する女性の人達が滞在するみたいだから、ますます気が重くなるような気持ちだった。

 

 

「何時まで居るんだろ……嫌だなぁ」

 

 

 お母さんを僕とお父さんから奪ったあの人は、どう頑張っても好きになれない。

 それにリアスお姉ちゃんの事もあるし……。

 

 

「や、ミリキャスちゃん。その様子じゃ既に参ってるって様子だね?」

 

 

 やっぱりどうしても……多分これが生理的に無理という気持ちなんだろうな……と着替えもせずベッドに横になってボーッと天井を眺めていた僕の耳に入ってきたのは、お母さんがあの人の所へしょっちゅう行くようになってから出会い、お父さんと僕以外家の人達に内緒で会いに来てくれる女の人……安心院さんの声が聞こえた。

 

 

「あ、安心院お姉さん……。

うん、あの人が何か嫌な目をしてたから気分が悪くなっちゃって。

今お父さんがこっちに来ないように色々とやってくれてるけど……」

 

「まぁ、子供のキミの前では言うべき事じゃないんだろうけど、アレは確実にキミを狙ってたからな。気持ち悪く思うミリキャスちゃんは正常さ」

 

 

 何時だって音も気配も無く僕とお父さんのお部屋に直接現れるこの女の人は、素性は解らないし悪魔じゃないんだけど、僕やお父さんにとってすれば今現在一番信頼できる人だった。

 ……。レヴィアタン様やお母さんまでもあの人の所に……そしてお婆ちゃんがあの人に向ける歓迎の態度を見せられれば、こう思ってしまうのは仕方ない。

 

 

「僕の事……もう一切お母さんは見てくれなくなっちゃった。

勉強しても褒めてくれない……お父さんとリアスお姉ちゃん同じ『滅びの力』を使えるようになっても……何も言ってくれない。

何時も何時もお父さんや僕を置いて、お洒落してあの変な人の所に行っちゃう……」

 

「……」

 

「解ってるよ。まだ僕は子供かもしれないけど、もうお母さんは戻ってくれないんだって……。

前は仲良しだったお父さんを『邪魔』だと思ってることも……そして僕の事も」

 

 

 お父さんはリアスお姉ちゃんに懸賞金を掛けられる前には違和感に気づいて、何とか止めようとしたけど……全部が遅かった。

 今じゃあの人は伝説の神器を扱い、シトリー様の補助をしながらグレモリー家の管理している人間界の土地をお姉ちゃんの代わりに守る偉い人になってるんだ。

 上層部の人も、お父さん以外の魔王様も皆が皆、決まっていたかのようにあのアヤセカズマって人を認めてる。

 

 お姉ちゃんの事なんか皆忘れて……。

 

 

「悔しいよ……。お姉ちゃんの事を皆忘れてる事も、お母さんの事も……」

 

「……………」

 

 

 安心院さんとお父さんの話だと、これから数時間もしない内にあの人はグレモリー家でも認められ、これからは自由に出入りが出来るようになる様になるらしい。

 そうなったら高頻度で僕はあの人に支度もない笑顔を向けながら……触れられなきゃならないんだと思うと……嫌だ。

 

 

「リアスちゃんの事なら、嘗て奴に全部を奪われても生き残った人間の男の子の所に居る……というのは前にしたね?」

 

「うん……世界から消された赤龍帝だよね?」

 

「そうだ。その赤龍帝のもとであの子は強くなろうとしている」

 

 

 僕は会った事は無いけど、リアスお姉ちゃんは逃げていた時に赤龍帝の人と出会い、その人と一緒に今も生きている。

 その話を最初安心院お姉さんから聞いた時は心底ホッとしたっけ。

 お父さんも戦ってみて『彼なら僕なんかよりよっぽとリアスを守れる』と寂しそうに笑って言ってた事も。

 

 でも、僕のお願いは……もう一度で良いからリアスお姉ちゃんに会いたい。

 会って……気付けなかった事に対してちゃんと謝りたい。

 

 

「だからミリキャス、お前はお前に出来る事をやりなさい。

奴に屈しなかったという事実だけでもあの子は救われるからな」

 

「………………うん」

 

 

 その為には。僕自身も強くならないと。

 脅されても、殺されても屈しないように……強く……強く。

 安心院お姉さんに頭を撫でられながら、僕は強く決意した。

 

 

 

 

 腹……立たしい。

 出来ることなら殴り付けてやりたい。

 

 

「リアスについて、遅れましたがご迷惑をかけたようで……」

 

「いえヴェネラナ様が謝る事では……それに俺も出過ぎた真似をしましたし」

 

 

 

 ………………。何が出過ぎた真似だ。

 そう思うんだったら何でそんな笑ってられる。

 どうしてグレイフィアを奪った……。

 僕がヘラヘラ笑って許すと思うのか?

