オーバーロード〜不死人と聖職者〜   作:倒錯した愛

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防御力と回復魔力以外に目立った特徴もなかった主人公ヴィクトリア君の、本気の一撃………。
なお、弱点山盛りの模様。


創造(ブリハァ〜〜〜♡)

ヴィクトリアside

 

 

村に接近中の人馬約30体を遠視魔法でよく観察すると、誰も彼もが西洋風の甲冑を身に纏い、抜き身の西洋剣を持ち背中には盾を背負っている。

 

抜き身のままこっちに突っ込んできているということは、敵ということで間違いないかな。

 

まずは、村長さんに報告だよね。

 

「村長さん、少しよろしいでしょうか?」

 

「何でしょうか神官様?」

 

「この村に、騎士と思わしき者が30人ほど馬に乗って来ていますが、何かご存知でしょうか?」

 

「いえ、そのような者たちのことは………」

 

知らない様子だね、村人に被害が出る前に避難させておいたほうがいいかな、もしも死んだら蘇生魔法で生き返すことができるけど、MPの無駄遣いは御法度だからね。

 

「急ぎ村のみなさんを避難させてください、否な予感がします」

 

「は、はい、すぐに呼びかけます!」

 

村長さんが村の人たちに避難するように伝えながら走っていく、僕は立ち上がって使い魔を召喚する。

 

使い魔といっても、戦闘用じゃなくて偵察に特化したただの白い鳩なんだけどね。

 

まずは情報が先決、騎士の集団の他に敵がいないか………たとえば、騎士を囮に魔法師たちによる包囲殲滅作戦、もしくは足止めか陽動……。

 

って、いくつか可能性をあげてみたけども、この村に騎士を囮にしてまで魔法師で包囲する必要があるほどの重要な何かがあるわけじゃないし、村長さんいわく高価なものなんてせいぜい下級ポーション(ユグドラシル計算)くらいのもので、値段はまあそこそこするものの、殺してでも奪い取るほどのものじゃない。

 

となると、騎士風の格好をした盗賊団か何か、ってところが妥当なんだけど………それにしたって統率が取れすぎてる気が。

 

「神官様!避難が終わりました!」

 

「あ、ありがとうございます村長さん」

 

「い、いえ、それより神官様、あなた様もお早く!」

 

「僕は彼らと話してみます」

 

「しかし、危険です!いかに神官様といえど、相手は騎士が30人、避難を!」

 

いい人だなぁこの人。

 

「まずは話を聞きませんと、問答無用で暴力にでるのは野蛮人でしかありません」

 

何とか村長さんを説き伏せて、村の中央の広場にて魔法を連続で使用する。

 

詠唱高速化、無詠唱化、広範囲索敵、魔法によって村中に『目』を配置、上位の物理攻撃を反射する魔法、上位の魔法攻撃を反射する魔法、もしもの時のための自動防御魔法など。

 

あらゆる魔法による監視網とトラップを構築完了、あとはメッセージでモモンガさんに連絡して。

 

『モモンガさん、今ちょっといいですか?』

 

『ヴィクトリアさん?何かありましたか?』

 

モモンガさんは意外にもメッセージに素早く返信してくれた。

 

『えぇはい、僕のいる村に騎士風の格好をした者たちが30体ほど、剣を振りかざして接近中なんですよ』

 

『えっ!?ちょっと待っててください…………見えました、確かに、30体ほどいますね』

 

『今村を襲われると貴重な情報源が無くなってしまうので、何とか死人を出さずに追い払うか皆殺しにするかしたいんです』

 

『そうですか………なら、アルベドを完全武装させてそっちに送りましょう』

 

『あ………できればセバスかユリ・アルファでお願いできませんか?』

 

『セバスとユリ、ですか?………あぁ、『善』だからですね?』

 

『聖職者と見られてる僕が、人間嫌いの悪魔を連れてたら信用なくしますから………それ以外にも、セバスとユリならパワーをセーブできますし』

 

それに、アルベドの完全武装ってどう見ても悪魔の首領にしか見えない上、素手で殴っただけで生暖かいイチゴのカキ氷が出来上がっちゃうしね………。

 

