黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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ようやくテスト終わった…


17話 訓練の時間

「三月までに奴を暗殺する手立てはないのか!」

 

「それについては我々情報部の隠し玉があります。」

 

「ほう、期待して良いのかね、烏間。」

 

***

 

~暗殺訓練の中間報告~

 

「視線を切らすな、次にターゲットがどう動くか予測しろ!」

 

4ヶ月目に入り、可能性のある生徒が増えてきた。

 

磯貝悠馬と前原陽斗。運動神経も仲も良い二人のコンビネーション。

 

二人がかりなら俺にナイフを当てられることも増えてきた。

 

「良し、二人とも加点一点!」

 

赤羽業。一見のらりくらりとしているが、その目には強い悪戯心が宿っている。

 

どこかでどこかで俺に決定的な一撃を喰らわそうとしているが、そう上手くいくかな。

 

「チッ」

 

黒崎翔太。強い殺気と冷たい雰囲気を漂わせる少年。ナイフの一撃一撃が的確で鋭く、

 

相手の隙を突こうとしている。油断しているとすぐ当てられそうだ。

 

だが、まだ決定打がないな。今後の成長に期待しよう。

 

女子では、体操部出身で意表をついた動きが出来る岡野ひなた、

 

男子並みのリーチと運動量を持つ片岡メグ。この辺りがアタッカーとして優秀だ。

 

そして殺せんせー、彼こそ正に理想の教師像だ。あんな人格者を殺すなんてとんでもない。

 

「人の思考を捏造するな。失せろターゲット。」

 

この他には目立った生徒はいない物の、全体的に見れば水準は飛躍的に上昇している。

 

「はっ!」

 

突然蛇のような殺気を感じ突き飛ばすと、そこには潮田渚がいた。

 

「すまない、ちょっと強く防ぎ過ぎたようだ。立てるか?」

 

「は、はい。」

 

潮田渚、小柄で身体能力は女子並みの、温和な生徒だ。これといって特筆すべき点は無い…

 

だが何なのだ?今彼から感じた得体の知れない殺気は?

 

「よしそこまで!今日の訓練はこれで終わり!」

 

***

 

「いやー、隙無いねえ烏間先生。当てらんねーよ。」

 

「無理も無い。あの人は自衛隊のトップエリートだからな。一対一では誰も当てられない。

 

唯一ペアで磯貝と前原が当てられるだけだ。」

 

そんだけ強いからなあの人は。

 

「烏間先生〜。放課後お茶しよう!」

 

倉橋が言った。

 

「すまないが、この後防衛省からの連絡待ちでな。誘いは嬉しいが…」

 

「そっか、仕事じゃ仕方ないね。」

 

烏間先生は忙しい。生徒への指導から事務、暗殺者との交渉など役割は多い。

 

その上担任と英語教師がアレだから苦労も多いはずだ。

 

「いやー、私生活でも隙が無いねあの人。」

 

「ていうか、何だろう。私たちとの間に壁を作ってる感じなんだよね。」

 

「厳しいけど優しいし、ちゃんと私達の事気遣ってくれてるけど、

 

それって任務だからに過ぎないのかな?」

 

「そんな事ありません。彼には確かに教師の血が流れていますよ。」

 

(今日、俺だけでは全ての仕事はこなせないと判断した上層部が追加の人員を送ってくるらしい…)

 

すると、荷物を抱えた大柄な男が現れた。

 

「よっ、烏間!」

 

「鷹岡!」

 

「誰だあの人?」

 

「よっ皆、俺の名前は鷹岡明。烏間を補佐してここで働く事になった!よろしくな。」

 

「うわー、お菓子がいっぱい。」

 

「これ、『ラ・ヘルメス』のエクレアじゃん!」

 

「いいんですか、こんな高いの?」

 

「食え食え、俺の財布を食うつもりで遠慮なく。

 

物で釣ってるなんて思わないでくれよ。お前らと早く仲良くなりたいんだ。

 

その為には一緒にメシ食うのが一番!」

 

「よくこんなブランド知ってますね。」

 

「ぶっちゃけラブなんだ、砂糖が。おかげでこの体型だけどな。

 

おーあんたが殺せんせーか、食えよ、まあいずれ殺すけどな。」

 

