シスコンで吸血鬼で鬼ですが何か?   作:エントさん

19 / 21
修行教師にスパルタを(後編)

 リアスちゃんの別荘。

 今回の合宿場だ。

 大きさは僕の家の二分の一くらいだ。

 

 そう言うと小さく聞こえるかもしれないけど普通の一戸建ての数倍か十数倍はある。

 

 この別荘がある山は全部というか、この近くの山もリアスちゃんの家の私有地らしい。

 

 貴族って言ってたけどここまでとは……

 実は王族とかじゃないよね?

 

 リビングでリアスちゃんたちが言う

「じゃあ、私たちは着替えてくるから貴方達も着替えておきなさい」

「あ、わかりました!」

 女性陣は動きやすい服に着替えるため二階に向かう。

 

 着替え。

 着替えって言っても普段着しか持ってきてないよ?

 

「要さんはそのままでいいわ」

 あ、そうなのね。

 マジでなんで僕連れてきたん?

 

「僕も着替えてくるね」

 木場も青いジャージを持って一階の浴室へ向かった。

「覗かないでね」

 木場がボケをかます。

「ばっ…!の、覗くわけねぇだろ……」

 兵藤が少し顔を赤めながら言った。

 

 あれ?……

 

 そういえば最近、『兵藤X木場』なんてのをよく聞くけどマジなのか?

 本気と書いてマジなのか?

 その場合はやっぱり『兵藤が攻め、木場が受け』かな……

 

 いや、それじゃつまらない。

 ここは、木場が攻めの兵藤受け?

 いや、あえての普段は兵藤が攻めだけど夜は木場が攻めなんてのも面白いな__

 

 

《回想》

 

 

 薄暗い部屋のベットの上、四つん這いの木場の下に一誠がいる。

「ねぇ、一誠君……いつもはあんなに強気なのにどうして今はオドオドしてるの……?」

 一誠のハァハァ漏れる息が木場の体にかかる。

「い、言わせんじゃねえぇよ……」

 木場がニヤリと笑い、一誠のはだけた上着を全て脱がす。

「はは……緊張してるのかい?こんなに心拍数が上がって……」

 ツツーと一誠の胸に指を滑らせる。

 一誠が顔を赤らめて逸らした。

「き、木場……焦らすなよ……」

 

「分かったよ…じゃあ、受け止めてね……僕の、魔剣創造(ソード・バース)

「木ウ゛ァーーーーーーー‼︎‼︎‼︎」

 

 

《回想終了》

 

 

 __うん、これは売れる。

 

「先生!部長が呼んでますよ!」

「あ、ごめん。自分の世界に入ってた」

 

 兵藤がは?って顔をしている。

 

「と、とりあえず行こうか!兵藤!」

「え?あ、はい!」

 小走りでリアスちゃんたちのところへ向かった。

 

 

 

 

 

《レッスン1 木場との剣術修行》

 

「よっはっ」

「だぁぁ!がぁぁ!!」

 う〜ん、兵藤に剣は無理っぽいなぁ。

 別に才能がないとかそういうのじゃなくてただ素人なだけだ。

 

 この10日じゃ何も変わらないな。

 木場にも剣術の基本を教えてもらっているけど基礎を教えてもらったくらいじゃ一%も勝率は上がらないだろうなぁ……

 

 というか木場は凄いなぁ。

 やっぱり『騎士(ナイト)』だからかな?

 リアスちゃんの話によると『騎士(ナイト)』は俊敏性の向上。

 まぁ、簡単に言うとスピードアップだ。

 

 あ、また竹刀弾かれた……

 

 

《レッスン2 朱乃さんとの魔力修行》

 

「要さんもやりますか?」と、朱乃ちゃんに言われたので参加してみる。

 ぶっちゃけ見ているだけはつまらない。

 

「では、コツを説明いたしますわね」

 因みにこの修行にはアーシアちゃんも参加している。

 

 朱乃ちゃんの手に魔力が集まり丸い玉のような形になる。

「魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集めるのです。意識を集中させて、魔力の波動を感じるのですよ」

 これまた、丁寧で優しい説明だなぁ。

 僕より教師に向いてるんじゃない?

