ソードアート・オンライン ~IF 黒の剣士と絶剣~ 作:舞翼
うむ。この話で、キリト君とユウキちゃんの距離が、ぐっと縮みますね(^O^)
原作のアスナ以上かも(多分だが)
飛翔していたら、目の前に世界樹が見えてきた。 距離は約30メートルだ。
そして俺は、一つの考えが浮かんだ。
「なあ、ユウキ。 あの世界樹にどっちが早く到着出来るか勝負しないか? ま、やったら俺が勝つけどな」
ユウキは、ムっとした。
「それは、ボクが負けるってことかな」
「ふっ、飛行では、ALO最強だしな」
「ふんだ。 ボクが勝つもん」
「「むむむむ……」」
二人は、同時に唸った。
この勝負、負けられない。 絶対に勝つ!
俺とユウキは、その場で停止した。 横一列に並ぶ形だ。 俺がポーチから取り出したのは、コインだ。 このコインは、タイマーがセット出来るようになっている。
俺は三秒後に、コインが青い残滓になるようにセットした。
「このコインは、俺が投げた三秒後にポリゴンになる。 それが合図でスタートだ。 どうだ?」
「OKOK」
「よし、いくぞ!」
俺はコインを少し前に投げた。
そして三秒後、コインが青い残滓に砕けた。 俺は翅を震わせスタートダッシュを成功させる。
予想通りだが。 ユウキも俺の間横を飛んでいた。
どちらも前を譲らないデットヒートだ。
「ぐぬぬぬぬ。 負けられん」
「こっち、こそっ」
約三メートルといった所で、俺は顔を青くした。
「(……やべ。 ランディングの事を視野に入れてなかった)」
隣を見てみると、ユウキも俺と同様だった。
……ああ、これは間に合わない。
数秒後。 ドカンッ!という音を響かせ、二人の妖精は世界樹に突撃した。
目を回しながらHPを確認すると、約5割もっていかれた。
俺は、右手掌を額に当てながら立ち上がった。
「痛てててて。……ユウキ。 大丈夫か?」
「う、うん。 何とか」
「まああれだ。 調子に乗りすぎました!」
俺は、がばっと頭を下げた。
ユウキは笑いながら、
「うんん、全然構わないよ。 それに、あのスピードに着いて来られたの、キリトだけだよ」
俺は左手を出し、ユウキも俺の手を取り、引き上がるように立ち上がった。 俺は、ふと思った事を口にした。
「あ、そういえば、どっかに行く予定だったのか?」
「あ、あーーあ! そうだった! 皆の所に行かないと」
ユウキは、声を上げた。
皆ってことは、ギルドの紋章が関係してるのか? 取り敢えず、聞いてみよう。
「皆って事は、ギルドメンバーとか?」
「そ、そう。 キリトのこと紹介したいんだ」
「なるほど。 んじゃ、行こうぜ」
「う、うん。って、キリトが仕切ってる!」
ユウキは、ぷんぷんと怒った。
いや、まあ、全然怖くないが。
「……まあいいけど。 行こうか」
「おう」
二人の妖精は、再び翅を広げ飛翔を開始した。 ユウキは、24層に広がる湖の上空を一直線に南下すると、アインクラッド外周の開口部から飛び出し、雲を切り裂きながら上昇した。
どうやら、ユウキが向かっている層は、第27層のようだ。 現在の最前線でもある。
苔むした外壁の隙間を縫うように内部へ飛び込むと、視界が暗くなった。 アインクラッド第27層は常夜の国なのだ。
着陸し、手を引かれながら、第27層主街区《ロンバール》にある目的の場所へと案内される。
小さな階段を降り、橋を渡り、目的地の宿屋の前に到着した。
扉を潜り、店主のNPCの横を通り抜けた、その先には――。
「お帰り、ユウキ! 見つかったの!?」
はしゃぐような少年が、ユウキを出迎えた。
酒場の中央丸テーブルには、五人のプレイヤーが陣取っていた。 他に人影はない。
ユウキは彼らに歩み寄ると、俺の方へ振り向く。 右手を大きく伸ばし、ユウキが胸を張った。
「紹介するよ。 ボクのギルド、《スリーピング・ナイツ》の仲間たち。 それで、真っ黒のお兄さんが……」
俺は唇を歪めた。
「真っ黒とは失敬な。 黒は男の色だぞ」
「まあ、うん。 そうだね……」
「って、おい! 何だその反応は! てか、名前知ってるだろ?」
「この紹介の仕方が面白いと思って」
俺はユウキに歩み寄り、頭をぐりぐりした。
まあ、仮想世界なのであまり痛みは感じないが。
「痛い、痛いってば。 キリえもん」
俺は手を止め、
「最初からそう言えば良かったのに……は? キリえもん?――ふぅ、あれだな。 またやられたいと見た」
「ご、ゴメンってば、キリト」
「ったく。 これだから絶剣さんは」