『わかりました、ではセバスとユリには適当な武器を渡して送ります』

 

『ありがとうございます、助かります』

 

セバスとユリなら手加減できるし、適当に剣でも持たせておけば、熟練の剣士とその娘程度には見えるから大丈夫………って考えたんだろうね、モモンガさん、いいアイデアだと思う。

 

まあでも、セバスは変身した方がめっぽう強いんだよね………セバスの人型体型はナメプの証。

 

メッセージをきると遠くから馬の脚が地面を蹴る音が聞こえてくる、いつの間にか近づいてきていたようだ。

 

トラップは張ってあるしいつでも発動できる、保険のためのカウンター魔法も万全、いざという時のための自動防御魔法もある。

 

モモンガさんに頼んだ処理要員もすぐに来るだろうし………やることねぇ!ってわけで座って待とうかな。

 

どうあがいても僕はヒーラーだしぃ、防御力特化・回復魔力特化、んでもって火力はアンデット以外にはクソ雑魚ナメクジですしぃ、つまるところ死ななきゃ良いんですぅ、最後の1人になっても仲間を蘇生できますしぃ。

 

かといって攻撃力を疎かにしていい理由にはならないんだよねぇ、厳しいけど………。

 

ん、魔法無しでも走ってくる馬の姿が見えてきた。

 

まずはあいさつから。

 

「こんにt「皆殺しだぁ!野郎共!」」

 

…………あれ?止まる気配無し?というか突っ込んで………はいっ!止まらないしなんか危ないから敵確定!!

 

「『攻撃回数増加』!、『ホーリースピア・レイン』!」

 

スピードを緩める様子なく突進を続ける敵に向け、攻撃回数を増加させたアンデッド系に特効ダメの攻撃魔法を唱える。

 

とっさに出たのが対人系のファイヤーボールとかじゃないってのが、対人慣れしてない証なんだよね………加えてさっきかけておいた数々の防御・カウンター魔法をど忘れして攻撃しちゃってるっていうね………。

 

こう見えて、24歳(嘘)、初心者です(レベル100)。

 

初心者でもやらなさそうなミスをやりつつも、発動させた魔法、『ホーリースピア・レイン』を敵の頭上に落とし続けるのをやめない。

 

降り注ぐ聖なる槍が地面に突き当たり、弾け、砕け散った聖なる力の結晶が、人馬をこの世界から消し飛ばしていく。

 

魔法の発動から3分も経たないうちに悲鳴が聞こえなくなった、見てみると敵である騎士風の兵士も馬も皆消えてしまっていた、呆気ないくらいだった。

 

ホーリースピアの爆発によって文字通り消滅した人馬たち、誰か1人くらい捕まえておけば情報を得られたかもしれない………完全にそこらへん考えてなかった、やっべ、モモンガさんに怒られるやっべ。

 

とりあえず隊長格っぽいの蘇生して………。

 

「『リザレクション』」

 

蘇生魔法を唱えるとあらゆる方向から光が集まっていき、光が収まると先ほど消滅させた騎士風の男がいた。

 

「は、はぁ!?お、おおお俺は、死んだんじゃぁ………」

 

「君、少しいいかな?」

 

「あぁ!?なんだてm………あ、あんた……じゃなくてあなたは!?もしや俺……わたくしを生き返らせてくださったのですか!?」

 

え?何こいつ、黄金の理解力でも持ってんの?これが輪廻転生ってやつ?多分違うねうん、ってかこっわぁ………これじゃおいおいと蘇生魔法も使えないよ。

 

「そうだけど……神のお告げで君を生き返らせることがより良い事に繋がると言われただけだよ」

 

「なんと!?神が!!…………おぉ……神よ……」

 

感極まったのか泣いちゃったよこの人………めんどくさ。

 

「早速で悪いけど、君たちのこと、教えてくれないかな?」

 

「はい!わたくしはスレイン法国の一兵士で、ここリ・エスティーゼ王国の領土にバハルス帝国の甲冑を着て踏み入ったのは、王国戦士長であるガゼフ・ストロノーフを罠に誘き出すべく、おとり部隊の指揮を取っておりました!」

 

