銀色転生物語 in High school life Devil×Dragon   作:silver time

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天使と堕天使と悪魔と龍と

 

 

転生を果たしてもう何年経つだろうか。

目標である転生者共を狩って狩って狩りまくったが、

まだまだいるのがなんとなくわかって辟易していた。

あれからというもの、人の姿になって町に行ったりしたが俺という存在は人間と認識されているらしい。

悪魔は人間に対して、というより、人外共は人間を下等生物として認識しているのが大半だった。

面倒臭いと思った銀火は仕方なく森で生きていく事を決めたのだった。

 

余談ではあるが、彼が初めて人の姿に変わり水面に映る自分の姿を見た時の第一声は、そっちかよ……だった

 

水面に映っていたのは特典通りの銀色の髪に赤い目だった。

だったのだが、彼の想像していたものとは微妙に違っていた。

かの銀髪天パー侍のような天然パーマでもなく、赤い目も死んだ魚のような目と言うよりやる気の感じられない目た言った方がしっくりくる目をしていた。

結局何が言いたいかというと

 

彼の見た目は.hack/linkのフリューゲルの髪と目が銀と赤に変わった姿だった

 

中の人的には同じかもしれないが

 

 

 

 

 

 

閑話休題(それはともかく)

 

 

 

 

 

 

 

 

かれこれもう何十年と生きてきた銀火だが

彼にも転生を果たしてから初めての友が出来た。

もっとも、その友は人間ではないのだが…

 

 

冥界のとある森の開けた場所に、三匹の龍が集っていた。

 

その場所には当然銀火の姿もあり、彼は人の姿で木から作ったコップに注がれた葡萄酒を煽っていた

 

そんな銀火の目の前には赤い龍と白い龍

が居り、かれらもまたでかい杯になみなみと注がれた葡萄酒を一息に飲み干し、口を開く

 

「っぷは、変な味だなこの葡萄酒ってやつ」

 

「不味いとは言わないが、些か物足りんな」

 

「一息に飲み干しといて何言ってんだ。これでも大変なんだぞ?一から作るとなると熟成させるのに時間が――」

 

「あーよせよせ、お前のその酒に対するこだわりはよく分かってるからよ」

 

そんな龍の集いにて葡萄酒を呑みながら談笑している三匹の龍(約1名人間の姿)

内二匹は二天龍と呼ばれる神すら恐れた存在であるが、その事を銀火は知らない

 

「確かにな。アルギュロス、今度はこの前持ってきた日本酒を頼んでもいいだろうか」

 

「日本酒か?いいよ。まだいくつか残ってるはずだ」

 

「アルビオン、お前ってやつは……」

 

「いいじゃないかドライグ。案外人間の作るものは馬鹿にできんぞ?」

 

「確かにそうかもしれんが……」

 

「それに、毎回なんだかんだ言っても律儀に飲み干してくれるからな、誰かさんは」

 

とても平和だった。くだらない話をして、酒を飲み、果実を貪り、たまにはケンカもした。

そんな、どこにでもある、久しく味わってなかった日常を銀火は噛み締めていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁアルビオン、俺とお前が本気で()りあったらどっちが勝つんだろうな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

その一言が飛ぶまでは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――あのバカ共……」

 

 

現在、銀火は上空に人の形で佇んでいた。

その姿は白銀の全身鎧に身を包んだ騎士に見える。

鎧のあちこちに嵌め込まれた赤の宝玉がその先に広がる戦場を凝視しているようで、銀火もまたその戦場を見ていた。

 

先日のドライグが発した発言。

いつもならその場でおっ始めるやつらだが、今回は気持ち悪いくらいにおとなしくその場でお開きとなった。

だがそれで安心したわけではない。

むしろ不安で仕方が無い

 

そして、今彼がその戦場に目を向けている理由は、三大勢力による三つ巴の戦争の横で闘いを始めてしまったドラゴン二匹にあった

 

そう、よりにもよって三大勢力の戦争の最中に、その真横で、個人的な争いを始めたバカ二匹が原因だった

 

先日のドライグの言葉、どちらが強いかについて。それを決める闘いが繰り広げられていた

 

そして彼らは二天龍と称されるドラゴン。

銀火はそれを知らないがあの二匹がとんでもない力を持っているのは十二分に知っていた。そんな彼らが一度争えばその余波だけでも戦争の真っ最中である三大勢力にも甚大な被害が及ぶのは火を見るよりも明らかだった。

実際、その当たって欲しくなかった読みは見事に的中してしまった

 

銀火は、争いを始めたバカ二匹をどうにかして止めようとしている。

もしこれが本来この世界が歩むべき道だとしても。

 

消えゆく命を見捨てるほど、彼の心はまだ人間をやめていなかった

 

