シスコンで吸血鬼で鬼ですが何か?   作:エントさん

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誕生した日に悲しみを


 生まれた。

 

 この日、僕。後の坂木 要(さかき よう)は生まれた。

 

 自我が芽吹いたのは三歳の頃で第一声は「おかえり」だったそうだ。

 

 四歳の時、妹が生まれた。名前は坂木 紗凪(さかき さな)という。

 

 そして今は、僕が九歳で妹、紗凪が五歳だ。

「おにいかま!おにいかま!あしょびましょ!」

「ん?紗凪か、いつも言ってるけど、おにいかまじゃなくてお兄ちゃんって言ってくれないか?」

 そう僕がいつものように言うと紗凪が俯いて、うーんと、唸っている。

 そして、ばっ!と顔を上げるとニコッと、微笑み言った。

「おにいかまはおにいかまです!だからむりです!」

「はぁ、そうか分かった」

 僕がため息をつき肩をガクッと下げる。

 すると、心配した紗凪が顔を覗き込み「おにいかま、だいじょうぶですか?」

「あぁ、大丈夫だよ」

 そう言って僕は紗凪の髪を軽くポンポンした。

 そうすると、紗凪は目を細め気持ちよさそうにする。可愛い奴め!

「あら、良かったわね〜紗凪、おにいかまに遊んでもらって」

 ちょっと、母さん、あなたまでおにいかまって言わないでください。

「母さん、おにいかまって言わないで下さいよ」

「いいじゃない〜、可愛いわよ!おにいかまって!」

「おにいかま!おにいかま!かっちょいい!」

 おいおい、紗凪ちゃんかっちょいいって、百歩譲って可愛いは分らなくなくこともないけどかっちょいいはないよ。

「あぁ!もちろん、紗凪も可愛いわよ〜」

 そう言いながら母さんは紗凪を両手で抱えて俗に言う『たかいたかーい』をした。

「えっへんです!」

 そうすると、紗凪は両手を腰に当てて『えっへん』した。

 

 うん、可愛いよこのやろー

 

 母さんもよほど可愛いのかほっぺをスリスリスリしていた。

「えへへ〜、しゅべしゅべ〜」

 紗凪が太陽のような笑顔で

 

 うん、可愛いカメラ何処あったっけ?

 

 

 僕が10歳になった日、因みに僕の誕生日は8月10日で紗凪の誕生日は8月11日。

 まさかの1日違い、だから明日は紗凪の誕生日をやる。

 

パン!パンパン!

「「「要(おにいかま)!お誕生日おめでとう(ごじゃいます)!」」」

 

「あぁ、みんなありがとう!」

 

 うちの誕生日は家族だけで祝う、というか僕と紗凪は外に出たことが無いので呼ぶ知り合いがいない。

「おにいかま!この、オニキュおいしいよ!」

 もきゅもきゅと、音を立ててお肉を口いっぱい頬張る。                                                                             

「そうか、こっちも美味しいぞ紗凪」

 紗凪は「ほんとー?!」と僕が出した料理も口に入れる。

 まるでリスみたいだなと、僕はクスッと笑う。

「もう、紗凪が可愛いのはわかるけどあなたの誕生日なんだからあなたも食べなさいよ」

「そうだぞ、要、気持ちは凄くわかるがな!」

 ハッハッハッと、父さんは口を大きくして笑うと紗凪も「おとうしゃんお口おおきい〜」と笑う。

「おっと、そうだ。要、夜に俺の部屋に来い。大切な話がある」

「あなた、今日、ついに話すんですね」

「あぁ」

 ふむ、なんの話だろう?また、紗凪や母さんへの惚気だったらすぐ逃げ出そう。

 そう思いながら僕は大好物のメロンを食べる。おいしい。

 

 

 暗い廊下にコンコンと、ノックの音がする。

「父さん、要です。入ってもよろしいですか?」

 ノックの正体は要だった。

 そう、父さんに呼ばれたので紗凪が寝てから来たのだ。

 父さんは夜に来てくれと言った。ウチでは夜というのは、紗凪が眠った今をいうのだ。

「あぁ、入ってくれ」

 ギギギと、古い扉が音を上げながら開いた。

「来たか、要」

「あなた、本当に話すんですね」

 父さんは椅子に座って母さんはその後ろに座っている。

 珍しく二人とも真剣な顔だ。

 僕も流石に少し表情が強張る。

「父さん、話とは何ですか?」

 僕は恐る恐る聞いた。こんな感じで話をするのは初めてだ。

 いや、バージンだ。あれ?なんで言い直したのかな?

