黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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21話 ビジョンの時間

「あのタコは鼻が利く。外部の人間がいたらすぐ分かる。

 

だから内部の人間である君に頼んだ。イトナの性能を活かすためにね。」

 

(堀部イトナ。あのタコを一番追い詰めた改造人間。)

 

「何か変わってないか?髪型とか。」

 

「意外と細かい事に気付くね。そう髪型が変わったという事は即ち触手が変わったという事。

 

前回の反省を活かし、綿密に計画を練ったのさ。

 

寺坂君、私には君の気持ちがよく分かるよ。あのタコに反発するあまり、クラスでの立場を失っていく。

 

でも大丈夫、我々の手であのタコを殺し、元のE組に戻してあげよう。」

 

すると寺坂にイトナがぬっと近付いた。

 

「お前は、あのクラスの赤髪の奴や黒髪の奴より弱い。馬力も体格もあいつらより上なのに。

 

何故だかわかるか?お前にはビジョンがない。目的の為の。だから先を見据えたあいつらには勝てない。」

 

そう言ってイトナは去っていった。

 

「何なんだあいつ…」

 

寺坂は不満気だった。

 

翌日

 

「ぐずぐず」

 

殺せんせーが涙?を流していた。

 

「何よ、さっきから意味もなく涙流して」

 

「涙じゃなくて鼻水です。この季節に花粉症でもあるまいし…」

 

そんな殺せんせーを寺坂は廊下で見ていた。

 

…「あのスプレーは奴だけに効くスギ花粉みたいなものだよ。あれで大量の粘液を出させる。」…

 

寺坂が教室に入った。

 

「おお寺坂君、今日は登校しないのかと心配しました。昨日君がキレた事なら大丈夫、

 

誰も気にしてませんから。」

 

大量の粘液を出している殺せんせー。

 

「汁まみれになっていく寺坂の顔の方が気になる。」

 

明らかに苛立っていた寺坂は顔を拭くと、こう言った。

 

「おいタコ、そろそろ本気でぶっ殺してやる。放課後プールへ来い。そこで決着つけようぜ。

 

てめーらも全員付き合え!あのタコ水の中へ叩き落としてやんよ。」

 

「…」

 

あまりにも唐突な、身勝手な寺坂の命令に皆困惑する。当然だろう。

 

すると前原が口を開いた。

 

「寺坂。お前皆の暗殺にはずっと協力してこなかったよな。そんな奴がいきなり手伝えって言って、

みんな素直にはいと言うか?」

 

「来たくなければ勝手にしろ。そん時は俺が100億独り占めだ。」

 

そう言い残して寺坂は去った。何て奴だ…

 

「正直やってらんねーよ。」

 

「俺もパスかな。」

 

思った通り皆消極的だ。

 

しかし、

 

「皆やりましょうよ、せっかく寺坂君が本気を出してくれたんですから。

 

皆で一緒に暗殺して気持ち良く仲直りです。」

 

「汁まみれのあんたが気持ち悪い。」

 

皆粘液で固められ強制的に連れて行かれた。

 

渚は教室を出て行く寺坂に問いかける。

 

「寺坂君、本当に本気で殺るつもりなの?」

 

「んだよ渚。当たり前じゃねーか。」

 

「じゃあ皆に計画くらい話さないと、一度失敗したら同じ手は使えないし。」

 

「計画何てあの二人…じゃない、うるせーよ。自分で殺すビジョンも持てない奴が。

 

俺はお前らと違う、効率的に楽に殺すんだよ。」

 

端から聞いていた俺は、寺坂が計画に自信を持っていても、自分に自信を持っていないように見え、

 

ちぐはぐさに胸騒ぎがした。嫌な予感がする…そもそもあいつにまともな計画建てる能力があったのか?

 

そこから理解できなかった。絶対裏に何かある。それは確信だった。

 

そして皆がプールに行くと、寺坂がいた。

 

「よーしそのまま全員プールへ入れ。そうやってだ。」

 

偉そうに指示を飛ばすその姿は、まるで暴君だった。従いたくは無いが、俺も渋々水中へ入った。

じゃないと何を言われるか分からない。

 

「あれじゃあ学年中の嫌われ者だった1年の時と同じだよ。」

 

誰がが言った通りで、はっきり言って寺坂は、この学校では浮きすぎている。

 

すると殺せんせーが現れた。

 

「ヌルフフフ、先生を水に沈めようと、しかしそのハンドガン一丁では先生を一歩も動かせませんよ。」

 

そう。ハンドガン如きで殺せんせーを水中に突き落とすなど出来はしない。

 

じゃああれはハンドガンじゃなくて、まさか…

 

(この発信機を鳴らすと同時に、イトナがここへ駆けつけ、水中に突き落とす!)