「悪いな、ドライグ。アルビオン。全力で止めさせてもらうぞ」

 

だから彼はその身を投じる。天使と堕天使と悪魔と龍と、混沌と化した戦場へと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその頃、二天龍が争い始めたことにより甚大な被害を被った三大勢力の面々。

流石にこんな状況下でも争いをやめないほど愚かな者はいない。

三大勢力は停戦協定を結び、二天龍を封印する事を決めた。

天使や堕天使は光の槍を投げ、悪魔は魔力を放ち、二天龍へと攻撃を雨のように浴びせた。

相手が二天龍とはいえこれだけの物量があれば倒せるはずだった

 

しかしその程度で倒れてくれるほど甘くはない。多少のダメージを与えられたのは確かだが、それだけだ。それ以上の、二天龍を打ち倒す程のダメージを与えられた訳では無い

 

それでも攻撃を続けたが効果は見られず、まるで相手になどされなかった。

 

たった二匹のドラゴンの争いによって、三大勢力は全滅しかけていた

 

「オイオイ、これ以上はシャレになんねーぞ!封印する前にコッチが全滅しちまう!!」

 

「ヤバイヤバイ死ぬ死ぬ死ぬ!!」

 

 

これを表現するならまさに地獄絵図と言う言葉が相応しいだろう

 

 

 

そして戦闘の余波で飛ばされた巨大な岩石が一人の影を捉えた

 

 

 

セラフォルー・シトリー

悪魔陣営の中でも強大な能力を持ち、前線の戦闘を支えていた実力者。

 

そんな彼女でも唐突に迫ってくる死を正しく認識できずにいた。

周囲から聞こえてくる彼女を呼ぶ声すら頭に入ってこない。

自身の死が容易に頭に浮かんだ

 

 

そして眼前に広がった光景を最後に

 

 

 

 

 

 

 

彼女の視界が暗転した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かに覆われた感触がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なにかが砕けた音が耳に届いた

 

 

 

 

 

 

 

 

五感の内の視覚、触覚、聴覚が唐突な情報を拾い脳へと伝えた

 

セラフォルーは突然の状況の変化に頭が追いつかなかった。

 

混乱するセラフォルーを余所に大丈夫かと確認するような聞いたことがない声が聞こえてきた

 

そしてゆっくりと真っ暗だった視界に光が戻り、

 

 

 

「とりあえず間一髪かね…」

 

大きな四枚の翼を持った銀色の鎧に身を包んだ騎士の姿があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い髪の悪魔、サーゼクス・グレモリーは目の前で繰り広げられていた出来事に理解が追いつけなかった

 

それはこの場にいる全員にも言えることだが

 

突如として乱入してきた銀色の鎧の騎士によって友人であるセラフォルーに迫っていた岩石をいとも容易く粉砕し、その光景に唖然としている者達を余所に二天龍と話し始めたと思ったらその騎士が銀色の龍へと姿を変え二天龍と互角の戦いを繰り広げている。

 

神話の存在である彼らからしても目の前の光景はその場の全員が唖然とするほどに異常であった

 

そんな三つ巴となった龍の戦いによってさらに被害が拡大すると思われた。

しかし、銀色の龍、アルギュロスが乱入してからというもの負傷者は出るもののこれ以上誰かが死ぬことは無かった。アルギュロスが被害を最小限に抑えていたからだ。

 

 

 

そして、

 

ついにこの戦争は終わりを迎えた

 

 

天元の深龍が二天龍を沈めたことで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、アルギュロスは先程まで激闘を繰り広げていた戦場から逃げるように空を飛んでいた

 

(…これで良かったのだろうか)

 

結果として、ドライグとアルビオンは神器というものに封印され、三大勢力による戦争も一旦その幕を降ろした。

しかし銀火の心は晴れやかとは言えなかった。

結果的にそれは、初めての友人との別れを意味していた

 

 

 

 

「……強いな、お前は」

 

 

「ほぼ俺達二人掛りだって言うのにな……」

 

 

「…………少しは神器(そいつ)の中で反省してな。また……酒を酌み交わせる時まで待っていてやるからよ」

 

 

 

アルギュロスは逃げるようにその場を後にした。三大勢力から何かしらの話を持ちかけられるかもしれないのもあるが、

今は独りでいたかった

 

 

「……寂しいもんだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、三大勢力による戦争は集結し、

二天龍は封印され、聖書の神と魔王達は死亡した

 

結果的に物語は元の通りへと進んでいったのだった

 

 

 

ただ、一つだけ言うとしたら、この大戦は後の世まで、乱入し結果的に彼らを救った銀色の龍の名から取られ、こう語り継がれた。

 

 

 

 

評決の刻(ヴァーディクト・ウォー)』と

 

 


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