黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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死神編は戦闘描写が多く苦手だ。


55話 死神の時間 2時間目

「茅野っち!」

 

倒れた茅野に岡野が駆け寄る。

 

(渚…、怒ってるけど目は冷静だ。)

 

(黒崎も、冷静に相手を見据えてる。)

 

敵は相当な手練だ。1対1での戦いはまず不可能。

 

そこでだ。

 

「皆、もし死神と交戦状態に成ったら、猫騙しを試したいんだ。

 

敵なら僕のこの技を知ってるかもしれない。けれど、それも想定済み。

 

ナイフを警戒したら猫騙しを。スタンガンを警戒してたらナイフを突き付ける。」

 

「そしてどちらにせよその時隙は作れる。だからそこを俺が叩く。

 

まずは催涙弾で動揺させる。それが駄目なら、ナイフを突き付ける。

 

後は皆で一斉に。」

 

ちなみに茅野は大丈夫だ。さっきのバキバキ音、死神は肋骨が折れた音と勘違いしたようだが、

 

あの音は超体育着の防御機能が働いた事を示す。ダイタランシーフレームが瞬時に体を守り、

 

その直後に砕けたのだ。

 

まあ死神はそれで俺と渚が怒ってるように見えるんだろうが。

 

実際怒っている。だからその怒気で殺気を隠して…

 

渚が近付き、猫騙しを決めようとしたその時、

 

パン!

 

と音がして、死神が手を大きく叩く。渚はその場で硬直して動かない。

 

だが驚いてる暇はない。俺はすかさず催涙弾を撃ち、そのままスタンガンで気絶させようとする。

 

しかし…

 

死神は俺の催涙弾を爆発させないよう指で掴み、いつの間にか消えていた。

 

(あー、こりゃ無理だ。)

 

そして死神は物凄い速さで俺らを全員戦闘不能にする。その先の記憶は無かった。

 

「ロヴロや君のでは単なる猫騙し。だがこの技術には一段先がある。

 

クラップスタナー。最も敏感な、人間の意識の波長の『山』の部分に強い音波を当てる。

 

その衝撃は、相手が麻痺して当分動けない程のものさ。

 

そして黒崎君、催涙弾で相手の動きを止めるのは良いが、

 

君は殺気を隠しきれていない。だから攻撃を事前に察知され、いとも簡単に止められてしまうのさ。」

 

薄れゆく意識の中、死神の言葉だけが頭に強く残った。

 

***

 

C班

 

「やばいよ、A班全滅みたい!」

 

原がそう言う。

 

「マジかよ!1分前に散ったばかりだぞ!」

 

寺坂が衝撃の声を上げる。

 

「かなりの強敵みたいね。闘えるメンバー多く入れたA班がこれだもの。

 

うちらC班が勝てる訳ないわ。」

 

狭間の分析は概ね的を得ていた。

 

「ケッ!安心しろ!俺とイトナでA班以上の戦力だろうが!」

 

そう怒鳴る寺坂。そしてそれに答える竹林。

 

「安心出来るかは置いといて、この建物何か変だ。」

 

疑問を発見したようだ。糸成4号(エコー測定器付き)が。

 

「…何がだよ?」

 

「さっき脱出の為に確かめたけど、この近くに大きな空洞がある。

 

僕達を捕まえる装置とは思えないから、恐らくは殺せんせー用の罠さ。」

 

「ケッ、世界一の殺し屋だが知らねーが、何が出来るかってんだ。」

 

***

 

B班

 

「多分このドアの先がビッチ先生が捕らえられてる部屋だ。このドアの厚さからして竹林の

 

爆弾で破壊できる。」

 

「それよりどうする、A班がヤバイみたいだ、俺らが救援に…」

 

「いや、慌てたら死神の思うツボよ。死神はどうせ私達を襲撃する。

 

1回倒せばそれで終わり。返り討ちにするわ。」

 

「て言うけどA班なしでどうやって…」

 

「大丈夫、この爆薬は人に向けちゃ駄目だけど、脅しや足止めには十分使える。

 

さらには奥田さん製催涙ペイント弾。当たるだけでパニックになるそうよ。」

 

「生簀の中に小魚捕らえてるつもりだろうけど、その小魚はピラニアだって教えてやろうぜ!」

 

彼らは知らない。その催涙ペイント弾が、いとも簡単にかわされた事を。

 

