オーバーロード〜不死人と聖職者〜   作:倒錯した愛

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挑戦的なサブタイ(?)で始まります。
お久しぶりです皆様。
そういえばこっちも書いてないなー、って思いつつさくさくっと執筆しちゃいました!
内政?外交?回ですかねたぶん。
それではご覧あれ!


信仰心(持ってる人には辛いと思う)

no side

 

 

ナザリック地下大墳墓防衛主任を任されたヴィクトリアは、数日ぶりに眠りから起きて久しぶりの食事にありつくために食堂に入った。

 

朝の時間ともあり、多くのナザリックNPCが食事を取る中、空いている席にブレックファーストを載せたお盆を持って座るヴィクトリア。

 

目の前に突然組織のナンバー2が現れたことに驚愕する、それまで少し行儀悪く食事をとっていた彼らは姿勢を正して椅子に座りなおして慣れないテーブルマナーを守ろうとする。

 

それにヴィクトリアは微笑んで気遣いはいらないよ、と言った。

 

ヴィクトリア自身、テーブルマナーなどリアルでのデートで使う程度だったため、それほど詳しくないため自分ができるか不安だったからそう言った。

 

NPC側はそうとは知らず、ヴィクトリアに気を遣わせてしまったと少し意気消沈し、気合いを入れ直して次は失態を繰り返さないことを誓ったのだった。

 

「うーん…………マーレ君にやってもらおうかな」

 

朝食を終えたヴィクトリアが早速取りかかったのは、ナザリック地下大墳墓の偽装工作、外から見たナザリック地下大墳墓は巨大な遺跡のように見えるため、金目の物目当てで侵入される可能性が高いと思った。

 

なら覆い隠すように地形を変える、もしくは樹木で壁をつくって仕舞えばいい、いっそ森にしてもいいんじゃないか?とヴィクトリアは考えた。

 

いつかあるであろう防衛戦の時に有利なのは、土で覆って土嚢として機能させることだ、しかしナザリック地下大墳墓の入口の壁に泥を塗りたくる真似をナザリックNPCが取るはずがない。

 

そこで、壁に接触しないように距離を置いて丘を作り、丘の周辺に木を植えて森にしてしまおうという考えに至った。

 

第6階層に転移し、このことをマーレに伝える。

 

「…………ってことなんだけど、協力してくれるかな?」

 

「は、はい!………で、でも、ボクなんかで大丈夫なんでしょうか…………」

 

マーレは気弱な男の娘………男の子だ、俯いてヴィクトリアと視線を合わせないようにしてそう言う。

 

マーレはヴィクトリアのパルジファル・ロンギヌスを見て、姉のアウラとは違い素直にすごいとは思えなかった。

 

ダークエルフであるマーレは直感でヴィクトリアのあの技が聖属性の極みに達していることを見抜いた、そしてかすりでもしたらモモンガすら消滅するという恐ろしさ。

 

マーレは知らないうちにヴィクトリアに恐怖を覚えていた、そんな自分を大いに恥じた、だが恥じたところで恐怖は拭えない。

 

「あはは、じゃあ言い方を変えるね、これは君以外にはできない仕事なんだ、やってくれないかな?」

 

優しい目と声で同じ目線から語りかけてくれるヴィクトリアにすら、マーレは恐怖しているのだった。

 

「は、はい」

 

この恐怖の原因が、ヴィクトリア自身の持つあらゆる装備によるものだとは、誰も気づけなかった。

 

マーレは恐怖を感じながらヴィクトリアの願い事を承諾し、ナザリック地下大墳墓の入口に来ていた。

 

「それじゃあ、始めて」

 

「は、はい!」

 

ヴィクトリアは自分が怖がられる理由を考えつつ、マーレに軽い調子で指示する、マーレの表情はまだ硬い。

 

「ーーーーー……えい!」

 

マーレが詠唱を唱え杖を掲げると、ナザリック地下大墳墓の入口付近に深い深い堀が出来上がる。

 

そしてその深さの分だけナザリック地下大墳墓を囲む丘の高さも高くなる。

 

しばらくすると、今度は出来上がった丘から樹木が複雑に生え出し、蔦がそれらに絡まって、巨大な森が出来上がった。

 

誰も彼もを寄せ付けない強固な結界を随所にトラップとして配置した広大な森が完成した。

 

「ありがとうマーレ、これならきっと、モモンガさんもきっと喜んでくれるよ」

 

「そ、そうでしょうか?」

 

「間違いないよ、褒めてくれるはずだよ」

 