へぇ、ここって王国なんだ、それで彼は法国の兵士で、帝国の鎧を着て襲撃したわけだ。

 

「そのガゼフ・ストロノーフという人は、どんな人物なのかな?」

 

「はい、あの男は王国最強の戦士であります、一兵卒のわたくしでは足元にも及ばぬ強さです!」

 

うん、中位魔法で文字どおり消滅するような人間だしね君、だからそのガゼフ・ストロノーフという男の戦闘力が全く測れなくて困るなぁ…………足元にも及ばないんじゃ情報としての価値はないか。

 

「次聞くよ、罠っていうのは具体的には?」

 

「スレイン法国が陽光聖典、その特殊部隊、総勢40名でございます」

 

「武装は?」

 

「全員腕の立つマジックキャスターで、中でも隊長のニグン様は、強力なマジックアイテムを承ったとの噂です」

 

噂ねえ………用心に越したことはないかな、腕の立つ魔法使いが1個小隊ほどというのがちょっと厄介かな、範囲攻撃系魔法はほとんど持ってないしねぇ。

 

とりあえず…………。

 

「ありがとう、名も知らぬ兵士君」

 

マジックポーチからエモノを取り出して振るう。

 

ヒュッ………

 

「へっ?………」

 

ビチャッ!

 

うわきったね(素)、エモノに付いた血を振り回すことで落としマジックポーチにしまう。

 

『聞いてましたよねえ?モモンガさん?』

 

『はい、全て聞きました』

 

あらかじめメッセージを開いておいてマイク機能で目の前で跪く兵士の声を拾って届けたんだ、メッセージは声を出さずに意思疎通ができるから、マイク機能を使う人はあんまりいなかったけど。

 

『今後の対処だけど、この村にはある程度の施しをしたいと考えてるんだ、そのほうがより円滑に進むと思うし』

 

『良いと思いますよ、せっかく得たこの世界での初めての意思のある生物………人間ですから』

 

『では、セバス達が着き次第、標的を迎撃しますか』

 

『お願いします………あ、そうでした、ヴィクトリアさん、どうせなら、いっちょ派手にやっちゃいませんか?』

 

『お?やっちまいますか?スレイン法国に?ド派手に戦線布告?やっちまいますか?』

 

『いやそこまでやらなくていいです、というかやらないでください………ただ、ヴィクトリアさんの『本気の一撃』を、ナザリックのみんなに見せておいたほうがいいと思いまして』

 

『?………』

 

『あぁ、実は………ヴィクトリアさんはギルドメンバーの中でも日が浅く、一部ですがNPCがヴィクトリアさんの実力を疑っているんです』

 

『んまぁ………僕って火力の無いヒーラーですしねぇ………』

 

『そこで………『本気の一撃』、使ってみてくれませんか?それを見れば納得してくれると思うんです』

 

『そうは言いますけど………』

 

『大丈夫です、セバスとユリをつけているんですから』

 

『…………はあ、わかりました』

 

『はい、では頼みましたよ』

 

メッセージをきる………『本気の一撃』ねえ、あんな技使いたく無いんだけど……。

 

そりゃ悪ノリで作った技のわりにはメッチャ強いからって理由で専用の武器まで作っちゃったけどさ。

 

ま、ナザリックでの株上げのため、ちょっとだけ頑張りましょーかねえ。

 

「ヴィクトリア様、お待たせいたしました」

 

「お待たせいたしました」

 

ゲートの向こうからセバスとユリが現れた、セバスは騎士風の格好で両手剣を腰に帯刀している、ユリは舞踏家のような格好で両腰にサーベルを帯刀している。

 

「さっそくで悪いけど、セバスとユリはこの村の防衛をお願いするよ、僕は少し、用事ができたから、ちょっと出かけてくるよ」

 

「承知いたしました」

 

「あ、何かあった時の対処は2人に一任するよ」

 

「はっ!」

 

セバスの返事を聞いて僕は索敵魔法を発動させる、引っかかったのはまたしても騎馬……しかしその戦力は先ほどの3〜4倍ほど…………ではあるけど、セバスとユリなら問題無いでしょ。

 

