黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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夏休み 〜普久間島編〜
26話 終業の時間


「皆さん素晴らしい成績でした。五教科プラス総合点の中、取れたトップは3つ。触手は3本。

 

さて、暗殺の方を始めましょうか。 トップ3人の方、御自由に。」

 

(ま、3本位なら楽勝ですね。6本はさすがにヤバイですが。)

 

そう言ってしましま顔をする殺せんせー。油断しきっている。

 

けれどこっちには秘策があるんだ。

 

すると寺坂達が立ち上がった。

 

「待てよタコ、五教科トップは3人じゃねーよ。」

 

「3人ですよ、国、英、社、理、数合わせて。」

 

なるほど。寺坂達の意図が分かった。

 

「アホぬかせ、五教科っつったら、国、英、社、理、家だろ。」

 

寺坂竜馬 家庭科100点 学年1位

村松拓哉 家庭科100点 学年1位

吉田大成 家庭科100点 学年1位

狭間綺羅々 家庭科100点 学年1位

 

「か、家庭科ー!」

 

殺せんせーは相当ショックを受けたようだ。まさか実技教科でトップを取るとはな。

 

「ちょっと待って、家庭科のテストなんてついででしょ!何こんなので本気出してるんですか。」

 

「誰もどの五教科とは言ってねーよな。」

 

「クラス全員でやりゃ良かった。」

 

とんでもないその作戦に皆声も出ない。

 

するとカルマが言う。

 

「ついでとか失礼じゃね?五教科の中で最強とも言われる家庭科さんにさあ。」

 

カルマはさっき散々弄られた仕返しとばかりに攻撃する。

 

「そうだそうだ、約束守れよ!」

 

「ええ!」

 

殺せんせーは最早パニックだ。

 

そこで、

 

「待ちな殺せんせー。総合トップって忘れてない?」

 

「え?総合トップは浅野君でしょう?君は3位のはず。」

 

「総合ってさあ、5教科だけかと思ってたのか?実は3教科と9教科の総合順位も発表されるんだよ。

 

ついでだけどな。

 

そんでその9教科で…」

 

黒崎翔太 9教科総合852点 学年1位

 

「9教科。つまり実技教科を入れた点数なんだけど、実技教科のテストって

 

五教科の後に行われるだろう?だから皆疲れきってやる気も出ないから平均も低い。ついでだしな。

 

だからちゃんと勉強して余力を残して臨めばトップを取れるかもしれない。

 

て事で殺せんせー、8本目の触手頂きだ。」

 

そう、俺は五教科だけでなく実技教科も念入りに勉強した。

 

その結果がこれだ。

 

「合計触手8本!約束守ってね殺せんせー!」

 

「にゅや、は、8本〜!」

 

殺せんせーの悲痛な叫びがこだました。

 

***

 

期末の後は、程なく1学期の終業式。けど俺達にはまだやるべき事がある。

 

体育館に浅野とその他4人がやって来た。

 

「おお、やっと来たぜ生徒会長様がよお。」

 

「何の用かな。式の準備でE組に構う暇なんてないんだけど。」

 

「おーう待て待て、なんか忘れてんじゃねーの。」

 

寺坂が浅野に絡む。

 

「浅野、賭けてたよな、勝った方が一つ命令出来るって。

 

要求はさっきメールで送信した。あれで構わないよな。」

 

「くっ。」

 

悔しがる五英傑。

 

「お前らが持ち出した賭けだ。今更断るのはナシだぜ。それに、

 

何なら五教科の中に家庭科とか入れても良いんだぜ。それでも勝つけどよ。」

 

そう言って見下したような表情をとる寺坂グループの4人。

 

あいつら大分調子乗ってるな。まあ努力して結果を出したのは事実だが。

 

そして旧校舎にて

 

「見事にしてやられたわねえ。特にあの悪ガキども。あと黒崎にも。」

 

「ええ、できれば本業の五教科に力を入れて欲しかった。でも私は嬉しい。

 

実技教科は受験に使われない分テストの重要度が低い。問題も教科担任の好みで作られる傾向がある。

 

そうなると私の授業しか受けていないE組の生徒は圧倒的に不利。

 