ヴィクトリアはマーレの仕事ぶりに感心した。

 

頭の中の設計図やイメージをできる限り伝えたつもりであったが、やはり不安もあった。

 

しかし完成した森を見るとどうだろうか、文句のつけようのない、200%の最高の出来だと確信した。

 

ヴィクトリアはマーレをよく褒めてあげるように、と内心モモンガに具申しておくことにした。

 

「お仕事お疲れ様、ちょっと左手を出して」

 

「え?……はい」

 

ヴィクトリアはマーレの左手を取るとアインズ・ウール・ゴウンの指輪をアイテム欄から取り出した。

 

手を取られたマーレは、ヴィクトリアの柔らかくて暖かい手の感触に、それまでの恐怖の感情も何もかも忘れて赤面した。

 

女の子の格好をしていたとしても、マーレも男の子だ、見目麗しい女の子に手を取られればそれなりの反応はするのだ。

 

「これを………」

 

指輪をそっと左手薬指にはめる、満足げにうなづいたヴィクトリアは手を離した。

 

「………これはなんですか?」

 

「これはね、このナザリック地下大墳墓を自由に転移できるマジックアイテムだよ」

 

「えぇ!?そ、それって、至高の41人の方にのみ許されるアイテムじゃ………」

 

「今は欠員が多いし、いざという時…………敵が攻めて来たときに、防衛をしなくちゃいけない、そういう時に素早く移動できれば、守りやすいんじゃないかって」

 

「そんな………ボクがこんな扱いを受けても、よろしいのでしょうか?」

 

「全員に配る予定だったんだ、その中でもマーレの能力はとても重要だったから、早めに渡しておこうってね」

 

「そうなのですか……」

 

マーレは左手薬指にはめられたアインズ・ウール・ゴウンの指輪を見てニコニコと微笑んだ。

 

ヴィクトリアはそれを見つめてほっこりした気分になりつつ、モモンガとの脳内萌え談義を加速させた。

 

「数日後にアインズさんが召集をかけると思うんだけど、その時に一回指輪を返してね」

 

「え?」

 

「全員に渡す予定をちょっと繰り上げてマーレにだけ渡してるわけだからね、一旦指輪を返してもらって、で、改めてナザリック地下大墳墓の首領、アインズ・ウール・ゴウンから直々に手渡しするから」

 

「アインズ様から手渡しで!?そんな!そんな………身に余る光栄です!」

 

マーレはまさに喜色満面といった様子で、未来の指輪の授与式を想像して普段はしないであろうにへらっとした表情になった。

 

「アインズさんが………ナザリック地下大墳墓のアインズ・ウール・ゴウンのギルドマスターとして命令したり贈る物は何であれ、41人の総意なんだ」

 

「!!」

 

ヴィクトリアの珍しい伏し目がちなその言葉に、マーレの表情は固まった。

 

姉であるアウラと自分を作ってくださったぶくぶく茶釜様はもういない…………その現実が、強く突き刺さった。

 

「今は遠いところの世界で戦っている、ここにいない39人の思いを信じて……………アインズさんに、アインズ・ウール・ゴウンに従って欲しい」

 

「…………喜んでお仕えいたします」

 

「ありがとう、マーレ………」

 

マーレにぶくぶく茶釜の面影を見ながら、ヴィクトリアは悲しそうな目で感謝の言葉を出した。

 

『というわけなんで、モモンガさんあとよろ』

 

『えぇぇ!?散々焚き付けておいて丸投げですか!?』

 

『いいじゃないですかー、より一層の忠誠を誓ってくれますよ?今まで以上に尽くしてくれますよ?』

 

『確かにそうですけど………魔王キャラ難しいんですよ!?低い声で難しい言葉回しをしていかなきゃいけないんですから!』

 

『まあまあ、僕も補佐しますし……………というか、それが一番楽しいんじゃないですか』

 

『もちろん楽しいですよ!魔王キャラロープレ夢だったんです!』

 

『禿同!僕もそーなんですよお!神官様キャラロープレ最高っす!』

 

『まったく、ユグドラシルは最高だぜ!……あっ(沈静化)』

 

『あっ(察し)』

 

シリアスな場面でも、やはり脳内は相変わらずな2人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって、セバスは悩んでいた。

 

あの時、第10階層でヴィクトリアと交わした言葉。

 

〈あんなの大したものじゃないよ、派手に見えるけど攻撃力は低めだし、何より発動までが遅いしね〉

 

