PMC探偵・ケビン菊地  灰狼と女神達   作:MP5

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 ちょっと遅くなりました


21話  34号

 調査の結果、宇野日美香は基本的に友達を作るタイプではないらしく、母親が早くに亡くしているため、親しい人間が父親と遠くに住む祖母、そして

「A-RISEの非公式ファンクラブ会員、34号。誰だよ」

 謎の人物34号。ホームページを見ても顔こそわかるが本名ではなくナンバーで呼ばれていることがわかる。どうにか接触するため、リーダーで創始者である、1号に接触することにした。返事が返ってきて、『明日の午後1時、ミナリンスキーのいるメイド喫茶で会う』とのことだった。

(どうしてそこなんだ・・・まっいっか)

 

 

 

 

 

 

 約束は約束。ケビンはUMP-9を薄手のジャケットの下に隠し持ち、1号と会うことになった。

(彼女が接客していない。まだだな)

 ミナリンスキーこと、ことりを指名し、人を待つことになった。

「探偵さん。お客さんとしてお店に来るなんて珍しいですね?」

「まぁ、仕事の都合でここで待ち合わせさ」

 すると、一般的なオタクのイメージとはかけ離れた、背広姿の男性が席についた。

「初めてお目にかかります、1号こと、新垣と申します」

 新垣と名乗った男は本業は税理士をしているらしく、趣味が高じた結果、非公式のファンクラブを立ち上げたらしい。メンバーとは会場やプライベートで会っているらしいが、34号と被害者とは実際に会ったことがないらしい。

「基本的に会員登録するには、メールアドレスと電話番号、任意で住所を記入するだけでできます。ですから、顔写真は必要ないんです」

「なるほど。総勢どのくらいいるんだ?」

「40人ぐらいですが、34号と36号さんとは会ったことがないんです」

「ほぅ」

 ひとつの疑問が浮かんだ。彼女は必ず会場に来ているのだ。にも関わらず、新垣はニュースで知るまで顔を見たことが無いと言う。つまり、たとえ同じ会場にいても、遠く離れた場所にいたため、彼女達の顔を知らないということだ。そんなことがあるのだろうか。

「何度もツイスターで飲み会の勧誘をしたのですが、絶対に欠席すると返事をよこすんです」

「ちょっといいですか?」

「?」

「彼女、ツイスターやってたんですか?」

「えぇ。ミニマムニコルってネームです」

 新垣がタブレット端末でミニマムニコルの名前を検索し、そのページを見せる。A-RISEのコンサートでダンスがどうとか、サインもらって嬉しさのあまりに逃げ帰ったとかしかない。

「少ないですね。写真は一切ないから、だから知らなかったんですね」

「はい。ですが、34号の写真なら見たことありますよ」

 検索した名前に見覚えがあった。

「道下政子」

「そうですが、何か?」

「いえ、何も」

 彼女が取ったであろう写真に自撮りが入っていた。

(どういうことだ、彼女と交流があったのか?なんだか暗雲が漂ってきたぞ)

 まさか二人が顔見知りというだけでなく、友好もあったことに驚く。初めて会ったときの威圧的な態度は演技だった可能性が高い。

「それにしても驚きましたね。まさかミナリンスキーと知り合いだなんて」

「以前、暴漢から彼女を救っただけですから」

「すごいですね。本当にそんな探偵さんがいたなんて」

 その後、質問攻めにあい、内容をオブラートに包んで簡潔に答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。UTXに問い合わせるも今日は彼女が出勤していないと聞き、今度はツバサに電話しようとしたが、今日は平日で学校だと判断し、躊躇する。

「SNSだと返事遅いしな」

 仕方なく事務所に戻ろうとすると、電話がかかってきた。相手はツバサだった。

「もしもしどうした?」

「探偵さん助けて!」

 切迫した声だった。

「どうした!?」

 しばらくして、今度はボイスチェンジャーを通した声が聞こえる。

「・・・お前が探偵だな」

「誰だ?」

「綺羅ツバサは預かった。返してほしければ他の二人も呼べ」

「その二人ってのは、英玲奈ちゃんとあんじゅちゃんのことか?」

「そうだ、場所は画像で送る。変な真似するなよ」

 電話が切れ、今度は宏美から電話が入った。

「大変よ!A-RISEの二人から電話があって・・・」

「俺にもさっき。車、用意出来てるか?」

 急いで事務所に帰り、レミントンR5とUMP-9をハマーに積み、出撃準備をする。

「あ、あのぅ、戦争に行くんじゃないんですから・・・」

「人質救出は戦争と一緒だ。殺すつもりじゃないとダメ」

 

