当然の事ですが、原作とは関係なく、本作で追加・重視した設定によってこのように結論付けたわけです。
楽しんでいただけたら幸いです。
※ようやく伏線を回収できた。
モビルスーツが強い。モビルスーツに対抗するにはモビルスーツを使わなければならないほどに。わずか一機で5隻の戦艦を沈められるほどに強い。
だが、モビルスーツは完成された兵器ではない。それは性能の話だけじゃない。運用方法からして試行錯誤の途上にある不完全な兵器だ。
だが、モビルスーツでは、そもそも宇宙拠点を占領することができないのだ。
当然だ。モビルスーツは人型であっても、その用途は戦闘機や戦車に近い。
モビルスーツは敵を撃破する能力があるだけの兵器だ。
ルナ2は見逃されていたのではない。モビルスーツを主力とするジオン軍にはそもそも攻略する能力がなかったのだ。
戦争は破壊だけではない。いや、破壊はあくまでも目的に至る一つのファクターに過ぎない。
敵地を占領するという目的のための、一過程にすぎないのだ。
ボタン一つで雨あられとミサイルを降り注げたとしても、最後はその場所を占領する必要がある。そこに必要なのはモビルスーツではない。
一年戦争開戦時。ジオンは各コロニーを制圧したが、占領しなかった。破壊し、地球に落とし、地球連邦軍と戦闘しただけだ。
ジオンが初めて領土を増やしたのは第一次降下作戦のオデッサ。地上だ。既存の兵器で対応できる地上だ。
昔俺がプレイしたことのある、ガンダムのシミュレーションゲームで、オデッサ占領時にシーマ・ガラハウが出て来たシーンがあった、それは彼らが海兵隊であり、揚陸する歩兵だからだ。
地上ならそれでいい。輸送トラックなり航空機で送る事もできる。
だがそれが宇宙なら?
当然、宇宙艦艇に乗せた歩兵戦力を敵基地に送りこむ必要がある。
だが、もしその段階で、占領できるだけの人員を送りこむ船がなかったら。
敵味方がモビルスーツを投入することで、モビルスーツは敵モビルスーツと戦う事になる。
モビルスーツはモビルスーツと戦う。
そして戦艦は戦艦と戦う。つまり艦隊戦だ。
艦隊戦で敗北すれば、そもそもモビルスーツ戦に意味がない。補給できないMSがどれだけいようと、脅威とならない。
そして、ジオンのドロス級空母。
この怪物戦艦が、連邦戦艦のすべて圧倒する。
空母という名目と、これが収容できるMSの数は脅威だ。それ故に、連邦軍は圧倒的な砲撃能力と射程距離を見逃している。
事実、連邦軍はこの性能で勝る敵新型戦闘艦艇の対抗措置を取っていない。
当然だ。戦艦はMSを肉薄させれば勝てるという、連邦惨敗の、そしてジオン必勝の戦術ロジックがあるのだ。連邦軍も同じように、この怪物空母にMSをぶつけようとするだろう。
宇宙艦隊の対艦能力で対抗しようとしていない。
そして、連邦MSとジオンMSの戦闘の外で艦隊砲撃によって決定的な性能差が発揮される。
そうさせることが目的なのだ。MSを大量に運用させる能力を持たせることで、それが主体だと誤解させる。大量に運用できる対MS能力である自軍モビルスーツの運用能力と、主力戦艦を圧倒する対艦能力から目をそらせる。
その為に、ジオンがあえて連邦軍にMSを開発させる時間を与えたのだとしたら。
開戦時モビルスーツによって、連邦は多くの戦艦を失った。
だから、連邦軍はモビルスーツを開発する必要があった。
MSが強力な兵器であり、対抗する必要があると印象つけ、そして開発させる。
Rx-75ガンタンクに対抗してMS-07グフを作ったのと同じだ。それよりももっと壮大で、緻密で、狡猾だ。
新兵器の開発という一大プロジェクトを行えば、連邦軍といえど無理が生じる。その無理はどこに出るのか。今までオレが携わっていた事だ。分かりきっている。
既存兵器部門だ。
現代保有する地上戦力。そして、宇宙艦隊。
事実、これらの派閥は影響力を失い。宇宙艦隊に至っては新造艦ペガサス級をわずか数隻。他は、宇宙艦隊再建の為の既存鑑の製造と『ビンソン計画』によるMS搭載能力を付随させた運用改修だけだ。
すべては真の目的のために。
会戦当初。ブリティッシュ作戦が失敗し、ルウム戦役を経て、南極条約以降の継続する戦争に対し、ジオンはコロニー落としを強行する戦力を失った。
では、どうするか?
