幸福の女神様と共に(このすばifルート)   作:圏外

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お気に入り1000件突破、総合評価1500pt突破、評価平均8.21……あれ、これ夢じゃないよね?明日起きたら転生の間とかそんなこと無いよね?
皆さん応援ありがとうございます!これからもこの作品を宜しくお願い致します!


第5話

「【クリエイトウォーター】」

 

 俺が唱えると、掌から水が湧き出す。

 チョロチョロと情けない音を立てながら、コップをいっぱいにした所で止まった。

 

 前回のクエストでジャイアントトードを5匹討伐する時、その全てのトドメを刺した俺はレベルが7まで上がっていた。

 

 この世界では、モンスターを倒すと経験値が貰えて、経験値が溜まったらレベルが上がるというゲームのような世界観になっている。

 

 クリス曰く、経験値とはモンスターの魂の欠片で、それを倒した俺たちが吸収しているらしい。魂が欠片を吸収して強くなるので肉体が変わらなくても強くなれるのだそうだ。

 因みに肉体労働でも、魂が強くなるとか何とかで経験値は貰える。実際に一ヶ月の労働でレベルは上がっている。たったの1だが。

 

「……ぷはぁ。良い感じに冷たくてうまいのな。自分で出した水ってのがアレだけど……」

 

 どうやら俺がレベルを上げると、5ポイントずつスキルポイントがもらえる仕組みらしい。つまりは最初に使った15ポイントを引いて、計25ポイントが残っていたので、俺は初級魔法スキルを取得した。初級魔法スキルは一つで5属性の低威力の魔法が一気に覚えられる。

 

 初級魔法を覚える際に使ったポイントは20ポイントなのだが、ゆんゆん曰く魔法使い職の方々は習得するのに10ポイントしか必要ないらしい。

 因みに、殺傷力が欠片もない初級魔法を覚えるくらいなら、同じポイントで取得できる各属性の中級魔法から取得するのが一般的なのだそうだ。

 

「【ティンダー】」

 

 指先からマッチのような火がボッ、と小さな音を出して灯る。モンスター相手にとはお世辞にも言えないが、非常時の灯りとしては使えそうだ。初級魔法も結構使いどころがありそうなもんだけどなぁ……

 

 

 

「初級魔法て……」

 

「何だよ、なんか文句あんのか?」

 

 こいつはダスト、街のチンピラだ。剣士2射手1魔法使い1という模範的なパーティの剣士で、まあよくあるモブである。因みに俺に剣術スキルを教えてくれた張本人だ。

 

 案外ノリの良い奴で、剣術スキルを教えてくれた事もあり仲良くしている。今は街の隠れたスポットを案内してくれるというので、男2人哀しく散歩しているところだ。

 

「初級魔法取るくらいなら盗賊スキル取れば良いのによぉ。つーかカズマお前、盗賊にクラスチェンジする気じゃなかったのか?」

 

「良いんだよコレで。色んなスキル覚えてオールマイティにこなせるようになった方が、全てのスキルを覚えられる冒険者の唯一の利点を活かせるってもんだろ?」

 

「ほー、知力ステータスが高いやつの考えることはよーわからん」

 

「お前な……冒険者という職の強みを活かした戦法を考えないと、あの2人について行く意味すら無くなるし。これでも色々考えたんだぜ?」

 

 ごめんなさい、ぶっちゃけ魔法を使ってみたかっただけなんです。

 

「それだよ!カズマ、お前あのおっぱいのアークウィザードどこで見つけたんだ?あんなのがいるってわかってりゃ俺らのパーティに誘ってたのに」

 

「おっぱいのアークウィザードて……普通に酒場に居たぞ。一ヶ月くらい前からずっと」

 

「マジで⁉︎でも募集の掲示板にはそんな奴居なかったはずだぞ?」

 

「……受付の説明ですら、数週間ぶりの会話だったから緊張してて聞いてなかったんだと。

 だから募集掲示板を今まで名指しの依頼をするための掲示板だって勘違いしてたらしい」

 

「……うわぁ」

 

 気持ちはわかる。すげー分かる。俺とクリスもその話を聞いたときは心にクるものがあった。

 

「じゃあ、クリス様は?お前はあのクリス様を一体どこでゲットしたんだ答えろカズマァ!」

 

