赤龍帝イッセーとリアスちゃんのベリーハード   作:超人類DX

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一誠自体の実力の……まあ、現実?


敗北の味

 よくドライグが口にしていた『白いの』という誰かさんの呼び名。

 それはドライグこと赤い龍(ウェルシュドラゴン)と幾度と無く殺しあってきた二天龍の片割れ、白い龍(バニシングドラゴン)であり、歴代の使い手達を介して何度も戦いあってきたとか何とか。

 

 俺も赤龍帝としてドライグと初めて話せるようになった時はよく白い龍――いや白龍皇について聞かされてきたが、俺はそんな事よりもあのクソ野郎に報いを受けさせるだけにしか興味がなかったからスルーしており、ドライグもそのつもりだったので、仮に会った所で戦うとかはしないかなーとか思っていた。

 

 

「白龍皇さんもクソ野郎に恨みがあったとは……。

どんだけ敵作ってんだあのゴミ野郎は」

 

「そういう事だ。宿敵としての殺し合いはアヤセカズマを始末してからとなる」

 

「俺、あのクソ野郎をぶっ殺したら戦いを辞めるつもりなんだけどな……」

 

「辞める前に戦えば良いだろ?」

 

 

 よもや白龍皇もクソ野郎を恨んでるとはおもわなんだ。

 何でもかんでもクソ野郎が肯定されると思っていたが、探してみると案外そうでも無いらしい……なんてアザゼルさんと一緒にお家にやってきた現・白龍皇であるヴァーリ・ルシファーを眺めながら思う。

 

 

「ある意味快挙だと思うぜ?

あの人間を殺す目的が合致して、幾度と無く殺し合っていた赤と白の二天龍が結託したのだからな」

 

「……。俺としてはあんまり実感はないっすけどね」

 

「……」

 

 

 殺されたアザゼルさんの親友の弟子的ポジションだったらしいヴァーリってハーフ悪魔をチラチラ伺いながら気の抜けた返答をしてしまう。

 というかさっきから勝手に互いの神器が共鳴してるせいで気が散っちゃうんだよな……。

 

 

「あ、そういえばリアス嬢に言い辛い事が一つあるんだが……」

 

「え……? それはつまりあの男の事でしょうか?」

 

 

 取り敢えずアザゼルさんの他にヴァーリが此方側たと紹介された所で用意した緑茶でホッとしていた時だった。

 湯飲みをテーブルに置いたアザゼルさんが俺の隣に座って居たリアスちゃんに対して、どうやらリアスちゃんの兄貴から直接貰ったらしい情報を言葉の通りの言い辛そうな顔で言った。

 

 

「お前の母親と不倫ごっこまで始めたらしい……だとよ」

 

「…………」

 

「うっわ吐き気がしやがる。死ねよクソ野郎」

 

「何を考えているんだ……」

 

 

 リアスちゃんの母親と不倫ごっこ。

 余りにもあんまりな話をされたリアスちゃんは、ショックを受けたというよりも最早呆れてしまった様子であり、聞いていた俺とヴァーリはクソ野郎のクソ加減に殺意が更に沸いてしまった。

 

 

「母までもですか……。

グレイフィアの時点でしたくもない予想はしていましたが……」

 

「挙げ句の果てにはサーゼクスの娘までも狙ったらしい。

まあ、サーゼクスの娘自身が奴を嫌っているのもあるし、その前にサーゼクスが避難させたからそこは大丈夫だが……」

 

「そ、そうでしたか……よかった」

 

「ちょっと待って。

確かリアスちゃんの姪っ子さんってまだ幼かったよな……?」

 

 

 しかも今のところ未遂で済んでいるものの、リアスちゃんの姪っ子さんまでもと来た。

 もはやクソ野郎はこの世の女を手中に収めてないと気がすまないのかとすら思えて仕方ない。

 いや、実際にそうなんだろう……でなければ人様の嫁さんを奪うクソさ加減を出しはしない。

 

 

「そんな奴にコカビエルは殺られたのか……。しかも不意討ちで」

 

「え、アザゼルさんの友達のコカビエルさんって不意討ちで殺されたの?」

 

 