 

 兵藤がぐぬぬ!とかぐおぉぉ!とか言ってる間にアーシアちゃんと僕が合格した。

 

 まぁ、僕は元々、魔力使えてたしね!

 

「ぐおぉぉぉぉぉ!!!」

 兵藤、叫んでも魔力は出ないよ?

 

 

 

 あれから何とか兵藤は魔力を出せた『米粒サイズの』

 なんか、どんまい兵藤。

 

「では、その魔力を火や水、雷に変化させます。これは『イメージ』から生み出すこともできますが、初心者は実際の火や水を魔力で動かす方がうまくいくでしょう」

 朱乃ちゃんが魔力をペットボトルに送る。

 ザシュ!

 魔力を得た水が鋭いトゲになってペットボトルを内から破った。

 

 まぁ、そんなことはいい。

 それより、僕は『イメージ』という言葉に反応した。

 何故かイタズラ心が刺激される。

 

 僕の技名は『イメージ』一つしか作っていない。

 理由は、技名で技の内容を気づかれないようにだ。

 

 これは、悪戯するしかない。

 

「ねぇねぇ、朱乃ちゃん」

 朱乃ちゃんの肩をたたく

「はい、なんですか?」

 朱乃ちゃんが振り向いた瞬間。

 

イメージ(悪戯幻覚)』開始。

 

 

 僕の腕がボトッと落ちる。

 朱乃ちゃんの顔が真っ青になる。

「要……さん?」

 

 前例があるから分かるかもしれないが坂木要はグロデスクな悪戯(いたずら)が好きだ。

 悪趣味ではあるが要は鬼と吸血鬼のハーフであるためグロい事に抵抗がないのだ。

 

 

 朱乃ちゃんは顔を真っ青にしたまま考える。

(どういうこと?腕?なんで?自分で?自分でなんてありえない。いや、でもそれしか思いつかないわ)

 

「要さん……なんd(ブシャ!

 朱乃ちゃんの顔に血液がかかる。

 

 パタリ。

 そのまま、腰を抜かしてへたり込む。

 

 

 

 

「なーんちゃって!悪戯だよ!」

「ほへ……?」

 そこには腕の元通りになった要がいた。

 自分についた血液もない。

「いた、ずら?」

「イエス!」

 僕はサムズアップする。

 

 朱乃ちゃんは顔を赤くしてプルプルと震える。

「よ……」

「よ?」

「要さんのバカァァァァァァァァァァァ!!!!」

 そのまま走り去っていった。

 

「「うわぁ……」」

 兵藤とアーシアちゃんも引き気味だ。

 

「ありゃ?」

 要は、なんで?って顔で朱乃ちゃんが出て行ったドアを見る。

 

 まだ常識に欠損が見られる要であった。

 

 ※後で謝っておきました。

 

 

《レッスン3 子猫ちゃんとの組手》

 

 ドゴッ。

 子猫ちゃんの小さい拳に兵藤は殴り飛ばされる。

「ぐぉぉぉぉぉ!」

 兵藤は今日10回目の巨木激突をした

「……弱っ」(弱っ)

 僕の心の声と子猫ちゃんの声が被った。

 いや、仕方ないでしょ?

 

 子猫ちゃんも兵藤のために手心を加えているのにボコボコだ。

 

 兵藤。僕、何故か涙出てきたよ……

 

 

 

 

 

 次はただの筋トレらしいので別荘へ帰ってきた。

 今考えているのは『兵藤をどうやって強くするか』だ。

 

 兵藤の強くなろうとする意思は本物だ。

 でも、このままではいくら足掻いても10日じゃ足りない。

 

 思いと時間は比例しないんだ。

 

 そこで、僕は考えた。

 僕はあいつの教師だ。

 あいつ、兵藤が『守りたい』と望むなら守れる手助けをしてやろうと思う。

 

 だが、どう考えても『あれ』以外に思いつかない。

 

 

 

 

 

 

《夜》

 

 ご飯は僕が作った。

 メニューはカレーだ。

 合宿の定番、初日はカレーがいいだろう。

 

 デザートはメロンのジェラート。

 はい、僕がメロン好きなだけです。

 