 ダストは必死の形相で俺の胸元を掴む。マジで必死だ。しかもクリス様て……

 

「ちょ、掴みかかるな暑苦しい!てかクリス様って何だよ!」

 

「お前知らねぇのか?クリス様はなぁ、俺らみたいな回復役がいないパーティが傷を負って帰ってきたときは無償でヒールかけてくれるんだよ!クリス様に治してもらいたくてわざと擦り傷付けて帰ってくるバカもいるくらいだ!もうクリス様って言やぁ『アクセル一の女神様』で通ってんだぜ!」

 

「ま、マジでか……まあクリスは女神だからな。お前の言いたいこともわかる」

 

「チッ‼︎これ見よがしにクリス様のこと呼び捨てにしやがって……お前いつかモテない冒険者に殺されないように気を付けろよ。お前を羨む奴は山ほど居るんだからな」

 

 怖えよ!気持ちはめっちゃわかるけど!

 

 と言うか、名前を変えてもやっぱり女神って扱われてんだな……唯のあだ名といえ、流石はクリスだ。

 

「ははは……肝に銘じとくよ……」

 

「ったく……あ、女神と言えばさ、今日「おい、其処の2人。聞きたいことがある」ん?」

 

 声をした方を向くと、ピシッとした白スーツを着込んだ女がいた。

 

 歳は20代前半と言ったところか……?胸はゆんゆんより小さいが、手脚がスラッとしたモデル体型の美人だ。いやそれよりも……

 

「……おめぇ、見ない顔だが、その剣。王都の冒険者か?何の用だ」

 

 ……俺やダストが持っている剣とは格が違う、鞘に金細工があしらわれた高そうな、それでいて何かしらのオーラさえ感じる大剣。

 まさに名刀って感じだ。一体いくらするのだろうか。

 

「別に貴様らに用があるわけじゃない。人を探しているんだ。それだけ聞ければいい」

 

 ……それにしても偉そうだなこの白スーツ。同じことをダストも感じているらしく、イラついてるのが目に見てわかる。

 この白スーツ、交渉と言うのを何もわかっていない。信用という言葉をまるで分かっていない。

 

「……んで?お前みたいなヤツが誰を探してるって?」

 

 

 

 

 

「……女神と呼ばれているアークプリーストの少女だ。聞き憶えはないか?」

 

 

 

 

 

 ……なに?

 

「はぁ?なにを「悪いけど聞いたこと無いな。他をあたってくれ」

 

 ダストの言葉を俺が遮る。

 

「……そうか、感謝する」

 

 そう言って白スーツは去っていった。

 

「……おい、カズマ」

 

「はっ、大方クリスの評判を聞いて来たんだろうが、あんな奴にウチの敏腕アークプリーストを渡してたまるか。あんな奴と一緒にいたら、クリスの女神性が穢れちまう」

 

 あんないけ好かない白スーツにクリスは渡さん。と言うか、俺が転生特典として連れてきたんだ。つまりクリスは俺のもんだ。

 

「でもよぉ、アイツが他の冒険者に話を聞くかも知れねぇだろ?どうすんだよ」

 

「あんな態度の奴にクリスを売る男が居るとは思えんし、モデル体型の美人が嫌な奴だったら女ウケも悪いだろ。誰も話さねぇよ」

 

「……確かに、それもそうだな」

 

 そう言って悪い笑みを浮かべるダスト。人に嫌われて交渉ごとができると思うなよ白スーツ。

 

「……だけど直接会われると厄介だ。確かクリスは今ゆんゆんと買い物に行ってるから、今からクリスを探し「ほう、クリスと言うのか。いい事を聞いた」ッ⁉︎」

 

 振り返るとそこには、さっきの白スーツがいた。

 

「あんな不自然な態度で私を欺けると思うなよ。私は何もそのクリスと言う少女に危害を加えようということじゃない。さっさと居場所を教えろ」

 

「……てめぇ、なんでそこにいる。さっきあっちの方に行った筈だろ」

 

 驚きつつも、睨みながら問うダストに対し、白スーツは自慢げに革靴で地面を叩く。硬そうな外面とは裏腹に、革靴特有の硬い音は一切聞こえてこない。

 

「フッ、教えてやろう。この靴だよ。この靴は足音を消してくれるんだ。モンスターの背後に回ることもできるし、お前らみたいな奴を騙すこともできる。良いだろう?」

 

 この野郎……!