地球に侵略し領土を広げる?
違う。そうじゃない。少ないジオンの国力でそんなことをしても無意味なことは誰だってわかっている。
最初から最後まで物量で劣るジオンが勝利する方法は決まっていたのだ。
コロニー落とし。
ブリティッシュ作戦はなぜ失敗した?
ルウム戦役でジオンのコロニー落としが成功しなかったのはなぜだ?
連邦軍の宇宙艦隊が必死の抵抗をしたからだ。
その最大の障害である、連邦宇宙艦隊を壊滅させる。
しかし、それを強行できる戦力を失ったジオンにとって、それは容易な事ではない。モビルスーツの威力をまざまざと見せつけられた連邦軍は慎重になるだろう。臆病といってもいい。ルナ2に籠城し、宇宙艦隊を前面に出したりはしない。
そして、ルナ2を攻略し、宇宙艦隊を壊滅させる能力が、現時点のモビルスーツにない以上、何とかして宇宙艦隊を引っ張り出す必要がある。
その為の、地上降下作戦。
その為の連邦軍MS開発。
地球を取り戻すために連邦軍がMSを開発させる。連邦軍は体制が整えば、その巨大な物量でジオンを圧倒する。
そして、地上のジオン軍が連邦の反抗作戦に敗れる。ジオンの地上戦力が低下し、連邦軍が宇宙で決着を付けようとするだろう。
ここまでしてようやく連邦宇宙艦隊は出てくる。逆に、ここまでしないと宇宙艦隊はルナ2から出てこない。
ルナ2は要塞であり、宇宙戦艦建造ドックではない。MS開発に回したために、ルナ2に戦艦を作る余裕はない。ジャブローから打ち上げなければ、宇宙艦隊が補充されない。
そして、宇宙決戦で早期に決着させるなら、ジャブローから打ち上げる戦艦だけでは足りない。
宇宙にある残存艦隊をかき集める必要がある。
そして、それをコロニーレーザーで焼く。
後に残った艦艇を、艦隊性能で勝るドロスが叩く。
そして、再びコロニー落とし。
それを止める宇宙艦隊はもういない。
地球それ自身を守るすべがなければ、地球連邦政府に選択肢はない。
そもそも、ジオンの目的は地上の支配ではない。
地上からの打ち上げは、衛星軌道から簡単に止められる。MSにはMSでしか対抗できない。だが、宇宙艦艇のない連邦軍にはそのMSを運ぶ方法がない。目的の衛星軌道まで援護する艦隊が存在しない。
コロニー落としの第一目的はジャブロー宇宙船ドック。
その一手で、連邦軍は宇宙艦隊再建の手段すら失う。
なんてこった。オレがこの仕事を始めた瞬間に、その成否を問わず、すでに敗北しているのだ。
レビル将軍がモビルスーツの性能をまざまざと見せつけられたことすら、何ら問題にはならない。
そして、その陰謀を巡らせたのはIQ240の天才。
ギレン・ザビ。
連邦はその智謀に敗北するのだ。
一応、ドロスがマゼランより射程が長いという設定は「ORIGIN」からもってきています。