黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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今回の話を読んで、訳が分からないと思うでしょう。そのカラクリは次回説明致します。


75話 決意の時間

「死んで死んで死んで死んで死んで死んで!」

 

茅野は触手を振るう。

 

「くっ!」

 

黒崎はその内数発を直接受ける。殺意の対象が、一時的にだが殺せんせーから黒崎へと変わっている。

 

もちろん超体育着なのでダメージはない。まさか触手攻撃にも耐えられるほど頑丈だったとは。

 

とはいえ、炎の触手を受けたので、かなりの熱量が身体に伝わってくる。

 

流石に全身を覆うような構造ではないので、身体が火照って汗をかいていた。

 

「どうしたの?たった一撃程度で?その程度なの?」

 

茅野は容赦なく触手を振るう。

 

黒崎は不規則な動きを続け、必死に避けていく。

 

スピードは違うが、どんな相手でも、避け方は同じだ。

 

完全にかわすことは出来なくても、少なくとも直撃は避けられる。

 

いくら触手とはいえ、イトナの時と同じ、人間が使ってもスピードには限界がある。

 

そうして隙を狙って茅野を無力化出来れば…

 

そう思っていた黒崎の認識は、甘かったようだ。

 

茅野の攻撃は黒崎に容赦なく襲いかかっている。

 

一発一発が、速い、重い、そして熱い。黒崎は反撃の糸口すら見出せない。

 

「ホラホラ、どうしたの?」

 

茅野は我を失い触手を繰り出し続ける。

 

…やるしかない。

 

黒崎は意を決して茅野の方へ急接近する。触手を相手するには分が悪いが、

 

茅野は触手以外は生身の身体だ。

 

だから、黒崎はスタンガンを取り出し、茅野の首元に当てる。

 

同時にもう片方の手でナイフを取り出す、こちらで触手を斬り裂こうとする。

 

 

 

茅野はそれに一瞬動揺した。

 

「っ!」

 

黒崎のナイフの先が触手を掠める。触手の一部に傷がついたようだ。

 

しかし、すぐさま態勢を立て直し、もう一本触手を至近距離で突き出す。

 

それは偶然にも、黒崎の顔に直撃した。

 

「ぐ…」

 

完全に失敗した。

 

この超体育着の最大の弱点、それは、顔を守れない。

 

顔を覆えば視界が遮られてしまうので当然かもしれないが、

 

黒崎の頰が疼く。炎の触手をまともに喰らったので、痛いし熱い。手で触れて状態を確認するが

 

確実に火傷している。さらに、見た所目から出血している。どうやら目を掠ったようだ。

 

「黒崎君!」

 

殺せんせーが気付いたのか声をあげる。

 

「…気にするな。軽い火傷だ。戦うのに支障は無い。」

 

黒崎は再び立ち上がる。だが、身体のあちこちから痛みがする。

 

超体育着があるとはいえ、相当疲労が溜まっていた。

 

茅野はまたも容赦なく触手を振るう。

 

黒崎はそれを必死に避ける。右へ、左へ、ある時は跳躍して。

 

「しつこい…!いつまで粘るつもり…、往生際の悪い!」

 

茅野はまた黒崎の顔を狙い触手を振るう。

 

黒崎は顔以外の、超体育着の防御範囲で受け止める。

 

 

「いつまでかって、ずっとだよ、決着が付くまで。俺は…絶対諦めない。

 

諦めたら、そこで全て終わってしまうから…!」

 

もう救えないのは、何も出来ないのは嫌だ。黒崎の強い決意が、諦めない執念になった。

 

だが、超体育着が煙を上げた。少しだが、触手を直に喰らった部分が溶けているような気がした。

 

やはり、超体育着は、そこまで頑丈では無かった。耐火性には優れていたが、

 

超高温で攻撃を繰り返す触手など開発者も想定外だろう。

 

一方茅野にも疲労が見え始め、次第に触手の動きも鈍くなっている。

 

一見良い事だが、実はそれは非常に危機的な状況だ。

 

茅野の体力が触手に相当削り取られているという事だ。

 

実際茅野からは絶え間なく汗が流れている。体温も恐らく非常に高い。

 

恐らく、茅野が生きられるのは、このままじゃ後数分。

 

 

やるしかない、黒崎は意を決して茅野の懐へ飛び込んだ。

 

全身から痛みを感じる。身体から汗が滝のように流れ出る。顔の一部が火傷を負っている。

 

目からは出血までしている、それでも俺は飛び込む。茅野を助ける為に。

 

痛みよりも苦痛よりも、全てを、助けたいという思いが上回った。

 

動きをじっくり観察し、最大限隙のある瞬間へ。触手は見切れなくても、

 

動きは大体予測出来る。

 

 

 

茅野はすぐさま触手を繰り出す。黒崎は避けきれず、今度は彼の腹部に直撃した。

 

