ソードアート・オンライン ~IF 黒の剣士と絶剣~   作:舞翼

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書きあげました(笑)
うむ。この話で、キリト君とユウキちゃんの距離が、ぐっと縮みますね(^O^)
原作のアスナ以上かも(多分だが)


第2話≪スリーピング・ナイツ≫

飛翔していたら、目の前に世界樹が見えてきた。 距離は約30メートルだ。

そして俺は、一つの考えが浮かんだ。

 

「なあ、ユウキ。 あの世界樹にどっちが早く到着出来るか勝負しないか? ま、やったら俺が勝つけどな」

 

ユウキは、ムっとした。

 

「それは、ボクが負けるってことかな」

 

「ふっ、飛行では、ALO最強だしな」

 

「ふんだ。 ボクが勝つもん」

 

「「むむむむ……」」

 

二人は、同時に唸った。

この勝負、負けられない。 絶対に勝つ!

俺とユウキは、その場で停止した。 横一列に並ぶ形だ。 俺がポーチから取り出したのは、コインだ。 このコインは、タイマーがセット出来るようになっている。

俺は三秒後に、コインが青い残滓になるようにセットした。

 

「このコインは、俺が投げた三秒後にポリゴンになる。 それが合図でスタートだ。 どうだ?」

 

「OKOK」

 

「よし、いくぞ!」

 

俺はコインを少し前に投げた。

そして三秒後、コインが青い残滓に砕けた。 俺は翅を震わせスタートダッシュを成功させる。

予想通りだが。 ユウキも俺の間横を飛んでいた。

どちらも前を譲らないデットヒートだ。

 

「ぐぬぬぬぬ。 負けられん」

 

「こっち、こそっ」

 

約三メートルといった所で、俺は顔を青くした。

 

「(……やべ。 ランディングの事を視野に入れてなかった)」

 

隣を見てみると、ユウキも俺と同様だった。

……ああ、これは間に合わない。

数秒後。 ドカンッ!という音を響かせ、二人の妖精は世界樹に突撃した。

目を回しながらHPを確認すると、約5割もっていかれた。

俺は、右手掌を額に当てながら立ち上がった。

 

「痛てててて。……ユウキ。 大丈夫か?」

 

「う、うん。 何とか」

 

「まああれだ。 調子に乗りすぎました!」

 

俺は、がばっと頭を下げた。

ユウキは笑いながら、

 

「うんん、全然構わないよ。 それに、あのスピードに着いて来られたの、キリトだけだよ」

 

俺は左手を出し、ユウキも俺の手を取り、引き上がるように立ち上がった。 俺は、ふと思った事を口にした。

 

「あ、そういえば、どっかに行く予定だったのか?」

 

「あ、あーーあ! そうだった! 皆の所に行かないと」

 

ユウキは、声を上げた。

皆ってことは、ギルドの紋章が関係してるのか? 取り敢えず、聞いてみよう。

 

「皆って事は、ギルドメンバーとか?」

 

「そ、そう。 キリトのこと紹介したいんだ」

 

「なるほど。 んじゃ、行こうぜ」

 

「う、うん。って、キリトが仕切ってる!」

 

ユウキは、ぷんぷんと怒った。

いや、まあ、全然怖くないが。

 

「……まあいいけど。 行こうか」

 

「おう」

 

二人の妖精は、再び翅を広げ飛翔を開始した。 ユウキは、24層に広がる湖の上空を一直線に南下すると、アインクラッド外周の開口部から飛び出し、雲を切り裂きながら上昇した。

どうやら、ユウキが向かっている層は、第27層のようだ。 現在の最前線でもある。

苔むした外壁の隙間を縫うように内部へ飛び込むと、視界が暗くなった。 アインクラッド第27層は常夜の国なのだ。

着陸し、手を引かれながら、第27層主街区《ロンバール》にある目的の場所へと案内される。

小さな階段を降り、橋を渡り、目的地の宿屋の前に到着した。

扉を潜り、店主のNPCの横を通り抜けた、その先には――。

 

