黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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受験勉強もいよいよ本格的にスタート。もう冬期講習に通って居ます。と言うわけで、
受験終わるまで更新は休止するかもしれません。


90話 暗闇の時間

彼は真っ暗な闇の中にいた。

 

「…くそ、ここはどこだ!何故、俺はここにいる?由夏は、由夏はどこにいる!」

 

彼の叫び声は、虚しく反響する。

 

そして、返事は返ってこない。一体、彼の身に何があったのだろうか。

 

 

時は少し遡る。

 

黒崎は建物の中を駆けていた。最上階を目指して、ただひたすらに。

 

律から提供してもらったマップは頭に叩き込んだ。

 

だから今携帯は使い物にならないが、それでも道に迷う事はない。

 

だが、彼は次第に焦りを感じていた。いつまで経っても着かないのだ。建物の最上階に。

 

テロリストの侵入時、一気に占拠されるのを防ぐ為、複雑な作りにしてある。

 

だが、それでも遅すぎるのだ、このマップが正しければ、今頃最上階に着いているはずなのだ。

 

俺は最短ルートで進んでいる。それなのに、最上階に辿り着けないのだ。

 

黒崎は叫ぶ。

 

「…一体、最上階は、どこだ!」

 

正確に言うと、最上階へ向かう階段が見つからないのだ、

 

あるフロアに辿り着いたが、その上の階に行く階段が一切ない。

 

そして、エレベーターなどと言うものはそもそも使い物にならない。

 

でもどこかに、最上階へと向かう階段があるはずなのだ。

 

「…どこにあるんだ!」

 

彼の叫び声は虚しく反響した。

 

と思いきや。

 

「…見つからないよ。何故なら、最上階への階段は全て封鎖した。

 

オートロックでね。指紋認証がなければ通れないし、人間が叩き壊せるほどヤワじゃない。

 

だから君は永久に最上階へは辿り着けないよ。私を倒さない限り。」

 

そこに突然現れたのは仮面を被った男。

 

「貴様は、誰だ?何者だ?」

 

黒崎は問う。こいつが何者かは分からない。だが、この男、只者じゃない。

 

それだけは直感で分かる。だから黒崎は警戒心を強くした。

 

「…私かい?名乗るほどの名前は無いのだがねえ。

 

簡単に言えば、この事件を起こした黒幕だよ。」

 

男はあっさりと、自分が黒幕だと宣言する。それを黒崎は不審に思う。

 

まさか、影武者?そんな可能性もある。

 

でも、こいつが黒幕だとしたら。

 

「…そうか、貴様がやったのか。よくも…由夏を!」

 

「まあそう言うなよ。これも私の計画の為だ。それに、別に良いだろう?

 

彼女はまだ無事だ。傷一つない。だから、今ここで私を倒せば、隠し扉のロックを解除出来て、

 

最上階へ向かい、彼女を救出出来る。簡単な話じゃないか。」

 

「…そうか、なら話は早い。俺はお前を倒すだけだ。」

 

黒崎には体力が残っていない。だから、長期戦に持ち込むことは不可能。

 

一気に勝負を付けようと、仮面の男へと突撃する。

 

すると、体温が上昇し、身体が熱くなるのを感じる。

 

さっきと同じで、ゾーン状態になったようだ。

 

目の前の光景が止まったように見える。自分のスピードも上がった。

 

このスタンガンで一気に気絶させる。

 

そう思って仮面の男へ攻撃する。

 

ヒュン!

 

スタンガンが空を切る。

 

「いない!」

 

なんと、いつの間にか仮面の男は彼の視界から消えていたのだ。

 

「フハハ、こっちだよ。見えなかったのかい?」

 

黒崎の後ろに立つ仮面の男。

 

「能力をまた発動するとは、やるじゃないか。

 

でもその消耗しきった身体では、私に勝てやしない。

 

本来君は立つのがやっと。それを能力でごまかしているに過ぎない。

 

いや、君のは能力なんかじゃないか。ただのゾーン状態だ。」

 

そう言うと、男は黒崎の首をトンと叩く。

 

「ぐ…は…っ…」

 

黒崎はその場に崩れ落ちた。

 

彼を抱え、仮面の男はどこかへ向かう。

 

「…多少計画からズレてしまったが、概ね予定通りだ。

 

 

 

 

さて、次は100億の賞金首を狙うとするか。」

 

**

 

その様子をモニターで由夏は見せ付けられていた。

 

「そんな、お兄ちゃん…」

 