 

 

 

 

 

 出発してから2時間半。北関東にある、大型の倉庫前に止まった。ここにツバサがいる。ちょうどいいタイミングで電話がかかってくる。

「お前ひとりで来い。車の鍵は開けっ放しにしろ」

「わかった、待ってろ」

 UMP-9と右手、レミントンR5を肩にたすき掛けし倉庫内へ向かった。照明はついていないため薄暗く、遮蔽物が多い。

(どこにいる・・・)

 すると、テンポの早い足音が聞こえ音のする方へ歩く。誰かとぶつかったかと思いきや、ツバサだった。

「無事か?」

「えぇ。でも、なんでなの?登校中に英玲奈とあんじゅもいたのに、私だけ」

「言われてみればな」

 外で待っている二人が心配になり、戻ってみると案の定機転を利かせロックをかけていたため、複数の男達に囲まれており無理矢理こじ開けようとしている。

「修理代増やさせんぞ」

 R5に持ち替え、次々に敵の脳天目掛けて狙撃していく。それに気がついた連中がこちらに向かってUZIを発砲してくる。数を減らしていき、どうにか撃退に成功した。念のため、UZIを拾った。

「クリア。さて、帰るとしよう」

 3人を送る途中、簡単に事情を聴くことにした。ツバサによると、下校中、白のバンが近くで停まり自分だけ攫って言ったのだとだという。犯人の指示でケビンに電話をかけた。彼らはケビンを消そうと考えたらしく、呼び出したのは良いものの、主犯が電話で誰かと口論してる隙に逃げ出し、どうにか撒いたところでケビンにぶつかったのだという。

「でもどうして二人も呼ばれたの?関係ないと思うけど」

「恐らく保険だろうな、もし君に逃げられていいようにロックの解除された車内にいる二人を押さえようと思っただろうが、二人が機転利かせたことで失敗した」

「・・・だったら、手足縛ってもいいと思うのですが」

「確かに不自然な誘拐事件だ」

 どうやら彼に恨みがある連中の犯行ではないようである。それだけではない、ツバサを誘拐して得られるメリットが目立つ以外にない。茶番劇に終わったのも計算に入れていたのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 すっかり日が暮れ、3人を家に帰すとそのまま事務所に帰る。拾ったUZIのマガジンを取り出し、弾を見る。Px4でも使われる、9mmだとわかる。

「通常の9mmだ。メタルジャケット弾でもない」

 パウダーもマグナム弾に使用される、速燃性のものではないこともわかった。つまり改造を施していない弾丸を使用しているのだ。機関部も特に改良していることはなく、強いて言えば銃身が太くなっておりヘビーバレルに交換していることがわかった。

「変な奴だ」

 通常サブマシンガンを改造するなら、機関部をより良いものに改造し弾詰まりを回避しようとしたりする。ヘビーバレルに交換するなら一層のこと、そこまでするはずだ。

「中途半端な改造だ。ガンスミスを雇っていないことがわかる」

 つまり、解体した際に銃身を交換してしまえば、素人でもできる。

「でも何故ツバサちゃんだったんだろう、彼女が関連する事件は弾倉投げ込み事件だけ。今回の件で二回目だ」

 犯人の目的がわからない。流石に頭を抱えるケビンに電話が鳴る。

「はい、トライデント・アウトカムズ」

「宇野です。ちょっと来ていただけませんか?」

 日美香の父親が電話をしてきたのだが、声が小さいことがわかる。

「わかりました。お待ちください」

 

 

 

 

 

 

 居間に案内されたケビンは宇野父に注目する。

「お話しとは?」

「実はですね、気になることがありまして」

「気になることですか?」

「部屋にμ’sのグッズが置かれていたんですが、あの子はA-RISE一筋なんです、どうして置かれていたのか気になって」

「ほぅ」

 最初に見た時はあまり気にしなかったが、今思えば何故ライバルグループを応援するのか疑問に思う。つまり、両者の関係を知っており宇野日美香の顔を知っている人間が犯人であることがわかった。

「宇野さん、犯人がわかりました。μ’sのグッズ、お借りしていいですね?」

 大隅科学捜査研究所に証拠品を持って行き、以前渡された手紙も提出し指紋鑑定を依頼。結果、道下政子の指紋と認定。彼女が事件当日に持っていったことが判明した。

「道下政子が人を殺したのは確かだ。これで彼女を追い詰めることができる」

 翌日、速報で道下政子が逮捕されたことが報道された。人を殺し、担当アイドルを脅かしたマネージャーとして世間に知れ渡ることになったのだった。




稚拙ですが、堪忍してください

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