黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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本編進められる気がしないのでろくに進めてなかった恋愛パートを。


59話 デートの時間 前編

死神との戦いを終え、一息ついたとある日。

 

俺は映画のDVDを見ていた。磨瀬榛名主演の映画だ。

 

9歳でデビューし、13歳で休業するまで3本のドラマと一本の映画で主演を演じた天才子役。

 

小学生の頃彼女の出ているドラマをよく見ていたんだが…

 

1年ほど前、突然彼女は休業した。一体なぜだろう。今頃彼女は何をしているんだろう。

 

もう一度あの演技を見てみたいものだ。そういえば、茅野はどこと無く磨瀬榛名に似ていた。

 

髪型や雰囲気は違うが。茅野とてわかばパークでの演劇は上手かったし、意外と共通点がある。

 

そんな事を考えていると、

 

新着メッセージが来た。

 

何だろうと見てみると、当の茅野からだった。内容は、

 

「明日予定ない?」

 

特に予定も無かったので、

 

「ああ、俺は無いぞ。それで用件は?」

 

と返した。

 

すると、

 

「じゃあさ、明日1日どこかで遊ばない?」

 

と誘われた。うーん。俺は少し考えたあとこう結論を出した。

 

「良いよ。暇だったしな。」

 

「本当?ありがとう♡」

 

と返事が来た。

 

それにしても、一体俺を誘って何をする気だ?

 

いつしか一緒にケーキ屋に行った事もあったが…

 

今度は何をするんだろう。

 

「じゃあ明日の午前10時に駅前に来てね!」

 

という事で、俺と茅野はまたも出掛ける事に。

 

翌日。

 

「ふあー。」

 

眠い目をこすりながら俺は起きる。朝8時半。これから準備すれば余裕で間に合う時間だった。

 

さっさと朝食を食べる。その後、俺は髪型を整えた。

 

いつもは寝起き姿のままで行くのだが、流石に外出に誘われてそれはまずいだろう。

 

髪を整え鏡で確認する。我ながら上手く出来た、と思ったところで、

 

「ふあー、お兄ちゃんおはよう。」

 

由夏が起きてきた。そして、由夏は洗面所で鏡を見つめていた俺を見て、こう言った。

 

「ああ、そういう事ね。」

 

そう言ってニヤニヤ笑う。気味が悪いので、

 

「一体何だ?」

 

と聞くと、

 

「お兄ちゃん、さては茅野さんとデートするんでしょ。」

 

え?

 

「ぶはっ!」

 

俺は思わず歯磨き粉を吹き出しそうになった。

 

「いや、違うぞ。これはただ一緒に出掛けるだけであって…」

 

「それをデートって言うんでしょ。そんな事も分からないの?」

 

呆れたように言う由夏。

 

「分からない。」

 

「何言ってんの?全く、このバカ兄貴には一生彼女出来なさそうだね。」

 

「なんでそうなる。そもそもだ、デートなんてのは恋人同士がするものだろう。」

 

俺はそう反論する。しかし、

 

「恋人じゃなくてもデートって言うの。」

 

「そうか?まあいい、何故俺が茅野と一緒に出掛けると分かったんだ?」

 

俺は質問する。デートとは頑なに認めないが。

 

「まず、お兄ちゃん普段絶対髪型とか整えないし。

 

いつも癖っ毛だらけの状態で出掛けるじゃん。

 

でもそれを整えるって事はさ、何かあるんじゃ無いかって。

 

その上その服装。普段こんなの絶対着ないし。」

 

次々と痛い点を指摘される。

 

考えてみれば、俺は絶対普段着ない服装を選んでいた。

 

どことなく洒落たジーンズに黒い上着。どう考えても俺の着る服じゃ無い。

 

「まあ、私は応援してるよ。それじゃ行ってらっしゃい〜。」

 

「いやまだ時間あるけど。」

 

「関係ない、さっさと行ってこい!」

 

全く、この妹ときたら、俺をけなす事しか考えていないのか?

 

そんなことを考えながら、俺は気だるそうに行ってきますと言い家を出た。

 

 

『茅野視点』

 

うーんどうしよう、デートに誘っちゃったよ…

 

私は思い悩んでいた。どんな服を着ていけば良いかとか、どんな顔して過ごせばいいかとか。

 

最初の頃は想像も出来なかった。私が、そんなたわいもない事で、普通の女の子みたいに悩むなんて。

 

あの時、触手を植え付けた時に決めたはずなのに。もう私はずっと仮面を被って生きると。

 

もう本気で、演技じゃない笑顔を見せる事はないと。ー

 

けれど違った。E組の皆は私を受け入れてくれた。偽物の笑顔を。

 

演技で作り上げた、「茅野カエデ」という存在を。

 

まるで本物の自分のように。

 

いつの間にか笑顔は本物になった。E組での暗殺も楽しくなった。

 

最初は、黒崎くんと一緒にいたのも、彼の強い殺気に自分の殺意を隠すため。

 

けれどいつの間にか、彼と一緒にいると安心感を感じるようになった。

 

けれど同時に罪悪感を感じた。皆偽物の私を受け入れてくれるのに、私はずっと嘘をついている。

 

自分でも自分の気持ちが分からなくなる。

 

一緒に出掛けようと誘ったのは、その気持ちを整理するため。

 

彼と1日過ごせば、何か変わるかなと思った。

 

でも、今日はせっかくのデートなんだし、楽しまなきゃ!

