黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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これでイトナ編は終了か。この話で番外編入れて丁度50話。


47話 紡ぐ時間

***

 

「対先生ネットをリメイクしたバンダナ…。」

 

をつけているイトナ。けど…

 

「あんなん気休めに過ぎねーよ。また発作が起きて暴走したら止めらんねー。」

 

「寺坂の奴、どうやってイトナの心を開かせる気だ…?」

 

さて、イトナの世話を買って出た寺坂の策とは…

 

「さてお前ら…、」

 

寺坂どんな作戦が、と思いきや

 

「どーすっぺ、これから?」

 

馬鹿野郎。

 

「何も考えてねーのかよ!本当に無計画だなお前は!」

 

「うるせー、これから考えるんだよ!4人もいりゃ何とかなるだろ!」

 

駄目だ、救いようが無い。

 

すると呆れたような顔で狭間が言う。

 

「ハア、村松の家ラーメン屋でしょ、一杯食べたら気が楽になるんじゃない?」

 

(そう、とにかくまずは彼の肩の力を抜かなければ。

 

イトナ君が触手の力を求める内は、触手は彼に癒着して離れない。

 

どこかで彼の、力に対する考え方を変えないと…。)

 

村松の店のラーメンを食べるイトナ。

 

「どーよ、ウチのラーメン、不味いだろ。親父に何度言ってもレシピ改良しねえ。」

 

「…不味い、おまけに古い。手抜きの鶏ガラを化学調味料でごまかしている。

 

3世代前の昭和の味だ。」

 

(こいつ意外と知ってやがる!)

 

(…こんな店近くにチェーン店でもできればすぐ潰れる。俺の親は勉強したのに無惨に潰れた。)

 

今度は吉田が声を掛ける。

 

「おうイトナ、俺の所来いよ、村松の化石ラーメンとは比べ物にならねー現代の技術見せてやるよ。」

 

今度は吉田と一緒にバイクに乗るイトナ。

 

「どーよイトナ、スピードで嫌な事なんざ吹き飛ばせ!」

 

「いいの中学生が無免許で。」

 

「あいつの家の敷地内だからいいらしいぜ。」

 

「テンション上がってきたかイトナ?」

 

「…悪くない。」

 

「そうか、じゃあもっと飛ばしてやらあ!必殺、高速ブレーキターン!」

 

そう言うと吉田は急旋回する。だが同時にイトナも遠心力で飛ばされた。

 

「あ…。」

 

「バカ早く助け出せ!このショックで暴走したらどーすんだ!」

 

「はは、これ位なら大丈夫じゃね?」

 

という風に騒いでる寺坂組。駄目だこりゃ。

 

「本当あいつら無計画だな。」

 

「なんかただ遊んでるだけな気がする…。」

 

その通りだ。こんなんで助かるのか?

 

「ま、あいつら基本バカだから仕方ないよね〜。」

 

すると奥田さんが提案する。

 

「あ、でも狭間さんなら頭良いから…。」

 

だが狭間が持ち出したのは…、

 

数冊の分厚い本。

 

「名作復讐小説モンテ・クリスト伯。これ読んで暗い感情を増幅しなさい。」

 

重い。

 

「狭間お前は小難しいんだよ、もうちょっと簡単なのねーのか?だってこいつ頭悪そう…」

 

お前が言うな。と言おうとした所…

 

イトナが震えだす。発作が起きたようだ。

 

「やべえ、何かプルプルしてるぞ…。」

 

「寺坂に頭悪いって言われりゃキレんだろ。」

 

「違う…、触手の発作だ。また暴れだすよ…。」

 

そう、まだイトナは力を求めているようだ。

 

「俺は…、お前らとは、違う。今すぐ…、あいつを殺して…、勝利を!」

 

危機を察知し吉田、村松、狭間は離れる。しかし、寺坂はその場を動かなかった。

 

「おい寺坂…!」

 

そしてイトナに語りかける寺坂。

 

「おうイトナ、俺も考えてたよ、あんなタコ今すぐに殺してえって。

 

でもな、テメーには今すぐ殺すなんて無理なんだよ。

 

無理のあるビジョンなんて捨てちまいな。楽になるぜ。」

 

「うるさい!」

 

イトナは触手を振る。だが、それを寺坂は腹で抑える。

 

「2回目だし弱ってるから捕まえやすいわ。吐きそうなほどほど痛いけどよ。

 

吐きそうといやあ、村松のまずいラーメン思い出したぜ。

 

あいつタコから経営の勉強進められてんだ、今じゃなくても良い、いつか店を継ぐ時の為に、

 

そん時は、新しい味と経営手腕で繁盛させてやれって。

 

吉田も同じこと言われてたぜ。いつか役立てばそれでいいんだ。

 

なあイトナ、2度3度失敗したくらいでグレてんじゃねーよ。いつか勝てればいいじゃねーか。」

 

そう言って触手を払う寺坂。

 

「タコ殺すにしたって、すぐ殺さなくたっていい。100回失敗してもいい、

 

3月までにたった一度成功させたらそれで勝ちなんだよ。

 