「同僚なのに烏間と随分違うっすね。」

 

「近所の父ちゃんみたい。」

 

「俺たち同じ教室にいるんだから、家族みたいなもんだろ?」

 

父親か、下らないな。

 

一方

 

「本部からの通達です。今後生徒の訓練は全てあの人が行うと。

 

私としては生徒が心配です。あの人は危険な異常者ですから。」

 

***

 

「というわけで、明日から体育は俺が担当する。」

 

「ねえ黒崎、あのデブ胡散臭いよ。訓練サボっちゃおうよ。」

 

「確かに、あれは見え見えの演技さ。けど、俺はサボるってのは性分じゃないんだ。

 

なんかあったら大変だしな。」

 

「ふーん、じゃ頑張ってねー。」

 

カルマは去っていった。

 

「ねえ、どう思う?」

 

「私は烏間先生の方がいいなあー。」

 

「でもよ、あの人何考えてるか分かんないよな。いつも厳しい顔してるし。

 

その点鷹岡先生は根っからフレンドリーだし、案外ずっと楽しい訓練かもよ。」

 

教員室にて

 

「さっきお前の訓練風景を見てたがな烏間、三ヶ月であれじゃあ遅すぎる。

 

軍隊なら一ヶ月であのレベルだぞ。」

 

「職業軍人と一緒にするな。彼らは身体がまだ出来上がっていない。それに本分は学業だ。」

 

「地球の未来より優先する事か?いいか、必要なのは熱意だ。熱意さえあれば生徒は付いて来る。

見てろ、殺せんせー。俺が烏間よりずっと早くあいつらを一流の暗殺者にしてみせる。」

 

そう言って鷹岡は出て行った。

 

「ヌルフフフ、考えの甘い先生ですねえ。

 

そちらの命令なら仕方無いですが、私はね、E組の体育教師はあなたしかいないと思うんですよ。」

「あんたはどうなのカラスマ。あの大男どっか怪しいのよねえ。」

 

「教官としては俺より遥かに上だと聞いている。」

 

翌日

 

「というわけで、訓練は今日から俺がやる。新しいメニューでだ。

 

今よりちと厳しいかもしれないけど、終わったらまた甘いモン食わせてやる。」

 

「そんな事言って、自分が食いたいだけなんじゃ無いの?」

 

「バレちゃしょうがないな、アハハ。」

 

(生徒の心をつかんでいる。軍隊との区別もできているようだ。

 

俺のやり方が間違っていたのか?プロとして一線を引いて接する。)

 

烏間先生はそう思った。しかし、写真に写っていたのは傷だらけの兵士たちだった。

 

***

 

「そんで、時間割も変更する。これが新しい時間割だ。」

 

その時間割は10時間目まであり、ほとんどが訓練だった。

 

「お前らを強くするためだ。地球を救うためだといって理事長も承諾してくれたよ。

 

すると前原が叫んだ。

 

「出来るわけねえよこんなの!夜9時まで訓練なんて。それに勉強もできねえ!

 

理事長も分かってて承諾してるんだ!」

 

「出来ないじゃ無い、やるんだよ。世の中に父親の命令を聞かない子供がどこにいる?」

 

(家族のような態度で接し、暴力的な父親のような独裁体制で精鋭を育てる、それが奴の本質か…)

 

「な、お前は父ちゃんについて来てくれるよな?」

 

そう言って鷹岡は神崎さんを問い詰めた。

 

(親愛と恐怖。この二つだけがあればいい。親愛1:恐怖9のな。

 

まずは逆らえば叩き、従えば褒めることから覚えこませる。)

 

「は、はい、あの…、

 

私は嫌です。烏間先生の授業を希望します。」

 

神崎さんは真っ向から反対した。彼女は大人しいけど、自分の意思は曲げないからな。

 

さて、問題は鷹岡がどう出るかだが…

 

バンッ

 

鷹岡は神崎さんを引っ叩いた。あろう事か最悪の手を使ったのだ。

 

「お前らまだ分かってないのか?はい以外無いんだよ。文句があるのなら拳で語り合おう。

 

その方が父ちゃん得意だぜ?」

 

「ふざけるな…」

 

俺は怒りが抑えられなかった。


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