 

 

「それであの子の行方は?」

 

「已然掴めませんね。ライザー・フェニックスを殺した後からの痕跡が掴み辛くて……」

 

「………」

 

 

 食事の席で母と笑みを浮かべながら宣う男に、彼を取り巻く女性陣……グレイフィアまでもが熱い視線を送っている。

 異常すぎるだろ……母も父も何故気付けない。

 言われて気付かされた僕が言っても只のピエロかもしれないけど、どうしてそんな他人の言葉よりリアスを信じないんだ。

 

 

「そうですか……。あの子は最後までご迷惑を」

 

「気にしないでください。俺も引き続き探しますから」

 

 

 探してもない癖に。

 毎晩毎晩複数の女と寝てるだけなのに……。

 クソ……怒りで手先が震えてフォークとナイフが上手く持てやしない……。

 

 

「サーゼクス……?」

 

「…………。すまないが皆さんは引き続き楽しんでください。

僕はルシファードに戻ってやらなくてはならない仕事があるので……。グレイフィア後は頼むよ」

 

「?? はい」

 

 

 惨めだ。

 惨めすぎて頭がおかしくなりそうだ。

 アザゼル……お前の言っていた事は正しかったよ……。

 今なら友だったコカビエルを殺されたお前の気持ちがよく分かる。

 

 食事に一切手に付けないまま、適当な事を言って席を立った僕を全員が首を傾げているのを無視するように大広間から飛び出した僕は、部屋で待つミリキャスのもとへと向い、これまた適当な事を言ってルシファードに連れていってしまう決心を固めるのだった。

 

 

「あ、お父さん……? どうしたの?」

 

「支度をしなさいミリキャス。あの男が此処に寄生している間をルシファードの城で暮らそう」

 

 

 このままじゃ逆にボロが出てしまう。

 そう判断した僕は、然り気無く来ていた安心院さんとオセロゲームをしていたミリキャスにそう告げ、準備をさせながら怒りで溶けてしまいそうな心を落ち着かせるために深呼吸をする。

 

 

「ふぅ、すぅ……」

 

「やれやれ、キミはもう少し演技上手かと思っていたんだが……」

 

 

 その様子を見ていた安心院さんに茶化される。

 

 

「………。他人に対して見てるだけで本気の殺意が沸くなんて初めてですからね……。それに、ミリキャスを見る目の事もありますし」

 

「あぁ、ロリコンと手広いからなアレは」

 

 

 嫌そうな顔で言う安心院さんの言葉に僕は嫌悪感を諸に表情に出してしまうのと同時に、やはり後手ばかりで僕こそが本当の無能だったけど、ミリキャスだけは何がなんでも守り通すと決意を改めた。

 

 

「準備できた……けど、大丈夫なの?」

 

「大丈夫だよ。勉強のために実は前々から取り決めていた事だって僕が誤魔化すから」

 

 

 そうこうしている内に、勉強道具一式を詰めた手提げ鞄を持ったミリキャスが不安そうに僕を見ていたので、その不安を少しでも解消しようと努めて笑いながらその頭を撫でる。

 父や母が何か言って来ようが知ったこっちゃない。

 ミリキャスをあの男の魔の手から回避出きるのであれば、嫌われようが構いやしないんだ。

 

 

「そこに行く前に一旦人間界に行ってフラフラしながら遊ぶかい? ミリキャスちゃんにも息抜きさせないと潰れちまうぜ」

 

「む……と安心院さんは言ってるけどどうするミリキャス? 僕も憂さ晴らししたいし今日はいっぱい遊んであげられるけど……」

 

「え!? じゃ、じゃあ手を繋いでお散歩がしたい……な?」

 

 

 それが僕に出来る今の精一杯なのであれば、僕は迷わずにその道に行くよ。

 

 

「ミリキャスちゃんのこの手を僕じゃなくてグレイフィアちゃんが握っていたらパーフェクトだったのにね」

 

「え……僕はそんなつもりで……ご、ごめんね?」

 

「おいおい、そんな泣きそうな顔して言うなよ。ジョークなのに悪いことした気分に安心院さんはなっちまうぜ」

 

「……。でもこの状況を今のグレイフィアが見ても『だから?』で終わらせそうだから怖いな……ハァ」




補足

転生者はターゲットオンした。しかしミリキャスは嫌がっている。

……まあ、母親を変貌させた原因を好こうとする訳も無いんで当たり前なんですがね。


ちなみに……ヴェネラナさんまでも食う可能性は大きいです。
つまり……グレモリーのお家は〇〇パーチー会場になる可能性も大。

故に連れ出したサーゼクスさんの判断は正解であり、ミリキャスちゃんが間に入ってるお陰もあってか、他の世界線のサーゼクスさんが血涙流しかねないくらい、安心院さんとの距離が縮まりまくる。

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