ジャブローのモグラども   作:シムCM

26 / 42
25 ルナ2準備

残念ながら、オレの階級は中佐である。

ましてや、会議にあってはコーウェン准将のお供で、当事者ではない。当然、会議の結果という軍事機密を教えてもらう事はなかった。

一応、コーウェン准将経由でV作戦の体制継続を告げられている。つまりは原作通りになったという事なのだろう。

 

そんなわけで、悩みといえば大気圏で燃え尽きたザクのパイロットの名前が、いまだに出てこないことくらいである。

本当にどうでもいい話だ。

 

 

 

「…では、確かに受け取りました」

『こちらでも、担当者に渡しておきます』

 

会議から4日後。ルナ2との通信回線で、ワッケイン司令とやり取りをする。

あの後、ホワイトベースの出発を囮にして秘密裏にサイド7からデータの回収をしてもらい、RXシリーズのテストデータを送ってもらったのだ。

 

そのデータも厳重に暗号化したうえ、公共回線ではなく秘密回線。それもダミーを含めて5つに情報を分割している。うち3つ合わせて初めて情報を開示できるという念の入用だ。

まあ、現段階でV作戦が重用機密扱いであるための、当然の措置といえる。

もちろんそれだけではない。

 

「技師たちに関してはすでに?」

『ああ、すでに今ある分の情報で、生産を始めている。今回の分ですべてそろうだろう』

 

ルナ2での量産MSジムのテスト生産が始まったのだ。いままでは、地上優先で開発していたが、今回の件で宇宙用の最終調整された開発情報を送っている。

もちろんジオンに傍受される可能性もあるが、現段階ではジオンは連邦MSをガンダムだと誤解している。外部パーツがガンダムに酷似しているジムの情報なら、一部がばれてもガンダム用の物だと誤解するだろう。

すでに、宇宙開発用の技師はホワイトベースに先立って打ち上げられており、ルナ2で生産ラインの作成に従事している。

そもそも、宇宙での連邦軍拠点がルナ2しか残されていないことで、量産MSの生産工場を急ピッチで準備してもらっていたのだ。

それもほぼ完成し、今回の情報で最終調整もできるだろう。

正直、V作戦がポシャっていたら、ここが一番経済的打撃を受けていたと思われる。

よかったねワッケイン司令。

 

元々ルナ2は軍事基地である。あくまで防衛施設であり宇宙での中継拠点だ。

当たり前だが生産工場ではない。普通は軍事基地で生産はしない。防衛施設には防衛施設に必要な設備があるし、生産工場には生産工場に必要な設備がある。そして、空間は有限だ。防衛規模が上がれば上がるほど、生産設備が増えれば増えるほど、その問題は増え続け永遠に解決しない。

そういう意味でルナ2での生産施設増設は、本当に連邦宇宙軍の苦肉の策という事だろう。

 

「データ解析については、逐次送信してください」

『了解した』

 

宇宙用の量産機の実働データを手に入れれば、それをガンダムのテストデータとすり合わせる事で、教育型コンピューターによるパイロットを補助したシステムの基本部分が出来上がる。

後は順次アップデート。ジムの台数が増えたところでデータコピーだけなら、更新の手間は最小限だ。

機体はすでに生産ラインに乗せて、生産・配備後に順次アップデート。

ジオン脅威のメカニズムに対抗して、こっちは連邦脅威のシステマニズムだ。

まさしく「(構想が)ザクとは違うのだよ!ザクとは!!」という奴だ。

 

『ホワイトベースが地球に向かったことで、ルナ2への監視の目も緩んだ。その隙に、我々は準備を整える事ができる…』

「ワッケイン司令?」

『しかしその為に、あんな少年少女を囮としなければならないとは、寒い時代とは思わんかね?』

「…」

 

某有名なセリフを吐く。

あいにく返答に困ったが、向こうも返礼などを求めていなかったようだ。そのまま敬礼すると通信は切れる。

 

寒い時代か。ガンダムオタクとしては、熱い時代といえるだろう。

当事者でありながら、当事者ではない俺からすれば、どっちの時代といえるだろうか。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。