 

たまには全てを忘れて、やりたいように遊ぼう。そう決意して私は服を選び、家を出た。

 

 

黒崎視点

 

俺は駅に20分前に着いてしまった。朝早いのに駅前はやや混んでいた。

 

さて、茅野がもう来ているか…

 

そんな訳がないか。と思いベンチに座ろうとすると、ふと緑色のツインテールがちらりと見えた。

 

そんな髪型の女子はなかなかいないので、あれが茅野かと思い近づいてみる。

 

すると茅野は振り向いた。

 

「あ、黒崎くん!」

 

「やあ。待たせてすまないな。」

 

「良いのいいの、気にしないで!」

 

茅野は明るい笑顔でそう言った。

 

茅野はいつも明るい。でも本当は心の中では悩みを抱えてたりするのか…

 

と考えたりもするが、今は止めておこう。

 

「それで、今日は何をしたい?」

 

「うーんと、買い物したり、一緒にご飯食べたり、後は…、

 

スイーツも食べたい!」

 

それが全部出来る場所…、あった。

 

「じゃあ、隣町のショッピングセンター行こうか。あそこなら色々あるぞ。」

 

「へーそうなんだ、じゃあそこにしようか。けれど、そんな場所黒崎くんが知ってるんだ。意外。」

 

「ああ、妹とたまに行ってるしな。それとだ、あの周辺は不良が多いからな、

 

良い狩場だったんだよ。」

 

俺は懐かしげに言う。

 

(聞かない方が良かったな…)

 

と茅野が思っていたとは知らずに。

 

「そうか、じゃあ行こうか。」

 

「うん!」

 

と言うわけで駅の改札を通り、電車へ乗るんだが、

 

 

だいぶ混んでいた。日曜だというのに人が多く、電車内も混み合っていた。

 

だから、電車が出発して反動で車体が揺れると、

 

「きゃっ!」

 

茅野がバランスを崩して俺の方へ倒れ込んだ。

 

俺は慌てて受け止める。

 

「大丈夫か…」

 

「う、うん、ごめんね。」

 

茅野は心なしか顔が赤くなっていたようにも見えたが、気のせいだろう。

 

そうして電車で15分ほどで、目的地に到着し、俺たちは吐き出されるようにホームを出た。

 

椚ヶ丘とはやや離れた町の、駅前のショッピングモールだ。椚ヶ丘の駅前にもあれば良いのだが

 

そうはいかない。

 

「ふう、やっと着いた。それで、まずはどこへ行くんだ?」

 

「えーと、」

 

茅野はふと考えてからこう言った。

 

「じゃあ、まずは服を見てみたい!私に合ったのを探したいなと思って。」

 

「そうか、分かったよ。」

 

と言うわけでファッション関係の店へ入る。落ち着いた雰囲気の店で俺でも入りやすいのは

 

良かった。ただ、なんかカップルが多い気がするのは気のせいか。

 

「じゃあさ、私服選ぶからさ、似合ってるかどうか言ってくれる?」

 

「良いけど、俺で良いのか?ファッションとか詳しくないし…」

 

「良いの!」

 

そう言って茅野は試着室に入った。

 

しばらく待つと、茅野は出てきた。

 

「どう?」

 

俺は言葉が出なかった。

 

茅野は髪を下ろし、黒いフリルのワンピースを着ていた。

 

いつもとは別人のように大人びた格好をしていた。

 

少し背伸びしてる感はあったが、それを感じさせないほど綺麗だった。

 

「…良いんじゃないかな。とても似合ってると思うよ。」

 

と俺は言った。それ以外に言いようがなかった。

 

「本当!嬉しいな!」

 

茅野はとても喜んでいた。俺なんかが似合ってると言って参考になるのかな、

 

そんな疑問もあった。そして茅野は他の服も着ていくが、

 

やはり1番最初の服が似合っていると思った。それを伝えると、茅野はすぐさま、

 

「じゃあこれにするね!」

 

といった。俺の感想なんかで決めて良いんだろうか…

 

まあ彼女の選択を止めはしないが。

 

そんな感じで2人はショッピングセンターの中を歩いて行った。

 

次向かったのはアクセサリーショップ。色んなアクセサリーを見て回った。

 

茅野はどれも欲しそうに目を輝かせていた。女子はああいうの好きなんだろう。

 

その中でも、ハート型のロケットを特に欲しそうに見ていた茅野。

 

俺は「欲しいのか?」と声をかけた。

 

「うん。でもお金に余裕が無くて…」

 

「じゃあ俺が払おうか?」

 

「え!そんな、買ってもらっちゃ申し訳ないというか…」

 

「気にする事はないさ。」

 

そう言って俺はレジにそれを持っていく。値段も3000円くらい…

 

「8000円になります。」

 

え?

 

…ヤバイ、値段読み間違えた。

 

3と8読み間違えるとかバカじゃん俺…

 

後戻り出来ないので仕方なく払う。ああ、5000円が宙に消えた…

 

といってもまだ金はあるのだが。

 

「わあ、ありがとう!」

 

そんな風に喜んでいる彼女を見ると、8000円の価値を感じるような気もした。

 

こうしてデート(?)は進んでいった。


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