ガンダムジャンルでも異端すぎる内容ですが、楽しんでもらえて感謝に絶えません。
「では、お願いします」
「はい。早急に形にします」
会議室の一室で、一人の技術員と握手を交わす。
あの後、体調不良を理由にビーム部門のトップが辞任。チームの主要メンバーを呼んで、ビーム部門の人員削減と、計画の見直しを命じた。そして、1月以内に形にできるなら凍結解除と人員削除を撤回する旨を伝える。
意気消沈していたビーム部門は、目を血走らせながら開発を始める事になる。
ビーム部門の状況が効いたのか、モビルスーツ開発に当たっての摺合せは、きわめて良好に進んだ。今回の主となる二足歩行と姿勢制御。そこに、すでに蓄積していた機動射撃と、遠距離砲撃を盛り込む形だ。
ハードウェアに関する摺合せはレイ大尉にまかせ、ソフト面での調整に従事する。
そして、レイ大尉に丸投げした分で、新しいプロジェクトを立ち上げる。
「簡易モビルスーツ?」
コーウェン准将に提出した草案にはそうある。
「はい。V作戦におけるモビルスーツの構造を簡略化させ、いわば工兵のように後方支援をさせる機体です」
ようやく、本当の意味でのV作戦の下準備ができる。
信憑性を高めるために添付したサンプルとして、ザクタンクや、いまだ旧ザクを使っているジオン軍の運用方法を説明する。
ガンダム計画から、ジムを作るには、いくつかの問題がある。
ジムがガンダムの簡略版であるなら、当然ガンダムが開発されることが前提となる。
しかし、ガンダムができればガンダム量産しようとする。そうなれば、コスト問題が表に出る。
つまりゲームオーバーである。そうならないために、どうするか。
答えは一つ。代案を作成しておく必要があるのだ。
それが、ガンキャノン製造である。
二足歩行、姿勢制御、武器管制、機動戦闘。一応モビルスーツに必要なものは備えている。
両肩のキャノン砲と、それに伴う装甲の増加。そんなモン取っ払えばいい。
ほら、ジムを作る雛形ができた。
後は、ガンダム開発に伴い、新構造を流用すればいい。最新技術というのは基本的に複雑なもので、そういった構造はコストの面から量産機には適さない。
白兵戦用とか中距離支援用といった使い方ではなく、量産機のベースとなる性能とか基本構造という意味で、ガンダムとガンキャノンに差はほとんどない。そして、量産機であるために、その構造を簡略化させれば、その差はさらに小さくなる。
つまり、ガンダムからジムを作るのではなく、ガンキャノンからジムの元型を作り、そこにV作戦による各運用データでソフト面から補助をする。
ジオン軍のようにハードとそれ専用のソフトではなく、複数のハードに対応した汎用ソフトだからこそできる相互アップデート作業だ。
ソフトウェアの増減で質量が変化する事はない。事前に余裕のある性能を持たせれば、入れるソフトウェアを変えるだけで、MSの性能を変える事ができる。
そもそも、モビルスーツは持つ武器によって用途を変える汎用性が特徴の一つだ。だからこその汎用機。そこで、ハードだけではなくソフトでも互換性を持たせて汎用性を高める。
ガンダムがない現段階の問題点は対MSを想定した白兵戦データが全く手つかずの点だ。これは後のガンダムの固定武装にビームサーベルをつける事で、使用データを収集できる。その為にRX-78の名目を白兵戦用MSにすれば、テスト項目的にも問題はない。
これでようやく打開策が出来上がる。