【慈悲深き聖槍(パルジファル・ロンギヌス)】、すべての魂を祓い清め天上へと導く…………ヴィクトリアの必殺技にしてアインズ・ウール・ゴウン、そしてユグドラシルにおける最高火力の技。

 

いつしか創造主から聞いた、戦場にて勇敢戦った戦士たちの魂を導く存在、ヴァルキリーが如く技である、と、セバスは感じた。

 

膨大な圧力、圧倒的なパワー、直視出来ぬほど眩い閃光…………主であるモモンガの言葉よりも、あの時、あの村で、遠くで爆ぜた黄金に輝く十字架が、セバスの自らの創造主のたっち・みーを凌駕していることを察した。

 

しかしヴィクトリアは。

 

〈『劣化版』に過ぎない〉

 

と言った。

 

たかが劣化だと、そう言い切った。

 

では、そのたかが劣化版の技に、セバスの創造主であるたっち・みーは劣るのか?と…………。

 

「っ!!」

 

そこで慌てて考えを打ち切る、そして猛省する、何をバカなことを考えているのだ、と。

 

ヴィクトリアは対外的なポーズでも何でもなく、ただ純真にアインズ・ウール・ゴウンのメンバーとナザリックのNPCをひっくるめた全員を想っている。

 

それは嘘偽りの無いものであると、ナザリックの皆が感じていることだ。

 

そんなヴィクトリアがたっち・みーを侮辱するようなことはするはずが無いのだ、それすらも考えられなくなるほどに、セバスはあの時の言葉に酷く困惑し、焦燥していた。

 

セバスは思い返す、ここ数日の間、何度もメイドに体調を心配されたことだったかと…………セバスは、拳を固く握り締め、自らの不忠を酷く呪った。

 

そんな時であった。

 

「あれ?セバスじゃないか、どうかした?」

 

「ゔぃ、ヴィクトリア様………いえ、何でもございません」

 

偶然にも目の前に転移して現れたヴィクトリアに驚きどもってしまうセバス、いつもは目の前に転移されようが全く動じないセバスなのだが、先ほどまで考えていたことの元凶が突然現れれば驚くのも無理ない。

 

「もしかして怪我でもした?」

 

「そのようなわけでは……」

 

真っ先に自分を心配するヴィクトリアに、ここまで広い御心を持って自分たちを包んでくれる至高の存在を、自らの創造主たっち・みーと同等であるヴィクトリアを、比べてしまうなどなんと浅ましく嫌らしいことか………と、セバスは大きなショックを受けた。

 

当のヴィクトリアは、少しでもダメージを負った味方を全快したいというヒーラー職としての血が騒いだというだけであるのだから、なんともはた迷惑な至高の御方である。

 

「そう?なら丁度いいや……………セバス、実はお前には教えておこうかと思ってな、私の種族について」

 

「!!………教えていただけるのですか?」

 

中二病モードに入ったヴィクトリアの発言に姿勢を正して周囲の気配を探るセバス、アルベドと互角かそれ以上とも言えるパラメータ値を持ってして調べた所、付近に盗み聞きをしようというやからはいなかった。

 

「気にする必要はない、結界を張っておいた、誰も近寄らんさ」

 

「御配慮、感謝いたします」

 

戦闘能力に特化した守護者統括のアルベドに迫るセバスすら知覚できないヴィクトリアの無詠唱の『人払いの結界』が、ヴィクトリアが転移してきた時には既に張られていたのだ。

 

「さて、では話そうか、私が人間あるわけを」

 

そこからヴィクトリアは、セバスに自分の秘密を打ち明けた。

 

「私の本来の種族は、『ミスト』、思念が霧状の物体として集まり、1つの人格として構築された異業種だ」

 

「『ミスト』…………」

 

「そもそも、『ミスト』という名称はただの俗称だ、人間たちが付けた勝手な呼び名さ、楽だから私もミストと言っているに過ぎない………そして、私はもともとミストだったわけではないのだ」

 

「…………最初は、人間であった、と?」

 

「『人間に近いもの』だった、と言うべきか、長年生きてきた私は、ある日殺された、『ヴィクトリア・ローゼによってな』」

 

「なっ!?………」

 

セバスも思わず驚きの声をあげ、後退った。

 

「私は死の間際に、自らの思念をミストとして肉体と別離し、ヴィクトリア・ローゼの精神に入り込んだ」

 

「で、では………あなた様の名前は…………」

 

「私の名は…………ラインハルト、ラインハルト・エーデルヴァイス」

 

「ラインハルト様………」

 

齢16の少女とは思えない威圧感を放出するヴィクトリアの精神に寄生した思念体、ラインハルト・エーデルヴァイス。

 

セバスが一瞬、ラインハルトの髪の毛が黄金に輝いたように感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴィクトリア(ラインハルト)side

 

 

ひゃああああああっっふうううううう!!!

