黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

66 / 109
デート回、やっぱり苦手です。


60話 デートの時間 後編

さーてと。俺は今レストランの中にいる。

 

まあ何でかって、昼食を食べるからだ。

 

そして俺は茅野と2人で席に座っている。目の前には注文した料理がある。

 

茅野はステーキセットを頼んだ。その上ドリンクとデザートまで注文していた。

 

俺は安かったハンバーグにした。

 

俺も食べたかったが、8000円が痛過ぎた。

 

いや、問題はそんな事じゃない。

 

今、俺が置かれている状況だ。

 

えーと、俺の目の前に茅野がいて、ステーキを刺したフォークを突き出している。

 

「これは一体どういう事…?」

 

現実逃避してとぼけているが、答えは決まってる。

 

「これを食べてよ、見て分かんない?」

 

だと思った。問題は、何故恋人同士でもないのに…

 

「それは分かってるんだ。でも何で…」

 

それにこういう行為は緊張する。

 

「いいでしょ、せっかく2人で出掛けたんだし、ねえ、お願い!」

 

そう言ってこちらを上目遣いで見つめる茅野。

 

これは断るに断れないな…

 

仕方なく、俺はそれを口にくわえて食べる。

 

「どう、美味しい?」

 

「あ、ああ…」

 

実際は、俺は緊張で味がよくわからなかった。

顔が若干火照っているように感じる。少し恥ずかしいような気分だった。

 

(この時彼らは知らない。こっそりと2人を尾行していたE組生の一部を。)

 

 

「いやー、あいつらイチャイチャしてるねー、あれで付き合ってないとかマジで?」

 

そう言ったのはカルマ。

 

「しかし、アーンした時の写真はバッチリ撮れたぜ。『永遠の0』があそこまで積極的とはな…」

 

岡島はカメラを持ちながらそう言う。勿論バレないよう小型のカメラである。

 

「しかも黒崎、それにまるで気付いてないねー。鈍感過ぎて腹立たしいくらいだよ。」

 

ちなみにメンバーは、カルマ、中村、岡島。

 

E組の中でも特にゲスい3人である。

 

彼らの目論見は…

 

「今日撮った写真全部E組のグループで拡散させよー。」

 

という事だ。

 

偶然買い物をしていた中村が2人を見つけ、それをカルマに伝えると、

 

証拠写真を取らせようと岡島を呼んだという事らしい。

 

「あの2人がくっつけばイジり放題だしねー。」

 

「最高のオモチャ作りあげようぜ〜。」

 

しかし3人に待ち受けるのは、悪魔の制裁であった…

 

***

 

食事を食べ終わった後は、ゲームセンターへ行った。

 

俺の財布と相談しながらのゲームになると思ってたが、

 

幸いにも茅野が全額出してくれた。

 

「ロケットのお礼だよ。」

 

値段が違いすぎるのだがまあ気にしない。

 

最初にやったのはUFOキャッチャー、定番のアレだ。

 

俺はスルーしようとしたのだが、茅野がクマの抱き枕を欲しがっていたのでやる事に。

 

「ふふ、期待してるよ♪」

 

そう言って微笑む茅野。余計にプレッシャーがかかる。

 

正直この手のゲームはやった事があまりない。

 

「あの時くらいだよなあー。」

 

ただ妹とここに行った時に、一度だけやった気がする。

 

俺はその時の事を思い出した。

 

 

妹が、

 

「あー、このぬいぐるみ欲しいな〜、お兄ちゃん優しいから取ってくれるかなー。」

 

と言ったので、仕方なくやった気がする。しかも結構苦戦した。

 

ようやく取って渡したら、

 

「ダメ兄貴。何でそんなに苦労するの?簡単なのに。」

 

じゃあお前がやれ、という気力もなかった。

 

しかも、あの時の費用は俺持ちだった。

 

全く、茅野とは大違いだ、あの生意気な妹は。

 

 