そしてピラニアを捕らえてる死神は、猛獣すら捕らえる凄腕のハンターだと。

 

爆薬で穴を開けドアをくぐると、そこには捕らえられてるビッチ先生が。

 

「ビッチ先生!良かった、まだ眠ってるけど脈はある。」

 

カッターナイフで縄を切り、ビッチ先生を背負う。

 

「じゃあまずC班と合流してA班を救出しつつ、死神が来たらぶっ飛ばす!」

 

片岡の作戦に皆賛同する。

 

「ビッチ先生と杉野を守りつつ、三村君が先導して私が後衛!敵が1人なら…」

 

「でも良かったあ、ビッチ先生無事で。」

 

「だね、まだやって欲しい事いっぱいあるし。」

 

「先生てかダベり友達だけど。」

 

安堵する女子達。しかし…

 

崩れ落ちる片岡と杉野。

 

「6ヶ月くらい眠ってたわ。自分の本来の姿も忘れて。

 

でもようやく目覚めた。彼のおかげよ。さあ、逝かせてあげるわボーヤ達。」

 

死神のスキル、教唆術!豹変ぶりに、B班は声も出なかった。

 

「ビッチ先生、本気なの?」

 

倉橋が悲しそうに聞く。ずっと一緒に過ごした教師が敵になったのだ。無理もない。

 

「悪いわね、商売敵は黙らせろってカレが言うの。あんた達と可能性の見えない暗殺を続けるより、

 

確率の高いプロと組むわ。」

 

「ビッチ先生、そんな人とは思わなかった。」

 

中村が失望した様に言う。

 

「アラ、どんな人だと思ってたの?」

 

ビッチは悪びれもせず言う。

 

「えーと、欲望に素直で、身勝手で、後男がいないと全身が性欲で爆裂して死ぬ。

 

あ、割とこんな人か。」

 

というのが中村の答えだ。

 

「勝手に怖い設定付け足すな!」

 

「んでよおビッチ先生、死神の手先に成り下がったなんてショックだけどよお。

 

今の俺ら全員を相手できるの?俺らだって毎日訓練積んでるし、

 

正直ビッチ先生1人じゃ…」

 

三村が心配そうに言う。

 

「フーン分かったわ。じゃあガキ共、最後の授業をしてあげるわ。」

 

ビッチが立ち上がる。

 

そして身構えるB班。

 

しかし、

 

「痛っ!ハダシで足踏んだ…」

 

呆れて近寄る矢田と三村。しかし…

 

ビッチはすかさず2人に麻酔を撃ち込む。

 

そしてその隙に中村と岡島を押し倒し麻酔を撃ち込む。

 

最後は布で神崎と速水の視界を奪いその隙に倒す。

 

「ずるいよビッチ先生…。心配しちゃったじゃん…」

 

「訓練には無かったでしょこんな動き。いいことガキ共、手段はどうあれ、私は結果を出した。

 

プロに必要なものは結果。それ以外に無いわ。あんた達とは踏んだ場数が違うのよ。」

 

そう言い残すビッチの声だけが、B班の皆の耳に聞こえた。

 

すると死神が現れる。

 

「やっぱり大した事ないねえ。まさか君1人で片付けちゃうとは。」

 

「あなたの言う通りね、この子達に組む価値は無い。」

 

そう言い捨てるビッチ。

 

「だろう、この子達が透明な空気を吸っている間、僕達は血煙の中生きていた。

 

住む世界が違うのさ。」

 

死神がそういった。

 

(そう、住む世界が違う、あんたともよ、カラスマ。)

 

その言葉を反復するビッチ。その胸中やいかに…

 

「それにしても、あまりにも呆気ないね。もっと策があるのかと思ってたよ。」

 

そしてC班の前に現れる死神。

 

「残りの班は全員捕らえた。どうする?大人しく僕に降伏するか、

 

それとも、戦闘の不向きなそのメンバーで絶望的な戦いを挑むか。」

 

「上等だ!行くぜイトナ!俺とテメーで…」

 

「……」

 

しかしイトナは答えない。その時イトナは、殺せんせーとの会話を思い出していた。

 

…ちなみに2人の下には大量のグラビアが。

 

「イトナ君、シロさんが君に施した無理な肉体改造の効果は徐々に薄れていき、

 

君の身体は自然な中学生のものに戻っていくはずです。

 

だから、しばらくは無理は禁物。

 

そして例えば、昨日乗り越えられた壁が今日は越えられない。そんな事もあるはずです。

 

そんな時は…」

 

そう。

 

「降参だ、寺坂。」

 

イトナは両手を上げる。

 

「何!」

 

それに対して憤る寺坂。

 

「多分格が違う、戦っても損害だけだ。」

 

「イトナ…」

 

イトナは冷静にこう言った。

 

「今日敗北してもいい、いつか勝てるまでチャンスを待つ。」

 

***

 

ガシャン!

