アイツ"ら"の愛は重い?   作:因幡の白ウサギ

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タイトルに深い意味は無いです。ニンスレ要素も殆ど無くて実際安心。
ところで全国の皆さんはvivid18巻を買いました?私は限定版目当てにアニメイトとゲーマーズをハシゴする羽目になりました。くそう、でも買っちゃうビクンビクン。


辞世の句でも読んでおけ

「闇レベル4。いやー、いい湯だった」

 

「風レベル7。温泉って聞くと自宅の湯船より違う特別な気がしますよね。例え入浴剤とかで効能が同じだとしても」

 

「光レベル9。それ、家に喧嘩売ってる?」

 

「地レベル12。アインハルトさん流のお茶目なジョークだよ、きっと」

 

「闇レベル2。流して地レベル5。いきなりなんて事言うんだアインハルトお前……」

 

「風レベル6。ジョークですよ。覇王ジョークです」

 

「闇レベル7。全く笑えなかったよ。ブラックすぎない?」

 

「だよねー。ところでシュウさん。ヲー……ラーの翼神竜って光レベル13扱いでしたっけ?」

 

「そう。オベリスクは地のレベル13、オシリスは風、球体ラーが闇で、ホルアクはジョーカーだ」

 

「じゃあ光レベル8で流してから三幻神出しますね」

 

「うげっ……」

 

「くっ、私のホルアクティだけでは対抗ができない……!」

 

「元のゲーム的にはそれで呼べるのにねー」

 

 

 

「…………なに、やってるの?」

 

 目の前で繰り広げられている謎の光景に、なのははただ困惑するばかりだった。

 

 シュウ、アインハルト、ヴィヴィオ、ルーテシアの4人は小さなテーブルで遊戯王カードを片手に会話しながら何かしていた。

 それだけならデュエルしているように取れるが、しかし4人の真ん中に山のように積まれたモンスターカードがそれを否定していた。普通、遊戯王ではカードがバラバラに、しかもモンスターカードだけが山になって積まれることは無い。

 

「これですか?大富豪です。トランプゲームの」

 

「ああ、うん。そっかぁ……大富豪かぁ……えっ?」

 

 なるほど確かに、言われてみれば先程まで見ていた動きは確かに大富豪と非常に良く似ていた。さも当然のように遊戯王カードで行っていなければ、それは疑いようもなかっただろう。

 

「なんで遊戯王カード?普通にトランプでやれば良いのに」

 

「全員忘れてました。なので急遽かき集めたカードで代用してるんです」

 

「ええ……?」

 

 それじゃあお前達、まさか遊戯王カードは持ってるのにトランプを忘れるとかいう良く分からない事態になってんの?

 なのはは内心でそう思った。

 

 フェイトやはやて辺りなら「デュエリストが己の魂たるデッキを持ってるのは当然」とか言って特に大きな反応はしないのだろうが、なのはの脳内はまだそこまで汚染が進んでいない。

 つまりは極めて冷静に、そして客観的に、娘を含めた4人の汚染度を測ることができた。できてしまっていた。

 

「あー……まあ、その、程々にね。明日もあるし」

 

「ええ、そのつもりです」

 

 マルチタスクによる超高速思考回転の末に出したなのはの判断は撤退。

 

 いいじゃん、別に悪い事はしてないんだから。臨機応変に遊戯王カードをトランプにしてるだけだし。

 それが脳内会議で出た結論であった。

 

 

 高町なのは、現在XX(ピー)歳。娘が妙な方向に進化している事が最近の悩みだ。

 

 

 

 辞世の句でも読んでおけ

 

 

 

 誰にも言ったことはないが、俺は宿先で枕が変わると眠れない。微睡むことも無く、一睡も出来ないのだ。常に目がギンギンに冴えていると言っていい。

 理由は分からないが、多分体質なんだろう。この体質の所為で皆が寝静まった後に1人で起き上がって窓からの風景を夜が明けるまで見ているハメになったりした事が何度かあった。そして、大体退屈と空腹で死にそうになる。

 

 こういう時、俺は外に散歩がてらランニングしに出る事にしている。そして増した空腹感に悶えるまでがテンプレだ。

 

(…………しかし珍しい)

 

 さて、今の状況を簡単に説明しよう。

 現在時刻は午前2時を超えたところ。俺の右半身の方にはアインハルトが、左半身の方にはヴィヴィオが、それぞれ陣取っている。けれど珍しく2人は今俺に背を向けて寝ていた。明日は雨かな?

 

 あの後、結局俺は両脇に2人を抱えて眠る事になった。もう慣れてしまったのか、こちらに見向きもしないで盛り上がるリオ達が羨ましかった。待って、俺もそっちで盛り上がりたい。

 ……というかだな。アインハルトはともかくとして、ヴィヴィオは友人からシカトされてて良いのか?

