黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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テスト明日だけど投稿してしまった。


16話 球技大会の時間 後編

「やー惜しかった。勝てるチャンス何度かあったよねー。」

 

「次リベンジしよ。中村さん!」

 

「ごめんなさい。私が足引っ張っちゃったー。」

 

「そんな事ないよ茅野さん。」

 

「女バスのキャプテンの揺れる胸見たら怒りと殺意で判断力を失って…。」

 

「茅野っちのその巨乳に対する憎悪は何なの!」

 

岡野も驚いている。嫉妬だけでこんな異常な憎悪は生まれないと思うんだが…

 

「さて、男子野球はどうなってるかな?」

 

「すごい!野球部相手に勝ってんじゃん!」

 

「今の所はな。で、一回表からラスボス登場ってわけさ。」

 

(ここで彼らを勝たせてはいけない。彼らの目にはあの怪物が植え付けた自信が芽生え始めている。

 

希望を持たせてはならない。常に下を向いて生きてもらわねば。私の教育理念が乱れるのでね。)

 

「い、今入った情報によりますと、顧問の寺井先生は病気で、部員たちも心配で試合どころでは

 

なかったとの事!見かねた理事長先生が急遽指揮を執るそうです!」

 

実況の言葉に観客は沸いた。

 

「さて、とりあえず空気をリセットしてあげたよ。」

 

「ありがとございます。」

 

「E組の杉野君だが、市のクラブチームに入団したらしい。彼なりの努力をしているようだね。

 

だがそれがどうした?努力など誰でもしている。選ばれた者には宿命がある。

 

君達は、そういう努力をしてきた相手を、この先何十何百と潰さなければならない。

 

野球をしていると思わない方が良い。これは作業なんだよ。大勢の中のたった何人かを潰すね。」

 

「さあ、野球部がマウンドに戻ってきました。こ、これはー!

 

守備を全員内野に集めてきた。こんな前進守備は見た事ない!」

 

なんと極端な前進守備をしてきた。これでは守備が目に入って集中できない。

 

(冗談じゃねー。こんな守備で打てるわけないだろ!)

 

「殺監督、指示は?」

 

顔を覆った。

 

「打つ手なしかよ!」

 

あっという間にスリーアウトだ。

 

「その調子だ進藤君。球種はストレートだけで良い。君の球を外野に運べるのは杉野君ただ一人。

彼さえ警戒すればいい。 」

 

進藤に教え込む理事長。そこから見て取れる。彼が優れた教育者だと。

 

(あの男もまた、教育の名手だ。生徒一人一人の特徴をよく覚え、

 

教えるのもやる気を出させるのも抜群に上手い。二人の采配対決、俺も興味があるな。)

 

烏間先生もそれは同じらしい。

 

「どうしたの殺カントク、足元に出てきて。踏んで欲しいの?」

 

カルマの足元に殺せんせーが。

 

「カルマ君。次の回、打順は君からでしたね。君の得意の挑発で揺さぶってみましょう。」

 

そしてカルマの番。

 

「ねーえ、これずるくない?理事長先生。こんだけジャマな位置で守ってんのにさあ、

 

審判の先生一言も注意しないの。お前らおかしいと思わないの?

 

あ、そーか。お前ら馬鹿だから守備位置とか理解できないんだ。」

 

思い切り挑発するカルマ。

 

「小さい事でガタガタ言うなE組!たかだかエキシビションで守備位置に文句つけてんじゃねー!」

 

だが避難の嵐だ。

 

「ダメみたいよカントク。」

 

カルマが舌を出しながら伝える。

 

「いいんです。口に出してはっきり主張する事が大事なのです。」

 

殺せんせー、一体どんな狙いがあるのだろうか。

 

「2回の表、E組はなす術なく3アウト!そして裏、打撃でも進藤が火を吹く!

 

この回集中打で2点を返す!」

 

(殺せんせー、ありがとう。私の教育に協力してくれて。

 

小細工だけで勝とうとする弱者。それを圧倒的な力でねじ伏せる強者。

 

生徒たちはどちらになりたいと思うだろうね?)

 

三回表。俺は打席に立った。

 

「いやー、邪魔だなこの前進守備。ここまでしないと素人に勝てない程野球部って弱いのかなー?

