黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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56話 死神の時間 3時間目

「殺せんせー!烏間先生!」

 

「ブラジル行ってたんじゃ…」

 

サッカー観戦。おっと今ならオリンピック観戦の方が良さそうだ。

 

に行っていた殺せんせー。しかし、

 

「花の匂い、そして生徒達のにおい。これを追って来たところを殺すつもりだったのでしょう。

 

ですが敵にとって計算外だったのは、私が試合も見ずに帰ってきた事、そして私が、

 

 

烏間先生と一緒に来た事。迎撃態勢も万全じゃ無いはず。入りますよ烏間先生。」

 

いざ、突入する烏間先生と殺せんせー。

 

それをモニターから眺める死神。

 

「参ったな…、かなり予定が狂ってしまった。でも僕にはね、あらゆる可能性を想定した

 

多様な作戦プランがある。さあ、プラン16だ、イリーナ。」

 

そうビッチに指令を下す。

 

「OK、分かったわ。」

 

まずい、烏間先生も殺せんせーも、あのビッチの裏切りを知らない…

 

皆も同じ事を考えていたようで、焦りが浮かぶ。

 

そしてエレベーターで降下する2人(1人と1匹か)。

 

2人が見たのは死神と、捕らえられたビッチ。

 

「「イリーナ(先生)‼︎」」

 

その姿を見て思わず叫ぶ2人。

 

「お前…、この前の花屋か!」

 

「ふふ、知っているかな?僕の事。『死神』の名を。」

 

(世界一の殺し屋か…)

 

沈黙する殺せんせー。

 

すると死神にある事を聞いた。

 

「生徒達はこの下に…?」

 

「さあどうだろうね。この中に居るのは確かだけど。安心して、

 

君が大人しく捕まればこの娘も生徒達も捕まりはしないよ。」

 

(なんて気配のぼかし方だ。動きも、考えも全く読めない。)

 

すると死神はビッチを突き飛ばす。

 

「彼女と生徒全員に爆弾付きの手錠をかけた。僕のスイッチ1つで爆破出来る。」

 

そう語る死神。それに対し…

 

「私が人質を取られて脅しに屈するとでも?」

 

そう言って相手の動向を探る殺せんせー。

 

「それは君次第だ。」

 

死神は答えをはぐらかす。そして殺せんせーは周囲の様子を探る。

 

(他に「敵」の気配は無い。彼の両手の二本の銃にさえ警戒しておけば…)

 

その分析は間違っていた。殺せんせーは、1番近くにいた「敵」に気付けなかったのだ。

 

いや、「敵」だと気付けなかった。

 

パアン!

 

銃声が響き、殺せんせーの触手が切り落とされる。

 

撃ったのは、ビッチだった。

 

「イリーナ先生…、何故?」

 

「体験しなさいタコ。死神は凄いから。」

 

そうビッチが言うと同時に落とし穴が開く。

 

落下する殺せんせー。

 

「すぐには飛べない。脱出するには何かに捉まらねば。」

 

そう言って触手で壁を掴もうとする殺せんせー。

 

しかし、死神は殺せんせーの触手を切り落としていく。

 

(触手を…、見切っている!)

 

死神は殺せんせーの動きを予測した上で撃っていた。

 

「マッハ20が最初から出るわけじゃ無い。初速はせいぜい600km。

 

それでも。落とし穴をこいつの暗殺に組み込むのはまず不可能!

 

けれど、死神の暗殺技術はそれを可能にする。すれ違う新幹線のターゲットを撃ち抜く技術!

 

マッハ2の銃が触手を撃ち抜く!そう、技術によってあらゆる常識は覆せる!」

 

(注.新幹線には防弾ガラスが採用された車両がある。死神が暗殺するような標的ならガードも堅いはず。

 

すれ違う新幹線から撃ち抜く必要があるなら尚更。間違いなくその車両に乗っているだろう。

 

そう考えると矛盾がある。)

 

そして落下する殺せんせー。呆気なく捕まってしまったのであった。

 

その光景に目を丸くする生徒達。

 

「呆気なかったね。生徒達を人質に使う所までいかなかった。

 

ここまで来たら十分だ。後は暗殺を実行するだけ。最期の挨拶に行くとしよう。」

 

そう言って降りる死神。

 