親の工場なんざ、その時の賞金で買い戻せ。そうすりゃ親も戻って来る。」

 

「…耐えられない、次のビジョンが出来るまで、俺は何をして過ごせば良いんだ?」

 

寺坂は呆れたような顔をして悪びれもせず言った。

 

「はあ、今日みたいにバカやって過ごすんだよ。その為に俺らE組がいるんだろうが。」

 

それを聞いたカルマが呟く。

 

「あのバカさあ、適当な事平気で言う。けどね、バカの一言は、こういう時気楽にさせてくれるんだよ。」

 

そして、イトナはようやく悟ったようだ。

 

「俺は、焦っていたのか?」

 

「おう、だと思うぜ。」

 

「イトナ君、目から執着が消えましたね。では、今から君を苦しめる触手を取り除きます。

 

君は大きな力を失う変わりに、たくさんの仲間を得ます。殺しに来てくれますね、明日から。」

 

「…勝手にしろ、この触手も兄弟設定ももう飽きた。」

 

そして翌日

 

「おはようございます、イトナ君。気分はどうですか?」

 

「最悪だ、力を失ったんだから、けど、弱くなった気はしない。最後は殺すぞ、殺せんせー。」

 

こうして、問題児、堀部イトナはようやくE組に加入した。

 

その日の休み時間

 

イトナは何やら戦車の模型のような機械を作っていた。

 

「何作ってるのイトナ君?」

 

「見ての通り、ラジコン戦車だ。

 

昨日あのタコに1日中勉強させられて腹が立ったから、こいつで殺してやる。

 

寺坂がアホ面で俺にこう言った。100回失敗してもいいと。だから失敗覚悟で殺しに行く。」

 

(殺しに行くって、…なんかこれすげーハイテクだぞ!)

 

そうしてイトナの周りに男子が集まり、人だかりが出来た。

 

ハンダ付けをしているイトナ。

 

「凄いなイトナ、自分で考えて改造したのか?」

 

「…親父の工場で基本的な電子工作は大抵覚えた。こんなのは寺坂以外誰でも出来る。」

 

「アア!」

 

寺坂を散々煽るイトナ。だが、触手を持っていた頃とは全然違う。毒舌は相変わらずだが。

 

そしてラジコン戦車は、イトナがコントローラーのレバーを押して発進した。

 

「おお〜!」

 

歓声が上がる。そしてイトナの戦車は3つ空き缶の前で止まり、搭載された砲弾が、

 

空き缶を狙う。3つとも命中した。

 

なかなか正確な射撃だ。

 

それに…

 

「すっげー、走ってる時も撃ってる時も全然音がしない。」

 

「電子制御を多用してギアの駆動音を抑えている。

 

主砲の照準と連動しつつ、コントローラーに映像を送る。」

 

「おお〜、まるでスパイだ。」

 

「これで一体どこを狙うの…?」

 

渚の疑問にイトナが答える。

 

「一つ、お前らに教えてやる。シロの奴が教えてくれた、奴の急所、狙うべき理想の一点。

 

奴の心臓、そこに当てれば一発で殺せる。」

 

その頃、殺せんせーは空を飛んでいた。

 

「ヌルフフフ、おそらくは、皆さんに知れ渡ってしまったでしょう。私の急所が。

 

イトナ君の加入で、ますます暗殺が楽しくなってきそうです。」

 

 

「こいつは使えるな。」

 

「よし、実際の暗殺に備えて、試運転してみよう!」

 

磯貝の提案の元試運転が開始された。

 

「本番で壊れたら、元も子もないもんな。」

 

「ああ。」

 

ラジコンは教室を出て廊下を走る。

 

何やらBGMまでかかりそれっぽい雰囲気に。皆が集中してモニターを眺めたその時。

 

「ビッチ先生、じゃあねー。」

 

「また明日〜。」

 

女子達が帰るようだ、

 

数秒間黙り込む男達。そして岡島が沈黙を破る。

 

「…見えたか?」

 

「いや、カメラが追いつかなかった。視野が狭過ぎるんだ!」

 

前原が分析する。

 

「カメラ、もっとデカく出来ないのか?」

 

「…無理だ、機動力が落ち、標的の補足が難しくなる。」

 

「…。」

 

皆頭を悩ませる。すると…、

 

「ならば、カメラを魚眼レンズにしてみたらどうだろうか。」

 

「竹林!」

 

参謀、竹林考太郎が提案する。

 

「送られた画像を、歪み補正機能で修正出来れば、小さいレンズでも大きな視野角で撮れる。」

 

「…分かった。視野角の大きい魚眼レンズは俺が調達する。」

 

カメラ整備 岡島大河

 

「…律、歪み補正のプログラムは組めるか?」

 

「はい、用途はよく分かりませんが、お任せ下さい!」

 

そんな竹林の肩に手を置き、岡島はこういう。

 

「…天才だな、竹林。」

 

「フッ。」

 

「録画機能も必要だな。」

 

「ああ、効果的な改良のためには不可欠だ。」

 

