平穏な時が訪れているといっても、何もしない日々なわけではなく、ジオンとの開戦以来立て直しを図る連邦組織は多忙を極めていた。
ぶっちゃけV作戦開始当初、明らかにMS開発ではない旧来兵器開発が、こちらに回っていたのは、軍事力の再編成で旧兵器部門が限界オーバーまで酷使されていたかららしい。従来兵器開発をいったん外す名目で持ってこられただけのようだ。
その中でV作戦に必要な計画だけこちらで保持し、それ以外を元部門に返却するお仕事があったりしたわけである。
全然知らなかったわ。結構他の開発計画食い漁ってしまったよ。
とりあえず、仲の悪くなった陸上系部門に、いらない計画を返却し、航空部門との詰め合わせを行う。
なんというか、航空部門のV作戦への力の入れようが、目の色変わっててちょっと怖い。
多分、犬猿の陸上部門から離れたころで、取り込めると思ったのだろう。さすがに、自分たちが本流ではないと見越した上での接触なので話が分かる。
ミデアやガンペリーなどの輸送部門から入る形で、話を調整しておく。
ああ、そうか。犬猿の仲だったから航空部隊による陸戦部隊の支援が、いまいちだったけど、ここにきて陸上系のヒモが切れた新兵器MSが出てきたので、すり寄ってきてるのか。
まあ、陸上系も完全に切れてるわけじゃなくて、お義理とかマイナー路線での協調とかあるわけで、その辺の打ち合わせもオレの仕事である。
そんな状況で、連邦軍基地ジャブローの中枢ともいえる中央施設の、これまた奥にある大会議室。
周囲にいるのはどう見ても閣下と呼ばれる階級の者ばかり、佐官のオレですら間違いなく底辺ランクに位置する人ばかりだ。
オレの隣にはコーウェン准将が。つまりオレは、准将のおまけです。
なんで、オレがこんな大物重役会議に出席しているかというと。
『ジオン新兵器報告会議』
なる緊急会議に、コーウェン准将と一緒に出席するよう命じられたからだ。(正確には、准将に命令が来ただけで、オレは准将のお願いで出たに過ぎない)
ジオンの新兵器ってなんだ? モビルアーマー? でもあれって、どうみてもマイノリティーな機体だよね? となるとニュータイプ専用機か!?
「これが、諜報部が持ち帰ったジオンの新兵器の映像です。」
司会らしい下士官の発言で、スクリーンに映像が映し出される。
そこは、どうやら製造工場のようで、巨大なクレーンや重機があり、その中央に『ジオンの新兵器』の断片が置かれている。
ザワザワザワ……
「おお……」
「ザクではないぞ……」
周囲の高級官僚から驚愕の声が漏れる。
そんな参加者とは完全に別で、オレは眉間に皺を寄せる。
どうみてもグフです。本当にありがとうございました。
脅かすなよ。グフの製造過程の映像ジャン。ああ、でも新兵器という意味では正しいのか。今までザクしかなかったジオンが作り出した新モデルだもんな。
映像に「ムぅ……」とか言ってるコーウェン将軍の横で、苦笑して背もたれによりかかる。
ジオンはグフを開発してるのか…ああ、そうか。そういう事か。
今ある現状とMS-07グフの開発について思いを巡らすオレとは関係なく、会議は進んでいく。
だが、そのまま、会議が終わるかと思ったが、とんでもない爆弾がピンポイントで向かってきた。
「ああ、君。少佐か。何かあるようだが、どうかね?忌憚のない意見を聞きたいのだが。」
会議の中央。原作キャラの超重要人物にして、連邦軍の重鎮レビル将軍がオレにロックオンしていたのだ。