黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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なんか急展開、しかも話が分かりづらい。明日修正します。


86話 再戦の時間

一方、黒崎は巨大な廃ビル、元放送局へと辿り着く。

 

決して要求に従った訳ではない。一刻も早く、由夏を救い出す為にやって来た。

 

まずは入り口のドアを開けようとするが、鍵がかかっていたので、

 

無理やりこじ開ける。

 

ドアに体当たりすると、そのドアは意外にも脆く、あっさりと開いた。

 

…恐らく老朽化しているからだろう。確かこの放送局、老朽化したから移転して取り壊しを始めるとか。

 

俺は慎重に中に入る。

 

周囲に監視カメラが付けられていないかを警戒しながら。

 

辺りを見回すと、どうやら一箇所だけ設置されていた。

 

そこの死角になるよう慎重に進んで行く。要領は南の島の時と同じだ。

 

手と足を同時に出す事で、服の擦れる音や気配を最大限消し去る。

 

これで相手に潜入は発覚しないはずだ。

 

そう思って、俺はカウンターを通り過ぎ、階段を登る。

 

「…律、ここの構造は?」

 

俺は律にそう話しかける。

 

恐らくここの構造も南の島のホテルと似たようなもの。

 

テロリストに占拠されないよう複雑な作りになっている。

 

…それが犯罪者の根城となっているのはなんとも皮肉だが。

 

だが律から、一切の反応が無い。ここが圏外なのか、もしくは

 

ハッキングされているか。だがハッキングなら無反応ということは無いはずだ。

 

そして、なんとスマホそのものが機能不全に陥っている。

 

一切ネットに接続出来ていない。

 

「電波妨害か…」

 

電波妨害。ジャミングともいう。

 

周囲で同じ周波数帯の強い電波を発信する事により、相手の通信を妨害する手法。

 

 

 

これはスマホの通信機能そのものが使えないので、ある意味ハッキングより厄介だ。

 

ハッキングと違って、相手に不正操作される可能性も少ないが。

 

すると、何処からともなく声がした。

 

「…やあ、黒崎翔太君。ようこそ、私の要塞へ。凄いだろう?君を招待する為に作ったのさ。」

 

「…こちらの動きが筒抜けってか?監視カメラもないのに。盗撮までして悪趣味な奴だ。

 

あんたが誰だかは知らないが、ストーカーみたいな野郎だな。」

 

「…ストーカー?酷い事を言うねえ。私はただ、君が無事に最上階、

 

私がいる場所まで辿りつけるかを眺めているだけだよ。

 

監視カメラもない…ねえ、盲点だったかな?まさかそこに何気なく置いてあるビデオカメラで

 

撮っているとは、思いもしなかっただろう。」

 

「!!」

 

俺は廊下の隅に転がっていたビデオカメラを見る。まさか、警戒していた監視カメラではなく、

 

何気なく放置してあったビデオカメラで撮っていたとは。

 

確かに放送局なら、カメラが置いてあっても当然だ。人間こっそり仕組んであるものは

 

注意深く見つけるが、そこに何気なく置いてある物は警戒しない。

 

その盲点をついたと言うわけか。

 

「…まあ、ここのあらゆるカメラが撮っている光景を僕は監視出来る。

 

君がカメラを壊したって、別のカメラがあるんだ。

 

そんなの一個一個壊してたら、間に合わないよ。」

 

「くっ…」

 

「君の携帯を無力化させたジャミング装置は、放送局のシステムをいじれば簡単に実現出来た。

 

まあいい、ここから最上階に辿り着くまで、様々な試練が君を待っている、

 

健闘を祈るよ。命の保証はしないがね。」

 

すると音声は途切れる。

 

俺は雑念を振り切り、迷わず進む。するとすぐ1人見張りが立ち塞がった。

 

「…ここは通さん。後ろを向け。」

 

銃を構える男。

 

俺はすかさず、相手に背を向けると、麻酔銃を取り出し一瞬で撃つ。

 

相手は崩れ落ちた。

 

俺はまたも進む。すると、また別の男が、廊下の手すりに腰掛けていた。

 

俺はそいつの顔を見て、唖然とする。

 

「…お前は…」

 

 

***

 

時は数時間前に遡る。

 

黒崎の妹、黒崎由夏は、いつもの通り下校していた。

 

電車に乗って数十分、そう遠くは無い距離だ。

 

「なーんか退屈だなあ。」

 