さて、そんな愚痴は置いといて目の前の機械に集中する。

 

あの時と要領は同じだ。アームを慎重に動かして、フックに引っ掛け…

 

緊張感が高まっていく。失敗は許されない、訳ではないが…

 

茅野の財布の負担を最小限にする為にも…、俺は慎重に操作をしていく。

 

そしていざ引き上げ、ぬいぐるみは落ちる事なく、

 

無事にゲット出来た。

 

「やった!ありがとう!」

 

茅野は喜んでいた。

 

そしてその後、例のバチで太鼓を叩くゲームをやろうとしたのだが、

 

あいにくそこに不良と思われる輩が何人かたむろしていた。

 

ゲームセンターは人で賑わっていたが、そこだけ誰も近付かない。

 

俺は、ここは早々に退散しようとそこを避ける。

 

1人で出掛けていたらケンカを売ったりもするが、茅野を危険な目に合わせるわけにはいかない。

 

そう思っていたのだが…

 

「おい」

 

不良の1人に声を掛けられる。

 

「お前、この前はよくも俺をボコボコにしてくれたな!」

 

どうやら前に倒した事があるらしい、恐らくはこのショッピングモールだ。

 

ゲームコーナーを占領して周りに迷惑を掛けていたので、

 

思い切り騒ぎにならないよう叩きのめしてのだが…

 

その時の不良か。

 

「悪いが、倒した相手の顔なんぞいちいち覚えてはいないさ。」

 

俺はそう言い放つ。

 

「なんだと!」

 

不良がいきり立つ。

 

「ここで喧嘩を始める気か?周りに人もいる。警察でも呼べばお前らは…」

 

しかし、不良は俺の言葉を遮った。

 

「おいおい、俺はまだ誰にも手を出しちゃいないさ。俺らは悪くない。

 

もし今お前が先に手を出したら、悪いのはお前だ。

 

それに誰もケンカするとは言ってねえ。勝てねえしな。」

 

そう言うと不良は、茅野が首に掛けていたロケットを取るとこう言った。

 

「俺がやりてえのはこの前のリベンジだ。今回はケンカじゃねえ、こいつで勝負だ。」

 

そして不良は太鼓を叩く。

 

「もしやんねーならそれでも良い。このロケットがどうなっても知らねえぜ。」

 

「くそ…」

 

普段の俺だったら、そんな物知った事かと切り捨てていた。けどそうは行かない。

 

心配そうに俺を見ている茅野が目に入る。

 

「良いじゃないか、その勝負やってやろう。もし俺が勝ったら、お前らはこの店から出て行け。」

 

…売られたケンカは買う、これだけは譲れない。

 

自分から絡みはしなかったが、勝負を申し込まれ、ロケットまでかかっているのだから

 

やらないわけには行かない。

 

しかし、太鼓など元から経験は少ない。

 

どうしたものか…

 

俺はスマホの画面を取り出し、とある物を見る。

 

「よし。」

 

俺はニヤリと笑みを浮かべ勝負をする。

 

「ルールは簡単だ、どちらが高い点を取るか。言っとくが、俺は結構強いぜ?」

 

不良はそう宣言する。

 

「なら、曲くらいこちらから選ばせてもらうぞ。」

 

「ああ、良いだろう。ただし、当然難易度は鬼だぜ?」

 

俺が選んだ曲。

 

曲名は言わないが、この曲にはあるトリックが仕組まれていた。

 

曲が流れ演奏が始まる。

 

流れる音符を叩いていく。

 

相手を見ると、自分から勝負を仕掛けただけあってかなり上手いようだ。

 

だけれど、達人といったレベルではない。そこが重要だった。

 

そして演奏が終わり結果画面。

 

わずか1万点ほどの差だが、俺が勝っていた。

 

「くそ、どう言う事だ!」

 

「確かにプレイの腕前はあんたの方が上だった。けれどね、

 