「皆さん、ここは…?」

 

辺りを見回す殺せんせー。

 

「国が対洪水用に作った地下貯水池なんだよここは。

 

管制室から指令を出せば、毎秒200トンの水がここへ流れ出る。

 

その水圧は君の自由を奪い、対先生物質の壁に押し付けられ、

 

君の身体はところてん状にバラバラに成るって寸法さ。」

 

皆それを聞き身震いする。殺せんせーも言葉が出ない。そんな中、。

 

それを聞いた烏間先生は死神を問い詰める。

 

「待て!生徒ごと殺す気か!」

 

「当然だよ、ここまで来たらもう遅い。生徒ごと入れれば乱暴には脱出出来ないからね。」

 

そう言い放つ死神。残酷な、人を殺す目をしていた。

 

「イリーナ、お前それを知ってて…」

 

烏間先生は、その怒りをビッチ先生にぶつけた。

 

けれど、それは…

 

「プロとして結果優先で動いただけよ。あんたの望む通りでしょう。」

 

烏間先生は強調してきた、プロという言葉を。だから、ビッチの言ってる事に何も言い返せなかった。

 

「ヌルフフフ、確かに厄介な対先生物質ですが、私の舌はついにこれを克服しました。」

 

突然そう言う殺せんせー。

 

「本当?」

 

「見せましょう。私のとっておきの体内器官!」

 

そう言うと殺せんせーは舌を出しペロペロ檻を舐めだした。

 

「コーティングした舌。半日もあればこんな檻解かせます。」

 

遅いわ。

 

「言っとくけど、そのペロペロ続けてたら全員の首輪爆破するよ?」

 

「そんなあ!」

 

当たり前だ。

 

(殺せんせーまであっさり捕まって、全部こいつに殺られるのか、殺せんせーも、俺らも、賞金も!)

 

悔しがる皆。けれど何も出来なかった。

 

「さて急ごう、まだ何か隠してるかもしれない。まずはこのスイッチで管制室を…」

 

そう言おうとした死神の肩を止める烏間先生。

 

「なんだいこの手は?日本政府は僕を止めようというのかい?

 

多少手荒だけど、確実に殺せるんだ。

 

そもそも烏間先生。君を人質にするという計画もあった。

 

君では僕に及ばないよ。」

 

(もし生徒ごと巻き添えに殺そうという暗殺者がいたら、その時はどうしますか…

 

俺はそう上司に聞いた。答えは、ケースバイケース、現場の俺が判断しろという事だった。

 

つまり、俺の見解が政府の見解だ!)

 

「…日本政府の見解を伝える。27人の命は地球より重い。

 

それでもお前が生徒ごと殺すのなら、俺が止める。」

 

「烏間先生!」

 

皆の顔に希望が見える

 

「言っておくがイリーナ、プロってのはそんな気楽なもんじゃないぞ。

 

それで、どうする死神?生徒ごと巻き添えにするこの暗殺計画。

 

続けるなら俺はお前をここで倒す。」

 

そう宣言した烏間先生。彼を見つめ、力量を測る死神。

 

(ふーん。思ったより隙がないな。強靭な肉体に武装もしてる。

 

殺すのに時間を掛けると計画が狂う。ここは…、ターゲットの暗殺を優先すべし!)

 

すぐさま管制室に向かおうとする死神。

 

(操作室で水を流す気か…、まずい、奴を止めなければ…)

 

それを追い掛ける烏間先生。

 

 

「確かにカラスマも人間離れしてるけど、死神はそれ以上だわ。」

 

そう呟くビッチ。それに対し、

 

「ビッチ先生、あの死神が俺らごと殺すって分かってて協力したのかよ。」

 

そう言った前原。やはり信じていた人が敵だったというショックは大きいのだろう。

 

「なんで?仲間だと思ってたのに…」

 

岡野も同じのようだ。

 

「不安だったんでしょ。ぬるーい学校生活で殺し屋の感覚忘れかけて。

 

そんで俺ら殺してアピールしたいんだよ。私冷酷な殺し屋よって。」

 

カルマがそう言った。大方その考えは間違ってないように見える。

 

「…私の何が分かるのよ。考えた事無かったのよ!自分が普通の世界で過ごせるなんて!