《スリーピング・ナイツ》皆さんの視線に気づき、俺は『やべっ』と思いながら姿勢を正し、ユウキは『あははっ』と乾いた笑みを浮かべていた。
「んん、絶剣さんから紹介に預かった、キリトです」
「僕はジュン! キリトさん、よろしく!」
一番左に座っていた小柄な
頭の後ろで小さなシッポを結んだ、オレンジ色の髪を揺らしていた。
その隣には、
「テッチって言います。 どうぞよろしく」
続いて立ち上がったのは、ひょっそりと痩せた
緊張してるようで、顔も紅潮していた。 まあ、分からんでもないぞ。 俺もコミュ症だから。
「わ、ワタシは、そ、その、タルケンって名前です。 よ、よ、よろしくお願いし……イタッ!」
語尾に悲鳴が被ったのは、彼の左に座っていた女性プレイヤーが、重そうなブーツで脛を蹴ったからだ。
「いいかげんその上がり性を直しなよタルは! アタシはノリ。 会えて嬉しいよ、キリトさん」
ノリは、黒髪と肌黒い肌、闇色の翅を持つ見る
最後に、ほとんど白に近いアクアブルーの髪を両肩に長く垂らし、伏せた長い睫毛の下には穏やかな濃紺の瞳が輝いてる、
「初めまして。 私はシウネーです。 ありがとう、来て下さって」
そして最後に、五人の右にジャンプして並んだユウキが、大きなアメジスト色の瞳をきらきらと輝かせた。
「そして、ボクがギルドリーダーのユウキです! キリト、頑張ろうね!」
俺は頬を掻きながら、
「……絶剣さんよ。 話が吹っ飛びすぎだぞ。 まずは、ここに連れて来た理由をだな」
「あ、そうだった。 何にも説明してなかった!」
「お、おう、説明しようぜ」
俺とユウキの言葉に、五人が一斉に崩れ落ちた。
うん、漫才で笑いを取った気分だぜ。 俺は改めてスリーピング・ナイツのメンバーを見た。
全員が凄まじい手練だと分かった。 何気ない一挙手一投足は、自然で滑らかなものだ。 ここに居る六人は、フルダイブ環境でのアバター操作に熟知していると言える。
「えっと、まずは何も説明しなくてごめんね。 ようやく、ボクと同じくらい強い人見つけたんで、つい……。 改めてお願いします! ボクたちに手を貸してください!」
「いいぞ」
俺は即答する。
これには、スリーピング・ナイツの皆さんが驚いたようで、目をパチクリさせる。
「……えっえ。 そんなに簡単に決めていいの」
俺は、腕を組みながら頷いた。
ユウキは、心底驚いたような顔をしていたが。
「まあな。 俺の予測だが、ユウキたちは何かをやり遂げようとしてるんだろ?」
「す、凄いね、キリトは。 その通りだよ」
「ふ、褒め称えるがいい」
「はいはい、凄い凄い」
と、ユウキに軽い口調で言われてしまう。
ギルドメンバーは珍しい物を見てるかのようだった。 はて、何故だろうか?
「どんな事に挑戦しようと思ってるんだ?」
俯き、はにかむように唇をもごもごさせながら、上目遣いで俺を見たユウキはやり遂げたい事を口にした。
「……ボクたち、この層のボスモンスターを倒したいんだ。 このメンバーだけで」
新生アインクラッドのフロアボスは、旧SAOに比べるとかなり強化を施されてる。
現に、
無謀な挑戦もいいところだが、手を貸す以上はやり遂げて見せる。
「俺を入れた七人でボス攻略ってことでいいのか?」
ユウキは頷いた。
「うし、了解した。 大船に乗ったつもりでいるんだ」
「……泥船じゃないよね」
「そ、そんな訳ないじゃないか」
俺とユウキの漫才を見ていた、スリーピング・ナイツ五人は、吹き出して笑っていた。
ジュンに限っては、腹を抱えて笑っていたが。
皆が落ち着いた所で、俺が口を開く。
「えっと、話を纏めるとこういうことか? ボスを一緒に倒してくれる助っ人が欲しかったから、あの島でデュエルを行っていた。 で、そこで見つけた助っ人と協力して、第27層のボスを倒し、七人の名前を、第一層《はじまりの街》にある黒鉄宮、そこの《剣士の碑》に刻みたい。 こんな感じか」
俺がそう言うと、シウネーと名乗った
「キリトさんのその解釈で概ね合ってます。 では、何故なのかを詳しく説明した方がいいですね。 どうぞ、座ってください」
俺を含めた七人がテーブルの椅子に座り、NPCウェイトレスにオーダーした飲み物が並んだ所で、シウネーが落ち着いた声で喋り始める。
「キリトさんはもうお察しかもしれませんが、私たちはこの世界で知り合ったのではないんです。 ゲームのとあるネットコミュニティで出会って……すぐに意気投合して、友達になったのです。 もう……二年も経ちますね」