 

1人1人に手錠が付けられ、身動きが取れなくなった。

 

「この牢屋はさっきと違って脱出不可能。もう君たちに出番は無いよ。大人しく牢屋で待機してな。」

 

そう言って素顔を晒す死神。

 

「はーあ、ビッチ先生に裏切られて悲しい…。」

 

そう言って嘆く倉橋。

 

「フン。」

 

ビッチは鼻で笑う。

 

「流石にこのタイミングで寝返りとは想定外だったが…、

 

あんたの事は最初から信頼しちゃいなかったさ。所詮アンタもプロの殺し屋。

 

どうせ殺す為なら何でもするんだろうって。」

 

俺はそう語った。

 

「アラ、私に1番関心なさそうな黒崎、アンタが1番私の事分かってんじゃない。」

 

「…」

 

一方渚は茫然自失としていた。

 

「…渚。」

 

恐らく猫騙しが通じなかったショックだろう。

 

「でさあ、どんな方法であの殺せんせー殺ろうとしてるかは知らないけど、

 

そう上手くいくかな?」

 

カルマは話し掛ける。

 

「何だい?」

 

「だってさあ死神さん。俺らの誰にも大したダメージを与えられなかった。

 

それは超体育着の情報を入手してなかったって事。この計算違いが殺せんせー相手だったら、

 

それ命取りになるよ。」

 

「そもそも貴様のその格好。悪趣味な上印象に残り過ぎる。もっと地味で目立たない服にすべきだったな。

 

素顔を出したのも失敗だ…、貴様の技術なら変装だって幾らでも出来たはず。

 

その慢心も命取りだ。ただの中学生の俺らならいいが…殺せんせー相手なら確実に。」

 

死神はそれに対して、薄ら笑いを浮かべながらこう返した。

 

「結果はどうだい?君達は現に牢屋にいる。

 

情報不足?そんなの殺し屋に取って当然。まして相手は未知の怪物。

 

情報不足でも結果が出るのが殺し屋だ。

 

そして素顔を晒したのが失敗…?慢心…?

 

だけどその慢心した僕にすら負けたんだよ君達は。」

 

(確かに、これが暗殺なら俺ら全員死んでた。俺らを一蹴し、ビッチ先生を引き込み、

 

幾多の技術で結果を出す。桁違いだ。100人いない限り今の俺らじゃこいつに勝てない。)

 

 

「さて次は烏間先生だ。誘い出して人質に取る。

 

彼ならば、君達よりはいい練習台になるだろう。」

 

彼は烏間先生の写真を見ながらそう言った。

 

「…烏間先生を!」

 

「いや、こいつならやりかねない。」

 

それは事実だった。「死神」ならやりかねない。

 

「それに彼を捕らえておくと色々メリットが多くてね。」

 

***

 

「なあイトナ、あっさり降伏するなんて、戦闘狂だったお前とはえらく違うな。」

 

寺坂が思い出したように言う。

 

「…あの頃の俺は1人の殺し屋だった。強くなる、それしか考えていなかった。でも今は…」

 

そう語るイトナ。

 

そして、カルマはモニターを見て何かに気づいたよう。

 

「死神さん、あんたまた計算違いしたようだね。」

 

イトナは先程の言葉の続きを語る。

 

「…俺はE組の生徒。あのタコはこう言った。

 

生徒に越えられない壁があるのなら、その時は先生の出番です。」

 

犬の姿をした殺せんせーのリードを引く烏間先生。

 

「ここです、犬に変装したおかげで自然に臭いが辿れました。」

 

「…こんなうすらでかい何処が自然だ。」

 

ついに最強の先生2人が、動く。




犬っ殺は鼻が利くそうだ。

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