黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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死神編は無事終了。オリジナル要素はほぼゼロです。


58話 死神の時間 完結

烏間先生の攻撃、それを右にかわす死神。そのまま突きを繰り出す死神、腕で烏間先生は受け止める。

 

究極レベルのタイマンだ。

 

「おっと死神がナイフを、あ違う次はワイヤーだ!

 

おお凄い!烏間先生避けざまに返しの肘!

 

ああっと死神それを見てナイフを盾に!

 

それを見て蹴りに切り替える烏間先生、なんか、なんか凄い戦いだー!」

 

…さっぱりわからん。実況下手だな殺せんせーも作者も。

 

「心配せずとも、烏間先生はそう簡単にはやられません。

 

確かに、死神の技術は多彩。そして一つ一つが恐ろしく高度。

 

いくら警戒していても、彼の前では隙を突かれ裏をかかれる。

 

だからこそ、烏間先生は水とコンクリートだけの、シンプルな舞台に戦いを持ち込んだ。

 

ここなら小細工など出来やしない。単純な戦闘なら、烏間先生の技術は死神をも上回ります。

 

烏間先生やイリーナ先生のようなエキスパートがいるからこそ、先生も退屈せず殺されるのです。」

 

死神の攻撃をとっさに避け、仕掛けを見抜き、さらに隙を突いて攻撃する。

 

烏間先生が徐々に押している。

 

「しかし心配なのは、この状況においてもまだ死神は秘密兵器を隠しているかもしれないという事。」

 

(まともに殺り合っても長引くだけだ。ここは…)

 

「真実を言うよ烏間先生。悲惨な境遇で育ったなんて嘘っぱち。

 

知人の話を自分の事のように話しただけ。全てあの女を引き寄せる為の話術さ。」

 

死神は平然とそう言った。

 

「お前…」

 

「僕の家は裕福な金持ちだった。だけどね、僕の親は、殺し屋に殺された。

 

あくどい商売やってたみたいで恨みも買ってたし、家でも横暴だったから、

 

殺されても平気だった。むしろね、僕は目を奪われた。親を殺したその殺し屋の手際に。

 

なんて、素敵な技術なんだろうって。

 

目の前で見るプロ野球選手の華麗なバッティングは、それだけで少年の進路を変える力がある。

 

僕の場合はそれが暗殺だった。殺傷術、対人術、科学知識、暗殺とは美しいスキルの集合体だ。

 

そうして仕事を重ね身に付けた技術、殺せば死神の名声を得られ、さらにそれが仕事を呼ぶ。

 

そうやって身に付けた死神のスキル、ご覧入れよう。死神の見えない鎌。」

 

そう言うと死神は、花を投げると、指を上げ、指先から何かを発射した。

 

その「何か」は真っ直ぐ烏間先生の心臓に向かい、ーそのまま

 

直撃し、細かい穴が開く。

 

「僅か10口径、極小サイズの仕込み銃から撃たれるその弾丸。

 

普通に撃っても殺傷力は0に近いが、死神の暗殺技術は不可能を可能にする。

 

大動脈に裂け目を入れ、自らの血圧で裂け目は広がり、やがて大量出血で死に至る!」

 

烏間先生の胸から血が裂け、烏間先生はその場に膝を着く。

 

「弾丸はそのまま血液を流れ、銃声もしないから凶器すら分からない。

 

死神にしか出来ない総合芸術さ。」

 

そう自慢げに言う死神。しかし…

 

烏間先生は無事だった。血を流していたのは、烏間先生の胸についていたチューブ。

 

勿論殺せんせーの触手だ。

 

しかも、血ではなくそれはトマトジュース。

 

「この檻から脱出するのは無理ですが、触手一本ならギリギリ外に出せます。」

 

触手をチューブ代わりに、トマトジュースを送り込む殺せんせー。

 

「どっから持ってきたそのトマトジュース。」

 

「ああ、行く途中で買っておきました。必要だろうと思いまして。」

 

いや絶対予測出来ないだろ。

 

そして立ち上がり、死神の急所を蹴る烏間先生。

 

「ぐおおおお!」

 

後ずさり、うずくまる死神。

 

「安心したぞ、死神でも急所が同じで。」

 

(血管の位置に触手を貼り、そいつで弾丸を受け止め、出血に見せかけただと?)