 

…だが、それが黒崎の狙いだった。

 

彼はその触手を辛うじて手で受け止めて、食らいついた。

 

「…何!」

 

茅野は動揺している。

 

 

「…寺坂の馬鹿は、生身で受け止めたぜ。超体育着使って、受け止められない訳がないだろう…」

 

いくら茅野の触手が猛スピードでも、黒崎に触手が直撃する瞬間は必ず停止する。

 

だからその瞬間、すぐさま黒崎は受け止めた。

 

けれど…

 

「しつこい!」

 

茅野は思いっ切り触手を振り回し、彼をリングの外へと叩きつける。

 

「ぐはっ…」

 

黒崎はなすすべなく地面に叩きつけられた。

 

茅野は、今度は殺せんせーに触手を振るう。

 

「邪魔者は消えた、今度こそ死んで!殺せんせー!」

 

殺せんせーはそれを避けず、あえて正面から受け止める。

 

「ぐっ…」

 

殺せんせーは吐血する。心臓の部分へ触手が突き刺さった。

 

「殺った!」

 

茅野は勝利を確信する。

 

 

 

…しかし、殺せんせーに突き刺さった触手は、それ以上深く刺さらない。

 

「…何で!」

 

茅野は動揺する。その間にも、触手はぬるりと殺せんせーの体内から抜けていき、萎む。

 

茅野が辺りを見回すと、黒崎は、なんと散水用のホースを持っていた。

 

先端から水がこぼれている。

 

「炎の触手。確かに厄介だけれど、その二つには共通の弱点がある。それは水だよ。

 

水をかぶれば炎も触手も無力化される。それに気づかなかったお前の負けだ、茅野。」

 

黒崎は、茅野に投げ飛ばされた後、こっそり蛇口を捻りホースから放水したのだ。

 

殺せんせーの心臓に触手が突き刺さった瞬間、彼はそのホースを茅野の方に向けた。

 

「…君のお姉さんに誓ったんです、君達からこの触手を離さないと。

 

それは茅野さん、貴方も例外じゃありません。」

 

殺せんせーは、ダメージを受けて動くのもやっとの状態の中、茅野が動揺していた隙を突き、

 

すぐさま茅野を抑えて動けなくさせる。

 

「今です、黒崎君!」

 

リングの外にいた黒崎は、残った体力を振り絞って立ち上がり、

 

茅野の所へダッシュする。

 

そして茅野を押し倒す。何をするかと思ったら...

 

 

 

なんと黒崎は自分の唇を茅野の唇に重ねたのだ。

 

「!!」

 

その光景に、皆は顔を赤らめる。中には口を大きく開け唖然とする者も。

 

その中でただ1人、ビッチ先生だけが笑みを浮かべていた。

 

その中で、2つのカメラのシャッター音が鳴っていたのは誰も知らない。

 

1hit

 

2hit

 

3hit

 

4hit

 

5hit

 

 

すると茅野が途中で意識を取り戻す。

 

そして10hit目辺りで自分の状況に気付き、顔を真っ赤に染めて動揺する。

 

「…‼︎」

 

それでも黒崎は、追撃の手を緩めない。

 

(茅野…、俺はずっと茅野と過ごして来た。ずっとその笑顔を見てきた。

 

一緒に過ごした日々も、楽しかった事も、苦しかった事も、皆で乗り越えた事も。

 

2人だけの思い出も、全てそれが『演技』だとしても、俺は構わない。

 

 

その『演技』を、俺が『本物』の感情に変えてみせる!)

 

茅野は慌てて離そうとする。けれど黒崎は、茅野の身体を強く抱き締めて離さない。

 

(離さないさ…、俺の、感情が届くまでは…」

 

21hit

 

22hit

 

23hit

 

24hit

 

25hit…Critical!

 

茅野はそのキスに耐えられず、ついに意識を失ってしまった。

 

「殺せんせー…、これで、どうだ…?」

 

黒崎は息も絶え絶えに言う。

 

「完璧です黒崎君!」

 

そう殺せんせーが言った瞬間、黒崎の身体からどっと力が抜けた。

 




え?黒崎が渚のポジション奪ってるだけだ?それは言わないで下さい。

だってやっぱり最終的な助ける方法はキス以外に思い浮かばなかった…

(他にも案はあったのだがどれもしっくり来なかった。)

後、なんで炎の触手に水で対処するって事を誰も考えなかったんでしょう。一番有効なのに。ちなみに黒崎はそこまで強くない(といってもE組ではトップ)です。
殺し屋に勝てたのは正面戦闘だから、
茅野相手にやったのも足止めとキスだけすから。

あ、そうそう、中間テスト今日で終わりました。

テスト前なのに余裕で小説書いてた作者の、結果はいかに…

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