今度こそ、彼は倒れてしまった。これじゃ…、私が助かる見込みはない。

 

一体どうなってしまうんだろう。

 

用済みになって殺される。そんな最悪の可能性が頭をよぎる。

 

「…嫌だ、まだ、死にたくない!」

 

彼女の叫び声を、聞くものはいなかった。

 

仮面の男は気絶した黒崎を抱えて、隠し扉を開け、上へと登って行く。

 

男が辿り着いた先は、様々な機械が取り付けられた部屋。

 

「…先ずはここで試してみよう。彼がどれほどの精神力を持つか。」

 

そう言うと、男は黒崎の頭や身体にいくつかの機械を取り付け、スイッチを入れる。

 

「さあ、実験を始めよう。どうなるかな?少なくとも、彼は地獄の苦しみを味わう事になるけど。」

 

 

 

***

 

そして、その機械により、黒崎は幻覚を見せられていた。

 

「くそ、どうなってる!」

 

走っても走っても闇の中、いくら探しても、誰も見つからない。

 

一体何があった?あの男と戦って、そこで意識が途切れて…

 

恐らく、俺は仮面の男に倒された。そう黒崎は予想する。

 

じゃあ何故、俺は先の見えない真っ暗闇にいる?

 

 

 

考えても考えても、答えは見つからなかった。

 

すると、暗闇の中に人影が見える。

 

「あれは…誰だ?」

 

俺は慎重にその人影に近付いていく。

 

うっすらと、その人影は鮮明になって行く。その正体とは…

 

「由夏!無事だったのか?」

 

黒崎は慌てて駆け寄る。

 

「…お兄ちゃん…」

 

黒崎が由夏の肩に手を置くと、由夏はそう呟く。

 

「…一体何があった?まあいい、とりあえずここを脱出するぞ。

 

と言っても、方法が分からんな…

 

 

 

 

 

って、嘘だろ…」

 

なんと、由夏の身体が次第に透けて、消えかかっている。

 

「お兄ちゃん、さよなら…」

 

そう言い残して、由夏は消えていった。

 

「うあああああああああ!」

 

***

 

そして、場所は椚ヶ丘。時は経ち、朝日が登っている。

 

E組の皆は裏山へ向かう。そしてその顔は、どこか暗く、沈んだものだった。

 

昨日はあんな形で解散してしまった。だから、皆の心にはしこりが残っていた。

 

そして旧校舎の教室で、朝のホームルームが行われる。

 

だが、ここで一つ異変があった。

 

「…黒崎君が、いませんねえ。一体何が…」

 

殺せんせーが言う。

 

「まさか、昨日の事が原因で…」

 

学校へ来なかったんじゃないか。渚が不安げに呟く。

 

「…彼に限って、そんな事はないと思うんですがねえ。

 

ちょっと彼の家に行って、様子を見に行きましう。」

 

そう言うと殺せんせーはマッハ20で窓から飛び出した。

 

「…黒崎君、どうしたんだろう。」

 

茅野が心配そうにぽつりと呟く。

 

「さあねえ。殺せんせーの言う通り、あいつに限って拗ねて来ないなんて事はないと思うけどね。

 

だからもっと別の理由があるんじゃない?」

 

カルマが答える。

 

「じゃあ、その理由って一体?」

 

「…そこまでは、俺にも分からないよ。」

 

そして数分後。殺せんせーは帰ってきた。

 

「ただいま帰ってきました。」

 

「殺せんせー!黒崎は?」

 

皆が一斉に問う。

 

「それが…、家にも居ないんです。携帯にも繋がらず、一体何処へ行ってしまったのか。」

「え…」

 

皆は絶句する。じゃあ一体何処へ?それが分かったら苦労しない。

 

謎は深まるばかりだ。

 

「…何やら、事件の臭いがしますねえ。心配になってきました。」

 

殺せんせーが呟く。

 

すると。

 

「ビデオメッセージを受信しました。この場で再生しますか?殺せんせー。

 

黒崎さんに関わる物なんですが…」

 

律がメッセージを受信したらしく、知らせてきた。

 

「…もちろん見ましょう。何かの手がかりになるはずです。まだ何も分かりませんが…」

 

「…わかりました。しかし、皆さんはとても辛く、恐ろしい物を見る事になるでしょう。

 

気を付けて下さい。気持ち悪くなったら、無理しないで下さいね…」

 

一体なんのことだ?皆は律の言葉の意味が理解できないで居た。

 

だが、ビデオメッセージが再生されると、皆はその意味をすぐに思い知る事となる…

 


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