幸福の女神様と共に(このすばifルート)   作:圏外

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更新遅くなって申し訳ありません。
大学生って思ったより暇が無いんですね……作者理系だし……物理のレポートめんどい。


第7話

「ハッ!」

 

「グエッ」

 

「やっ!とうっ!」

 

「グエッ」

 

「……」

 

「……」

 

「……まぁ、予想はしていましたが……」

 

 今日、新しいメンバーを加えた俺たちは連携の確認という名目で、軽いクエストに来ていた。例によって、いつものカエルである。

 

 なのだが、新しくメンバーに加入したクレアの凄まじさは、俺どころかクリスが支援魔法をかける必要すら感じられない。たった1人でもう20匹ほどのカエルを地に沈めている。

 

「【デコイ】!ハアッ!」

 

 クルセイダーのスキル、【デコイ】で敵の視線を集め、寄ってきたカエルは例外なく一撃で倒す。仮にダメージを食らったところで傷一つつかないだろうとゆんゆんは言っていた。

 

「ふぅ……クリスさん、どうでしょうか?」

 

「……流石は高レベルのクルセイダー、まさに一騎当千の実力ですね……しかもこれまでソロで活動してきたとなると……」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 嬉しそうに礼を言うクレアだが、その実クリスは苦笑いを浮かべている。それはそうだろう、駆け出しのパーティにクレアは明らかにオーバースペックだ。

 

「……つまり、コイツがメンバーに居れば俺は危険を冒す事なく生きていけるという事か?適当に【敵感知】とかを後ろでやって、後は3人に任せて……完璧じゃね?」

 

「何言ってるんですかカズマさん。そのクレアさんを相手にして、トラウマを植え付けるほどに完勝したのは貴方ですよ?やり方は最低ですが……」

 

 本当に、どうして俺がクレアに勝てたのか不思議でしょうがない。適当な予想を立てるなら、クレアは搦め手に弱いタイプなのだろうか?

 

「それにしても、連携がどうとか言ってた割には全部1人で倒してるよなあいつ。やっぱあいつ1人で良いんじゃ……」

 

「え、あの、もしかして私を捨てたりしないですよね⁉︎確かにまだクレアさんには及びませんが、これから上級魔法も覚えて、えと、冒険以外でもなんでも頑張りますので!本当に捨てないで下さいね⁉︎」

 

 ゆんゆんは顔を青くして詰め寄ってくる。最近、ゆんゆんは能力は高いがポンコツなタイプなのではないかと、不安になることが多い。つーか重い。

 

「いや、仮に捨てられるとしたら俺だろ。もう前衛っていう役割さえ無くなってるし……まぁでも、クリスがパーティメンバーを減らす事を許すとも思えんけどな」

 

「そ、そうですよね……クリスさんが仲間を見捨てるわけないですもんね……」

 

 ほっと息を吐くゆんゆんだが、実際この状況だとマジで俺たちは要らない子だし、正直クレアはソロで活動した方が良い気がする。連携とは何だったのか。

 

 だが、クレアがこのパーティから離れることはないだろう。何故なら……

 

「クリスさん!どうですか!」

 

「……流石クレアさん、頼りになりますね!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 このザマだからだ。こんな具合に矢鱈とクリスに話しかけては、苦笑いのクリスに褒めてもらい、だらしない笑顔を見せている。

 こいつ、俺を克服して強い人間になるとか抜かしておきながら、クリスに近づく事目的でパーティに入ってきたことがバレバレだ。

 

「……おい、もうカエルは良いだろ。さっさと帰ろうぜ」

 

「……何を言っている。未だジャイアントトード被害に苦しむ農家の方々は居るのだぞ?ここで1匹でも多く……」

 

「ま、まあまあ。この一帯のジャイアントトードは粗方狩ったと思いますし、そろそろギルドに戻りましょう?」

 

「……クリスさんがそう言うなら」

 