 

「あのタコの頭の回転は半端じゃない。お前にやられた殺し屋の様子を話したら、

 

瞬時に技術を見抜いたぞ。『私が同じ空間に居れば必ず守れます』だそうだ。

 

ターゲットに守られるのは癪だがな。」

 

そういった烏間先生。

 

「さあ覚悟は良いな。俺の大事な生徒と同僚に手を出したんだ。」

 

「…待て、僕以外に誰が奴を殺れると…?」

 

悪あがきをする死神。しかし無駄だ。

 

「スキルなら、ここに全て揃ってる!」

 

「ぐはあ!」

 

強く死神を殴る烏間先生。

 

死神は後方へ吹き飛んだ。

 

「殺し屋なんて止めたらどうだ?職安に行けば役立つスキルは沢山あるぞ。」

 

そう言い残した烏間先生。死神は気絶し、ピクピクと痙攣していた。

 

***

 

「何とか、なんとか手は無いものか…、こいつだけを閉じ込めたまま殺す方法は!」

 

烏間先生の手には檻の開ボタン。死神を倒した烏間先生に、最大の葛藤。

 

「考えても無駄ですよ烏間先生。そもそもこんな檻抜けようと思えばいつでも脱出できたんです。

 

音波放射でコンクリートを脆くしたり、マッハで壁に何度も体当たりしたり。

 

でもそれは側にいる生徒達にも大きな負担を与える。

 

だから貴方に死神を倒してもらった。」

 

「…言われなくても承知の上だ。こいつがクラスの結束を固める為に、

 

あえて最小限しか手を出さずにいた事もな。」

 

そう言って開くボタンを押す烏間先生。すると檻の天井の一部がスライドし脱出口が出てきた。

 

その後全員が脱出し、防衛省の烏間先生の部下の人も駆けつけた。

 

死神は縄で拘束され意識を失い、無残な姿だった。

 

「…驚異的な技術を持つ男だったが、自らの力を過信していた。どこか精神的な幼さもあった。

 

それで隙が出来たし敗北にも繋がった。」

 

そう語る烏間先生。それに対して、

 

「そう言う意味じゃビッチ先生と同じかもね。」

 

と言った矢田、確かにその通りかもしれないと俺も思った。

 

「こえーなこの顔。顔潰してまでスキルを求める心理が分かんねーよ。」

 

そう若干引いた感じで言う吉田。

 

「幼い頃、親を殺した殺し屋の技術を目にして、ガラリと意識が変わったそうだ。」

 

「…影響を与えた者が愚かでした。これ程の才能、いくらでも使い道はあった筈なのに。」

 

そう語るは殺せんせー。どこか口調が哀しげなのは何故だろう。

 

「…才能を活かすも殺すも、周囲の環境と人間次第という訳か。」

 

そう呟く烏間先生。きっとその通りだろう。

 

「そう言うことです。」

 

そう言って殺せんせーは俺と渚の頭を軽く叩く。

 

すると、後ろで小石を蹴飛ばした音がした。振り返ってみると…

 

ビッチだった。ビッチがトンズラしていた。

 

「…」

 

「…」

 

両者に一瞬沈黙が流れる。

 

「テメービッチ、何逃げようとしてるんだ!」

 

勿論その沈黙は一瞬で終わり、皆ビッチを追い掛ける。

 

「ひゃあ耳の良い子たちですこと!」

 

慌てて逃げるビッチ。しかし、逃走虚しくあっさり捕まるビッチ。

 

…俺ビッチって何回連呼してるんだ

 

「ああもう好きにすりゃ良いじゃ無い!裏切ったんだから制裁受けてトーゼンよ。

 

男子は日頃溜まりに溜まった獣欲を。女子は私の美貌への嫉妬を、

 

思う存分性的な暴力で発散させれば良いじゃない!」

 

ビッチはそう叫んだ。もうヤケクソなんだろう。

 

「それ聞いてむしろやりたくなってきたわ。」

 

そこで、俺は対先生ナイフをビッチに突きつけこう言った。

 

「裏切りには然るべき制裁を。あんたの生きてきた世界じゃそうだったかもしれない。だが、

 

別に俺らはあんたに制裁加える気はないぜ。こんなビッチなんだから、裏切るなんて想定内だし、

 

ていうかこんな痴女に制裁加えたら手が汚れちゃうし。」

 

すると寺坂が続ける。

 