「う、うまい……」

「うん、これは美味しいね」

「カレーってこんなに美味しくなるんですわね」

 褒められると嬉しいな。

「「ガツガツガツ」」

 アーシアちゃんと子猫ちゃんはものすごい勢いで食べている。

「「お代わり!」」

「すごい食べっぷりね……」

 リアスちゃんが軽く呆れ気味だ。

 

「イッセー今日一日修行してみてどうだったかしら?」

 リアスちゃんの問いに兵藤は箸を止めて少し苦い顔で

「……俺が一番弱かったです」

 と言った。

「そうね。それは確実ね」

 わ、わぉ、バッサリ言うねリアスちゃん。

 でも、実際にそうなんだから兵藤は何にも言えないな……

 

「朱乃、祐斗、子猫はレーティングゲームの経験こそないけど実践経験が豊富だから感覚をつかめば戦えるでしょう。要さんはよく分からないけど私達に今まで正体を気づかれなかった、それにいくら下級と言っても堕天使を瞬殺よ。実践経験もあるのでしょう。あなたとアーシアは実践経験が皆無に等しいわ。それでも、あなたのブーステット・ギアとアーシアの回復は無視できないわ。相手もそれは分かっているはず。最低でも相手から逃げるくらいの力は欲しいわ」

 

 『逃げる力』という言葉に兵藤が反応した。

 バンッ!

 机を叩き、リアスを真っ直ぐと見る。

「それじゃ、それじゃダメなんです!俺は『逃げる力』が欲しいわけじゃない!『守る力』が欲しいんです!!」

 兵藤が辛い顔をして食堂を飛び出した。

 

「イ、イッセー!!」

 リアスちゃんが兵藤を止めようとしたが兵藤は止まることなく出て行った。

 

 あらら、これは男としては兵藤に同意かなぁ……

 でも、リアスちゃんの言っていることは正論だ。

 きっと、それが一番正解だ。

 

「リアスちゃん。兵藤は僕が追いかけるから……」

「あ、要さん!」

 僕も兵藤を追いかけて出て行った。

 

 

 

 

 兵藤の部屋の前まで来た。

 

 コンコン。

 扉をノックする。

「兵藤、話せるか?」

 

 ガチャ。

 扉が開いた。

 

 中には顔を(うつむ)かせた兵藤がいた。

 

 そのまま兵藤はベットに座る。

 僕は兵藤の隣に座った。

「兵藤、実際はどう思ってるんだ?」

 

 兵藤が本心であんなこと言ったわけじゃないのは分かっている。

 多分、兵藤は焦っているんだろう。

 

 今日、改めて分かった真実に『自分が一番弱い』という事実に。

 

「分かってるんすよ。部長が言ってることは正しいって……」

 でも、と兵藤は続ける。

「俺は、部長を木場をオカ研のみんなを守る力が欲しいんです」

 

 兵藤の目を見る。

 兵藤の目は本気だ。

 

 僕は、「はぁ」とため息をつき言う。

「兵藤、死ぬほど辛いけどとよくなれる方法がある……」

 僕が言うと兵藤が肩を掴み真剣な顔で

「本当ですか!!お願いします!!強くしてください!」

 と言った。

 僕は少し苦笑いをした。

「お、落ち着いて、さっきも言ったけど『死ぬほど』きついよ。いいの?」

「そんなの全然大丈夫です!守れるなら!!」

 

 はは、そうか。

「リアスちゃんに許可もらってくるね」

 じゃあ、《スパルタで行こうか》

 

 

 

 

 

《翌日》

 

 リアスちゃんに許可をもらったので兵藤を隣の山に連れてきた。

「先生、なんでわざわざ隣山まで来たんですか?」

「兵藤……とりあえず一回……」

 

 __死のうか。

 

 兵藤の心臓に腕を刺す。

「せん……せい……?」

 

 ガハッ。

 兵藤が口から血を垂らしバタリと倒れる。

 

 

 

「兵藤、起きろぉ」

 『幻覚』にかけた兵藤の肩を揺らして起こす。

「___え?」

 兵藤は戸惑っている。

「今のは幻覚だよ。通常幻覚、普段はイメージって言ってるけど今回は分かりやすく教えるね」

 兵藤はコテンと首を傾げる。

「幻覚ですか?あ!もしかして俺に幻術を「違うよ」えっ!?」

 今から幻術教えても出来る訳ないじゃないか。

 