 クリスに諭され、俺を睨むクレア。

 ……クリスの狂信者なのは別に良いが、いちいちムカつく白スーツだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カエルの討伐を終え、街へ帰る途中に大きな鐘の音と共に聞き慣れた受付嬢の声が響き渡る。

 

 

『緊急クエスト! 緊急クエスト! 街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください! 繰り返します。街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』

 

 緊急クエスト。

 

 その名に違わず随分急だが、つまりはアレか。この街に危険が迫っているから俺たちでなんとかしろ、と。そういう事なのか。

 

 某ハンティングゲームのオンラインをやり込んでいた俺からしたら燃えるイベントではあるが、マジでラオ○ャンロンとかシェンガ○レンとかレベルのモンスターが街に攻めてきたりしたらさっさと逃げないと死ぬので内心焦りまくっている。

 あいつらって、何であんな小さい剣でペチペチやられただけで死ぬんだろうね。撃○槍喰らっても即死しないくせに。

 

「なあゆんゆん、緊急クエストってなんだ?モンスターの群れでも攻めて来たのか?」

 

「あ、そういう類のクエストではなく、多分季節的にキャベツの収穫かと……」

 

「……は?」

 

 キャベツ?キャベツって言うと……キャベツか。

 

「なぁ、キャベツって言うと、あの緑色でシャキシャキした千切りとかにするアレか?」

 

「アレですけど、それがどうしたんですか?」

 

 ゆんゆんは『何言ってんだこいつ?』って感じの目でこちらを見ている。クレアも同様だ。

 

「何だ、サトウカズマは知らんのか?こんなに稼ぎのいい仕事はないぞ。

 ……これで大量のキャベツを収穫すればクリスさんに褒めてもらえるかも……ふふふ……」

 

「いやキャベツ如きでそんな……つーかいくら稼ぎが良いからってキャベツの収穫なんざ冒険者の仕事じゃ……」

 

「カズマさん、カズマさん」

 

 するとクリスが俺に耳打ちをする。

 

「あー……カズマさんは知らないのでしょうが、この世界のキャベツはですね……

 いえ、実際に見てもらった方が早いですか。まずは冒険者ギルドへ急ぎましょう」

 

 

 

 

 クリスの言葉に従って冒険者ギルドへやって来ると、ギルド内はいつも以上の熱気に包まれていた。

 

「皆さん、突然のお呼び出しすいません!もうすでに気付いている方もいるとは思いますが、キャベツです!今年もキャベツの収穫時期がやってまいりました!」

 

 クリスの言葉を遮るように受付嬢が声を張る。その声は明るく、嬉しそうにしているのが良く分かる。周りを見ると、集まってきた冒険者たちもかなりテンションが上がっているようだ。

 

「キャベツ一玉の収穫につき1万エリスです!すでに街中の住民は家に避難して頂いております。では皆さん、できるだけ多くのキャベツを捕まえ、ここに収めてください!くれぐれもキャベツに逆襲されて怪我をしない様お願い致します!」

 

 ……キャベツに、逆襲される、だと?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何じゃあこりゃああああああ!?」

 

 街の正門を出た俺たちの前には、もはや緑の壁としか言いようがないほどの大量の空飛ぶキャベツの群れ。よく見るとそのキャベツには羽が生えており、更には目まで付いている。

 

「この世界のキャベツは空を飛ぶんです。その羽で世界を渡り、大量の経験値をその身に蓄え味が濃縮したキャベツはどこかの秘境で息を引き取ると言われていますが、偶然にも食べ頃になるとこの街を通るんですよ。経験値が詰まっている食べ物は高価ですから、あんなにいっぱいいるキャベツでも一玉1万エリス以上で取引されるんです」

 

「んなアホな……」

 

「おい、来たぞ!」

 

 大量のキャベツが街に襲来する。アホみたいな光景だが、一玉1万エリスと言うのは破格の値段だ。クレアの言う通り、こんな楽な仕事は……

 