 

ネタバレ!盛大なネタバレ!!

 

驚いた?ねえ驚いたセバス!?

 

みんなの聖女ヴィクトリア・ローゼちゃんは、なんとラインハルト・エーデルヴァイスという人外でした!

 

一般にミストって珍しい種族だし、セバスも知らなかったのは無理ないとしても、他のNPCの誰も見破れなかったんだろうと思うとすっごく気持ちい!ヴィクトリア・ローゼの精神や魂と同調してるからかな?

 

あ、ヴィクトリア・ローゼちゃんは別アカウントで作った……のを貰ったキャラなんだよ。

 

ユグドラシルやってた先輩が辞めるって言ってキャラデータ寄越してきたから、折角ミスト選んだんだし寄生しよう!ってなったんだよね。

 

でもいざ寄生したら大変!防御力と回復魔力と諸々の耐性値に極振りかましてるネタキャラだったっていう酷い落ちがついてきたんだよ!

 

そのために一回ミストに戻ってスキルの割り振りとか、その途中で考えたアレとか、色々な実験を繰り返して、やっとのことで寄生したんだよ。

 

異種族には人間(ミスト)って感じにステータスに表記されるんだけど………どうやら異種族でもNPCにはそういうようには見えないらしい。

 

あっ、もちろん寄生前にもちゃんとボディがあったよ、というかボディがないとミストって攻撃ができないんだよね、だから初期状態だとクッソ弱いボディを貰えるけど、基本は乗っ取りで強くなる系の異色な異種族なんだよね。

 

結構愛着もあった初代ボディも、今は抜け殻なんだけどね、この世界にボディがきてるかはわからないけど、来てるんだったらちょっと面白いことができるよね。

 

そういえば似た異種族にゴーストがあったっけ?できることはポルターガイスト程度だった気がするけど。

 

「…………で、今はこのボディだけど、元のボディが復活すればそっちに戻る予定だから、それまでは今まで通りヴィクトリアでいいよ」

 

「は………はっ、かしこまりました」

 

「それじゃあ、僕はちょっと用事があるから行くね」

 

そう言って僕は転移する、アウラちゃんに会うために。

 

マーレちゃんが作った森は最高以上の出来だったから、どうせなら森のダンジョンにしたほうが面白そうだと思ったんだよね。

 

ダンジョンではあるけど、同時に動物園としても使えるならこれ以上ない価値を埋めるよね!

 

あっ、ゾンビは動物に含まれるのかな?うーん………アウラちゃんの飼ってる動物的に食物連鎖の底辺になりそうだけど、一応は生物だし、入るよね。

 

さってと!アウラちゃんにモンスターとトラップ配置してもーらおう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

no side

 

 

カッ、カーッ、カッカッ、カーッ…………。

 

歪な形の石版に石筆で模様を描いていくヴィクトリア、しばらくして完成したものを子供達に見せて言った。

 

「では、この言葉がわかる人ー?」

 

「「「はーい!」」」

 

「うーん、じゃあそっちの君!」

 

「『家』ー!」

 

「正解!ちゃんと覚えてたんだね、えらい!」

 

何をしているかというと、子供たちに文字による言葉を教えていたのである。

 

この世界の文字はユグドラシルの文字とは違うことはモモンガもヴィクトリアも周知のことである。

 

冒険者登録するための街を下調べした際、文字が様々なところに使われていることを知り、思うよりかは識字率は低くないこともわかっていた。

 

大して高くはないが、それでも文字をかけないようでは今後色々とツライだろうと、そう結論が出て解読に取り組み始めたが、なかなか進まない。

 

そんなおり、優秀なデミウルゴスの降って湧いたような発言によってヒントを得、それまでの苦労が嘘のように、それこそ2時間も入らずに文字の解読ができたのである。

 

その降って湧いた発言というのは『何と無くユグドラシルの魔法文字に似ておりますね……』であった。

 

デミウルゴスのつぶやきに反応したモモンガとヴィクトリアは『え……………あーーーー!!!似てる!!』と脳内で全く同じ反応をしたのだとか。

 

何はともあれこれで新米冒険者モモンガ(予定)と聖職者(悪魔)は文字を読むことができるようになったのだ。

 