100点1位は下手したら五教科より難しい。

 

それに黒崎君は、実技の対策もしながら五教科の勉強も怠らず3位を取った。

 

九教科の総合点数は五教科の得点も入ります。全教科で高得点を取る必要があるから、

 

総合トップより数倍難易度が高い。

 

一刺しのための集中力。全てに手を抜かず本気で取り組む姿勢。

 

どちらもこの教室にふさわしい生徒です。」

 

「ところで、何で私たちここにいるの?」

 

「烏間先生がくるなって。」

 

「タコがいるせいだわ。」

 

「ビッチが居るせいです。」

 

どっちもどっちだ。烏間先生も苦労人だな。

 

式にて

 

珍しくカルマがいた。

 

「珍しいなカルマ。お前が式に来るとはな。」

 

「だって、今サボると逃げてるみたいでなんか嫌だし。」

 

なるほどな。あんな悔しい思いをした後だしな。プライドが高いのだな。

 

そして菅谷の前にはにせ律が。

 

「烏間先生!にせ律が気になって式に集中出来ないっスよ!」

 

「耐えてくれ、律が機械とバレないための工作だ。直属の上司の娘さんだ。口は堅いし詮索もしない。

 

律の授業で成績も上がったと上司もご機嫌だ。」

 

「けど、俺テストで集中出来ずにクラス最下位になっちまった。」

 

菅谷創介 総合338点 学年95位

 

(クラス最下位でも学年からすれば中位の成績。底辺から良くここまで育てたな。)

 

「えー、夏休みも気を抜かず、E組のようにならないように。」

 

そう言っても笑い声は聞こえてこない。E組がトップ争いをしたからである。

 

今日殺せんせーはここにはいないが、それでも俺たちは前を向いて立っていられる。

 

終業式はつつがなく進んだ。

 

それを見ている理事長

 

「この期末で、生徒全体の学業意識が向上した。E組に対する屈辱や危機感は、奮起材料になる。

 

地球の存亡がかかった時でも、私の教育は正しく機能している。

 

が、それは全てE組が底辺であってこそ。手を打とう。夏休みの間に。」

 

理事長はまた新たな策を講じる。

 

「さて夏休みですが、メインイベントがありますね。」

 

「ああ、賭けで奪ったコレのことね。」

 

「はい、本来はA組の特権ですが、君達だって十分な成績を出した。もらう権利は十分にある。

 

椚ヶ丘中学夏期特別講習!沖縄リゾート二泊三日!」

 

「おおーっ!」

 

一方A組では

 

「ま、あんなしけた国内旅行くれてやるよ。」

 

「あれ毎年半分も参加してないらしいぜ。」

 

「余裕ない奴は勉強だし」

 

「余裕ある奴は海外旅行行くし。」

 

「俺の家ヨーロッパ一周旅行だぜ。」

 

と言って負け惜しみする五英傑の四人

 

「皆が皆海外行けると思うなよ!」

 

「肝心な勝負に勝てないで何が五英傑だ!五英傑(笑)だろ!」

 

「勝ててるの浅野君一人じゃない!」

 

ブーイングの嵐。教室はいつの間に大騒ぎに。

 

「黙ってくれないかな。敗軍の将兵を語らず。次に僕がリードを引くまで、おすわりして待っていろ。」

 

そういう浅野も頭の中は屈辱で一杯だった。

 

「父より先に、まずE組。お前らから潰してやる!」

 

そして場面はE組に戻る

 

「君たちの希望だと、触手破壊の権利はこの合宿中に使うんですね。

 

先生の苦手な水のフィールドで、触手8本のハンデでも満足せず、貪欲に、確実に命を狙う。

 

正直に言います、君たちはこの1学期で、侮れない暗殺者になった。

 

1学期の経験を生かし、夏休みもたくさん学び、たくさん遊び、そしてたくさん殺しましょう!

 

基礎の1学期、これにて終了!これは君たちへのターゲットからの通知表です。」

 

(教室いっぱいの二重丸。僕らにとって、嬉しいターゲットからのご褒美だ。)

 

こうして1学期は終了した。

 

 


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