「ぐはぁ!」

 

「ダ、ダストー⁉︎」

 

「姿勢を低くしろ!キャベツが顔に当たって即死しても知らんぞ!」

 

 全然楽じゃなかった。

 

「確かに、あのスピードで2、3キロはある大玉のキャベツが突進してきたら、打ち所によっては死ぬよな……」

 

「【ヒール】!大丈夫ですかダストさん!」

 

「よっしゃあ!クリス様が居れば怪我なんて怖くないぜ!」

 

 クリスは既に後方支援を決め込んでいるようだ。街のプリーストと共にキャベツ狩りに行く冒険者に俊敏と耐久を上げる支援魔法をかけたり、傷ついた冒険者に回復魔法をかけたりしている。

 

「【スピーダー】【ディフェンダー】!はい、次の方どうぞ!」

 

「クリス様!支援魔法が追いつきません!ど、どうすれば……」

 

「慌てないで!順番に対処して、あまりに遅れるようだったら私の方に回して!」

 

「は、はい!」

 

 ……クリスがつい1ヶ月ほど前に冒険者登録したことは街のみんな知ってるはずなんだが、完全にプリーストたちのリーダーをやっている。これも女神のなせる技か……

 

「あの、カズマさん。私たちも行きましょう!早くしないとキャベツ無くなっちゃいますよ!」

 

「いや、でもなぁ……」

 

「もうクレアさんは前線に出ているんですよ!私たちも早く行かないと!」

 

 ゆんゆんが指差す先には、クレアが丘の上に立っていた。その姿は威風堂々と、まさに人民を守る騎士と言った風貌だ。実際は欲望丸出しでキャベツを収穫しているだけだが。

 

「【デコイ】」

 

 クレアがそう呟くと、クレアの近くのキャベツ達が一斉にクレアの方を向き、進行方向を変えてクレアに突進していった。

 

「【心眼】」

 

 しかし、一玉たりとて彼女の身体を捉えることはない。クレアが発動したスキル【心眼】によって全てが見切られ、更に高レベルクルセイダーの身体能力が避けることを可能にしている。

 

 そして、クレアはキャベツ達の位置を確認すると、剣を構えて、

 

「【千景斬】!」

 

 俺の目には、クレアが叫んだ途端に大量のキャベツが一斉に落ちた、それだけにしか見えなかった。羽を切られて地面に転がったキャベツを冒険者達が回収し、クレアは他のキャベツを狩りに向かう。

 

「……あ、アレって……」

 

「千景斬ですね。クルセイダーの範囲攻撃スキルだったはずです。それにしても抜刀したタイミングすら分からないとは……やっぱりクレアさんは強いですね……同じ上級職とはいえ、さすがにレベルの違いを感じます」

 

 キャベツ相手とはいえ、これが高レベル上級職の本気か。相応に高いステータスと、強力なスキル。それを上手く使いこなして敵を殲滅する様はまるで英雄譚の主人公のようだ。

 

 ……もし、あいつがトラウマを克服して恨みを晴らさんと俺に襲いかかってきたら……

 

「……大丈夫ですか?カズマさん、びっくりするほど顔色悪いですけど」

 

「い、いや?ビビってねーし。あんな白スーツちっとも怖くねーし……怖くねーし……」

 

「……」

 

 ゆんゆんの失望の目線が痛い。でもしょうがないじゃん……

 

「ほら、私たちも行きましょう!キャベツですよキャベツ!」

 

「あ、ああ……」

 

 ゆんゆんの呼びかけで歩き出す。こういう場面ではヒロインが主人公を引っ張るものだが、ゆんゆんは手を握ってはくれないらしい。まぁゆんゆんって、手を握ったらもう恋人って思ってそうだしな……

 

 ……さて、まずは支援魔法かけてもらいに行かないと……

 

 




このあとめちゃくちゃ収穫した(特に見せ場が無いのでカット)

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