問題は、村全体を囲むように動くこの謎の人間………突っ込んでこないあたり、魔法使いの可能性が高いね。

 

さて、本気を出さなきゃいけないわけだし、テンション上げとかないとキツイかもしれない、中二病モードに入ろうか。

 

「………セバス、そう遅くない時間でここに100人ほどの兵が来る、敵なら容赦せず殲滅、友好的ならば繋がりを作れ、ナザリックのことは明かすな」

 

意識して低めの声を出す、一瞬セバスとユリは強張った表情を浮かべるが、すぐに平静な表情に戻った。

 

「承りました、私たちのことを聞かれた場合はどのように?」

 

「愚問だなセバス、私たちにはあるだろう?何よりも尊く、何よりも美しい名が………そう、【アインズ・ウール・ゴウン】という名が」

 

「そ、そうでございました!私ともあろう者が、失念してしまっていました!」

 

「気にするでない、セバス、君のナザリック及びアインズ・ウール・ゴウンへの愛(忠誠)は、理解している………そろそろ時間だ、頼んだぞセバス、ユリ」

 

「「はっ!」」

 

Foooo!!中二病たのっすぃい!!

 

包囲するように展開中の人間たちの目の前にゲートを開き、突入する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲートを抜けて目の前に見えたのは全身黒い布系の装備をまとった、武器から見るに魔法使い………マジックキャスターたちだった。

 

「な、なんだぁ!?」

 

「いきなり目の前に!?」

 

「転移魔法か!?」

 

包囲の準備中にいきなり目の前に現れたら驚くよねえ。

 

「初めまして、スレイン法国の陽光聖典の有象無象共」

 

「……我々のことを知っているのか」

 

「当然だ、貴様らのことは、貴様らが差し向けた雑兵共に聞いた、なんでも、王国の最強の剣士の暗殺が目的だとな」

 

言いながら不可視・無詠唱化した防御魔法を複数展開する、ふっふっふっ………私のMP量はアインズ・ウール・ゴウン最高値を誇る!加えて!装備品によるMP消費量超減少のバフを常に受け、低確率でMP消費が無効になる効果もある!

 

反則的なMP量と最速の詠唱時間による瞬間火力………ではなく、瞬間回復力が持ち味!たとえ戦士職相手の一対一であろうとも、相手のHPを削る速度が私の回復速度に追いつけない………さらに、火力を捨てたことによるキチガイ防御パラメータが牙をむく。

 

対物理・対魔法・対時間・対状態異常・対精神操作………ありとあらゆる加護を受けた私は正に!無敵!

 

………だが、私が見せるのはそんな防御力と回復力に任せた泥仕合いでは無い。

 

圧倒的な力(パワー)を、見せつけてやろう。

 

「貴様らの差し向けた雑兵共を、チリの如く消してしまったのは悪いと思ったが、あの村の人間を殺されると私たちにとって面倒だから、仕方なくやらせてもらったのだ、許せ、羽虫共」

 

「………全員天使を召喚しろ!そして!そこにいる薄汚い口を即刻閉じさせろ!」

 

にんにくっぽい頭をした隊長の命令を聞いた黒づくめの部下たちが、一斉に召喚を始めた、召喚された天使は下の上、よくて中の下程度の光属性モンスターだった。

 

だが、レベル100の私からすれば、ただの雑魚だ。

 

「一斉に攻撃せよ!突撃!」

 

隊長の命令で部下たちはモンスターを私に突貫させる、だが良いのか?それではまるで………。

 

「玉砕だな」

 

モンスターの持つレーザーブレード状の武器が私に触れる、その刹那、触れた先端からモンスターが散り散りになっていき、消滅していく。

 

次々と迫るモンスターを微動だにせず消滅させる………マンガやアニメなら最高にクールな場面だ。

 

「ちっ!天使を再び召喚!陣を組み体勢を立て直せ!」

 

隊長の指示が飛ぶ、MP切れを狙っていたが、さすがに馬鹿じゃないか。

 

「どうした?まだ私は痛みを感じてはおらんぞ?」

 

「ぐっ………ならばぁ、最高位天使を召喚する!」

 