 

「ま、どうせ正攻法じゃ教えてくれんだろうしな。お前も冒険者の端くれなら、(コレ)に全てを委ねようじゃないか」

 

 ……………………ほぉ、面白い。

 

「私と勝負をしよう。私が勝てば少女の居場所を教えて貰おう。もし君が勝ったら……そうだな、私の有り金全額でどうだ?ココに300万は有るが?」

 

「……乗った」

 

「おいカズマ⁉︎何も相手にする事は!」

 

「だけどここじゃ都合が悪い。場所を変えるぞ。ダスト、お前は審判を頼む」

 

「カズマ‼︎」

 

「ほう、まあ良いだろう。ちょうど良いハンデだ」

 

 ……見てろ傲慢クソ白スーツ。大恥かかせてやる!

 

 

 

 

 

 《アクセルの街・路地裏》

 

 ここはギルドの近くにある裏道。道幅はだいたい5メートル程度で路地裏にしては結構広いが、暗く日が射さないのが特徴だ。

 

「ここだ。文句は無いだろ?」

 

「ああ、文句は無いさ。それにしても、君たちみたいなチンピラに相応しい場所だな」

 

「この野郎……!バカにしやがって!」

 

「よせダスト。挑発に乗るな」

 

 憤るダストを俺が諌めると、白スーツは感心したように息を漏らす。

 

「……ほう、見た目よりは頭が回るようだな」

 

 ……チッ、いちいちムカつく白スーツだ。

 

 こいつが挑発している理由は単純、真っ向勝負に持ち込むためだ。

 あの剣といい挑発といい、コイツは戦士職。それも上級職だろう。そうでなければここまでの自信は無い。そんな白スーツは真っ向勝負に持ち込めば絶対に勝てると思っている事だろう。

 

 だが、コイツはアホだ。いくら剣を持っているからといって、俺の言う通りにノコノコこんな路地裏まで付いてくるのはアホとしか言いようが無いし、真っ向勝負なんてやるわけが無い。

 

(例えばここで数十人の仲間を連れて来るとか考えないのか?コイツ)

 

 と言うか、着てる高そうな白スーツやあの大剣……金持ちのボンボンの可能性もありうる。

 

「……ルールを決めよう。一撃を喰らうか、武器を失った方が負け。勿論逃げたりしても負けだ、コレでいいよな?」

 

「問題無い。さあ、始めようか……!」

 

 そう言って剣を抜こうとする白スーツに、俺は待ったをかける。

 

「待て」

 

「……何だ?まだ何かあるのか?」

 

 コレは決闘であって、殺し合いじゃ無い。それにコイツは俺にクリスの居場所を聞くという目的があり、俺に致命傷を与えることもできない。

 

 いくら強いと言っても、手加減するしか無い状況にあるのだ。それは白スーツも良く分かっているはず、つまり奴は手加減前提で俺と戦うという事。まあ要するに……

 

「済まんが、お前のクラスとレベルを教えて欲しい。殺したりしたら不味いからな……お前が教えてくれれば、俺のも教えてやるよ」

 

「チッ、舐めた口を……まあ良いだろう」

 

 俺に超有利なことでも、こいつは余裕で喋る。

 そして喋ってる時は俺を舐めて、下に見ているはずなのだ。よって、警戒心が薄れる事になる。

 

「私はクルセイダー、レベルは36だ」

 

「なっ……⁉︎」

 

 ハァ⁉︎高っ⁉︎普通こういうイベントってレベル15くらいの敵じゃねーのか⁉︎物語序盤で出てきて良いレベルじゃねーぞ⁉︎アホか!

 

「そ、そうなのか……」

 

「フッ、怖気付いたか?今すぐ居場所を喋るんなら見逃してやっても良いぞ?」

 

「お、怖気付いてねーし。俺のクラスは【スティール】ッッ!!」

 

 突き出した手から閃光が迸り、辺りを包み込む。良し、ひとまず成功の様だ。

 

 奇襲、成功。白スーツもダストもポカンとしてるし、コレでコイツの剣を奪って俺の勝ちでもよし、財布を盗んで逃げるもよしだ。

 

 さーて俺が盗んだのは……?