 あまりのクソさ加減にヴァーリも湯飲みを握りつぶさん勢いで握り締めながら歯軋りをしていた。

 どうやら彼にとってコカビエルという堕天使さんは、俺にとっての父さんと母さんみたいな人だったんだろうな……。

 

 

「アザゼルよ、俺は奴を殺すまでは一切彼に戦いは挑まない。

目測でしかないが、彼の強さは今の俺に匹敵するし、彼と競い合いながら腕を磨けば更に強くなれる筈だ」

 

 

 だからこそ宿敵としての戦いよりも仇討ちを優先しようとする彼の気持ちは俺もよく解る。

 ……。出来る事ならクソ野郎を始末した後も続いて欲しいけどね……。

 

 

「そういう事だ兵藤一誠。早速お前の力を測らせてくれないか?」

 

「それは構わないけど、誰か他に待ってるんじゃないの?」

 

「そうだヴァーリ。ガブリエルが来て話し合いを纏めてからだ」

 

 

 そうそう、そのガブリエルって人が来てからでも遅くは無いと思うぜ俺は。

 どんな人か俺は知らんけど、此方側であるなら挨拶はキチンとしないとね。

 

 

「ガブリエルって……確か前までレヴィアタン様がライバル視していた天使の方と記憶しておりますが……?」

 

「大当たりだリアス嬢。

が、今やセラフォルーがライバルを張るには力不足だがな」

 

 

 へぇ、ガブリエルって人は魔王より凄いのか。

 てかセラフォルーって確かあのクソ野郎と宜しくやってる雌畜生集団の一人だったような……。

 だとしたら確かにその天使の人のライバルを自称するには力不足だわな。

 何せ――

 

 

「遅れて申し訳ありませんアザゼルにヴァーリ」

 

 

 見ただけて『強い』と思うほどのオーラが見えてしまうんだもの……。

 

 

「初めまして赤龍帝殿にリアス・グレモリーさん。

私はガブリエルと申します……まぁ、単なる天使です」

 

「う、うっす……」

 

「つ、強い……。

確かにセラフォルー様じゃあ力不足だとアザゼル殿の仰った通りかもしれませんね」

 

 

 いや、ぶっちゃけると夢の中で会った全盛期安心院なじみを抜かせば文句無くナンバーワンの強者オーラが、転送用の陣と共に現れた金髪の天使さんからは溢れていた。

 

 

 

 

「遅かったな。またミカエルの野郎にでも呼び出されていたのか?」

 

「ええ、何時もの通り『セラフに戻ってくれないか』と言われましてね。当然断りましたが」

 

 

 アザゼルとヴァーリの他に居た『あの男を倒そうと考えている者』との邂逅は、私にとって必要な事です。

 事前にどんな人物なのかはアザゼルから教えられていたので把握はしていましたが……なるほど、此方の男性が赤龍帝で、赤い髪の女性がサーゼクスの妹で間違いない様だ。

 

 

「大丈夫なのか? 俺達と繋がっているとバレたら厄介だぞ?」

 

「バレる様なヘマはしませんよ。

コカビエルと会っていた事すら彼等は知りませんから」

 

「まあ、堕天使の男に惹かれたと知られていたら今頃大騒ぎ処じゃ済まないだろうがな」

 

「そういうことよヴァーリ。

尤も、時が来ればバレようが知ったことではないけど」

 

 

 ……。正直に私は二人を見て内心驚いた。

 ヴァーリと変わらない歳でありながら確実にヴァーリと変わらない力を保持しているのもそうだけど、何より二人からはあの人――コカビエルと同じ雰囲気を感じたからだ。

 それは力とか性格とかじゃない……嘗てあの人が言っていた『神器でも種族としての力でも無い別のナニか』を持っている様に私には感じるのだ。

 

 

「コカビエルと同じ雰囲気を感じますね……一つ質問をさせてください。

お二人は赤龍帝ないし種族としての力の他のナニかをお持ちですか?」

 

「………。逆に俺はコカビエルって人が何者だったのかが気になるんですけど」

 

 

 どれだけ鍛練を重ねても未だ手に出来ない……あの人と同じ領域に、このお二人は既に到達している。

 私の質問に対して顔色を変えた時点で最早疑いようも無い。

 