宣言とともに取り出したのはクリスタルの結晶、魔法にそこそこ詳しいからわかる、あのクリスタルには魔力が封じられている…………そこまで強くない感じの。

 

「出でよォ!最高位天使ィイ!!【威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)】ィイイイ!!!」

 

クリスタルを掲げ高らかに叫ぶ、大仰な演出で神々しい最高位天使(実は中位天使)が召喚された。

 

「お前が何者かはわからないが、このドミニオン・オーソリティを使うほどの価値はある!!」

 

「ふぅん?それで?」

 

「ふっ、余裕ぶったところで無駄よォ!ドミニオン・オーソリティ!奴にホーリー・スマイトを放てェ!!!」

 

最高位天使(笑)がゲロビを空に向けて撃った、と思ったら空からゲロビが………ゲロビは私に直撃し、防御魔法で反射、ドミニオン・オーソリティに向かっていき直撃、自爆した。

 

「……………はっ?」

 

「……………フッ……ククッ………アハハハッ!アァッッハハハハハハァッ!!」

 

笑いが止まらない、なんだぁこれはぁ?切り札的なクリスタルの結晶が、実は第5階位程度の召喚魔法が一回分封じてあっただけの、ただのゴミ!

 

肝心の攻撃に関しても、第9階位の防御魔法の前では無意味だった、階位が4つも空いている時点でお察しだが、かわいそうになるな。

 

「ふぅっ………なかなかよい余興だったぞ」

 

「ひぃ!?まままま待って!いやおおおおおお待ちくださいぃいい!!」

 

「全力を持って楽しませてくれた貴様らに、私も全力を持って示そう………」

 

命乞いを始める隊長を無視し、杖をマジックポーチにしまい、詠唱を始める。

 

「『かつて、これほどまでに清らかな魂はなかっただろう』」

 

巨大な魔法陣が私を中心に展開される、魔法陣のルーン文字はゆっくりと円の縁を回転している。

 

「『そして、これほどまでに愚かしい魂もなかっただろう』」

 

魔法陣が発光し、帯電状態であるかのようにバチバチと衝突音が鳴っている。

 

「『魔女の洗礼によりて、如何なる魂も谷を駆ける一筋の光とならん』」

 

私の手元に光が満ち、次第にそれは棒状に伸びていく。

 

「『如何なる者であろうと、その光を妨げる力を持たない』」

 

光が収まり、手元には巨大な槍が握られていた。

 

「『救済の光よ、今こそ溢れ出よ!』」

 

瞬間、槍の刃が光輝き、誰も直視することができなくなる。

 

「『創造ーーー【慈悲深き聖槍(パルジファル・ロンギヌス)】』」

 

言い切ると同時に旋風が巻き起こる、旋風の最中、巨大な光の十字架が出現する。

 

「『我が愛で朽ちるがいいーーー』」

 

横に薙ぎ払う。

 

凄まじい閃光が辺りを埋め尽くす、閃光が収まり、視界が晴れた時、私の前には、黒づくめのマジックキャスターは1人もおらず、ただ、地面がえぐれているのみである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

no side

 

 

モモンガは絶句する守護者一同を見て満足な気分に浸り、精神が沈静化されるということを短時間で何度も体感していた。

 

ギルドメンバーの中で最も日が浅いヴィクトリア、レベル100ではあるものの、物理攻撃力はプレアデスにすら及ばず、また魔法攻撃力ではモモンガ以外のメンバーにも大きく劣る。

 

メンバーの誰よりも突出した防御力があるが、ステータス上の移動速度は鈍足を極めており、盾役として立ち回ることができないため、無用の長物。

 

唯一の速い詠唱速度による瞬間的なHP回復量はとても大きい魅力だが、そもそも『ラクラクPK・PKP術』という指南書があるため、攻撃を受けHPが減少することは滅多になく、長期戦でしか活躍の場が無い。

 

モモンガは守護者統括のアルベドからヴィクトリアの実力に関して不安だとの報告を受け、ヴィクトリアの実力が嘘偽り無きものであることを証明するため、闘技場にてマジックアイテムでヴィクトリアの戦闘を守護者(恐怖公等除く)・プレアデス・メイドたち全員に見せた。

 