 

弟妹みたいな子と仲良くしたり、恋愛の事で悩んだり。私はそんな世界で生きる資格はない。

 

もう戻れないのよ。陽の当たる場所へは。」

 

その重い言葉に皆黙り込んだ。

 

けれど、

 

「それでも俺は、アンタが俺らを巻き添えにして殺すのは間違ってると思うぜ。

 

プロの殺し屋相手に止めはしないが…、 本当にそれで良いのかもう一度考えたら?」

 

俺はそう言い放った。すると通信音がした。

 

「イリーナ、今足止めの罠を仕掛けながら操作室へ向かっている。

 

烏間が罠に手こずっている間に背後から撃て。」

 

「…分かったわ。」

 

ビッチは去っていった。

 

「流石は、歴戦の殺し屋。味方だと思っていたイリーナ先生に裏切られた。

 

先生の苦手とする環境の変化です。死神は勿論、イリーナ先生も強い。

 

さて、このモニターから、断片的に強者同士の戦いが見られそうです。

 

一方死神を追う烏間先生。

 

進む先にドアが見えた。

 

(恐らくこのドアを開けるとトラップが作動する。俺がトラップにかかっても、

 

解除に手こずってもその間に奴は管制室にたどり着く。

 

この短時間で仕掛けられるのは爆弾くらい。それも半径数メートル程度の小型だ。

 

まあ良い開けよう。)

 

ドアを開ける烏間先生。案の定爆発する。しかし…、

 

烏間先生は爆風と煙の中無傷で出てきた。

 

「フ、思いの外強力だったな。」

 

衝撃的すぎる光景だった。

 

「…今何があった?爆発したと思ったら烏間先生が無傷で出てきたぞ?」

 

「この短時間で仕掛けられるのは小型の爆弾くらい、烏間先生はそれを見越した上であえてドアを開けた。

 

そして、爆風と同じ速さで後ろ受け身をとったので、ドアも盾になり無傷で抜けられました。」

 

そう解説する殺せんせー。

 

「判断も行動もあの一瞬じゃやれねーよ!」

 

思わずそう突っ込む皆だった。

 

さらに走っていく烏間先生。しかし…

 

「烏間先生行っちゃダメ!その先に…」

 

原さんが何かに気付いたように叫ぶ。その通りその先に銃声がした。

 

慌てて回避する烏間先生。慎重に見てみると、その先にドーベルマンが。銃を付けていた。

 

恐らく銃を撃てるよう調教されたドーベルマンだ。これだけの数をきっちり仕込むとは、死神の手腕か。

 

さて、どう出る烏間先生…

 

「犬を使うとはなんて卑怯な。何故卑怯かって?俺はな、犬が大好きなんだ。」

 

そう言うと烏間先生は満面の笑顔を浮かべる。犬は怯えてすぐさま立ち退いた。

 

「お前達の主人には悪いが、ここは優しく通らせてもらうぞ。」

 

笑顔一つで罠を通り抜ける烏間先生。すると千葉が呟く。

 

「いやでも、犬の気持ちわかるわ。あの人が笑うのって、半分は人を襲う時じゃん。」

 

(確かに!)

 

「ええ、普段は強い理性で押さえ込んでいますが、烏間先生の真価はその奥に眠る暴力的な野性!

 

彼もまた、この教室に引き寄せられた比類なき猛者なのです。」

 

烏間先生は、飛んでくる鉄の建材を腕で押さえ、仕掛け弓から放たれる矢を寸前で手で掴む。

 

「敵の死神も、短時間でこれだけの罠を仕掛けられる。技術も能力も世界最高峰です。

 

まさに…

 

人類最強決定戦!」

 

そう、2人は強過ぎるのだ。

 

「勝てない訳だ。俺らがいくら訓練積んでも。」

 

「ええ、彼らは強い。そしてこの檻。爆薬でも液状化でも抜けられない。

 

では君達はどうします?この場で彼らより強くなるか、勝てないと諦めるか。

 

両方とも違いますね。弱ければ弱いなりの戦いがある。」

 

「つっても、この状態でどうやって…」

 

岡島が悩む。しかし…

 

「できるかも、死神に一泡ふかせる事。つっても、全てが上手くいけばだけど。」

 

三村の策とは…




死神編は文字数少なめ。

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