黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

48 / 109
42話 強者の時間

竹林は思い出す、E組での生活を。

 

「ふふ、僕の行きつけ、気に入ってくれたようだね。」

 

寺坂をメイド喫茶に誘った時の事。

 

「んな訳あるか!てめーが行きたいっつったから興味本位で来てやったんだろ。

 

タコのお陰で余裕出来たからって変な遊び覚えやがって。」

 

「ご主人様、一緒に記念撮影はいかがですか?」

 

「あ、じゃあ折角なんで。」

 

そう言ってにやけ顔で写真を撮る寺坂。その後ろに猫耳殺せんせーが。

 

メモって去っていく。

 

(やたら生徒の情報を貪欲に知りたがる先生だ、寺坂もそう、彼なりに僕の事を知ろうとしてくれたんだろう。

 

…なんかいる。)

 

草に紛れ込むE組の皆。

 

「結構うまくいってるじゃん。」

 

「むしろ普段より愛想良くね?」

 

「だからほっとけて言ったんだあんなメガネ。」

 

竹林は意外と上手くやっていけているようだ。

 

(烏間先生に教わった擬態テクニック。けれど、本校舎とE組じゃ植物が違うから見る人が見れば余計怪しい。

 

なんでまだ僕に構う?E組で僕は暗殺に役立っていなかった。本校舎で言えば勉強が出来ないのと同じ。

 

それはつまり、必要とされてないって事だ。まして僕はもうA組にいる他人だというのに、

 

僕を見て何を学ぶんだ?)

 

すると浅野が竹林に話し掛ける。

 

「突然悪いが、竹林君、理事長室においで、逆境に勝ったヒーローの君を必要としているようだ。」

 

そして2人は理事長室に入る。

 

そして浅野が竹林に注意する

 

「そこら辺の物に触れない方が良い。以前ここで転校生が理事長の私物を壊した。

 

そいつは問答無用でE組行きになったそうだ。」

 

俺はそれを聞き考える。転校生…?一体誰が?まさかこの中にいるとか。

 

いや止めよう。今はそんな事はどうでも良い。

 

「はは、君なら少しは許されるんじゃ。」

 

「まさか、理事長は息子相手でも容赦しない。もし僕の成績が悪ければE組に叩き落とすさ。

 

だから油断ならない毎日さ。」

 

(浅野学秀。彼と理事長は親子なのに、親子らしくない。

 

もし彼程の人が僕の家族に入れば、うちの家族は喜んで認め、褒め称えるだろうに。)

 

「理事長室に入ったか。くそカーテンで仕切られてる、中が見えねえ。」

 

その中では

 

「お待たせしたね、2人共、さあお掛けなさい。

 

明日は創立記念日。君はその時の全校集会で、もう一度スピーチをして欲しい。

 

浅野君、原稿は出来てるかな?」

 

「はい、」

 

そう言って浅野は原稿を渡す。

 

「ほう...、まあこんな所か。読みなさい竹林君。」

 

そして原稿を読む竹林。

 

「これ、こんな内容を皆の前で?」

 

竹林はショックを受ける。

 

「君はまだ、弱者を抜け切れていない、これは強者になる為の儀式だ。

 

君が強者へステップアップすれば、君の家族も認めてくれるよ。」

 

その内容とは…

 

「僕は、E組でクラスメイトの腐敗ぶりを見てきました、

 

不特定多数との不純異性交遊に溺れる生徒。暴力生徒。食べる事しか能のない肥満生徒。

 

変態行為に手を染める生徒。コミニュケーション能力に欠陥のある生徒。

 

彼らに本校舎に戻る能力はありませんが…、同じ椚ヶ丘の生徒として、

 

彼らを少しでも更生させるよう、僕が彼らの生活を監視、指導する為に、皆さんに...

 

E組管理委員会を立ち上げる賛同をください。」

 

「君がこのスピーチを読んでくれたら、君の為に生徒会の新役、E組管理委員長を設立しよう。」

 

「-同級生をクラスごと更生した、その手柄、つまり内申は高校まで響く、

 

一流大学の推薦だって見えてくるよ。」

 

さらに畳み掛けるように理事長が言う

 

「これは君が強者になる為の儀式だ。かつての友を支配する事で、君は弱者から抜け出せる。」

 

竹林は思い浮かべる。「強者」を。

 

(強者、彼らみたいな、僕の家族みたいな強者。)

 

「…やります。」

 

竹林はそれを承諾した。「強者」になる為に。

 