結果はモモンガの予想を大きく上回る形で現れた、モモンガはヴィクトリアの実力を証明できれば、今後の行動がスムーズに進むと考えていた。

 

しかし現実はどうだろう?ヴィクトリアの編み出した必殺技、【慈悲深き聖槍(パルジファル・ロンギヌス)】のその美しさに全員が見惚れた。

 

………格好良さにはしゃぐ者。

 

「すごぉい!ねえ見たマーレ!?あの技!すっごくかっこよかったでしょ!?」

 

「うん!格好良かった……!」

 

………その場で蹲り震える者。

 

「ひぃっ!?な、なんでありんすの!?ま、まさかあの光は……」

 

………雄叫びをあげる者。

 

「オオオオオオオオオオォォォォ!!素晴ラシイ!コレガ、ヴィクトリア様の真ノ御姿!」

 

………興奮を隠し切れず狂気の笑みが溢れている者。

 

「フ………フフッ……」

 

………驚愕し後退りする者。

 

「こ……これが、アインズ様の御友人の………アインズ・ウール・ゴウン末席の力………!?」

 

実に様々であるが、全員がヴィクトリアを認めたことの他ならない証拠であった。

 

「ふふふふ…………見たであろう、我が友の編み出した、ユグドラシルにおいて最高火力を持つ技、【慈悲深き聖槍(パルジファル・ロンギヌス)】を」

 

「最高火力ヲ持ツ技!!??」

 

「そうだ、アインズ・ウール・ゴウンにおいて、そしてユグドラシルにおいても、如何なる存在であろうと、あの技の火力を超える技を生み出すことはできない」

 

「なんと恐ろしい……」

 

「そして、見て分かる通り、あれは聖なる浄化と救済の力を持つ技………つまり、諸君らの創造主や、私が、あの技に万が一にでも擦りでもすれば………最悪の場合、存在ごと消し去られてしまうだろう」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

ギルドの長であるアインズが、擦るだけでも自身が消滅し消えてしまうほどの圧倒的な火力。

 

アインズをもってしてそれほどなら、自分は近づくだけでも危ういのではないか?という考えには誰も彼もが辿り着いた、辿り着いてしまったが故、湧き上がるヴィクトリアへの恐怖が止まらなくなる。

 

そして思う、もしも………もしもヴィクトリアがアインズ・ウール・ゴウンに反旗を翻したら………。

 

しかしそれはアインズの言葉で杞憂に終わる。

 

「だが安心するといい、ヴィクトリアさんがナザリックに不利益になることは絶対にしないと断言できる、これは私、アインズ・ウール・ゴウンの名において誓おう!」

 

絶対たる支配者の、絶対の誓い、疑いようの無い絶対の信頼をしていることの証しである、闘技場に集った一同は、もはや言葉も出ないほどに感動していた。

 

先日見たアインズの実力、今見たヴィクトリアの真の実力、そしてアインズのヴィクトリアへの絶対の信頼…………彼ら2人の互いへの配慮が、尊敬が、守護者たちの心を打った。

 

「アインズ様!!」

 

「アルベド、どうした?」

 

突然の呼びかけに驚きつつアインズはアルベドのほうを向く、向いた先には跪き頭を垂れる守護者たちの姿があった。

 

「守護者統括及び全階層守護者、並びにプレアデス総員並びにメイド総員!ナザリック所属の全従者を代表し、アインズ様とヴィクトリア様に、これまで以上の忠誠を誓います!」

 

「「「「「アインズ様!ヴィクトリア様!万歳!!」」」」」

 

拍手と万歳の嵐、あまりの迫力にアインズは気圧される、ナザリックの全ての従者が、一同に会し、こうして今まで以上の忠誠を誓っている光景。

 

歓喜!アインズの心中はそのひとつ、歓喜のみであった、この世界に来てからの唯一心を許せる盟友、ヴィクトリアが認められ、さらにこうしてより一層の忠誠を見せられ、歓喜しないはずがなかった。

 




タイトルで出落ちってるし、文でバレバレだけど。

作者は「アノ」作品が大好きです、特に獣殿と聖餐杯猊下と姉であり母でもある女性が好きです。

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