 

『コカビエルとやらは能力保持者(スキルホルダー)だったのか……。

驚いたな、一誠と一誠に教えられて発現した小娘以外に天然で持っていた者が居たとは……』

 

「赤い龍帝もご存じの様で。

ええ、あの人自身はあまり良く分かっていませんでしたけど、確かに不思議なナニかを持っていました」

 

 

 神羅万象の器の使い手を仕留めるには、単純な力だけでは駄目であり、仕留めるには使い手が知り得ない力で『認識と耐性を付けさせる前に殺し切る』事が第一条件。

 つまり、不意討ちさえコカビエルが受けなければ初見に限りコカビエルが勝つチャンスは大いにあったのだ。

 

 

「コカビエル……。その名前は聖書にも載っていた最上級堕天使だったと記憶していましたが……。スキルを持っていたというのは驚きました」

 

「事実上俺とリアスちゃんの先輩だった訳か。相当強かったんだろうな……」

 

 

 コカビエル……。

 アナタの仇討ちの準備は着々と進んでいます。

 だからもう少し……後もう少しだけ待っていて……。

 

 

「お二人とも、これからよろしくお願いしますね?」

 

「おっす……」

 

「はい……」

 

 

 アナタの無念は必ず晴らします。

 同志達と共に必ず……!

 

 

 

 強い……。

 間違いなくセラフォルー様やグレイフィアよりもこの女性天使は強いと私は感じた。

 それは悪魔や天使だという種族の隔たりは関係なしに女性として憧れるものがある位だった。

 

 

「そう……アナタは彼を」

 

「はい……。まあ、依存してしまっている所もありますが」

 

 

 天使と一緒にお茶をするなんて、以前なら考えもしなかったけど、やってみると案外何も変わらないし、気付いたらガブリエルさんに一誠を含めて男子達が追い出されて二人きりになった私は、初対面なのに一誠との関係についてを話していた。

 

 

「でも一誠の優しさに甘えていては駄目だと、非力ながら実力を磨く修行をしています」

 

「良いことです……」

 

 

 話をしてみて解った事がひとつ。

 彼女はどうやらコカビエル殿に想いを寄せていた――いや、今も変わらず愛しているのが言葉の節々から伺える。

 

 

「……。コカビエル殿を愛しているのですね?」

 

「ええ……」

 

 

 だからあの男が許せない。

 目を伏せながら小さく頷いたガブリエルさんを見た私は、彼女が何故こんなにも強くなれたのか解った気がした。

 

 

 

 間違いなく最強の天使……らしいガブリエルさん。

 ヴァーリ曰く、コカビエルを殺されてから急激に強くなったとの事らしく、リアスちゃんと二人きりで何やら話をしていたのを終えて出てきた所へ勝負を仕掛けてみた訳だが……。

 

 

「いっつつ……ま、マジで強い|

 

「………」

 

 

 結果、本当に強かった。

 マジでリアスちゃんの兄貴よりも強いだろってくらい、圧倒的な強さで俺は捻られてしまった。

 

 

「どうでしょうか?

アナタの言うスキルを一切使って無かったようですし、使われていたら結果はまた違っていたかもしれませんね」

 

 

 何て良いながら真っ白な翼を仕舞うガブリエルさんに俺は笑ってしまう。

 使うも何も、使う前に捻られたら意味が無いし、実はムキになって壊神モードとか使ってんだ。

 だというのにガブリエルさんには通用せず、気付けば地面にひっくり返ってたんだぞ。

 笑うしかねーよ。

 

 

「無神臓……!」

 

 

 だからこそ、このままオメオメと負けるのは実に気にくわない。

 というか、これ以上見ているリアスちゃんの前で弱い姿は晒したくない無い。

 故に俺は使う。

 ドライグの力だけで無理なら、ガブリエルさんのお望み通りに俺とドライグの力を使って……見返してやる為に。

 

 

「さっきよりも、今よりもより強く……! もっと強く!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

「!? こ、コカビエル……!?」

 

 