「お帰り、ユウキ! 見つかったの!?」

 

はしゃぐような少年が、ユウキを出迎えた。

酒場の中央丸テーブルには、五人のプレイヤーが陣取っていた。 他に人影はない。

ユウキは彼らに歩み寄ると、俺の方へ振り向く。 右手を大きく伸ばし、ユウキが胸を張った。

 

「紹介するよ。 ボクのギルド、《スリーピング・ナイツ》の仲間たち。 それで、真っ黒のお兄さんが……」

 

俺は唇を歪めた。

 

「真っ黒とは失敬な。 黒は男の色だぞ」

 

「まあ、うん。 そうだね……」

 

「って、おい! 何だその反応は! てか、名前知ってるだろ?」

 

「この紹介の仕方が面白いと思って」

 

俺はユウキに歩み寄り、頭をぐりぐりした。

まあ、仮想世界なのであまり痛みは感じないが。

 

「痛い、痛いってば。 キリえもん」

 

俺は手を止め、

 

「最初からそう言えば良かったのに……は? キリえもん?――ふぅ、あれだな。 またやられたいと見た」

 

「ご、ゴメンってば、キリト」

 

「ったく。 これだから絶剣さんは」

 

《スリーピング・ナイツ》皆さんの視線に気づき、俺は『やべっ』と思いながら姿勢を正し、ユウキは『あははっ』と乾いた笑みを浮かべていた。

 

「んん、絶剣さんから紹介に預かった、キリトです」

 

「僕はジュン! キリトさん、よろしく!」

 

一番左に座っていた小柄な火妖精族(サラマンダー)の少年が勢いよく立ち上がった。

頭の後ろで小さなシッポを結んだ、オレンジ色の髪を揺らしていた。

その隣には、土妖精族(ノーム)の巨漢だった。 砂色のくせっ毛の下で、にこにこと細められた両眼が豪快な容姿に愛嬌を添えている。

 

「テッチって言います。 どうぞよろしく」

 

続いて立ち上がったのは、ひょっそりと痩せた鍛冶妖精族(レプラコーン)の青年。 丸眼鏡をかけており、学生のめいた印象だ。

緊張してるようで、顔も紅潮していた。 まあ、分からんでもないぞ。 俺もコミュ症だから。

 

「わ、ワタシは、そ、その、タルケンって名前です。 よ、よ、よろしくお願いし……イタッ!」

 

語尾に悲鳴が被ったのは、彼の左に座っていた女性プレイヤーが、重そうなブーツで脛を蹴ったからだ。

 

「いいかげんその上がり性を直しなよタルは! アタシはノリ。 会えて嬉しいよ、キリトさん」

 

ノリは、黒髪と肌黒い肌、闇色の翅を持つ見る闇妖精族(スプリガン)だ。 姉御肌がしっくりくるプレイヤーだ。

最後に、ほとんど白に近いアクアブルーの髪を両肩に長く垂らし、伏せた長い睫毛の下には穏やかな濃紺の瞳が輝いてる、水妖精族(ウンディーネ)の女性プレイヤーがふわりとした動作で立ち上がった。

 

「初めまして。 私はシウネーです。 ありがとう、来て下さって」

 

そして最後に、五人の右にジャンプして並んだユウキが、大きなアメジスト色の瞳をきらきらと輝かせた。

 

「そして、ボクがギルドリーダーのユウキです! キリト、頑張ろうね!」

 

俺は頬を掻きながら、

 

「……絶剣さんよ。 話が吹っ飛びすぎだぞ。 まずは、ここに連れて来た理由をだな」

 

「あ、そうだった。 何にも説明してなかった!」

 

「お、おう、説明しようぜ」

 

俺とユウキの言葉に、五人が一斉に崩れ落ちた。

うん、漫才で笑いを取った気分だぜ。 俺は改めてスリーピング・ナイツのメンバーを見た。

全員が凄まじい手練だと分かった。 何気ない一挙手一投足は、自然で滑らかなものだ。 ここに居る六人は、フルダイブ環境でのアバター操作に熟知していると言える。

 