「ったく早く学校来りゃ良いんだよ。何日もサボらねーで。」

 

「来ないんなら花男の仏語版借りパクしちゃうよ〜。」

 

「続き聞きたいなあ。アラブの王様誑かして戦争寸前まで行った話。」

 

皆誰もビッチを咎めようとはしない。それが答えだ。

 

「殺す寸前まで行ったのよ、あんた達の事。

 

過去に色々ヤってきたのよ、あんた達が引くような事。」

 

「だから何?俺ら現に生きてるし。それにさあ、過去に何やったかなんて俺気にしないぜ。なあ。」

 

俺は皆に呼び掛ける。

 

「その通りだよ。裏切ったりヤバい事したり、それでこそビッチじゃないか。」

 

「たかがビッチと学校生活楽しめないんじゃ、ウチら殺し屋兼中学生できないよ。」

 

 

「そう言う事だ。」

 

そして烏間先生が、薔薇の花を持ち現れる。

 

「この花は、生徒達からの借り物じゃない。俺の意思で、敵を倒して得たものだ。

 

誕生日は、それなら良いか?」

 

そうやって花を渡す烏間先生。それに対してビッチは、不満だらけだった。

 

(何よそのムードの無い渡し方。しかも花減ってるし。こんな時は…)

 

けれど、彼女は素直に、笑顔でこう言った。

 

「はい。」

 

こうしてビッチはE組に戻って来た。

 

「…ただし烏間先生。いやらしい展開に入る前に一言あります。」

 

そう真剣な顔で言う殺せんせー。言ってる事がふざけているが。

 

「…断じて入らんが言ってみろ。」

 

予想通りの答え。して殺せんせーの一言とは…

 

殺せんせーは生徒全員の頭に触手を乗せこう言った。

 

「今後、生徒達このような危険に巻き込まれる事なく、

 

安心して殺し殺される環境づくりを防衛省に強く要求します。」

 

「…分かっている、打つ手はすでに考えた。」

 

****

 

「暗殺に生徒達を巻き添えにした場合、賞金は一切支払われないものとする。

 

手配書にこの項目を明記しない限り、生徒達があの教室をボイコットすると言っています、

 

暗殺の幅は狭まりますが、生徒が安全を求めるのも当然の権利かと。」

 

そう伝える烏間先生。

 

「…随分子供好きになったもんだな烏間。まあいい、要求を飲もう。

 

どの道個人レベルの殺し屋に頼る時期はもう終わりだ。

 

椚ヶ丘市は空前のマンション建築ラッシュ。住宅バブルに見せかけたそれは、

 

各国合同で行われる最終暗殺計画だ。概要を見たがとんでもないものだ。あれは殺し屋が出る幕じゃない。

 

さらに、シロにはシロで最終計画の用意があるとか。」

 

…担架で連行される死神。それを見てシロが言う。

 

「見いつけた。知ってるよ君の正体。2人目の、いや2代目の怪物でも作ろうかな?」…

 

「すべての準備が整い次第、最終計画同士の共同作戦が実行される。予定は3月。

 

E組はそれまでにあの怪物を逃さず、仲良く過ごしてくれればそれで十分だ。」

 

****

 

(この教室がどんな結末を迎えるかは分からない。)

 

裏山に車を停める烏間先生。すると隣からビッチ先生が。

 

「おはよう。」

 

「おはよ。」

 

挨拶を交わす2人。そんな中秋風が吹く。

 

「寒くなってきたわね。明日から服変えなきゃ。」

 

「…冬服とかあったのか?」

 

「あるわよ!あんたが落ち着く服装にしろって言ったんでしょう!だいたいあんたは…

 

昨日はあんなに優しかったのに…」

 

(だが、この場所はいい世界だ。)

 

犬姿の殺せんせーを追う皆。

 

「くそ、うすらでかいくせにちょろまかと!」

 

「散歩する犬も殺せないとは、まだまだですねえ。」

 

(この場所にいると、誰にも平等に成長できるチャンスがある。)

 

見かねた烏間先生。

 

「…指揮を執るべきだな、行くぞ。」

 

(ええい、私に見向きもしない!こうなったら色仕掛けで…)

 

しかし服のボタンを止め、再び歩き出すビッチ先生。

 

「腕は?」

 

「平気よ。」

 

(最終暗殺計画など待たなくていい。この教室は今が最高の殺し時だ。)


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