 その際ガブリエルさんの顔色が変わった気がしたが、見返してやる事にしか頭に無い俺の耳には入らず、獲物を狙うネコ科の動物みたいに地に伏せた俺は、スッと目を細めたガブリエルさんを見上げるように見据えながら、四足歩行の獣みたいに手足の筋肉をギリギリと絞り込む。

 

 

「ウ……オオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

 

 そして解放と共にあげる雄叫びと共に俺は……ただ真っ直ぐガブリエルさん目掛けて強烈な破裂音と共に突っ込んだ。

 

 

「っ……ハァッ!!」

 

 

 只、ぶつかる。

 只全身を武器に相手にぶつかるだけの技術もへったくれもない力技。

 危機に相対した時に無意識に出してしまう俺自身の癖でしかないコレを使ったその時の記憶は曖昧で、気付いたら何時だって目の前に居た敵は居なくなっていたんだ。

 

 けど……ちくしょう。

 

 

「く……凄まじい力ですね」

 

「……!?」

 

『真正面から止められた、だと……!?』

 

 

 俺の力はこの人に届かなかった。

 気付いた時には目の前に誰も居ない筈なのに、俺の目の前には全力の体当たりを真正面から止め、地面に押さえつけているガブリエルさんの姿と、相棒の驚愕する声、そしてリアスちゃんの駆け寄る足音……。

 そう……俺はこの時点で完全に負けたんだ。

 

 

「……。胆を冷やしましたよ最後は」

 

「…………っ」

 

「それにその目……いえ、何でもありません。とにかく私の事は認めて貰えますか?」

 

「イッセー!」

 

 

 悔しい。

 負けた……。

 完全に打つ手を奪われた上での敗北は無力のまま父さんと母さんを奪われた時と同じだ。

 

 

「う……うぐ……!」

 

 

 悔しい……! 悔しい……!

 

 

「……。泣く程に悔しいですか、って――あ……」

 

 

 ああ悔しいさ。

 テメーが強いなんて自惚れるつもりなんて無いけど、それを抜いたって俺は悔しくて……出しちゃいけない弱さの象徴が目から溢れてきやがる。

 

 

「ち、ちくしょう……。

もう泣かないってあの時決めてたのに、やっぱり悔しいと出てきゃうぜ……グスッ」

 

「い、一誠……大丈夫?」

 

「あ、リ、リアスちゃん……ご、ごめ……お、おれ……弱いとこ……えぐっ!」

 

「一誠……」

 

『壁にぶち当たると泣くのは5年振りか。

やはり根にあるものは変わらんようだ』

 

 

 挙げ句の果てには一番見て欲しくも無い自分の弱さをリアスちゃんに見られたばかりか、生温い顔して見てたアザゼルさんやヴァーリ……そして複雑そうな顔してたガブリエルさんを前に、リアスちゃんに慰められるという体たらく。

 

 

「ぐすっ……ぐすん……」

 

「ド、ドライグ……どうしましょう?」

 

『ほっとけば勝手に立ち直る。

が、小娘……お前が適当に抱いてやればもっと早く立ち直るだろうよ』

 

「そうなの? じゃあ……ほら一誠、おいで?」

 

 

 ドライグが余計な事を言ったせいで、気を使っちゃったリアスちゃんがよしよしと俺を抱き締めながら頭を撫でてくれた訳だけど。

 これ……幻滅されたよねリアスちゃんに――と思うと更に泣けてきてしまった。

 

 

「……。最後彼が見せた目……あの人に似てた」

 

「コカビエルにか?」

 

「そう、だろうか……?」




補足

割りと負けると悔しくて泣き出す面が実はあったり。
しかし、それによって進化の異常性が刺激されてより強くなれる可能性が付与される。

そして珍しくリアスさんと立場が入れ替わる。


ガブリエルさんは一誠を見定めるために、敢えて全ての攻撃を真正面から受けた上で捻りました。
 この作品内最強の実力者の腕は伊達じゃない訳で、ぶっちゃけると鳥猫コカビーさんレベルか更に上になってますね。


寧ろ、仮に前回のネタとは別の方法でコカビー復帰しても確実にコカビーさんはお尻に敷かれてしまう訳ですね。

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