「えっと、まずは何も説明しなくてごめんね。 ようやく、ボクと同じくらい強い人見つけたんで、つい……。 改めてお願いします! ボクたちに手を貸してください!」

 

「いいぞ」

 

俺は即答する。

これには、スリーピング・ナイツの皆さんが驚いたようで、目をパチクリさせる。

 

「……えっえ。 そんなに簡単に決めていいの」

 

俺は、腕を組みながら頷いた。

ユウキは、心底驚いたような顔をしていたが。

 

「まあな。 俺の予測だが、ユウキたちは何かをやり遂げようとしてるんだろ?」

 

「す、凄いね、キリトは。 その通りだよ」

 

「ふ、褒め称えるがいい」

 

「はいはい、凄い凄い」

 

と、ユウキに軽い口調で言われてしまう。

ギルドメンバーは珍しい物を見てるかのようだった。 はて、何故だろうか?

 

「どんな事に挑戦しようと思ってるんだ?」

 

俯き、はにかむように唇をもごもごさせながら、上目遣いで俺を見たユウキはやり遂げたい事を口にした。

 

「……ボクたち、この層のボスモンスターを倒したいんだ。 このメンバーだけで」

 

新生アインクラッドのフロアボスは、旧SAOに比べるとかなり強化を施されてる。

現に、連結部隊(レイド)49人が全滅した話も珍しくない。

無謀な挑戦もいいところだが、手を貸す以上はやり遂げて見せる。

 

「俺を入れた七人でボス攻略ってことでいいのか?」

 

ユウキは頷いた。

 

「うし、了解した。 大船に乗ったつもりでいるんだ」

 

「……泥船じゃないよね」

 

「そ、そんな訳ないじゃないか」

 

俺とユウキの漫才を見ていた、スリーピング・ナイツ五人は、吹き出して笑っていた。

ジュンに限っては、腹を抱えて笑っていたが。

皆が落ち着いた所で、俺が口を開く。

 

「えっと、話を纏めるとこういうことか? ボスを一緒に倒してくれる助っ人が欲しかったから、あの島でデュエルを行っていた。 で、そこで見つけた助っ人と協力して、第27層のボスを倒し、七人の名前を、第一層《はじまりの街》にある黒鉄宮、そこの《剣士の碑》に刻みたい。 こんな感じか」

 

俺がそう言うと、シウネーと名乗った水妖精族(ウンディーネ)が口を開く。

 

「キリトさんのその解釈で概ね合ってます。 では、何故なのかを詳しく説明した方がいいですね。 どうぞ、座ってください」

 

俺を含めた七人がテーブルの椅子に座り、NPCウェイトレスにオーダーした飲み物が並んだ所で、シウネーが落ち着いた声で喋り始める。

 

「キリトさんはもうお察しかもしれませんが、私たちはこの世界で知り合ったのではないんです。 ゲームのとあるネットコミュニティで出会って……すぐに意気投合して、友達になったのです。 もう……二年も経ちますね」

 

シウネーは、何かを思い出すように言葉を切った。

 

「最高の仲間たちです。 みんなで、色々な世界に行って、色々冒険しました。 でも、残念ですが、私たちが一緒に旅をできるのも、たぶんこの春までなんです。 みんな……それぞれ忙しくなってしまいますから、そこで私たちは、チームを解散する前に、一つ絶対に忘れない思い出を作ろうと決めました。 無数に存在するVRMMOワールドの中で、一番楽しく、美しく、心躍る世界を探して、そこで力を合わせて何か一つをやり遂げようって。コンバートを繰り返して、辿り着いたのがこの世界なのです」

 

シウネーは仲間たちの、ジュン、テッチ、タルケン、ノリ、ユウキの五人を見回し、五人もそれぞれ顔を輝かせて大きく頷く。

俺は相槌を打った。

 

「それが、ここALOであり、《剣士の碑》ってことだな」

 