彼女はそう呟いた。最近面白い事がない。中学生活が楽しくない訳ではないけれど、

 

女子校というのは人間関係がどうにも面倒。男子が居ないので色恋沙汰とも無縁だし。

 

それに比べて、お兄ちゃんは楽しそうだ。3年生に入ってから明らかに変わった。

 

今まで退屈そうに行っていた学校もどこか楽しそうに行っているし、

 

何やら可愛い彼女(?)らしき人までいるよう。

 

「はあ、お兄ちゃんが羨ましいよ…」

 

そんな事を呟いた時。

 

 

 

突然、彼女の視界が真っ暗になり、目が覚めると、そこは無機質な部屋の中だった。

 

「え…、どういう事!」

 

起き上がろうとするが身動きが取れない。

 

見たら、手足が縄で縛られていた。

 

「え、これって…」

 

拉致された?

 

最後の言葉は出なかった。訳がわからない。道を歩いていただけなのに、いきなり攫われたなんて…

 

一体何が?

 

どうやら眠らされていたみたいだけど…

 

頭が混乱する。それに加えて何もない密室。窓もないので時間も分からない…

 

由夏の心は、底知れぬ恐怖に包まれていた。

 

…すると、ドアが開く音がした。

 

すると中に数人の男達が入って来る。

 

ほとんど全員サングラスとスーツ姿の、SPのような男だったが、

 

1人だけ、仮面を被った男がいた。その道化師のような男から、

 

得体の知れない恐怖を感じる。まるで、この世の物とは思えないような。

 

すると仮面の男が口を開いた。

 

「…目を覚ましたようだな。」

 

彼女は恐怖で口が動かなかった。

 

「安心したまえ。君はただ人質として利用するだけ。危害を加えたりはしない。」

 

そう語る仮面の男。だけど、彼女は男の乾いた声を、全く信用出来なかった。

 

「では、彼女を指令室まで連れて行ってくれ。そこに拘束台がある。

 

といっても、ベッドに縄を括り付けただけの物だが。」

 

するとサングラスを掛けた男達が彼女を運んでいく。

 

彼女はショックで頭が混乱し、身体が動かず抵抗すら出来なかった。

 

やっとの思いで、かすかに声が出た。

 

「私を誘拐して…、何をするつもり?」

 

その声は彼女が自分でも分かる程に震えていた。

 

「話すと長くなるから、指令室に着いたら話そうではないか。

 

まあ簡単にいうとすれば、君のお兄さんをここへ来させる為さ。

 

…ある目的の為にね。」

 

この施設はどうやら構造も複雑。階段を何度も登り、廊下を何度も歩き続け、

 

10分くらいした頃に、ようやく男達の言う指令室に着いたようだ。

 

そこには無数のモニターがあり、周囲の光景を映し出していた。

 

私はベッドに縛り付けられる。

 

思わず顔が強張り冷や汗をかく。何かされるという恐怖が彼女の心を襲う。

 

「さて、準備も出来たことだし、先程の話の続きをしようか。」

 

仮面の道化師は語り出す。

 

「まずは、何故君を誘拐したのか。これは先程言った通り、君の兄、黒崎翔太をここへ呼ぶ為。

 

では何故、ただの中学生であるはずの彼が必要かって?

 

…それは、彼に隠されたある秘密が、そして君達両親の死とも、深く関係している。」

 

そして、次の言葉を聞き、由夏は強烈なショックを受ける。

 

 

 

「…君達の両親を殺すよう、仕向けたのは私だ。」

 

***

 

仮面の男は語り続ける。両親の死の真相を。

 

「君の父親は偶然にも、会社の不正を、粉飾決算を知ってしまった。

 

経理課長をやっていて、決算の為のデータ整理をやっていたんだが…

 

役員の1人が、うっかり不正データを消し忘れていたんだ。偶然会社のデータを確認していた

 

君の父親が、それを見てしまったらしい。不審な、本当は無いはずのデータ。

 

怪しく思い、念の為中身を確認してから、消すつもりだったとか。

 

でも彼はそのファイルを開いた。愚かにもね。開かずに消していたら、彼は死なず、

 

君達兄妹もあんな悲惨な目には合わなかった。

 

そこに乗っていたのは粉飾決算の詳細が書かれたファイル。

 

彼は唖然とした。

 

「嘘だろ…」

 

当然だ。自分が一生懸命働いていた会社で、粉飾決算が行われていたんだから。

 