「よくぞ言った。帰って原稿を入念に覚えなさい。」

 

「浅野君、これが、君が今まで見ていた景色なんだね。」

 

「…まあね。」

 

(お前ごときが支配者を語るなガリ勉め。僕でさえ支配の頂点に立てていないというのに。)

 

そして帰り道。竹林の向かう先には真っ黒なタコが。

 

 

「…警察呼びますよ。」

 

「にゅやあっ!なぜ闇に紛れた先生に気付いた!」

 

隠れるのが下手だからだ。

 

「何の用ですか、暗殺とは無縁なこの僕に。」

 

「竹林君、先生を殺さないというのは君の自由です。しかし、殺すという行為は日常に溢れている。

 

現に家族に認められる為だけに、自由な自分を殺そうとしている。

 

でも君なら、そんな呪いをいつか断ち切れる。そう先生は信じています。

 

いつでも殺しに来てください。先生また、闇に紛れて相談に来ます。」

 

そう言って殺せんせーは去った。

 

***

 

翌日

 

創立記念日の集会。竹林が壇上に立ち、あたりがざわつく。

 

「はあ、また竹林がスピーチ?」

 

「…胸騒ぎがする。竹林から殺気を感じる。何か大切な物を壊してしまうような。」

 

と千葉が言う。俺も、竹林からただならぬ雰囲気を感じた。

 

そして始まるスピーチ

 

「僕のやりたい事を聞いて下さい。」

 

あたりは静まる。

 

「僕のいたE組は、弱い人達の集まりです。学力という強さがなかった為に、

 

本校舎の皆さんから差別待遇を受けています。」

 

そして竹林は続ける。

 

「でも、僕はそんなE組が、メイド喫茶の次に居心地が良いです。」

 

再び辺りがざわつく。皆はショックを受ける。

 

「僕は嘘をついていました。強くなりたくて、認められたくて。

 

でも、役立たずの上E組を勝手に抜けた僕の事を、E組の皆は心配し、様子を見にきてくれました。

 

先生は、要領の悪い僕でもわかりやすいよう工夫を凝らして教えてくれました。

 

家族にさえ認められなかった僕に、E組の皆は明るく接してくれました。」

 

「…世間で言う強者を目指す皆さんを、正しいと思うし尊敬します。

 

僕のクラスメイトが言いました。『弱者を虐げる強者が嫌いだ』と。その通りだと思います。

 

だから僕はもうしばらく弱者で良い。弱いまま強者の首を狙う生活に戻りたい。」

 

それを聞き浅野は呟く

 

「イカれたかザコが…、撤回して謝罪しろ竹林!さもないと…」

 

言いかけた所で、浅野は竹林の手にある物に気付く。

 

「私立高校のベスト経営者を表彰する盾みたいです。理事長室からくすねてきました。」

 

浅野親子が驚く。

 

(いつの間に!)

 

「理事長は正しく合理的な人だ。」

 

そう言って竹林がナイフを振り下ろし、盾は大破する。

 

「以前、理事長室の私物を壊した人が、E組行きになったそうです。前例から合理的に考えれば…

 

E組行きですね、僕も。」

 

そう言って竹林は去る。本校舎の奴らはショックで物も言えないなか、

 

E組の皆だけは嬉しそうにしていた。

 

そんな竹林を浅野が追い掛ける。

 

「救えないな、君は、折角強者になるチャンスを与えたのに。」

 

竹林はこう返す。

 

「強者?怖がって、それを弱者を虐げる事で隠しているだけの人に見えるよ。

 

ー君も、皆も。」

 

浅野親子は嫌悪感の出た目をした。

 

「ようやく分かってくれたか、竹林。」

 

俺は嬉しかった。と同時に少し恥ずかしい。

 

「まさか、俺の言っていた言葉をそのまま言うとはな。」

 

そして

 

「2学期から新要素を暗殺に組み込む。それが火薬だ。

 

だがこれは危険が伴う。従って火薬の取り扱い事項を1名に覚えてもらう。」

 

(うわ、あんな分厚いのを?)

 

皆が躊躇うなか、

 

「やります。」

 

竹林が手を挙げ、資料を手に取る。。

 

「…出来るか?」

 

「勿論、二期OPの替え歌にすれば余裕ですよ。」

 

そう言って竹林はメガネをクイと持ち上げた。

 




次は茅野ちゃんのプリン回ですね、原作以上にフラグと伏線張りますよ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。