《剣士の碑》に刻める名前は最大七人。 つまり、一パーティーでボスを倒せば全員の名前が刻まれるが、それが連結部隊(レイド)になってしまうと、記載されるのは各パーティーのリーダー名になってしまうのだ。

 

「碑にスリーピング・ナイツ全員の名前を残そうと思ったら、一パーティーのみでボスを倒す必要があります。 私たち、25層と26層のボスを相手に一生懸命戦ったのですが、あと少し及ばなくて……。 そこで皆で決めたんです。 パーティーの上限は七人なので、あと一人分だけ空きがあります。 僭越な話ですけど、私たちの中で最強のユウキと同じか、それ以上の強い人を探して、パーティーに加わってくれるようにお願いしてみよう、って」

 

俺は詰めていた息をそっと吐いた。

 

「なるほどな。 さっきも言ったけど、助っ人の件は引き受けるぞ。 一パーティーでボス攻略っていう、前代未聞をやってやろうぜ。 俺も最善を尽くす」

 

俺がそう言うと、ユウキは笑みを零し、シウネーたちはパッと輝いた。

 

「あ、ありがとうございます! ですが、私たちはコンバートして余り経っていないので、十分なお礼が出来ないですが……」

 

「いや、いいって。 こんな貴重な経験ができるんだ。 礼は、それだけで十分だ。 あ、俺から一つだけ。――ぶっつけ本番で、ボスの行動パターンを得て攻略な。 全滅は許さんぞ」

 

「「「「「えッ!」」」」」

 

《スリーピング・ナイツ》メンバーは同時に声を上げた。

最初の偵察で、全滅する前提だったのかい。 ま、全滅は許さんが。 それから、皆が都合の良い時間聞いたが、ノリとタルケンは夜がダメらしく、明日の午後一時に再びこの宿屋に集合となった。

 

「んじゃ、明日頑張ろうぜ!」

 

「「「「「「おぉ!」」」」」」

 

《スリーピング・ナイツ》メンバーは、片手を上げて応えた。

俺は立ち上がり、片手を上げ宿屋からお暇することにした。 《ロンバール》中央広場にある転移門を目指して歩く。

その時、右肩がぽんと叩かれた。 俺はそちらに振り向く。 其処には、ニッと笑みを浮かべたユウキの姿があった。

 

「おう、どうかしたか?」

 

「うん、改めてお礼をと思ってね」

 

「なるほど。 此処じゃ何だし、あそこに座ろうぜ」

 

俺が指差したのは、横長の木製のベンチだ。

椅子に、俺たちは腰を下ろした。

 

「今日はありがとう。 感謝しきれないよ」

 

「そこまで言われると照れるぞ。 まあ、今日はビックリの連続だったからな」

 

今日は、絶剣とデュエルのはずなだけだったのだが、ユウキの仲間たちに出会い、そこからボス攻略と。 ビックリの連続である。

 

「ま、その言葉は、名前が刻まれるまで取っておいてくれ」

 

「そ、そうするね。 ボクにできる事なら聞くよ。 あ、えっちぃことはなしね」

 

「……えっちぃって。 そうだな、友達になってくれ。 ユウキとは、馬が合いそうだ」

 

ユウキは目を見開き、驚いていた。

え? 何で?

 

「……えっと、ボクが友達でもいいの、かな」

 

何故か、ユウキは口籠った。

 

「おう。 ユウキとは、一生仲良くやってけるような気がするしな」

 

「う、うん。 よろしくね。――……一生、一生か」

 

ユウキが俯いたので、俺は声をかけた。

 

「あれ、どうかしたのか?」

 

「うんん、何でもないよ。 明日頑張ろうね!」

 

「おう、絶対成功させようぜ!」

 

俺たちは立ち上がり手を振ってから、俺は転移門へ、ユウキは宿屋へと足を向けた――。




世界樹に突撃ですね。それも高速で(笑)この加速は、キリト君とユウキちゃんしか出来ないんス。
キリト君とユウキちゃんは、出会った初日で友達です(^O^)
そしてキリト君、色々と鋭いっス。

ではでは、感想、評価、よろしくお願いします!!

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