銀色転生物語 in High school life Devil×Dragon 作:silver time
「何じゃこりゃァァァァァァァァァァァァァァァ!!??」
とある空間に一人の男、ではなく、一匹の龍が存在していた
その龍はつい先程まで人間だったのだが
その龍、虚月銀火は今自分のいる場所よりも今の自分の身体を見て驚愕していた
「えっ!?なにコレ!?ドラゴンになっちまったのか!?何で人ですらなくなってんだ!?俺はシェン○ンか!?願いを叶える側なのか!?」
そう、銀火は創作や伝承に登場する幻の存在、龍となっていた。銀火はまだ自分自身の身体を全て見ていないが、彼の姿は西洋におけるドラゴンの姿で、少なくとも40メートルはあるほど巨大で、背中には二対四枚の大きな翼が付いている
頭には後ろに伸びた二本の角と鼻当たりに一本の角があった
蛇のように長く、しなる尻尾は体の半分ほどの長さがあった
その穢れを知らぬような白銀の体はまるで光をまとった龍のようだ。
そんな中でも特に目立つのは、真っ白な体とは対象的に赤く、紅く、ルビーのように輝く二つの双眸であった
どこからどう見ても西洋のドラゴンと化した銀火はようやく落ち着きを取り戻していた
「オイオイ、まさか二回目の人生は人じゃなくて龍でしたってか?いや、それなら人生じゃなくて龍生か?」
そんなことを考えているが、それよりももっと気付くべき事がある、今彼がいる場所は
『ほう、何事かと思ったが、随分と面白い奴が来たな』
龍神、その世界の頂点
『
ここは龍神の住まう場所、次元の狭間である
そしてその空間の主である赤い龍がこちらをじっと見つめていた
「……」
『どうした?新たに生まれし龍神よ』
さて、このお話の主人公虚月銀火はいま新しく生まれ変わったばかりにも関わらず人生、ではなく龍生の瀬戸際に立たされていた。
その原因は目の前に居るこの巨大な赤いドラゴン、グレートレッドと対峙していた
グレートレッドはいつも通りといった風に銀火へと話しかけてくる。
しかし肝心の銀火はと言うと目の前にいるドラゴンの巨大さと圧倒的なオーラのようなものを感じたのか完全に萎縮している
同じ龍であるはずだが、この構図は蛇に睨まれた蛙を見事に再現していた
「エーと、あんタがグれーとレっド?ッて行ったッケ?」
『それはいいが、お前が大丈夫か?』
「べつ二?なんデもナイですヨ」
緊張か恐怖のせいか、言葉のニュアンスがおかしくなっている
『落ち着け』
「へブッ!」ドガッ
グレートレッドの軽いチョップが銀火の頭へと放たれる。軽いと表現しているが、実際にこれを龍以外の生物がマトモに喰らえば一発KOである。しかしそこは龍となったことで、かなり頑丈な体となっているので銀火からしたら何処ぞの死神の死神チョップくらいだろう。あっちも相当痛いが
『落ち着いたか?』
「……すごく落ち着いた」
ようやく収まったところで、グレートレッドは名を尋ねた。銀火は自分の名前を伝えたが、
『虚月銀火……龍にしては変わった名前だな』
と言っていた。当然である。それは彼の生前の名前であり、今の龍のような姿でその名を名乗るのは違和感が半端ではない
『まあ、お前が元は人間というのは知っている。しかし龍として名乗るには適さないかもしれん』
「そんなに変か?……いや、変だな」
『よし、私がお前のもう一つの名を授けてやろう。』
グレートレッドはそう言うとしばらくの間、何かの単語を呟いていた。
『……よし、思いついたぞ』
しばらくして、ようやく思いついたようで、銀火の方へと振り向く。
銀火は待っている間一人で〇✕ゲームをしていた。
「あ、出来た?」
『お前は何をやってるんだ……』
「いや、暇だったし」
『とにかく、お前に龍としての名を授けよう。今日からお前の名は
アルギュロス。
天元の深龍アルギュロス、もとい虚月銀火は森の中に居た。
名を貰った後、人間の姿になる方法を伝授し次元の狭間から元の場所へと出た。
そして今、何をしているかというと、これから龍として生きていくためにどうするかを決めあぐねていた。人の姿になり街に住むか、野宿するか、どう考えても前者であるが、どこに村や街があるか分からないのでしばらくは野宿で我慢する事に
(……そういやドラゴンって何できるんだろう。確か他の特典が『騎士は徒手にて死せず』、魔法、何か創る能力だったが、これ反映されてんのかな?)