 

あ、そーか。お前らこんな小細工しないと勝てないのか。じゃあ仕方ないねー。」

 

またも会場からはブーイングの嵐だ。

 

(これで、小細工をしているのは野球部も同じという事を主張できました。)

 

そしてピッチャーが球を投げる。それを正確に読み、俺は…

 

「なんと、打ったー!」

 

俺は打った。前進守備など気にせず思い切り振ればなんて事はない。二塁打だ。

 

しかし、次の3人はあっさり凡退。ついに三回裏で勝負が決まる。

 

「なんと、野球部、バントだー!」

 

野球部はバントの構えをした。

 

「野球部、バント地獄のお返しだー!そしてE組、守備はザル以下!」

 

(野球部が素人相手にバント。普通なら誰も納得しないでしょう。

 

しかし、先に君達がやってくれた事で大義名分が出来た。手本を見せるというね。

 

そして最後を決めるのはバントでは無い。強者の一振りだ。)

 

それが理事長の狙い。E組のバントを上手く利用した形だ。

 

「ノーアウト満塁。迎えたバッターは、我が校が誇るスーパースター、進藤君!」

 

「踏み潰してやる、杉野!」

 

理事長に洗脳されたかのような進藤の気迫は恐ろしいほどだった。

 

そして、

 

「黒崎、カントクから指令。」

 

「遂にやるのか。」

 

そして俺とカルマは配置に着く。それは…

 

「なんと、E組前進守備!」

 

「明らかにバッターの集中を乱す位置だけど、さっきそっちがやった時は審判は止めなかった。

 

文句無いよね理事長?」

 

「それに、最初俺らがやったバントをお前たちは真似した。

 

今度はE組が前進守備の手本を見せてやるよ。」

 

俺らが問うと、理事長はそれを肯定する。

 

「構わない、選ばれた人間は守備位置程度で心を乱さない。」

 

(さっき私にクレームをつけたのは、このための布石か。あれを却下した以上

 

E組の前進守備も容認せざるを得ない。だが進藤君の集中力は極限まで高めた。

 

この程度の小細工、たやすく踏み潰すだろうね。)

 

「じゃあ遠慮なく。」

 

俺とカルマは遠慮なく歩を進める。

 

「なあんと、前進どころかゼロ距離守備!振ればバットが当たる!」

 

「は?」

 

「悪いな進藤。この守備じゃどんな集中も冷めちまうよな。」

 

同情する様に言う杉野の言う通り、これでは誰でも集中できない。

 

「構わず振りたまえ。当たっても打撃妨害を取られるのはE組だ。」

 

理事長が指示する。

 

「フン、強く振ればビビって避けるに決まってる。」

 

しかし、俺とカルマはほとんど動かずにかわした。

 

(二人の度胸と動体視力はE組でもトップクラス。バットを避けるくらいバントより簡単です。)

 

それが殺せんせーの思惑。相手を動揺させるには俺とカルマが適任だろう。色んな意味で。

 

「ダメだよ、そんな遅いスイングじゃ。次は殺す気で振らないと。」

 

「選ばれた者ならそれくらい出来るよな?」

 

俺らがさらに煽り立てる。そして、

 

この時点で進藤は、理事長の戦略に体がついていかなくなった。

 

観客もまた、この野球の形をした異様な光景に呑まれていた。

 

そして進藤が打った、しかし、腰が引けているスイングだ。。

 

カルマがキャッチし、渚にパス。

 

そして三塁、二塁、一塁とトリプルプレー、ゲームセットだ。

 

「なんと、E組が野球部に勝ってしまった!」

 

「男子すごい!」

 

「あの戦力差で負けやがった。つまんねーの。」

 

見てた人達は知る由も無いだろうな。二人の監督の数々の采配のぶつかり合いを。

 

(中間テストと合わせて1勝1敗ですね、理事長。)

 

こうして球技大会は幕を下ろした。

 

「進藤、ごめんな。ハチャメチャな野球やっちまって。

 

でも、選手としてお前には敵わない。それは分かってるよ。」

 

「だったら、なんでここまでして勝ちに来た?力を見せ付けたかったんじゃねーのか?」

 

「自慢したかったんだ。俺の今の仲間の事。その為にはさ、勝たないと。」

 

「そうか、覚えとけ杉野、次やる時は高校だ!」

 

「ああ!」

 

(高校まで地球があればな。)




プロフィールの時間に少し追加しました。

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