「幻覚を見せたのはこれからの修行に使うからだよ」

「どういうことっすか?」

 そう、焦るんじゃない。

 今から説明するから。

 

「兵藤、今から君に幻覚をかけるよ」

「幻覚?まさかさっきのやつ!?」

 兵藤は少しビビりながら言う。

 まぁ、殺される幻覚とか見たくないもんな。

「いや、さっきのはドッキリ的なやつだからしないよ」

「ドッキリであんな事したの!?」

 兵藤が驚いた顔で言う。

 

「では、今から君にかけるのはイメージ(治癒幻覚)です。じゃあ、かけるよ〜」

「いや!かけるよ〜じゃないですよ!イメージって名前全部イメージだから何されるのかわかりませんよ!しかもいきなり!」

 兵藤が中々切れの良いツッコミをかます。

 

「人が一番『力』がつくのはいつだか分かるか?」

「え?欲望?」

「うん、もう一回死ぬ?」

「すみません!!!」

 軽めにボケたのでやり返してやった。

 兵藤はものすごい綺麗な土下座を披露してくれた。

 

「じゃあ、説明するから真面目に、真面目に!聞いてね」

 僕は少し微笑みながら言う。

「は、はい!!」

 兵藤は敬礼しながら言った。

 

「さっきも言ったけど一番力がつくのは『自己回復』している時」

「自己回復ですか?アーシアのとか?」

「アーシアちゃんのは『自己回復』ではなく『他者回復』って言えばいいのかな?あれは自分での治癒ではなくて直されているって感じかな僕が言っているのは、例えば骨折をしたら治る時、前よりずっと強く硬い骨になるんだ」

 兵藤はフムフムと聞いている

「で、これから君にかけるのは『治癒幻覚』これは『君の体に幻覚をかけて』君の自己治癒力を数十倍から数百倍まで上げるって幻覚だよ」

「なんですかそれ、めっちゃチートじゃないですか!」

 兵藤が目をキラキラさせながら言ってくる。

 ありゃりゃ、こいつこの能力のヤバさがわかっていないな。

 

「何か思い違いをしているみたいだけどこの幻覚は僕の能力の中で一番使いどころのない幻覚だよ」

「え?なんでですか?」

 兵藤が首を傾げながら聞く。

 

「よく考えてみな自己治癒力を上げると言っても治り方を変えるわけじゃない。それこそフェニックスと違い火を帯びて治るわけじゃない。自分の治癒力を無理矢理上げてるんだ。代償がないわけないだろ?」

「た、確かに……因みに代償ってなんですか?」

 兵藤がゴクリと生唾を飲む。

 

「治癒力が上がる分、痛みも上がるだけだよ。治癒力が数十倍なら痛みも数十倍ってこと」

 兵藤の顔が青くなる。

「それでも、やる?」

 兵藤は自分の顔をパンパンと叩いて気合いを入れると

「はい!やってください!」

 と言った。

 

「よし、じゃあ修行の本格的な内容を話すね」

「は、はい」

 兵藤は姿勢を正した。

 

「まぁ、簡単なことだよ。兵藤と僕で今から7日間、不眠不休で『ガチバトル』をする」

「え?」

 

 

 

 

 

「じゃあ、スタート!」

 兵藤にとって地獄の一週間が始まった___













長っ!?
思ったより長くなってしまった……

・主人公紹介

イメージ(悪戯幻覚)
 これは簡単、イタズラの時に主人公が使う一番クオリティの低い幻覚。


イメージ(通常幻覚)
 可もなく不可もない一番普通の基礎となる幻覚。


イメージ(治癒幻覚)
 体の細胞組織や脳に幻覚をかけて自己治癒力をアホほど上げる幻覚。
 これの弱点は治る分の痛みが倍増する。




・補足
主人公が不眠不休と言ったのはその通り不眠不休でやらせるからです。
治癒幻覚の効果で細胞が活性化しているため不眠不休でも一週間くらい余裕なのです。

七日間にしたのは最後の一日を休みにするためです。
休息も大事なのよ?(一週間不眠不休でガチバトルさせた奴)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。