 

「ずっとテメーが大嫌いだったよ。消えてもらうぜ。」

 

「ええ、これが終わったらゆっくり話しましょう。」

 

「駄目だ殺せんせー、それはハンドガンなんかじゃない!」

 

俺が寺坂の持っている物の正体に気づいてそう叫んだ時には、すでに遅かった。

 

寺坂が銃声を鳴らすと同時に、プールの縁が爆破され、プールが決壊した。

 

「え…」

 

一番ショックだったのは寺坂本人だ。

 

「プールを爆破し決壊させた。私の計算では7,8人死ぬよ。殺せんせー。水に入って助けなきゃ。」

「おい、嘘だろ?」

 

寺坂の叫びは誰にも届かなかった。

 

***

 

「皆さん!」

 

(何者かがプールを爆破した。誰が何の為に?だがそんな事より、今は生徒たちの救出!

 

この先は険しい岩場。このままでは生徒たちが溺れ死んでしまう!)

 

「マッハで助けては生徒たちの体が耐え切れない。気を遣って助けてる間に

 

触手は水を吸ってどんどん膨れ上がる。それに水を防ぐ為の粘液も、寺坂君の撒いたスプレーで出尽くした。

 

水を防ぐ手立てはないよ。」

 

 

時は遡りプール爆破直後

 

「危ねえ、しかし何なんだあれ。まさかプールを爆破するなんて…」

 

いち早く異変に気付き何とかプールから脱出した俺だったが、驚いていた。

 

「寺坂でもプールを爆破して皆をあんな目に合わせようなんて考えない。

 

じゃああいつを裏で操ってた奴がいた。しかもそいつは寺坂に嘘の作戦を教えた。

 

そう考えれば辻褄が合う。」

 

しかし一体誰なんだ?

 

俺は気付いた。そうだ茅野は泳げない、犯人とか裏に何があったとか考えてる場合じゃない、

 

早く助けてないと…

 

「茅野、俺に掴まれ!」

 

幸いにも茅野はプールの端の方にいて、助けられるかもしれない、そう思った。

 

「黒崎くん、そんな事したら危ないよ!」

 

「泳げない茅野が一番危険だろ、大丈夫、俺は簡単には流されない!」

 

俺は茅野を引っ張り上げようとする、けれど水流は激しさを増し、俺の手にかかる負担も大きくなる。

 

このままじゃ…

 

すると殺せんせーが飛んで来て、茅野を救出した。

 

「ありがとう黒崎君、君のお陰で救出が早く出来ました。」

 

そう聞こえた気がした。

 

その頃、カルマがやって来た。

 

「何これ、爆音がしたと思ったらプールが消えたたんだけど。」

 

すると寺坂が我を失い立ち尽くしていた。

 

「俺は、何もしてねえ。話が違う!イトナを呼ぶ手筈だったのに。」

 

そこでカルマは悟った。要は寺坂ではなくシロの差し金だと。

 

「なるほどねえ、全部あの二人に操られてたのね。」

 

すると寺坂がカルマの胸ぐらを掴んで叫んだ。

 

「言っとくがカルマ、俺は悪くねえ。こんな計画やらす方が悪いんだ。全部奴等のせい…」

 

するとカルマが寺坂を殴った。

 

「良かったねうちの担任マッハ20で。じゃないとお前大量殺人の実行犯だよ。

 

流されたのお前じゃん。言い訳する暇があったら自分の頭で考えたら?何したいか。」

 

そう言ってカルマは去っていった。

 

その後寺坂は山道を歩いていた。

 

(俺は、自分が強いと思ってた。ロクにケンカなんてした事ねえ。

 

ガタイと声のデカさだけで、大抵の事は何とかなった。

 

クラスの中で弱そうな奴を支配下に置いてターゲットにする。それだけでクラス内での立場は上だった。

 

運良く勉強も出来たんで私立の進学校へ行った。そこでもいつもの調子で何とかなると思ってた。

けど、その方法は椚ヶ丘では通じなかった。)

 

「寺坂君さあ、うちの中学こんな事してる奴いないよ。どんなにガキ大将が粋がっても、

 

E組に落ちたら無条件で弱者な訳。だから皆必死で勉強してんだよ。」

 

(俺の持ってたなまくらの刃は、この学校じゃ通用しなかった。

 

こいつらみたいに先を見据えて努力する奴に、俺みたいな無計画な奴がこき使われるんだ。

 

落ちこぼれだったE組にも、モンスターがでかい目標与えちまった。

 

俺はここでも、計算高い奴に裏から操られてた。)

 

一方その頃

 

(彼が最後、全員救出!)

 

殺せんせーは救出に成功した。しかし、触手に触手が絡みつく。そう、イトナだ。

 

「前にも増した緻密な計画、さあ殺せんせー、決着の時だよ。」

 

兄弟対決再び…

 

 


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