シウネーは、何かを思い出すように言葉を切った。
「最高の仲間たちです。 みんなで、色々な世界に行って、色々冒険しました。 でも、残念ですが、私たちが一緒に旅をできるのも、たぶんこの春までなんです。 みんな……それぞれ忙しくなってしまいますから、そこで私たちは、チームを解散する前に、一つ絶対に忘れない思い出を作ろうと決めました。 無数に存在するVRMMOワールドの中で、一番楽しく、美しく、心躍る世界を探して、そこで力を合わせて何か一つをやり遂げようって。コンバートを繰り返して、辿り着いたのがこの世界なのです」
シウネーは仲間たちの、ジュン、テッチ、タルケン、ノリ、ユウキの五人を見回し、五人もそれぞれ顔を輝かせて大きく頷く。
俺は相槌を打った。
「それが、ここALOであり、《剣士の碑》ってことだな」
《剣士の碑》に刻める名前は最大七人。 つまり、一パーティーでボスを倒せば全員の名前が刻まれるが、それが
「碑にスリーピング・ナイツ全員の名前を残そうと思ったら、一パーティーのみでボスを倒す必要があります。 私たち、25層と26層のボスを相手に一生懸命戦ったのですが、あと少し及ばなくて……。 そこで皆で決めたんです。 パーティーの上限は七人なので、あと一人分だけ空きがあります。 僭越な話ですけど、私たちの中で最強のユウキと同じか、それ以上の強い人を探して、パーティーに加わってくれるようにお願いしてみよう、って」
俺は詰めていた息をそっと吐いた。
「なるほどな。 さっきも言ったけど、助っ人の件は引き受けるぞ。 一パーティーでボス攻略っていう、前代未聞をやってやろうぜ。 俺も最善を尽くす」
俺がそう言うと、ユウキは笑みを零し、シウネーたちはパッと輝いた。
「あ、ありがとうございます! ですが、私たちはコンバートして余り経っていないので、十分なお礼が出来ないですが……」
「いや、いいって。 こんな貴重な経験ができるんだ。 礼は、それだけで十分だ。 あ、俺から一つだけ。――ぶっつけ本番で、ボスの行動パターンを得て攻略な。 全滅は許さんぞ」
「「「「「えッ!」」」」」
《スリーピング・ナイツ》メンバーは同時に声を上げた。
最初の偵察で、全滅する前提だったのかい。 ま、全滅は許さんが。 それから、皆が都合の良い時間聞いたが、ノリとタルケンは夜がダメらしく、明日の午後一時に再びこの宿屋に集合となった。
「んじゃ、明日頑張ろうぜ!」
「「「「「「おぉ!」」」」」」
《スリーピング・ナイツ》メンバーは、片手を上げて応えた。
俺は立ち上がり、片手を上げ宿屋からお暇することにした。 《ロンバール》中央広場にある転移門を目指して歩く。
その時、右肩がぽんと叩かれた。 俺はそちらに振り向く。 其処には、ニッと笑みを浮かべたユウキの姿があった。
「おう、どうかしたか?」
「うん、改めてお礼をと思ってね」
「なるほど。 此処じゃ何だし、あそこに座ろうぜ」
俺が指差したのは、横長の木製のベンチだ。
椅子に、俺たちは腰を下ろした。
「今日はありがとう。 感謝しきれないよ」
「そこまで言われると照れるぞ。 まあ、今日はビックリの連続だったからな」
今日は、絶剣とデュエルのはずなだけだったのだが、ユウキの仲間たちに出会い、そこからボス攻略と。 ビックリの連続である。
「ま、その言葉は、名前が刻まれるまで取っておいてくれ」
「そ、そうするね。 ボクにできる事なら聞くよ。 あ、えっちぃことはなしね」
「……えっちぃって。 そうだな、友達になってくれ。 ユウキとは、馬が合いそうだ」
ユウキは目を見開き、驚いていた。
え? 何で?
「……えっと、ボクが友達でもいいの、かな」
何故か、ユウキは口籠った。
「おう。 ユウキとは、一生仲良くやってけるような気がするしな」
「う、うん。 よろしくね。――……一生、一生か」
ユウキが俯いたので、俺は声をかけた。
「あれ、どうかしたのか?」
「うんん、何でもないよ。 明日頑張ろうね!」
「おう、絶対成功させようぜ!」
俺たちは立ち上がり手を振ってから、俺は転移門へ、ユウキは宿屋へと足を向けた――。
世界樹に突撃ですね。それも高速で(笑)この加速は、キリト君とユウキちゃんしか出来ないんス。
キリト君とユウキちゃんは、出会った初日で友達です(^O^)
そしてキリト君、色々と鋭いっス。
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