さらに、生来の探究心の高さから文字を書くこともできるようになったヴィクトリアは、こうして村に赴いては子供達に文字や計算を教えるプチ教室を開いていた。

 

聖職者は施しを受けてはいけない、だがこうして教育することで貰うものがあるのならそれは報酬である、という持論によってついでに村長と村の宿屋の宿泊権を得る契約をした。

 

さらに基本治ることが少ないいうな難病や、大きな都市の名医に大金を払わなければ治療してもらえないような重病の村人を治療して周った。

 

当然ながら元患者やその家族はほぼすべての金銭や財産をヴィクトリアに渡そうとしたが。

 

「お代は信仰として返してくれればいいんです、健やかに生き、日々祈りを捧げ、愛を育んでいくことこそ、神々への最大の貢献なのですから」

 

と笑顔でもって説き伏せた、もはや村人からは聖人レベルの評価を受けるヴィクトリアであるが、やった後でやりすぎたかなぁと少し考えた。

 

数分後には、まあいいか、と適当になったのは言うまでも無い。

 

「信仰を広めることで、いつの日か神を信ずる者同士で助け合える世が来ることを願っているのです」

 

と、それらしいことを言うもやはりやりすぎた感はあるようで、後日デミウルゴスにそれについて追求されてしまった。

 

だがヴィクトリアは言った。

 

「病気くらいは魔法で直せるけど、村が裕福になったり、お金が湧いたりしたわけじゃないからね、マイナスをゼロまで引き上げただけだよ、そこからプラスに持っていくかどうかは村の人達次第」

 

「では、ヴィクトリア様はあの人間どもにプラスになるようなことはしていないと?」

 

「そうなるね、もし僕が本当にプラスになることをするとしたら…………そうだね、まずは村全体を木の柵で囲うなりして物見櫓を立てて、道を舗装して、農作についても改善点を提示して、診療所の診察について正しい知識を与えて、栄養失調にならないようなご飯の作り方を教えたり…………とにかくたくさんあるけど、僕がやったのは診療所や大都市の病院の仕事を奪ってタダで病気を消しちゃっただけだからね」

 

「なるほど、わかりました…………して、ヴィクトリア様は今後村の動向についてのお考えのほどは?」

 

「うーん……そうだねえ、村を基点に、僕たちの神様への信仰を募ろうかな」

 

「ヴィクトリア様の神?…………失礼ながら申し上げますが、いかな神であろうと至高の御方の皆様には遠く及ぶものではないと思っているのですが………?」

 

「ふふっ……………信仰とするのは神すら超越する至高にして唯一無二の存在、次元の壁を超えて、別の世界で戦い続ける今はここにいない、あの人達のことだよ」

 

「っ!?…………そ、それは………」

 

ウルベルト様を含む、残る39人の至高の御方々のことですか?

 

そう声に出そうとするデミウルゴスだったが、あまりの驚きと同時に湧き上がる歓喜の感情がそれを妨げる。

 

創造主たるウルベルト・アレイン・オードルが、この世界中の人間どもの崇拝の対象になる…………。

 

「(なんたる…………なんたる……甘美ッッッ!!!!!)」

 

人間どものその子々孫々、その心の奥に、深く、深く刻みつけるように植え付ける、今はいない至高の39人への信仰心。

 

「向こうの世界で戦うなんてちょっと羨ましい気がするけど………せっかくなんだ、僕らで39人のことを、アインズ・ウール・ゴウンのことを広めてやろうよ」

 

「(あぁ…………あなたは…………………実在するとは、思っても見ませんでした…………ですが………)」

 

「デミウルゴスはどう………ってどうしたの?」

 

「なんでも…………なんでも、がじゃいまぜんッッッ!!!!(愛の女神様は、ヴィクトリア様のことだったのですね………)」

 

感極まり号泣するデミウルゴス、普段は絶対に見せない弱い面に、ヴィクトリアは戸惑いを感じるが、目の前で泣き顔を見せてくれるくらいには信頼を得れたのだと、嬉しさを感じた。

 

「(う〜〜ん……デミウルゴスの泣き顔は超レアだね!やたぜ!)」

 

「(私、より一層励みにさせていただきます!!!)」

 

デミウルゴスの決意とは裏腹に、ちょっとゲスいヴィクトリアであった。




思ったけどデミウルゴスが号泣するって普通に考えてほぼ不可能ですね。
まあナザリックNPCが至高の御方狂信者と考えればあり得なくはないんですが。

次回は………うーんちょっと地味になりますかね?
戦闘向きじゃないので(大嘘)

それでは次回(n年後)をお楽しみに!

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