巨大な体を横にして、考えに耽る銀火。
肝心の転生者共をデストローイする約束もあるので、とにかく状況、考えを整理し、明日頑張るために眠ろうとしていた……その時だった
「お、ドラゴン見ーっけ」
男の声が聞こえた。銀火は顔だけを起こし、声の方へと向けると、
そこには身の丈を超えるほどの大剣を担いで、ニヤニヤとした薄気味悪い笑みを貼り付けたハンター風の男がいた
「……お宅誰?」
「ほーう?聞いちゃいますか?そうですか?そりゃ気になりますよねー?ならば仕方ない、教えてやろーう!」
(くっそウゼェ)イライラ
ハンター風の男はまるで歌うかのように話しかけてくる、銀火、というか10人中10人が口を揃えてウゼェと言いそうなほどにふざけた口調で喋る男に、銀火はかなりイライラしていた。姿が龍なのでわからないが、人の顔していたならばきっと↓
(#^ω^)ピキピキ
こんな感じの顔になっていただろう。
そして男は口を開き
「転生を果たして最強になっちゃった最強転生者こと、ギリー・アンダーソンでぇす!それじゃあさっそくサヨナラバイちゃ!」
担いでいた剣を振り下ろした
穏やかだった森に木が砕け地が割れる音が響き、砂を巻き上げながら森を横断する何かがあった
その要因は今この場にて戦闘を始めたキチガイ1人と、追われている龍一匹であった
「チッ!図体がでけークセにすばしっこい!おとなしく斬られろや!」
「それでおとなしく斬られる訳無いだろ」
銀火はさっそく目的の転生者を見つけたが自分の攻撃手段が分からない為出来るだけ広い場所へと出ようとしていた。
もっとも人の何十倍もデカイ龍、龍神である彼がその丸太を数本束ねたほどの大きさの腕を振るうだけで簡単に倒せるだろうが、実は貧弱なドラゴンでしたなんて事になれば本当にマズイのだ
(まさか初日から当たりとはな。それと直感で分かるってこういうことか)
銀火は一人で納得しつつ、森を駆けていた。翼を使って飛んでもいいがまだ慣れていないから使いたくない。下手をすれば墜落するかもしれないのだ
「……やっば」
いつの間にか大きな山の麓にある岩石の壁まで来ていた。後ろからはヤツが来ている。
「さーてもう逃げ場はないよ〜。何で飛ばねえかは知らねぇけど、俺の剣の錆にしてやるよ。泣いて喜びやがれ」
そう言い剣を上に掲げると、ドス黒い色をした禍々しいオーラが剣に纏わり付いていく。
「冥土さんの土産に教えてやるよ。こいつはドラゴンスレイブソードって言う超素敵武器でな〜、相手がドラゴンなら何でもぶっ殺してくれる俺の最高の玩具なんだぜ。」
「オイオイオイ、それシャレになんねーだろ」
そんな事を言うものの、目の前の剣からは嫌な感じはしなかった。その違和感が何なのかはわからなかったが
「そんじゃ、
その膨大なオーラを纏った剣が銀火に向かって振り下ろされた
振り下ろされたのだ……しかし
「ありゃ?」
「……え?」
剣は銀火の肩へと振り下ろされていた。
しかし、剣は銀火の体を覆う鱗によって止められていた。しかも傷一つつけられていなかった
「え?ちょっ、ナンデ!?」
銀火は自分の衣服にゴミがついたのを取るように肩にぶつかっていた剣をつまみ上げた
「ちょっ、離せ!離せよこのクソトカゲ!」
いらないオマケも付いてきたが、銀火は剣をぶんぶんと振り回し、やがてギリーとかいう男は剣からは手を離し慣性の法則によりスポーンと吹っ飛び、木にぶち当たって止まった
「……これ使えるか?」
とても使えるとは思えなかったが、
丁度いいので『騎士は徒手にて死せず』を試してみることにした
すると、剣は銀色に染まっていき、血管のような赤いラインが引かれていた。
それはもう既に、銀火の一部と化したように見えた
「な……何で……何でだ……それは俺の…………俺だけの武器なのに……ふざけるなよこのクソトカゲ野郎が!!」
そう駄々をこねる子供のように喚くギリーを尻目に、手に持った……ドラゴンスレイブソード?なんて言う中二全開な名前の大剣を眺めていたが
(あーなるほど、これ成長していく類の武器か。この様子だと弱い奴らしか殺ってなさそうだな)
実際、目の前で喚き散らす自称最強の転生者、ギリー・アンダーソンは転生を果たしてからその大剣で斬ってきたのは、地龍といった肉食恐竜のような姿のドラゴンの中でも下位に位置するドラゴンとしか戦ってこなかったのだ。
前世ではまず相対することも無い未知の生物を倒したことで、俺TUEEEEE!と舞い上がっていた事も原因ではあるが
やがて銀火は興味を無くしたように大剣を放り投げ
「もういい、見逃してやるからさっさと帰れ」
のっそのっそと歩くたびに地響きを起こしながらその場を後にしようとする――
「ふざけやがって!」
ギリーは再び大剣を持ち上げ、背を向けた銀火に向けて大剣を振り下ろす
「今度こそ殺してやる!!絶対にぶっ殺す!!」
もう1度その体にその大剣が放たれようとしたが
「見逃してやるって言ったよな?」
振るわれた大剣は空振り、地面を捉えた。
いや、振り下ろされた大剣は半ばから折れており、剣先は宙を舞っていた
その剣は龍の鱗に阻まれたのでは無く、いつの間にかこちらを向き、振り抜かれた剛腕により大剣は真っ二つに折れてしまった
「忠告はした、二度目はねぇ」
そう言葉を告げた口からは銀色の光が漏れ出ていた。それは彼の名と同じ、銀色に輝く炎。
「俺は仏さんみたいに気長じゃねえんだ」
そして、銀色の炎を閉じ込めていた口が開かれ
「仏の顔は三度まで。
龍の怒りは一度までだ」
「ハァー、これで一人目。あと何人いるんだか」
辺り一面焼け野原となった場所に銀色の龍、銀火は独り言をつぶやいていた。
その場所に先程までいた転生者、ギリーの姿はなく、そこに居たであろう証拠として燃え尽きた炭が人の形をとっていただけだった
「人を殺したのはこれが初めてじゃねえが、慣れねえモンだな」
かつて、彼が人して生きていた時、彼が死んだ理由となった、銃で武装したテロリストに立ち向かった時と同じく人を殺めた。
今回の違いは護るものがあるかないか、それだけの話
しかし今回に限っては、神様から依頼されていた事とはいえ、人を殺して気分がいいものではない
その身が龍となっても、人として生きた心は変わらない
「これからどうすりゃいいんだ」
とにかく今は、生きていくための食糧を探すことが先決だった