 まぁ、それくらい今の僕は緊張している。

「あぁ、お前も、もう10歳だ話しておかなければと思ってな」

「えぇ、そうね」

「実はな要、父さんと母さんはそしてお前と紗凪はーー」

 父さんは少し息をつき、口を開く僕も生唾をゴクリと、飲み込む。

 

 

「人間じゃないんだ!」

「え、知ってますけど」

 

 

 え?なに?まさかそんなことだったのか?

 そんなのとうの昔に気づいてますよ。

「え、えぇ?知ってたのか?!」

「な、なんで?!」

 父さんも母さんもかなり驚いてるけど、この人たち気づいてないのか?

「父さん母さん、気づいてないのかもしれないですが」

「「へ?父さんと母さんなんかしてたか(の)?」」

 わぁ、息ぴったりですね。

「はい、父さんはお風呂に入る時ツノが出てます」

「えぇ!?ほ、本当か?」

「はい、マジです」

 父さんはかなり驚いている。

 いや、あんだけ立派なツノをさnいや、二本見せられたら嫌でも気付きますよ?

「あ〜な〜た〜」

 母さんが顔を強張らせ少し怒っている。

 いや、でも母さんあなたも

「母さんも、感動物の小説を読んでるときにコウモリの羽が丸見えでしたよ」

「ホヘッ?」

 母さんが素っ頓狂な声を上げる。

 いや、この二人マジで気づいてないのかぁ。

 少し心配になるなぁ・・・

「「マジで?」」

 父さんと母さんが改めて聞く、どんだけ信じられないんだ。

「はい、MA★ZI★DE★SU」

 僕も少しふざけてみた。さっきまで真面目に考えてた自分が馬鹿らしくなったのだ。

「差し詰め、父さんが鬼で母さんが吸血鬼か悪魔ってところでしょう。そして、僕と紗凪がハーフ」

 僕は少し呆れた口調で話す。いや、だってそんなのとうの昔それこそ物心ついてすぐ気づきましたよ?

「な、そこまで知られてたら・・・」

「もう話すことはないわよね〜」

 じゃあ、僕は寝よう。明日は朝から紗凪と遊ぶ約束してるし。

「じゃあ、僕はもう寝ますね」

「あ、あぁ、まぁ、詳しいことはまた今度話すな」

「はい、分かりました。父さん母さん、お休みなさい」

 僕は扉を少し出て父さんと母さんにお辞儀をした。

「あぁ、おやすみ」

「おやすみなさ〜い」

 う〜ん、詳しい話とはなんだろう?まぁ、どうでもいいか・・・

 

 

 

 数日後、父さんや母さんの仕事、まぁ、狩りや吸血の仕方、簡単な書類処理を習った。

 

 

 

 それから、また一年経った。

 

 僕には最近悩みがある。それは、退屈である。

 物凄く退屈なんだ。

 いや、紗凪と遊んだり父さんの書類処理を手伝ったり、ちなみに書類とは言っているが正確には書類ではなく漫画である。

 父さんは漫画家という仕事をしているらしい。よくわからないがその影響で僕も漫画に詳しくなっているっぽい。

 

「おにいかま!おにいかま!おとうしゃんとおかあしゃんおそいね!」

「ああ、そうだな。幾ら何でも遅いな。」

 今日は父さん達の帰りが遅いもう家を出て丸1日は立っている。

 いつも、遅くても半日以内に帰ってくるのにだ。

「嫌な予感がする・・・」

「ん?おにいかま?」

 いきなり立ち上がった僕に少し怯えた感じで紗凪がこっちを向く。

「ごめん紗凪、すぐ帰ってくるから!」

「え!?おにいかま!!」

 僕は家を飛び出して一度だけ父さんに教えて貰った道を走った。

「なんだか、なんだか分からないけど」

 物凄く、《不安》だ!

 今までこんなことはなかった。

 僕の頭の中に何故か嫌なイメージばかりが出てくる。

 それを振り払うように僕は走った。

 

 

 走り続けてどのくらい経っただろう。

 途中で雨も降ってきた。

「ハァハァ、父さん母さん!!」

 

 要・・・

 

 !?今、聞こえた。とてもか細く今にも消えそうな声だったけど今のは母さんの声だ。

「母さん!!」

 僕は草の道をかき分けて声の聞こえた方向へ向かう。

 きっとこの時、僕はもう気づいていた。

 

 ザザッ!

 草をかき分けて声のところに行くと、

 

 ゴロゴロと、雷の音が聞こえる。

「父さん・・・母さん・・・」

 

 父さんと母さんがいた。

 

 

 

 

 

 __雨でなく血に濡れた姿で。


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