 

 消灯時の体勢はべったりというか、ユーカリの木にしがみつくコアラのような格好だったのだが、今は俺に背を向けて横向きの体育座りみたいな姿勢をしている。しかも2人揃ってほぼ同じ姿勢で。

 

 俺は静かに立ち上がると、寝ている皆を起こさないようにゆっくりと部屋を出た。

 

「眠れないみたいだね」

 

 そして直後に壁に背を預けたフェイトさんとエンカウントした。おかしいな、まばたきするまでは誰も居なかった筈なんだが。

 

「ええ、少しだけ」

 

「ならちょっと歩かない?」

 

 フェイトさんのその誘いを断る理由も無い。俺はその誘いに頷いて、歩き出したフェイトさんの後を追う。

 

「フェイトさんは如何してこの時間まで?」

 

「職業病って奴かな。この時間になっても全く眠くならないんだ。普段は仕事してるからね」

 

「この時間まで?」

 

「この時間まで」

 

 ……管理局の労働体制はどうなっているんだろう。俺の想像よりブラックなのか、それともフェイトさんが働き過ぎているだけなのか。その判断は俺には出来ない。

 

「なのはさんは?」

 

「もう寝てる。この草木も眠るウシミツ・アワーに今起きているのは、多分私とシュウ君くらいじゃないかな?」

 

「明日……今日?もありますからね」

 

「この時間帯だと、その辺りの区別が曖昧になるよね」

 

 この『ホテルアルピーノ』がホテルと銘打っているからか、館内には売店や自販機なんかと共に待合室のようなスペースが用意されている。フェイトさんは一つの自販機の前で足を止めると、ポケットから幾らかの小銭を出して突っ込んでいた。そして缶飲料を2つ取り出すと、俺の隣に座って一つをこちらに渡してくる。

 

「あ、どーも……コーヒー?」

 

「この際だし、完徹しちゃおうかなって」

 

「俺は構いませんけど……フェイトさんはいつもの試合があるんじゃないんですか?」

 

「一徹くらいなら局員は誰でも日常的にやってる事だし、それに、眠気程度で動きが鈍ってたら管理局ではやっていけないんだよ?」

 

 …………聞かなかった事にしよう。俺は何も聞いていなかった。管理局は闇なんて無いクリーンな組織、いいね?

 

「ちなみにだけど、管理局でエースと呼ばれてる人達は皆が突然のバイク事故程度じゃ傷一つ付かない頑丈さがあるんだよ。ぶつける側でも、ぶつけられる側でもね」

 

「あんた達はターミネーターか何かですか?」

 

「あながち間違いでもないかな。私はターミネーターじゃなくてコーディネーターだけど」

 

「あー……そうでしたね、あなたコーディネーターでした」

 

 しかも超スーパーすげぇどすばい奴。そして今はどうでもいいが、この人はマジで質量を持った残像を使える。使うと少しずつバリアジャケット(装甲)が脱げていくという原作再現もバッチリで、大きなお友達もニッコリな技なんだとか。フェイトさんは一体何を目指しているんだ……?

 

「ところで、明日のメンバー分けの表って持ってます?持ってたら見たいんですが」

 

「持ってるよ。見てもいいけど、皆には内緒ね?」

 

 フェイトさんはジャージのポケットから出された紙を受け取った俺はそれを見る。

 

 赤組/青組

 

 フロントアタッカー

 フェイト/ヴィヴィオ

 エリオ/ガリュー

 

 ガードウイング

 アインハルト/リオ

 フーカ/コロナ

 

 センターガード

 スバル/なのは

 ミウラ/ティアナ

 

 フルバック

 キャロ/ルーテシア

 

 

「両極端ですね」

 

 赤組は殆ど全員がまっすぐ行ってぶっ飛ばす事(最高に頭の良い戦術)しか考えてないような脳筋……もとい近接戦闘を主体としたゴリ……人達の集まり。

 対する青組は"比較的"遠距離戦が得意な人達の集まりだ。あくまで"比較的"なので、場合によっては普通に殴ってくる。とある人は「砲撃でチマチマ削るより殴った方が早い」とか脳筋発言かまして開幕から突っ込む。

 

「爆発力の赤組、安定性の青組って感じだね」

 

「どう考えても赤組がなのはさんに潰される未来しか見えないんですがそれは」

 

「大丈夫だよ。開幕と同時に全員で吶喊するから」

 

「人はそれをバンザイアタックって呼ぶそうですよ?」

 

 又の名をカミカゼ。

 この手のチーム分けは互いにクソゲーを押し付けるか押し付けられるかの二択しかないから、試合時間も短くなる傾向がある。だから試合回数を増やすという意味では有り………なのか?

 

 いや、やっぱ無しだろ。試合じゃなくてクソゲーの押し付けあいだし。こんなのするより一回の長い試合の方が有益だと思うんだがなー。

 

「なのはのライフを削りきるか、それとも私が潰されるか。どっちが先か賭ける?」

 

「フェイトさんが潰されるに賭けます」

 

「賭けにならないね」

 

「むしろ普段のなのはさんとフェイトさんを知っていて何故賭けが成立すると思ったのか」

 

「それもそっか」

 

 好き放題するフェイトさんの鎮圧担当という一点だけでも、フェイトさんがなのはさんに勝てないのは明らかだろう。フェイトさんとなのはさんとでは絶対的な相性が存在するのだ。

 

「さて、私はそろそろ部屋に戻るよ」

 