 

 

「しかし、彼がそのファイルを開いている事を、不正に関わった者の1人が見ていたのだ。

 

すぐさまこの事態は役員に伝わる。

 

大慌てで保身に走る役員達。このままでは、不正がバレるのは時間の問題だ。

 

そして緊急役員会議で決まった事。

 

それは、彼1人に全ての責任をなすりつけた上で始末する。

 

それだけだった。勿論本当に殺すのはリスクがでかい。

 

だから、パワハラで精神的に追い込み自殺に追い込む事にしたんだよ。」

 

黒崎が見た日記の、パワハラについての記述、あれは、なんと会社が、彼を殺す為にやっていた事だった。

 

「だが奴はしぶとく生き続けた。あまりにもしつこいんで、痺れを切らした会社の奴らが、

 

私に頼んで来たんだ。どうにかして殺してくれ。手段は選ばないって。

 

だから、殺し屋を使ったよ。

 

ブレーキに細工をして事故死に見せかけた。後は完璧だったよ。

 

全て彼の責任にしたからね。」

 

その話を聞き、由夏はショックで一杯だった。

 

「まさか、お父さんとお母さんが殺されたのって、そう言う事だったの?

何にも、悪い事してなかったの?」

 

「そうだよ、彼は犠牲になったんだ、組織を守る為に。悪く思わないでくれ。そもそも、

彼がその会社に入れたのだって、元はと言えば私のコネのお陰なんだから。」

 

「…酷い。」

 

「おや、そうかい?

 

世の中そんな物さ。君達兄妹に食いついたマスコミも私が仕向けた物だしね。」

 

「…そもそも、なんであなたが父さんの会社の不正に関係してるの!

 

一体なんの関係が…」

 

彼女は叫ぶ。

 

「私はね、とある暴力団のリーダーだ。そして君の父親の会社は、私の組織と深く繋がっていた。

資金の提供もしていたし、粉飾決算だって我々の差し金だ。

そして、何故、君達をここへ集めたか。それを言っていなかったねえ。

…黒崎翔太を潰す為に。彼は、我々の組織と、会社を潰しかねないキーとなる。」

 

「…どう言う事なの?」

 

「彼の父親のPCを押収したが、データが開けかった。恐らくそこに不正の詳細ファイルが入っている。

しかも、その不正ファイルは、放っておくと、どうやら自動的に公開されるよう。

日付は3月13日。ちょうど事故が起こった日だ。年までは分からなかったが、まだ公開されていない以上、

3月までに止めればそれで良い。

指紋認証が必要らしいが、どうやら彼の父親のではない。

黒崎翔太の指紋だと気付いたのだよ。

 

そして、そのデータを解除させる為に、彼を呼び出す。

 

君を人質に使ってね。」

 

「…嘘、でしょ…」

 

「おや、もうこんな時間か、そろそろ電話をかけるとしよう。君の携帯でね。」

 

仮面の男は電話を掛ける。

 

すると黒崎は真っ先に言う。

 

「おい由夏、今までどこに…」

 

「さあ、どこだろうね。」

 

電話を2人がするのを、由夏は黙って見ていた、

 

最後に仮面の男が言う。

 

「この場所まで来い。さもなくば、彼女の命は保証しない。」

 

そして、仮面の男は、辺りを囲む男達に告げる。

 

「さあ、彼を招待する準備をしよう、各自持ち場へ着いてくれ。

 

じっくり彼をもてなそう。特に、お前には期待しているよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なあ、ヴァンパイア。」

 

 

何故だろう。由夏の心に出て来たのは、死への恐怖ではなかった。

 

そして、ただ一つ出た言葉、それは、

 

「お兄ちゃん…、来ないで」

 

兄を危険な目に遭わせたくなかった。道具として使われて欲しくなかったのだ。

 

あの仮面の男は、兄を酷い目に遭わせた上、間違いなく彼を道具として利用する。

 

私のために、お兄ちゃんにはそんな目にあって欲しくない。

 

それは、妹の、兄を想う切実な願いだった。




暗殺教室の2次創作で一騒動起こした例の人、ロックされたそうですね。
自分の小説に自分で感想を書いたりしてたとか。
チートが嫌いっての理解出来なくもないけど、だからって自演の上低評価乱発って…
僕の所にも評価と感想が一つずつ。同じ事書いてたんですぐに分かりました。

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