 

「な、貴様ッ!騙し討ちなど、恥を知れ……?っ⁉︎」

 

 怒って剣を抜くかと思いきや、顔を赤くして股間を押さえる白スーツ。そう、俺が盗んだのは……

 

「なんだよ、白スーツ着てるくせに黒か。旅なんてしてる奴が黒下着なんて着るなよ恥を知れ……ぷっ」

 

「き、貴様ァァアアア!!!!」

 

「おっと待ちな【クリエイト・ウォーター】ァ‼︎‼︎」

 

「ッ⁉︎初級魔法だと⁉︎」

 

 白スーツは反射的に飛び退く。俺の全魔力の半分ほどを込め、大音量で唱えた【クリエイト・ウォーター】は、俺と白スーツの間の地面をビチョビチョに濡らした。

 

「そしてすかさず【フリーズ】ッ‼︎‼︎」

 

「また初級魔法、何故盗賊のお前が……まさかお前!基本職の冒険者なのか⁉︎」

 

「ククク、ようやく気付いたか……そうさ、俺は冒険者だ。そしてお前は!もう既に『詰んだ』んだよ!」

 

「何だと⁉︎」

 

「な、何言ってんだカズマ?」

 

 しょうがない、アホのダストにもわかるように説明してやろう。

 

 まず今の状況はこうだ。俺は白スーツの黒下着を盗み、地面に水を撒いてそれを凍らせた。地面には氷が張っていて、彼女は革靴を履いている。あの革靴はどう見ても足音消しの特殊能力特化みたいで走りにくそうだし、それはそれは良く滑る事だろう……ククク。

 

「これでお前がこっちに来るより早く俺はスティールを唱える事ができる……初めに言って置くと、俺は幸運が半端じゃなく高い。スティールを失敗する事などまず無いと思って貰おう」

 

「……?何だ、スティールごときで何を言っているんだ!と言うかぱんつ返せ‼︎」

 

「まだ分からないのかポンコツ白スーツ」

 

「誰がポンコツだ!」

 

「こういう事だよ!おおーい‼︎‼︎お前らぁー‼︎‼︎俺はここだぞー‼︎‼︎」

 

「はぁっ⁉︎」

 

 

 

 そしてその声をトリガーに、今まで誰も居なかった路地裏が急にガヤガヤとざわめき出した。

 

「お、何だここか」

「おいカズマ、街中での魔法は禁止だぞ。何やってんだこんなとこで」

「ケンカか?相手のスーツのねーちゃんは誰だよ、見ねぇ面だが」

「また女ふっかけたのか?くたばれ畜生」

 

 先ほど大音量で初級魔法を唱えたこともあり、ギルドの近くであるこの路地裏に、今まで酒場でグダグダしてた冒険者たちが集まってくる。

 

 今の時点でノーパンである白スーツは顔を赤くしモジモジしている。とんでもなく恥ずかしそうだ。まぁ当たり前だろう、こんな往来で体のラインが出るスーツを着てノーパンなんて明らかに痴女だ。

 

「お、お前、一体何を……」

 

「俺は、男女平等の精神の元に行動し、女だろうがドロップキックを喰らわせられる男……

 もしここで俺がスティールを発動し、『幸運にも』お前のズボンを盗めたとしたらどぉーなる事かなぁ⁉︎」

 

「はぁ⁉︎ふ、ふざけるのも良い加減にしろ!そ、そんな事をしたら、どうなるか分かってるのか⁉︎」

 

「なーに言ってんだぁ?この決闘をふっかけてきたのはお前だろ?俺は高レベル上級職の奴に『剣を見せつけられ』て『仕方なく』決闘を受け、『身の危険を感じて』反撃を試みた。そうだったよなぁダストォ!審判のお前なら勿論『公正公平に』判断してくれるよなぁ⁉︎」

 

「な、何だと……?」

 

 急に顔を青くする白スーツ。俺の考えが伝わったのか、ダストは途轍もなく良い笑顔でこう答えた。

 

「確かにそうだぜカズマ!お前の言葉に一切の嘘は無い!」

 

「ほれ、審判もこう言ってる事だし間違いは無いよなぁ?あれれ〜?どうしたのかな白スーツちゃぁん?【スティール】ッ‼︎」

 

 閃光。チッ、今回盗んだのはネクタイだった。次々っと。

 