「寝るんですか?眠くないんじゃなかったんですか?」

 

「眠くないし寝ないよ。けど、馬に蹴られる趣味は無くてね。逢瀬の時を邪魔するほど、私は無粋になったつもりはないよ」

 

 そう言い残すと、フェイトさんはソファから立ち上がって飲み終わったらしい缶をゴミ箱にシュート。キッチリ入ったのを確認してから小声で「超、エキサイティンッ!」と言うと月光に金髪を靡かせながら角を曲がって俺の視界から消えた。

 

「随分と楽しそうでしたね」

 

「……実は起きてたのか?」

 

「いえ。偶然お手洗いに行きたくなって目を覚ましたら、隣の温もりが消え失せていましたので」

 

 入れ替わるようにやって来たのはアインハルト。無駄に達筆な地底人Tシャツを装備しての登場だ。

 

「何を話していたんですか?」

 

「管理局の闇を見た」

 

「はい?」

 

「ところで、歩いて来たにしては少し息を切らしているようだけど」

 

「露骨に話を逸らしましたね……ええ、シュウさんを探して館内中を早足で歩き回っていましたから」

 

 そう言うと、アインハルトは俺の隣──さっきまでフェイトさんが座っていた場所だ──に座る。俺たち以外に誰の気配もしない静かな空間、アインハルトの少し乱れた息遣いがハッキリと聞こえてくる。

 

「…………」

 

「……………」

 

「………………シュウさん」

 

「なんだ?」

 

「今日は、また一段と月が綺麗に見えますね」

 

 ……この場所からは窓から二つの月を綺麗に見る事ができる。その月明かりは今座っているソファの辺りを照らしていた。言われてみれば、なんとなくミッドチルダの我が家から見るより綺麗な気もするが……アインハルトが言いたいのは絶対にそういう事ではない。

 

「まだ早いと思うんだ。先ずはお友達からだな……」

 

「相変わらず身持ちが固いですね。しかし、それでこそシュウさんです」

 

「前に似たようなセリフを聞いたことあるぞ」

 

 俺の返答に一先ずは納得したのか、アインハルトは横になって俺の膝に頭を載せる。そして空いていた俺の右手を両手で掴んで胸元に寄せて御満悦の表情を見せた。

 人はこの体勢を逆膝枕の体勢と呼ぶらしい。

 

「風邪引くぞ」

 

「シュウさんなら私が寝落ちしたら部屋まで連れて帰ってくれるでしょう?

 私としては、この場でR-18な感じに手を出してもらって欲しいんですが」

 

「雰囲気ぶち壊すなよ。今絶対にそういう空気じゃない、このままのんびりお月見する空気だろ」

 

「今やってるエロゲではこういうシチュもあるので壊してないです。むしろ雰囲気に沿っていると言っていいでしょう」

 

「エロゲ脳乙」

 

 アホな事を言っているアインハルトを放置して左手で缶コーヒーを傾ける。すきっ腹にコーヒーが直撃して胃がキリキリ痛む。

 

「今適当に流しましたね?流しましたでしょう?仕返しにシュウさんの右手を私の豊満な胸に押し当てます。えい」

 

「それ、いつも平気でやってる事だろ?」

 

「それもそうですね。で、何を話していたんですか?」

 

 忘れてなかったのか、心なし冷たい声色で再び問い詰められる俺。恐らくアインハルトは俺とフェイトさんのイケナイあれやこれやを想像しているのかもしれない。

 実際はフェイトさん率いる赤組がお通夜である事を確認しただけなのだが。

 

「明日、いつもの試合あるだろ?そのメンバー表を見せてもらってた」

 

「ほーう、メンバー表ですか。もう少しマシな嘘を吐いてほしいですね」

 

「嘘じゃねえって。ほら、フェイトさんとなのはさんの直筆だ」

 

 テーブルに放置されたままのそれをアインハルトに渡す。最初は半信半疑といった風に目を通していたアインハルトだったが、次第に目が見開かれていき、最後には体がプルプルと震えていた。

 

「あの…………シュウさん。馬鹿な質問して悪いですけど、この試合をサボれる方法とかありませんかね?」

 

「そんな物無いよ」

 

「ですよねーー。ではシュウさん、この戦いが終わったら2人で静かに暮らしましょうか」

 

「露骨に死亡フラグを立てるな。大丈夫、骨はちゃんと海に撒いてやるから」

 

 いつかのトラウマを思い出したのか、段々と震えが小刻みになってきたアインハルトが一際強く手を握りしめた。

 

 なにはともあれ、ルーテシアが頑張って組み上げたというレイヤー建造物の都市がいつものように崩壊する事だけは確かそうだ。




おまけ、居残り組の会話2

「それで、ウチのシャマルに声がかかった訳やな」

『そっちも忙しいっていうのは分かってるんですが……』

「まあシャマルは断らんやろ。真面目に勉強したいって子を無下にするほど、シャマルも余裕を無くしてはおらんやろし」

『ありがとうございます。じゃあジルにもそう伝えておきます』

「よろしく伝えといてなー。……それにしても、如何してリンネちゃんは急にそないな事言い出したんやろな?」

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