こいつら…、下着ドロにはドン引きしてた癖に。

 

だがそれでも戦車は進む。

 

「これも暗殺の為だ!進め、えーと、試作品0号!」

 

そして校舎の玄関を出て、階段で…

 

コケた。

 

「あっ。」

 

「急いで復元させろ!」

 

「ああ、任せろ!」

 

「頼んだぞ!」

 

高機動復元士、木村正義が行く。

 

「段差に強い足回りも必要じゃないか?」

 

「俺に任せろ。駆動系や金属加工には覚えがある。」

 

駆動系設計補助 吉田大成

 

「車体の色が薄いカーキなのも目立ち過ぎるな。戦場迷彩だから、

 

学校の景色に馴染ないとターゲットに気付かれるおそれがある。」

 

「…引き受けた、学校迷彩、俺が塗ろう。」

 

偽装効果担当 菅谷創介

 

「…ラジコンは人間とはサイズが違う、快適に走れるよう、俺が地図を作ろう。」

 

ロードマップ作成 前原陽斗

 

 

それを見て呆れた俺、渚、磯貝。

 

「みんな…、エロの事になると我を失うんだな。」

 

「本当にゲスいね。」

 

「男というのは何故こうも馬鹿なんだ…。」

 

翌日 AM 6:30

 

教室に集まる男子。

 

「おう、昨日の内に、足回り仕上げといたぜ。」

 

「朝飯、作ってやったぜ。」

 

糧食補給班 村松拓哉

 

「どうだ、この学校迷彩。完璧だろう?」

 

「おお〜!」

 

辺りがどよめく。

 

「わかってるのか?これは、暗殺の為の作戦なんだぞ。」

 

磯貝が諌める。

 

「分かってるって、学級委員長。よし、女子が登校してくる前に、完成させるぞ!」

 

「おう!」

 

「こういう時は、誰も遅刻しないんだね。」

 

全く、お前らその情熱を他の事に活かせないのか?

 

「律が機動するのは8時丁度。彼女を傷つけたくない。」

 

竹林がメガネをクイと上げる。

 

「うん…。」

 

女子を傷つけたくないとは思わないのか?

 

そして、

 

「うわ、危ないって、しっかりコントロールしないとまた倒れるぞ!」

 

「どけ、俺が操作してやるよ。」

 

(無口で無愛想なイトナ君が、クラスに溶け込めるか心配だったけど、そんな心配は無用だったようだ。

 

エロと殺しと物作り、男子のツボをがっちり掴んで、人だかりが出来た。)

 

方向性は間違っているがな。

 

すると磯貝が声を掛ける。

 

「イトナ、みんなで改良してるんだ。機体に開発ネームでもつけないか?」

 

「…考えとく。」

 

「触手が俺に聞いてきた。どうなりたいかと。強くなりたいと答えたら、それしか考えられなくなった。

 

最初は細い糸でいい、徐々に紡いで強く成れ。それが俺の名前の由来らしい。

 

最初から、ここから始めればよかったのか。」

 

すると、突然イタチが現れる。

 

「キュ?」

 

「どうする、砲撃か?」

 

「いや逃げろ?」

 

「駄目だ全然効果がない、主砲の威力が弱すぎる!」

 

「ここも要改造だな。」

 

「やばいー!」

 

そして、そこには無残な戦車の姿が。

 

「開発にミスは付き物。これは失敗したが、ここから紡いで強くなる。最後には必ず殺す。

 

よろしくな、お前ら。」

 

「おう!」

 

イトナはこうしてクラスに馴染んだ。

 

「よし、この調子で女子全員のスカートの中を盗撮するぞ!」

 

と岡島が言う。しかし、

 

「スカートの中が何ですって?」

 

後ろにいたのは片岡達女子。

 

「あ、違う、これはだなー。」

 

とごまかすも意味はなく、

 

「誰が首謀者、まさかイトナ君?」

 

「…岡島。」

 

「ふざけるなあああ!」

 

この後の岡島の運命は、ご想像にお任せしよう。

 

「おいカルマ、俺は今日サボる。いい場所を教えてくれ。」

 

「お、話せるじゃ〜ん。いいよ、付いて来て。」

 

イトナは意外としたたかだ。

 

***

 

一方シロは烏間の上司と話をしていた。

 

「…うちの烏間から苦情が来てね。生徒を巻き込む暗殺を続ければ、

 

あの怪物が責任を感じて教室を去る危険性がある。

 

必ず殺す確証が無いならやめて欲しい、とね。」

 

「…分かりましたよ。私としても計画の練り直しを考えている。

 

それに、あの教室にはイトナ以上の怪物がいる。私の訓練すら受けていない一般生徒がね。

 

虫も殺さぬ顔をして、本人すら気付かぬほどの殺意を備えている。

 

そんな生徒が、あの怪物を殺すのもまた一興だ。

 

それでも駄目なら、最終兵器でも用意しますよ。」

 

シロの怪物と最終兵器とは…?




岡島、原作でも二次でも冷遇され続ける哀れな存在、君の犠牲、無駄にはしないよ。

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