「き、貴様ァ!卑怯なマネを」

 

「【スティール】ッ‼︎お、当たりだ」

 

「⁉︎ま、まて!お前ふざけるのも……ぶはっ⁉︎」

 

 錯乱し、俺を捉えようとこちらに走ってくるは良いが、地面に張った氷に足を滑らせて転んでしまう。計画通りだ。

 今回盗んだのはベルトだった。ぴちっとしたスーツと言えど、抑えていないとずり落ちそうになっている。

 

 そしてようやく状況を理解したのか、冒険者たちが騒ぎ出した。「良いぞカズマ」だの「まさに外道」だの「そこに痺れる憧れるゥ〜」だのと言った下衆な声がそこらじゅうから聞こえてくる。それを聞いた白スーツは顔面蒼白で大層慌てている様子。俺の策に翻弄され、地に伏して慌てる高レベルの女……

 

 やっべ、楽しくなってきた。止まんねぇなコレ。

 

「わ、分かった!私の負けで良い!降参だ!金はやるから、早く私の衣服を返し」

 

「ンッン〜〜?なぁにぃ〜?聞こえんなぁ〜?『申し訳ございませんカズマ様。二度と逆らいませんので卑しい私めに衣服を恵んで下さい』だろうが!【スティール】‼︎」

 

 あら、大当たり。白スーツの財布だ。これで降参を受け入れる理由もなくなったな。

 

「おいふざけるな!お前がやってる事をよく考えてみろ!普通に犯罪だぞ!」

 

「だからふっかけてきたのはお前だろ?『高レベルのクルセイダー』が『低レベルの冒険者』に『決闘をしろ』と迫ったんだろ?誰が悪いって?もう一度よく考えてみろや」

 

「ぐっ……こ、この野郎……!うぐぐ……」

 

「な、なぁカズマ。もうその辺で……」

 

「ヒャーッハッハッハァ!【スティール】!」

 

 おっと、ご自慢の革靴か!金欠の俺にはありがたい、後で売っぱらって酒代に当てることにしよう。サイズ小さくて入んないし。

 

「ヒッ……も、もう許して!謝るから!」

 

「あっれれ〜?おっかしいぞ〜?このおんなのひと、さっきぼくがいったこともうわすれてるなぁ?【スティール】ッ‼︎」

 

 チッ、耳飾りか。ハズレだな。

 

「ヒィィ‼︎も、申し訳ございませんカズマ様!二度と逆らいませんので、その、卑しい私めの」

 

「おっと時間切れ。【スティール】‼︎」

 

 お、ジャケットか。上を剥くのも現実味を帯びてきたな。

 

「申し訳ございませんカズマ様ァ!卑しい私めに衣服を恵んで下さいィィイ!」

 

「えっ?なんだって?」

 

「おいカズマ、もう止めようぜ。流石に不憫になってきたんだが……」

 

「何言ってんだダスト!ここからが本番じゃねぇか!見てみろ、もうじき上か下が剥けるんだぜ?それでも男かよ!【スティール】‼︎」

 

 チィッ!靴下かよ!靴下は履いたままの方がエロいってのに!

 

「ヒグッ……エグッ……も、もう許して……何でもするから……お願いしますぅ……」

 

「フハハハハ!そろそろ本命行ってやるぜ野郎共ぉ!おい何黙ってんだァ⁉︎しょーがねぇな!俺が大歓声を巻き起こしてやるよ!【スティー

「カズマさん?」る?」

 

 正気に戻り、もはや誰も声を上げない空間で後ろを振り返ると、そこには能面のような笑みを貼り付けたクリスが居た。

 

 ゆんゆんは居ないな、さすがに置いてきたのかな?とか現実逃避をしていると、クリスが俺の肩を万力の様な力で掴み、こう言った。

 

「事情は後でじっくりと聞きますから、まずはその衣類を持ち主に返して下さいね?」

 

 ……拝啓、異世界のお母様。

 

 あなたの息子は、二度めの人生を終えた様です。

 

 めんご。




割と知らない人が多い様ですので言っておきますと、白スーツの彼女は原作でアイリスのお付きの人をやってたクレアさんです。
このまま行くにしても流れを変えるにしても、彼女がダクネス枠です。
因みにこのままだとカズマのことがトラウマになってしまいます。

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