俺が選んだ曲、それは双打譜面といってな、1pと2pで中身が違うんだよ。

 

しかも俺がやってる2pの方が高得点が出るように設計されてる。

 

あんたは曲の内容を確認すべきだったな。」

 

「く、くそー!」

 

自分より下手な人間に勝負に負けた事で、プライドが傷ついたのか、

 

ロケットを投げつけ、不良は逃げるようにその場から去っていった。

 

これで一件落着と思い振り向くと、後ろにいたのは茅野だけでなく…

 

「何故お前らがここに!」

 

カルマと中村と岡島だ。

 

「いやー、かっこよかったねえ、彼女のために勝負してプレゼントを取り返すなんて。」

 

「本物の彼氏みたいじゃない、え?いっそ付き合っちゃえば?」

 

茅野は顔を真っ赤にしている、

 

「俺が聞きたいのは、何故お前らがここにいるかだ…」

 

「え、ただ街中歩いていたら2人見つけて、こりゃ面白いなって岡島とカルマ呼んだだけ。」

 

「こんな写真も取れたしな。ニヤニヤ。」

 

「‼︎」

 

例の、俺がステーキを口にくわえた写真だ。

 

「永遠の0にもやはり需要があったか…」

 

その岡島の言葉が地雷だった。

 

…(あまりに残酷な為作者により自主規制)

 

数分後、岡島は無残な姿で朽ち果てていた…

 

すかさず俺は岡島のカメラのデータを全消去し、カルマに詰め寄る。

 

「さあ、お前らが他に撮ったデータはなんだ?

 

全部消せ。さもないとナイフで心臓刺すぞ。」

 

「物騒な事言うねえ。もう消しといたよ。俺のスマホからはね。」

 

「どう言う事だ?」

 

「E組のグループチャットに上げといた。」

 

「貴様あああ!」

 

この悪魔に俺は何度陥れられるんだ。

 

俺は肩を落とした。

 

「じゃあ、うちら帰るわー。」

 

カルマと中村は岡島を置いて帰っていった。

 

「はあ…」

 

俺はため息をつく。

 

「ごめんね…、私のせいで色々と大変な目に。」

 

「気にすることはない。茅野のせいじゃないんだ…」

 

とんでもない災難に幾度となく巻き込まれたが、それらは全部茅野は悪くなかった。

 

そう俺は思っていた。

 

「ともあれ、今日はもう帰るか。」

 

「う、うん。」

 

俺らは帰路へ着く。

 

 

 

そしてショッピングモールの出口近くへ行くと…

 

「あれ、翔太じゃないか。」

 

1人の男と偶然会った。

 

「叔父さん…」

 

その人は、俺の叔父、名前は黒崎翔助といった。

 

両親を失った俺を、自分で生活できる年齢になるまで育ててくれた人だ。

 

今でも仕送りをしてもらってる、そして、一応俺の保護者だ。

 

「こんな所で何してるんだ?彼女とデートかい?翔太もそんな年頃か。」

 

からかうようにそう言われ、

 

「違いますよ。彼女はただのクラスメイト、一緒に出掛けているだけ…」

 

と反論するが、どこか茅野は不満そうな顔をしていた。

 

「そうか、そうそう、翔太に伝えたい事があったんだ、電話で言おうと思ったが、ここで伝えよう。」

 

「一体なんですか?」

 

そう俺が聞くと、叔父さんはこう返した。

 

「三者面談を申し込んだ。是非お前の担任の先生と話がしたい。」

 

「…え?」




まさかの保護者登場、そして三者面談、この後どうなるのか?

(茅野編を散々引き延ばしているのをお許し下さい。)

ちなみに岡島は生きてます。

岡島、良い奴だった…とはなりません。

ちなみに、翌日、カルマと中村のスマホは完全にロックされていたとか。

「深刻なエラーが発生しました。」と律が言い続けるだけの不良品になったそう。

黒崎が律に頼んでやったそうです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。